65 In Vitro Veritas
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[カツンと響く、変な靴の音]
[時折響く、甲高い不快な声]
[その居場所は容易に知れた]
[落し物を探しているあの女]
(*0) 2011/09/28(Wed) 06時半頃
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――……ヨルを、返せ。
[その時コーダはまだ近くにいただろうか。 いたとして、聞こえただろうか。 今までに一度も聞いた事がないような。 酷く、冷えた、恐ろしい声色を]
(*1) 2011/09/28(Wed) 06時半頃
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[「何よ」と文句に開きかけた口に。 先ほど持ち出した……鋏を突き刺した。 ヨルと似てるけど似てない女の身体がビクンと跳ねて。 くぐもった汚らしい声で悲鳴をあげた]
うるさい……うるさい……うるさい! お前のせいでヨルは帰ってこなかったんだ! どうして! ヨルは壊れてなかったのに! お前のせいで壊されて! 捨てられたのか!
[悲痛な声で叫びながら。 言葉のたび、振り上げて、突き刺す。 女の柔らかな肉に、何度も何度も何度も何度も]
(*2) 2011/09/28(Wed) 07時頃
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[真っ先に潰された喉は罵声も命乞いすらもさせなかった。 聞きたくない、もう聞きたくない。 ヨルとよく似た顔で、ヨルとよく似た声で。 ヨルを馬鹿にしたこいつの言葉なんか聞きたくない]
…………ヨル。
[もうピクリとも動かなくなった女の身体。 見開かれたままの瞳。 その周囲に、赤黒く染まった鋏を振り下ろす。 ぐりぐりと、ぐちゅぐちゅと肉を裂いて]
……おかえり。
[抉り出した眼球に微笑みかける。 いつもと同じ、優しい笑みを浮かべながら]
(*3) 2011/09/28(Wed) 07時頃
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ニック!
(*4) 2011/09/28(Wed) 07時頃
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[ヤニクといっしょに地下にきたか。それとも一人だったか。 ともかく、そのときはヤニクと離れ、きっと彼は近くにいた。 呼んだ声は、彼の耳には届いただろうか。]
――………ニッ………ク。
[彼の目には見える場所、だけど、ほかの者には視覚となる場所で。 その穴だらけになった遺体を見ることとなるだろう。]
(*5) 2011/09/28(Wed) 07時頃
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[ニックが取り出したその眼球。 それは、あの頃のヨルの瞳の色を湛えている。]
(*6) 2011/09/28(Wed) 07時半頃
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お前が、壊したのか?
[そう尋ねながら。**]
(*7) 2011/09/28(Wed) 09時半頃
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あいつのせいで、ヨルは壊されたんだ。
だったら今度は。
ヨルのために、あいつが壊されないと。
(*8) 2011/09/28(Wed) 11時頃
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ニック……。
[その言葉は、それまでのニックからは考えられないもの。 だけれども、否定することはできない。
あのモニタの中で、殺された自分と同じ存在は、 壊れたかけたオリジナル、の犠牲になった。
もし、オリジナルが死んでしまっていたら、
壊されなかったかもしれないのに。 (そうなると、不要で処分されることなど知らない)]
(*9) 2011/09/28(Wed) 18時頃
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ニック、お前が危ない……気がするんだ。
[そんなに優しい彼を、知っているから。]
(*10) 2011/09/28(Wed) 20時半頃
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[倉庫を出るとき、気が付かなかった。 ニックがヨルの瞳を大事に持っていることを。
気が付けば、それも、なんとか置いておくように説得したのに。]
(*11) 2011/09/28(Wed) 22時頃
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[掃除をするって、 掃除をされる?
掃除って? 掃除は、綺麗にすること?
