249 Digital Devil Survivor
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御渡市には古い土着信仰が多く息づいており、他所では珍しいほどに神を祀った社が多い。上下の御渡神社は最も有名なところであろうし、町外れや山中に足を延ばせばその数は数え知れない。この御渡市の外れにひっそりと佇む社がある。
ここに祀られている神の名は記紀神話の中には登場しない。いわばこの地の土着神であり、その信仰が現代まで細々と生き残った姿なのである。
その名を「モリヤ」という。
(#0) 2016/06/16(Thu) 00時半頃
(中略)
「モリヤ」とは、古代ヘブライ語で「主が現れる地」という意味である。旧約聖書「創世記」において、神はアブラハムに子イサクを聖岩のある地モリヤへと連れ来るよう命じたという。ソロモン王が神殿を建設した地も「モリヤ」と呼ばれる。
近代のキリスト教系神智学において霊的指導者として知られている最も有名な存在の名もまた「モリヤ」である。「モリヤ」は過去にアブラハム、東方三博士の一人メルキオール、アーサー王らの姿を取って人々の前に現れたという。
一説には、かのブラヴァツキー夫人やサン・ジェルマンも「モリヤ」と面会したことがあるとされる。これらの名の一致は単なる偶然であるだろうか、それとも何らかの符合を示すものか?
(#1) 2016/06/16(Thu) 00時半頃
これでもはや明らかとなっただろう。
御渡に今なおその信仰の残る土着神モリヤとは、日本に移り住んだユダヤ先住民が信仰していた唯一神YHVHであり、彼らが大和朝廷により御渡の地から追いやられた後もなお信仰の名残を留めた姿に他ならない!
(月刊レムリア 201×年☆月号より)
(#2) 2016/06/16(Thu) 00時半頃
[その日は満月だった。現代の街の灯りは真夜中でもそうそう途切れない。けれどその日だけは珍しく、町は妙に静まり返っていた。いわゆる丑三つ時を過ぎる頃には、御渡市の通りに車の影はなく、人々はほとんど寝静まっていた。
所々にあるコンビニだけが灯りを灯す中、そのうちの一軒でふと自動ドアが開いた。店員が振り向いても、人が入ってきた形跡はない。奇妙に思いながらも商品の棚卸し作業に戻った店員の背後が突然暗くなった。
振り向いた店員は、自分が頭から貪り食われるまで何を見ているのか理解できなかっただろう。それは、人間でもなければ動物でもなかった。
ヤギのような角が生えて犬のような頭をし、蛇のような尻尾が生えた、しかし全体として見れば全く意味が分からない、あえて言うなら
「悪魔」
としか表現しようのないものだった。]
(#3) 2016/06/16(Thu) 00時半頃
[まだ夜も明けぬうち、既に御渡市内には、長らく世界各地の伝承にしか存在を記載されていなかった妖精、死霊、魔獣…そういった者達がどこからか沸き起こり、現世へと這い出してきていた。彼らは人間の魂を肉ごと喰らう。
ようやく事態の異常に人々は気づいたが、ごく普通の市民にそれらに対抗する術などない。そして、この地震とも台風ともまるで違う災厄の前には準備されたマニュアルも避難所もない。
学校の体育館や公民館…そういった施設に逃げ込んだ人々は、瞬く間に一人残らず悪魔の餌食と化していく。とりわけ黒く染まったマガタマを持っていた人間は誰よりも真っ先に狙われたろう。
瞬く間に町は秩序のまるで存在しない、血生臭い殺戮の場へと変貌していった。市内の警察署も消防署も、すでに悪魔に襲撃され、炎上し、機能を断たれた。電車も動かない。外部とも通信ができない。人々はただ逃げまどっている。
その様子を、彼女は愛おしげに見守っていた。]
(#4) 2016/06/16(Thu) 00時半頃
[程なくして、御渡市から外に続く道は全て自衛隊によって封鎖される。奇妙なほど迅速に、報道管制も完全に敷かれた。
さらに奇妙な事には、なぜか御渡市の外に悪魔が這い出る気配は当面なさそうだった。それがこの国の古の神々の力によるものである事に気づく者がいるかはしれないが…悪魔と同じように人々も全く外に出られないという事だけは確かだった。
もはや事態をどうにかできる者などどこにもいなかった。悪魔と…悪魔と渡り合える者達以外は。]
(#5) 2016/06/16(Thu) 00時半頃
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