[コンコン、といつかの悪夢を思い出させるような音>>3:334に、ベネットは身体をびくりと緊張させた。
そろりと窓を見ると、銀いろの―――銀河の岸のすすきとおなじいろの紙がはためいていて、声を失った。
半ば取りつかれたようにカララ、と乾いた音を立てて窓を開ける。]
君は…………
[つぶやいてから手を取って列車に招き入れると、折りたたまれる翼に、ふっと目を細めた。いつか落ちていた羽根は、彼女の物だったのかもしれない。
窓に腰掛けてつま先をゆらし、なにもいわない。本当に彼女だろうか。ジョバンニが見たカムパネルラのように、いつか消えてしまうまぼろしだろうか。]
『ぼく、白鳥を見るなら、ほんとうにすきだ。川のとおくを飛んでいったってぼくはきっとみえる。』
[音もなく列車が止まったとき、おもわずそう言った。彼女は振り向いたろうか。]
(+29) 2014/10/10(Fri) 22時頃