84 戀文村
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[忘れられる訳がないと、言われてコクンと頷く。 5つ歳の離れた姉と、更に歳の離れた姉の婚約者。 戦争が起こる前、愛し合う2人の姿は、 まるで物語の中のように記憶されている。 それは、優しくて、残酷な記憶。]
凍らせた思いも、きっと春が来れば芽吹くわ。 それまでは、きっと耐えるべきなの。
[時期を間違えて芽吹いてしまえば、凍えて枯れ死んでしまう。 姉を亡くした娘は、己では現実を見ていると ミッシェルに相槌を打つけれど。 結局は、夢見る女の幼い言葉に変わりはなく]
ミッシェルさんに、その時が来たら 私、ドレスを縫うの手伝いたいわ。
[幸せな先を望んで、紡ぐ願い。]
(40) 2012/03/24(Sat) 01時半頃
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ええ、きっと、そうよ。
[そう思い込むことで、今を生きている。 相手の裡を知らず、再びコクリと頷いて。]
わぁ、ミッシェルさんの指輪……。 楽しみ。
[ミッシェルの笑みにつられて微笑む。 そうこうしているうちに、店の主も戻ってくるだろうか。 そうであれば、ミッシェルの要件は、彼女自身が伝えたかもしれず。
店番を終えたクラリッサは、家路へと*着くのだろう*]
(47) 2012/03/24(Sat) 02時頃
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[クラリッサの家は、夜はできるだけ燃料を節約しようと早い。 だから、その反動のように朝は早く。]
……お礼にしては、可愛すぎるかしら。
[朝の一仕事を終えた女は、窓辺に座り裁縫をしていた。 仕立て屋の女将が、招集されてから、針仕事を請け負うことが増えた。 元々、パッチワークが趣味で。 仕立て屋の女将にも仕事が欲しければおいでと、 声かけられていたこともあったから、苦でもなく。 繕いものを終えた後、余り布で作ったブックカバーを見つめて溜め息を吐く。
できるだけ地味な色合いを選んだけれど、 物資が少ない中、選べる範囲は限られているから。 男性に贈るには、クラリッサの趣味もあって、酷く可愛らしい。]
(73) 2012/03/24(Sat) 13時半頃
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[縫い付けた犬の形を指でなどって、 ひとまず籠の中へとブックカバーをしまって。 窓の外の様子を伺う。
昨夜、時折月は見えていたけれど、雲自体はあったからか、 ハラリと吹雪くほどではなく白が舞っている。]
また、冬に逆戻りかしら……。
[呟いて立ち上がり、いつも通り出かける準備を。 家を出て広場の方へ向かえば、郵便屋と鉢合わせて、 挨拶を交わした。]
(74) 2012/03/24(Sat) 14時頃
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郵便屋さんの、鞄……大丈夫ですか?
[ふと視線を落とした先、随分と草臥れた鞄を見て首を傾ぐ。 新調は難しいだろうし、仕事用の鞄を作る腕は 女将に適うわけはないけれど。
暗にもう少しの修繕なら、私にもできると告げる眼。 皆まで言わないのは、性格で。 郵便屋は、その言葉をどう取っただろう。 その後、きっと少しの会話を交わして別れた。]
(75) 2012/03/24(Sat) 14時頃
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[そして向かった先に見えたのは、無口な軍人が立つ姿。 クラリッサは、あっと声を上げかけて、片手でそれを留める。
泳ぐ視線。 任務中ならば、声をかけてもいいものだろうか、と。 暫く逡巡して、そっと近寄った。]
あの、任務中に、ごめんなさい。 でも、どうしても、昨日のこと、謝りたくて。
[視線あげられぬまま、ごにょごにょと謝罪を紡ぐ。]
(76) 2012/03/24(Sat) 14時頃
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それで、あの、えっと……。
