―路上にて―
[暫く歩いた後。見慣れぬ少年が視界の端に移った。
見ない顔だな、とほんのわずかの時間、視線は彼に注がれる。
白い上着から繋がった被りものが陽射しに眩しい。
その隙間から、緋亜麻がかった髪が覗いている。随分と目立つ風体だ。
歩みに連れて視線は移り、側に立つ洒落た装いの若い男に行き当たった。いまやヒースリングの隠れた名物ともなっている、街路清掃員だ。
この街では、掃除夫までもが景観の一部として、ある種のステージ・ショウのような扱いを受けている。以前取材した高官の、熱っぽい語り口がすぐに思い起こされた。]
やあ、良い天気だね。
[通りざま、右手を軽く挙げて挨拶をした。
名を知るほどの仲ではないが、彼とエリオット氏は行動範囲が似通っているのだろう、アパートと喫茶店以外の場所に出歩く時には、必ずと言っていいほど姿を見かける青年だ。]
(5) 2014/07/07(Mon) 01時半頃