―回想・伍区茶屋前―
[黒檀の髪を飾る硝子細工へと触れる指が取り上げられれば>>2:108、はたと目を瞬いて。
ひとつ、にやり。正にそう表すに相応しい笑みを浮かべてみせた彼女に向けて、取られた手はそのままにこてりと首を傾げてみせる。
其の心など、元来こころに疎い女に推し量る事など出来るわけもなく。
向けられた何とも尊大な言葉には些か笑みも漏れたけれど――あゝだけれど、"あんたの為"だなんて。
そんな言葉には、些か良い気分に浸らせられるてしまったものだから。
"貰うてくれるなら、また見に来なあかんねぇ"なんて言いながら、ひとつ破顔してはみせただろうか。]
……そうやね。
現に"人"まで盗まれてしもうてるみたいやし、声のひとつも盗む事くらいは出来るかも。
――……俄かには信じられやせんけどね。
[とっちめなければならない、と。
そう言うか彼女には、小さく肩を竦めてみせる。
――心の底から、真に鼠小僧なんて話を信じているわけじゃあないけれど。
しかしただの童の悪戯にしては、些か手が込みすぎているように思うのも、また事実。]
(4) 2015/01/24(Sat) 13時頃