―眠りの奥―
――…どこかで、子どもの泣き声がする。
静かに。ただ静かに。小さく丸まって泣いている子ども。昨日からやたらと煩いその声はどこか聞き覚えのあるようで、無いような声。
メルヤはその泣き声のもとに行き着いた。
それは幼いメルヤ自身だった。七年前の僕が、泣いている。あの声は、自分の内側から聞こえていたようだ。
うんざりとした調子で、中庭の木に背を凭れ掛ける。夢か幻か知らないけれど、どうして何時もこの年齢なのか。
――”終わりのはじまりだからだよ”
子どもには随分と可愛げのない泣き方をしている、幼いメルヤの声が、響く。
ひどく寒い。まるで、冬の夜空の下にいるかのようだった。
幻覚症状の仕組みが解明されているかどうかはわからない。深層心理と記憶に働きかけているのはメルヤもうっすらわかっていた。
頻繁にピエロの男が出るのが、顕著な証だ。憂いも躊躇いもなく慕った唯一の、人。
幻であれ、会えたことに喜びを感じなかったと言えば嘘になる。
(+14) 2015/06/13(Sat) 14時半頃