[言葉考えぬまま話しかけたことと、 無口な相手に、それ以上何を言っていいのか判らなくなって、 気が付けば今朝作ったブックカバーを お詫びとばかりに差し出していた。]
これ、きっと、貴方に似合うと思うんです。
[昨日、犬の栞を買っていたことを思い出して。 元より贈ろうとした人より、贈るに適しているかも? なんて、裡を喋らなければ、乙女趣味のそれが似合うと 言わんばかりの言葉を不躾に*投げた*]
(77) 2012/03/24(Sat) 14時頃
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[振られた首は、女の遥か上。 だから、相手が自分が思うより気にしてはいないのだと、 クラリッサは気が付かぬまま。 けれど、目の前で手を振られて、 そして、差し出したものを受け取って貰えて、やっと顔を上げた。 身長差、約30p……ほぼ垂直に首を曲げて。]
あっ……。
[居た堪れなさに逃げ出そうとした矢先、見える仕草。 無口な軍人の言いたいことが判って、こくこくと頷き微笑む。 そう、犬がお揃いで、きっと合うと思ったのだ。 大きさは少し、ブックカバーの方が大きかったようだけれど。]
(84) 2012/03/24(Sat) 15時半頃
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[頭巾にかかる感覚は、遠い日を思い出させる。 姉の婚約者も、生きていれば目の前の軍人くらいの年齢だったか。 恋人の妹として、優しく接してくれた人。 少しの遠慮と、けれど甘えが混ざった表情を、今は軍人に晒す。
と、幼馴染の声が聞こえて、はっとしたように、赤くなって俯いた。 その上で、とんとんっとしまわれた本を軽く叩く音がした。 再び顔を上げると、役所に向かうのだろう幼馴染と、 優しく接してくれた軍人に挨拶を向けて、足早に*その場を後に*]
(85) 2012/03/24(Sat) 15時半頃
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― ナタリア宅 ―
男の人にお礼って、何渡せばいいのかしら?
[集会場の前を後にした女は、ナタリアの家へと。 いつものように家事の手伝いをした後は、 今日は暖炉の前で、ナタリアと2人並んで裁縫を。 眼が遠くなっている彼女の為に針に糸を通してあげたりしつつ、 クラリッサの手元では、ブックカバーが出来上がりかけている。]
……ええ、これはそのつもりなんですけど。
[最後の仕上げに縫い付けるのは、何故かタヌキの形。 縫い付け終えて、ちょんっと糸を切れば、ため息を吐く。]
(100) 2012/03/24(Sat) 21時半頃
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男の人に聞いてみたらって、それができないから ナタリアさんに聞いたのに……。
[ぷくっと頬を膨らませて見せるのは、拗ねている訳でなくて。 本当の孫娘のように受け入れてくれる彼女の傍が、心地よいから。
赤い手紙が悲しみを運んでいるとは、露知らず。 今はまだ、戦火中といえど、穏やかな時が流れていた。]
(101) 2012/03/24(Sat) 21時半頃
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さてと……、そろそろ行きますね。 また、来ます。
[裁縫の後片付けを済ませると、いつもの挨拶を置いて。 開けた扉の向こう、少し遠くに2つと1匹かの影。 そのうちの1つ。大柄な影に、あっと息を呑む。 先ほどの件を思い出せば、また顔を合わすのは気恥ずかしく。 よそに気が向いているうちにと、 そそっと駆け出す方向は役所の方面。]
(109) 2012/03/24(Sat) 22時頃
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― 役場 ―
こんにちは。 今日は何かお手伝いすることありますか?
[ひょこっと顔だして、御用聞きをするのは、 戦争に男手を取られるようになって時折。 とはいっても、クラリッサが手伝えることといえば、 役場内の掃除くらいなものだけれど。]
……なにか、あったの?
