186 夏なんです【Sheeps' monologue project】
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それからの日々は、何事もなかったかのように過ぎていった。 合わなかった視線も、次第に合うようになり 減っていた会話も以前と同じくらいには増えた。
タカは何かを感じたようで、私とカズに、それぞれなにかあったのか、と訊いてきたが、 私は首を横に振ったし、多分だがカズもそうしたのだろう、 深くは追求してこなかった。
変わったことといえば。 一人になると、あの日のことを考えることになったことだ。
(@0) 2014/07/23(Wed) 14時頃
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好きだ、と言われた。 忘れてくれ、とも。 そう言われても、忘れられるはずもなく、表面上はなかったように過ごしていた。
好きか嫌いか、で言われたら、彼のことは間違いなく好きだ。 ただ、それは多分、幼馴染として、友人としてであって、 それ以上ではない、と思う。
でも、本当にそうなのだろうか。 三人でいることが心地いいから、それを壊したくなくて、 そういう気持ちにフタをしてきただけなのか。 好きだと言われたから意識しているだけなのか。
ぐるぐる、ぐるぐる。 気がつけば、季節は夜空から夏の大三角が消える頃になっていた。
(@1) 2014/07/23(Wed) 14時半頃
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天体観測から、ほぼ1ヶ月がたった。 夏祭りやら、花火大会やらと、大きなイベントを三人で楽しみ、 そして夏休み最終日、三人集まって溜まっている宿題を片付けている。
といっても、タカは完全に終えていたし、私も苦手なものが残っていた程度で、 主な目的はカズの終わらない宿題を手伝うことだった。 毎年あまり変わらない光景に笑いながら、最後の追い込みをかけていた。
「なんでお前らは終わってるんだよ…」 「終わってない和樹のほうがなんで、だよ」 「ちくしょーーー!」
飽きた、とちゃぶ台の上にシャープペンシルをころがすカズ。 それを見ながら、休憩にするか、とタカが笑った。
(@2) 2014/07/23(Wed) 14時半頃
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「今年は、いろいろやったからなー」
過ごしてきた夏を思い出すように、タカの部屋から見える空を眺める。 とっぷりと日は暮れ、あの日とは違う表情をした星空が広がっている。
「また……、夏に三人で、やりてえな。 天体観測」
ぽつ、とカズが呟く。
(@3) 2014/07/23(Wed) 14時半頃
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「また、やればいいじゃないか。 秋でも、冬でも」 「いや、夏がいい。夏の空が好きだから」 「ベガ見つけられなかったのに?」 「うるせぇ、たまたまだ、たまたま」
なんだよー、と軽く拳が飛んでくる。 その様子を見ながら、タカがこらえきれないというようにぷっと吹き出した。
「ああ、また来年、三人で行こうな」
その来年が来ないことなど、思いもしないまま。 約束だ、と無邪気に笑う幼馴染を、笑いながら眺めていた。
(@4) 2014/07/23(Wed) 14時半頃
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季節は巡る。 私達三人は、変わらない日々を過ごしていた。 文化祭や、体育祭。 クラスで行う行事も盛況のうちに終わり、来年もまたこの面子であることを喜んでいた。
その、矢先。
(@5) 2014/07/23(Wed) 21時半頃
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和樹が、事故にあった
(@6) 2014/07/23(Wed) 21時半頃
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その知らせは、春にやってきた。 遅刻するから先に行ってろ、と寝ぼけ眼のカズに見送られて、タカと二人で登校した日だった。 一時間目が終わっても、一向にやってくる気配がない彼に、どうしたんだろう、と思っていた。 二度寝でもしたんじゃないか、というクラスメイトの言葉に笑っていた時、 たまたま職員室に向かった別の生徒が、息を切らして私達の元へやってきて告げた。
一瞬で、血の気が引いた。 気が付くと、私とタカは教室を飛び出していた。
(@7) 2014/07/23(Wed) 21時半頃
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職員室は騒然としていた。 白い顔をした担任は私達を見つけると、そのまま病院へと連れだした。 道中、ぽつりぽつりと、担任は状況を口にした。
車と衝突したこと。 すぐに救急車が呼ばれたが、意識がないこと。 怪我の状態も酷いものであること。
その間、私は後部座席で、タカの手を握りしめていた。 最悪の事態が頭をよぎる。 何の結論も出せないまま、伝えないまま、 いつかいつかと先延ばしにしたまま?
