―― 梱包作業 ――
[薔薇の香は、ブルネットの女を思い出させる。その肌にドラキュラのように突き立てられる犬歯、爪、紅は瀝り薔薇の花弁を血の色に染め上げて。これから送り先の主の友人が垣間見せた狂気は、これからの前途が決して明るくないことを証明していた。]
勝手に殺すな。
まぁ、自分の手元で死なれるのは
寝覚めが悪いのだろうけれど。
僕は連れて来られた時は目隠し以外は自由だったよ。
控え室では、足枷ついでに椅子に縛られていたけどね。
暴れても大した力がないと、分かっていたんだろう。
[薔薇の芳香に包まれて窒息死してしまいそう。
閉所恐怖症ではなかったが、目隠しのトラウマはそれに近い状態に少女を追いやっていた。]
……服を着ていられるだけマシだ。
[頼りなくひらひらと身を飾るドレスが似合っているのか、自分には分からない。
イアンの言からすると、最早男装も女装も似合うとは言い難くなっているのだろう。
中途半端な自身に何を望んだのか、買い取った恩人の手を振り払って、少女は今ここにいる。]
(+124) 2010/04/13(Tue) 00時半頃