[宮廷の一角――広場の一部。其処には民による人垣が出来ていた。祭を楽しむ彼らが取り囲んで見つめるその先には、軍人達の姿があった。一人の者を複数の者が囲い、縦横無尽に攻撃を仕掛ける。一人は只管防御に努める――
そのような光景が、人垣の中心、開けた場所で幾つも繰り広げられていた。「護り」の鍛錬を主目的とする、実践的な訓練。この祭の折に行われる公開軍事演習の一幕だった。
金属音や足音や掛け声や、取り囲む民の歓声や、様々な音が行き交う中。その男は人垣に近い位置で、黙って訓練の様子を見据えていた。男は訓練を行う彼らと同じく、軍服に身を包んでいた]
……
[男は筋骨隆々で背が高かった。ぎょろりと鋭い目をしていた。落ち窪んだように周囲の影が濃く、また眉がないのが――あるいは見えない程に薄いのが――その目付きを増長させていた。時折薄く開かれる唇からは鋭い歯並びが垣間見えた。
威圧感のある、凶悪な出で立ち。
服装は襟を開き気味にしている以外はしっかりと着込んだものであるのが、何処か不釣合いだった。]
(15) 2011/03/20(Sun) 01時半頃