[どのタイミングで飛び込んだか。 けれど、どのタイミングであっても、 沈鬱な空気はきっとそこに合って。 思わず縋るように、幼馴染に視線と問いを向けた。]
(118) 2012/03/24(Sat) 22時半頃
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クラリッサは、ブローリンとミッシェルはどんな話をしているのだろうと思ったのは、役場にたどり着く前の話。
2012/03/24(Sat) 22時半頃
クラリッサは、ミッシェル作の栞は、籠の中に。
2012/03/24(Sat) 22時半頃
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― 役場 ―
そう……なの……。
[尋ねに返って来た言葉に、息を詰める。 流した視線は、一度サイモンに止まって、すぐに逸らされる。
こんな時、どんな言葉を紡げばいいのか判らない。
伏せた瞼。睫毛が頬に深い影を落とす。]
(127) 2012/03/24(Sat) 23時頃
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[ふっと思い出すこと。 ナタリアの所に行くときに、すれ違った軍人のこと。 「ナタリアさんは、貴方のこともきっと好きよ?」 そう返して別れたけれど、訪れた時、 僅かに感じたナタリアの違和感。
思えば、男性にお礼は何がいいと尋ねて、 あんな風に返す人ではいつもはない。]
……知ってたのかな、ナタリアさん。
[ぽつっと呟いて顔を上げれば、窓の外に幼馴染の姉の姿。 視線合えば、仄暗くそれでも微笑んで、僅かに首を傾げて見せた。]
(143) 2012/03/25(Sun) 00時頃
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[ミッシェルと視線が合えば、そのあと幼馴染に視線を向ける。 窓を開けても良いか?と尋ねてから、そっと窓を開けた。]
あのね……。
[死亡届があったのが同僚で、更に赤紙が届いた同僚も傍にいれば、 セレストは説明し難いだろう。 窓から身を乗り出し、ミッシェルの耳に手を当てて声を潜め囁く。
説明をし終えれば、眉を八の字に下げて溜め息を一つ。]
(148) 2012/03/25(Sun) 00時半頃
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ミッシェルさん……。
[不安は伝播し、そして増幅する。 きゅっと、スカートの裾を握りしめ、唇を噛む。]
外で、話した方がいいかな。
[それでも、サイモンがいるこの場で、話を続けるのは憚られて。 外に行くねと、ミッシェルに言い置いて、一度窓を閉める。 幼馴染と、赤紙がきたというサイモンに、視線を流してから外へ。]
(159) 2012/03/25(Sun) 01時頃
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……そうよね、お世辞にもサイモンさん 腕力で強いって人ではないもの。
[今までも近しい人が戦場へ向かっていったけれど。 とても戦いには向かぬ人まで招集され、 そしてエリアスの名が出ればクラリッサは、 ふるっと身を震わせる。]
これから、どうなっちゃうんだろう……。
[寒さではなく身を震わせる不安。 今までよりも強く感じて、どうしようもないと判っていて、 縋るようにミッシェルを見るけれど。 きっと彼女も同じような表情をしているのだろう。]
(163) 2012/03/25(Sun) 01時頃
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クラリッサは、セレストに、出ていく間際、ふるふるっと頭を横に振って見せた。
2012/03/25(Sun) 01時半頃
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[見詰めた相手の眼は、あの日の姉の眼にも似ていた。 だから、またきゅっと服の裾を握りしめるも]
うん……?
[急にナタリアの名が出てきて瞬く眼。 首を傾げて、その問いかけの意図を促した。
その後、自分に語れることがあれば*語ることになるだろう*]
(174) 2012/03/25(Sun) 01時半頃
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― 回想 ―
それは、本当のことよ。
[ミッシェルの言葉にコクリと頷く。 声を潜めて短く告げるのは、軍人の姿を恐れて。 話の分かる軍人でない人に知れたなら、 危険だということはクラリッサも判っていたから。]
一人一通だけ、渡すのは戦争が終わってから。 初めにナタリアさんに、手紙を預けたのは、 姉さんの婚約者……ナタリアさんの孫息子さんなのだけど。
[戦争が終わってからと条件つけられた手紙。 その内容は、出したものの死が前提で書かれている。 もし、姉が、ちゃんと戦争が終わった時に、その手紙を受けれていたなら……また違った未来があったのかもしれない。]
(241) 2012/03/25(Sun) 21時頃
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だから……
[おそらく過去の自責から、他者の想いを守っているナタリアが気になって、顔を出しているのだと、続けようとして口を紡いだのは、軍人の姿が見えたから。 あの陽気な軍人で有れば、その必要はなかったかもしれないけれど。
やがて、そこで交わされる軍人とサイモンのやり取りに、 クラリッサの顔は白く白くなる。 軍人の声は、ところどころ聞こえずとも、 サイモンの上げる悲痛な声は、耳にも心にも響く。]
(242) 2012/03/25(Sun) 21時頃
