この伊那村だけじゃなっくて、豊葦原の神様のおうちの近くには、必ずアレがあるんだ。
それで、【おさがり】って言ってね。あそこにお供えされたものなら、外神さまは、何を貰ってもいいの。
……ホラ、人間の外神さまの場合、なにはなくとも食べ物だけはどうしたって必要だろうから。
[せっかく来てくれたのに、飢え死になんてしちゃったら、ねぇ。
苦笑いを一つして、少女は顔を正面に戻す。
夕顔の視線が鳥居の方に移ったのを確認してから、小鈴は着物の裾を払って立ち上がった。
未だ薄桃色の中に埋もれたままの幼子へと、そっと近づいて、手を差し出す。]
ねえ、夕顔ちゃん。
今夜はね、わたし達の村は、特別なお祭りの日なの。
年に一度だけ、あの真ん中の桜の木────うすずみさまが、満開になる夜。
夕顔ちゃんも、お祭りに参加しよ!村の人も他の外神さまもたくさん来るの、ぜったいぜったい楽しいからさ!
(11) 2015/04/17(Fri) 00時頃