綺麗にすることって、 いったい……。]
(*12) 2011/09/29(Thu) 01時頃
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[心の中に、何か悲しい気持ちが積み重なっていく。 ニックとは、違う、きっとさみしさの……。
ニックがみんなを愛してくれる優しい人物とすれば、 コーダは、それとは違う、利己的な人間だ。
そう、最後に深く、たぶん「愛して」しまった27番を、 今、思い出してしまって、
その部分だけが狂ってきている。]
(*13) 2011/09/29(Thu) 01時半頃
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――……苦しい。
[ぽつり、呟いた掠れた言葉。]
(*14) 2011/09/29(Thu) 01時半頃
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[赤毛に寄っていく、自分、のように思えた。 それは、たぶん、自分
だ。
それならば、その人は、その人ではなくて、 その人は、自分……のオリジナル、なの だ。]
――……
[でも、そう、思っているのに、 まだ、諦めきれない、想い。]
(*15) 2011/09/29(Thu) 02時頃
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[ふと、芽生えたそれは、 一つの指針を…………。
そう、それは、ニックと同じような想い。 あの映像のように、ニックや赤毛や壊される。 そう、殺されるなんて…。]
(*16) 2011/09/29(Thu) 02時半頃
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守るよ……。
[小さく、呟いた言葉は、赤毛には聞こえなかっただろうけど]
(*17) 2011/09/29(Thu) 02時半頃
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[いわゆる、レンラクがとれない、 そして、鉄壁は壊せない。
だけど、人は、
簡単に壊せる。]
(*18) 2011/09/29(Thu) 12時半頃
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[ニックがやったように]
(*19) 2011/09/29(Thu) 12時半頃
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コーダ。 僕は、皆を守るよ。 僕らは、クローンじゃない。 僕らは、僕らだ。 だから、壊されたりなんか、しない。
壊そうとするなら……こっちが先に、壊してやるんだ。
[囁かれる声はしかし凛として、決意の強さを示していた]
(*20) 2011/09/29(Thu) 19時半頃
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― 回想 ― >>247
[その遺体の検死がはじまるとき、 リーネの声が届いたような気がした。
そして、ヨルの目の在処、
ニックを見やっただろう。]
(*21) 2011/09/29(Thu) 19時半頃
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>>*20
[そして、ニックが密に囁いてくる言葉に、瞬いた。]
ニック……
[笑顔がよく似合うと思っていたその顔を見返しただろう。]
お前は、強い……。
[クローンではないと、そういえる、そして、生きるためのみんなが生きるための方法を提示する彼が眩しかった。]
(*22) 2011/09/29(Thu) 19時半頃
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[これはいつの言葉だったか]
ねえ。 コーダは……誰かを、守る? 《その為に、誰かを、壊す?》
(*23) 2011/09/29(Thu) 22時半頃
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守るよ。
今一番、壊されそうなやつを。
あいつの目を……。
[赤毛の目のこと、思い出す。]
いまはな。
[それはまだ、牧野の話を聞く前の話]
(*24) 2011/09/29(Thu) 23時頃
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[自分は、大きいヨルを壊した。 そしてヨルを取り戻した。 他の皆も、等しく大事で。 だから守る為に。 壊される前に。 壊すことは、厭わない]
[ただ、あの時壊すのに使った刃物は。 コーダが、どこかに仕舞ったから。 今度は、コーダがあれを使いたいのだろうかと。 そんなことを、考えて]
(*25) 2011/09/29(Thu) 23時半頃
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[この先、クローンと呼ばれる自分たちの中で、 一番最初に、あの映像のようになる者。
やっぱりそれは赤毛だろうと思う。
そして、移植できる人物もここにはいるらしい。 しかもそういう場所、であるらしい、ここは。]
赤毛のこと、守らなくちゃ…。
(*26) 2011/09/30(Fri) 00時頃
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[赤毛は大きい、だから、オリジナルのその人も近寄ってはいないけれど、大きいのだろう。 その人を壊すためにはどうすればいいだろう。
ああ…。
そういえば、聴いたことがある。 クローンの中にもイタンシャがいたと。 自分の身体を壊すペナルティ、犯すものがいたと。
首にひもをつけて、ぶらさがったらしい。 そしたら、動かなくなって…
そんな年長者の話。]
(*27) 2011/09/30(Fri) 00時頃
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― 一人になったとき ―
[映像を思い出す。 そして、ニックの言葉も思い出す。
そう、壊す前に、壊す、そんな気持ちがないといけない。
オリジナルは、きっと、 それでも、何かあれば、クローンが死ぬのはしょうがない、と思うような気もするから。]
(*28) 2011/09/30(Fri) 00時半頃
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[なんてきれいなんだろうか。]
[ああ、なぜ]
[自分は、彼じゃないのか。そんな、そんなことを]
(*29) 2011/09/30(Fri) 01時頃
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[思ったことがある。 それは、圧倒的な、差。
ニックはああいってくれたけど、 自分は、この音は壊せない、と思った。
壊したい。とても壊したい。 なぜ、自分はセシルではないのか、 そう、
壊せない。 それは、セシルのほうが優れているから。]
(*30) 2011/09/30(Fri) 01時半頃
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[自分は、もし、その音が失われるのであれば、 壊されてもいい存在なのかもしれない。
それは、本当に、
悲しすぎる劣等感。]
(*31) 2011/09/30(Fri) 01時半頃
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ああ
[交錯する。]
(*32) 2011/09/30(Fri) 02時半頃
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[羨望と嫉妬]
(*33) 2011/09/30(Fri) 02時半頃
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[それは、歪んでいく。]
[そう、こんな目に合うのは、 こんなオリジナルに激しい劣等感を持つクローンは自分だけで十分だ。]
(*34) 2011/09/30(Fri) 02時半頃
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[そう、規則正しい生活。 何も知らずに仕事をして、
そして、話して、食べて、眠って…。]
(*35) 2011/09/30(Fri) 02時半頃
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[それはとても幸せだった。]
(*36) 2011/09/30(Fri) 02時半頃
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(ニック
自分も彼らを壊すよ
そう、オリジナルを知ることは、
クローンには絶望だ。)
(*37) 2011/09/30(Fri) 02時半頃
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(心を壊される前に、
壊そう……。)
(*38) 2011/09/30(Fri) 02時半頃
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(自分はもう、壊れてしまったから)
(*39) 2011/09/30(Fri) 02時半頃
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