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[軍人も、幼馴染も、幼馴染の姉も場を去ってから。 クラリッサは、そっとサイモンに近づく。]
あの、サイモンさん……
[打ちひしがれる彼に、自分の言葉など届くだろうか? そう思いながらも、女は意を決してサイモンに囁く。]
手紙を……手紙を書きませんか? ナンシーちゃんに……。
そうすれば、何も残せないってことは無いと思うんです。
(245) 2012/03/25(Sun) 21時頃
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[サイモンの暗い眼が、じっと女の眼を射抜く。 何か言いたげにする男は、しかし顔を横に振った。 妹と同じような年齢の女に憤りをぶつけても 仕方ないと言うように。
そして、彼も耳には挟んでいたのだろう。 同僚に暇をもらい、机で頭を抱えながらペンを走らせる姿が答え。 きっと、しばらく後に、ナタリアの書棚の隠しに、手紙が1通増える。]
(246) 2012/03/25(Sun) 21時頃
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[その背に重ねて見てしまうのは、姉の婚約者の姿。 あの人も、こうして手紙を書いたのだろうか。
書かれる手紙が、届かなければいいと女は思う。 届かないこと……それは、サイモンが生きて帰ってくること。 本当は、それが一番いい。
サイモンの背を見る視界が滲む。 じわっと熱くなった目頭。 女は両手で顔を覆った。 自分が泣いたってどうしようもないのに。]
あの、私、失礼します……っ。
[それ以上、その場に入れなくて。 女はぺこりと頭を下げると、顔を覆ったまま走り出した。]
(254) 2012/03/25(Sun) 21時半頃
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クラリッサは、ぐすぐすと鼻をすすりながら、村の中央を避けるように歩く。
2012/03/25(Sun) 22時半頃
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[泣き顔を人にさらしたくは、なく。 村の中央を外して、女は歩く。 すんっと鳴らした鼻の先。 見えるのは、あの無口な軍人で……。
くしっと袖で顔を噴いた後、物陰からそっと様子を伺う。]
(283) 2012/03/25(Sun) 22時半頃
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えっ……?
[物陰から、じっと様子を見ていた相手が近づいてくる。 相手は軍人だ。 気配の消し方を知らない女の存在など、 あっけなく見つけれるものなのかもしれないが。 そうとは思わない女は、ただ慌てる。
そして、蛇に睨まれたカエルのように動けなくなった。]
(288) 2012/03/25(Sun) 23時頃
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[見知った、それも暴力を振るうでない軍人を 恐れることはないのだけれど。 泣きはらした眼で硬直する様子は、 そう、相手に印象付けするには十分だろう。]
え……?
[けれど、その硬直は、差し出されるものに解ける。 疑問符と共に、小首を傾げる。 やっと思考回路が繋がれば、おずおずと手を差し出し、 ハンカチを受け取った。]
ありがとう。
[小さくはにかんで、ハンカチを目尻に沿わせれば、 布に僅かに染みが滲んだ。]
(299) 2012/03/25(Sun) 23時頃
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洗って返しますね。
[すんっと鼻を啜って、言葉を紡げば、吐き出す息が白く煙る。 ハンカチを目尻にあてる視界には、逸らされた眼は見えず。]
サイモンさんが、徴兵されるって聞いて。 ナンシーちゃんのこと、心配してるの見てると辛くて。
[ポツリポツリと、言い訳のように独り言を零し始める。]
……ナンシーちゃんに手紙を残したらって 勧めてみたけれど。
[そして、うっかりと手紙の件を零してしまう。 けれど、零したことが、彼に対する信頼の証でもあった。]
(310) 2012/03/25(Sun) 23時半頃
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[頭の上で、長い長い息が吐かれる音がした。 女は、はっと視線を上げる。 相変わらず30pの身長さに首が曲がった。]
ご、ごめんなさい。 こんな話しちゃって……。
[話したところで、どうなる訳でもないのに。 唇を噛んで、少し落とした視線。 赤いフードが、暗くなる視界の端を過ぎて行ったのが見えた。]
(322) 2012/03/25(Sun) 23時半頃
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ヤニクさん、こんな時間に何処にいくんだろう?
[見えた人影は、ヤニクのもので。 いつもなら、そろそろダーラの手伝いを 始める頃合いではないだろうか。 小首を傾げて、けれど追いかけることはない。]
あの人も、赤紙の対象になっちゃうのかしら。
[旅人の彼も対象となるのならば……。 無知な女でも、思い考えることはある。 だから、ほろりと口から言葉が零れて行くのだけれど]
やだ、私ったら、また……。
[先ほど、そっと咎められかねない話題を出したことを 目の前の人が制してくれた仕草を思い出して、口に手を当てた。]
(335) 2012/03/26(Mon) 00時頃
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