(@8) 2014/07/23(Wed) 22時頃
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「大丈夫だよ」
俯いたまま、ベンチに座っている隣で、タカの声がした。
「約束しただろ? 来年の夏もまた、星を見に行こうって」
私は、うん、と頷くことしかできなかった。 夏の約束。 来年も、その先も、疑っていなかったあの頃。 忘れられない視線と、言葉と、
(@9) 2014/07/23(Wed) 22時頃
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そこから先は、覚えていない
(@10) 2014/07/23(Wed) 22時頃
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後から聞いたところによると、残念ながら、という声を聞いたと同時に、私は気を失ったらしい。 それから通夜、葬式と茫然自失といった表情で参列したという。
唯一のその周辺の記憶は、煙突から煙が空へと登っていくところだ。 青く、雲ひとつない空が、あの日を思い起こさせたのかもしれない。 私はただ、ぼうっとそれを見つめていた。
(@11) 2014/07/23(Wed) 22時半頃
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――現在――
蝉の声で、現実に引き戻された。 あの後、高校を卒業した私達は同じ大学へ進み、二人の関係は幼馴染から恋人、そして夫婦へと形を変えた。
そこに至るまでに、一つの葛藤があった。 否、今でも、少し。 目の前の石が何も言わないことをいいことに、 置き去りにしていた、私と彼の、関係。
(@12) 2014/07/23(Wed) 22時半頃
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私が出した――出せなかった結論は。 即答もできず、後にも何も言わない。 それは、ただの否定の言葉よりも残酷だ。
きっと、彼もわかっていたのだ。 私が、彼を恋愛対象として見ていなかったことを。 恋人として振り向きはしないことを。
だから、忘れろ、と言った。 強がって、興味が無いふりをして。 それが、彼なりの優しさだ。
(@13) 2014/07/23(Wed) 23時頃
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忘れたことはない。 今でも、思い出せる。
すこし気まずそうな顔も、 真剣な顔も、 苦笑いした顔も、 あの時の空気も、 夏の夜空も。
夏の大三角形を見る度に、揺り戻される感情。 私は、 私は、ただ、
(@14) 2014/07/23(Wed) 23時頃
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失いたくなかった。 幼馴染として、友人として。 だから、優しさに甘えて、言わずにいた。
言えばよかったのだ。 二度と戻れない、あの、夏の日に。
貴方のことは大切だ、と。 望む関係にはなれないけれど、 無くてはならない存在で、友人として、幼馴染として好きだと。
ただそれだけのことが、言えなかった。 ずっと、ずっと、秘密にしていた。 君の知らない、私だけの秘密。
(@15) 2014/07/23(Wed) 23時頃
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「ハルカ?」
私の表情を覗き見る彼と目があった。 ぱち、とまばたきをする。 ずいぶんと時間がたったのか、彼の首筋には汗の跡があった。
「たくさん、思い出してたの。 あの日のこととか」 「あの日?」 「そう。 カズが……、星を見に行こうって、言った日」
さっきその話をしたから、というと、納得したような顔をした。 多分、彼にとっては、沢山過ごしてきた中の一日でしかないのだろう。
(@16) 2014/07/23(Wed) 23時半頃
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「じゃあ…、また来るな、和樹」 「またね、カズ」
思い出話を幾つかしてから、私達はその場から立ち去った。 またね。 きっとくる未来を前提に。
ぎらぎらとしていた太陽は、少し力を弱め その代わりに、雨雲らしきものが近くに見える。 そのうち、通り雨がくるだろう。 空気の埃を落として、きっと夜には晴れているはず。
(@17) 2014/07/23(Wed) 23時半頃
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「タカ。 今夜、星を見に行こう」 「今夜?」 「そう、今夜」
和樹みたいなこと言うなあ、と笑ったあと、それもいいね、と頷いた。 晴れたらな、と付け加えるのに、きっと晴れるよと心の中で返す。
晴れて、大三角形がみえたなら。 10年越しの気持ちに決別しよう。 あなたの笑顔が好きでした、と。
(@18) 2014/07/23(Wed) 23時半頃
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