……嗚呼、もうこんなに日が落ちて。
長話に付き合わせてしまって、すみませんね。
[ちゃり、と。二人分の茶の代金を机に置けば、薬師は立ち上がる。
一口二口しか口に出来なかった茶は惜しいが、あまり店を空けているわけにもいかないのだ。客を待たせるならまだ良いが、どうやら最近は随分物騒らしいから]
それでは、また。
[彼は薬師が出した茶の代金を気にするだろうか。
どちらにしても、一度出した物を引っ込めるつもりもない。別に金に困っているわけでもあるまいし。まあ、薬師が誰かに物を奢るというのは、それなりに珍しい事ではあったけれど。
彼が遠慮したとしても、代金はそのままそこに置いて。声をかけられない限り、薬師はそのままそこを後にする。
そうして店を出て、少し経った頃。
誰かに触れたままの手袋で物を口にした自分に気付けば、意外そうに己の手を見つつ。どうやらかなり気が緩んでいたらしい、と。何とも言えない気分を抱えたまま、帰路に着いただろうか*]
(10) 2015/01/24(Sat) 14時半頃