―――守ってくれないのですか? …さみしいですねえ。
[ いつぞや鮫の彼にも言ったように、決まり文句じみてさみしいと、男は言った。口元に手を当てがっては、薄ら笑いを隠すようにして。
眉を寄せて困ったように首を傾げてみれば ” それ ”らしく見えただろうか?
女医に歯向かっていた時のように、また平生誰かに噛み付いていた時よりも柔な口調を耳に流し。 その澄んだ瞳を真直ぐに見つめた 。奥まで透けそうに、綺麗ないろだと、思った。
―――そうして煽ったのに、彼女はどう答えてくれたか。
例え噛み付かれようとものらりくらりとするのみに留めるが。
……軈て、着直された自らの上着と白衣がはためく音を聞きながら、白と黒とが重なるのをみた。
( …その白衣の意味は何だ…? ) 最早羽織る意味さえなさそうなそれに、胸中深刻さに似た疑問を落としつつ。…まあ、彼女がそれで良いなら、良いのだろう 。]
(27) 2015/07/12(Sun) 14時頃