カミサマ…さん、頼みが、あるんだ。
[おそらく、本田と真墨の会話を聞いていたのなら準備よくその景色をテレビに映しただろう。
年頃の少女の部屋を覗くなど趣味の悪いことこの上ないが、それは少女の部屋というよりも病室を思わせた。
部屋の空気が淀んでいる。
部屋の主は、少女は。まるで、朽ち果てた亡骸のようなありさまで。
もしかしたら、赤獣はテレビのリモコンのような機器を持ちだして早送りボタンでも押してみせたかもしれない。
そうすればどんどん未来の姿が映し出されるだろう。やせ細っていき、ある日を境にぱったり横に倒れたまま動かなくなる少女の姿が。]
………やめて。
[ポツリと呟いた小さな声は、目の前の小さな生き物に届いただろうか。]
やめてよ…!
[喉が震える。動悸が激しくなる。
それが、『悲しさ』であることの証のように。
左目から、小さく滴が零れる。]
(1) 2014/03/27(Thu) 01時頃