先生も、こっそり盗まれて…そしてその事すら忘れとるかも知れませんよ。
海の向こうに置いて来た…宝物とか。
――……故郷に帰って見ても、宝物の事思い出せんかったら。どないします?
[目を細め、何処か遠くを眺めながら"どんな宝物なんですかね"…なんて。
そうして冗談めかしてクツと喉を鳴らしてみるくらいの仕返しは、したって許されるだろうか。
……だけれど、続いた問いには僅かに目を伏せ。しかし直ぐにクスクスと笑って見せながら、思い悩むように指先を顎へと当てて見せる。]
……ありません。
そりゃあ人に好かれる質やありませんけど、それならもっと陰湿な仕返しして来はると思います。
先生もあらへんでしょうね、…冷たいお人やけど、実は案外いい人ですし。
[いけしゃあしゃあと言って見せ、軽く両手を挙げてお手上げの様を表しながら。
ついでとばかりに軽口をひとつ投げてみれば、薬師の反応はどうだっただろう。
広げた手紙にそっと指を這わせ、また小さく息を吐き――あゝまったく、こんな事で思い悩むなど実に自分らしく無いと思いながらも、渦巻く不安は未だ胸の中に。]
(1) 2015/01/21(Wed) 23時頃