─夜明け頃 自室─
[白む空を窓辺から臨み、ぼんやりと皆野瀬の街並みを見下ろす。
空気がいつにも増してやたらと爽やかに感じるのは、昨日から始まった新学期の影響か。
禰多 侑伽(でいた ゆか)は憂鬱さを隠しもせずにため息をついた。]
──終わっちゃったんだな、夏休み。
[侑伽は暑いのは嫌いだが夏休みは好きだ。思う存分昼夜逆転生活が出来る。
それが終わってしまった。悲しい。とか言いつつ学校があっても夜は起きているし授業中に寝もするのだが。
ぶっちゃけ今も、早起きなのではない。まだ寝ていないのである。]
彼女は、……今日もテンション上げてそうだな……。
[夏休み中に友人に彼氏ができたとかで、屋上ではしゃいでいた声を思い返す(侑伽はその時、貯水槽の陰で寝ようとしていた。わざと盗み聞きした訳では断じてない)。
あのままの勢いで、新たな季節、イコール、本物の恋の予感!と張り切る姿を想像して。
その様を眺めるのだけは、一応、楽しみに数えてもいいかもしれない……と、思った。]
(14) 2022/09/01(Thu) 22時頃