[両手の爪を――などと 真意か言葉遊びか、どちらにせよ趣味が良いとは言えぬ言葉に 浮かんだ苦笑いは隠しもせず。
>>7自身の手振りに素直に従って掛けられた挨拶に、はたと意識を戻す。
彼女の声では初めて聞いた自身の名前に、嗚呼また名前を聞きそびれたと、咄嗟に口を開きかけて。]
……あ、
[そして再び、詰まった。
最早一見とも言い難い彼女の名前は、知るべきとも そして何より自身が知りたいと そう思いはしたのだけれど。
二の句を次ぐ前に、指先の感触だけを残して、彼女は離れて行ってしまっただろうか。
諦めて三味線へ俯くと、流れた髪の上で、髪飾りの小さな重みが主張する。
髪飾りや砂糖菓子や。それらも “お捻り” のうちだと、せめてそう伝えてくれたなら 此方も気に病まずに済んだものを、と。
身勝手な憤りは、こんな時ばかりちゃっかりと口を付いて出そうになるものだから 何とか飲み込んで。
代わりとばかりに、すぐ喉の下まで用意していた旋律を乗せる。]
(17) 2015/01/24(Sat) 20時頃