7 百合心中
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…公園でね、 お散歩しようっていう約束、 したのよ、今日。
大学の図書館の窓際の、 きれいな、赤い色の髪の子。 ケイトさん、っていうの。ひょっとしたら、知ってるかしら。
だからね、明日、公園にいくわ。
[こんなときだから、約束を守りたいのだと、そう。 たとえ誰も来なくても。]
(317) 2010/03/25(Thu) 10時頃
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―朝方:住宅地― [少し古い型の携帯電話は白い色。 ヨーランダの連絡先だけはしっかりと持つ。 他の設定は、きっとマルグリットには難しくて無理だった。 夜明けの空、まぶしくもないのに日傘をさす。 火の手が上がる、遠い街。 星は知らん顔で煌めいている。]
――ね。 世界は、きれいなのにね。
[哀しげにつぶやく。]
きっと、晴れるのよ、今日も。
(318) 2010/03/25(Thu) 10時頃
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[丘の上の家、その周りは奇妙に静かだ。 花の香りが漂う。]
…? ゾーイちゃん…?
[自分の家の前で泣いているこども。 ピアノを習いに来ていた子だった。 どうしたの、と屈んで尋ねる。 ――おかあさんもおとうさんもいないの、 と泣きじゃくる。 その子からも、 濃い、 花の、 香り。
濃緑の眸が一度だけ大きく揺れた]
(319) 2010/03/25(Thu) 10時半頃
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[けれど、それはどうにか笑みにかえて]
…――そう、…きっと外が騒がしいから 見に行っているだけよ。
だいじょうぶ。
[落ち着かせるように抱いて、 背中をさすった。
――せんせい、こわいよ。
泣くこどもの体が、不意に 崩れて]
(320) 2010/03/25(Thu) 10時半頃
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ぁ
[風にさらわれて、――ほどけて、消えた。]
…、――ゾーイちゃ ん
[暫くその場から動けずに 声を押し殺して
――泣いた。]
(321) 2010/03/25(Thu) 10時半頃
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[ややあって、ゆっくり立ち上がり]
…、――… ……、……――だめ
いかなくちゃ
ごめんね 新しい楽譜 渡せなかったわ…
[花びらになってしまったこどもに言葉を向けて。 焼き菓子と、それからいくらかの荷物を持って 家を出たのは、すっかり明るくなってから。]
(322) 2010/03/25(Thu) 10時半頃
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―桜並木の公園―
[――日も高くなった頃
公園の、桜並木で 日傘をさし、 終りを運ぶ花の香りを乗せた春の風に ワンピースの裾を揺らしながら、
マルグリットは、約束を果たすために佇む。]
――…いいお天気。
[呟き。このような事態だけれど このような事態だからこそ。 約束をした、ケイトの姿を*探していた*]
(323) 2010/03/25(Thu) 10時半頃
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長老の孫 マーゴは、空を見上げた。公園は、なんだかとても静かだった。
2010/03/25(Thu) 10時半頃
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―桜並木の公園― [自分の手を見下ろす。 出て行く間際、握手をしてくれたグロリアを思う。>>325]
…――…だいじょうぶ。 …ちゃんと、また逢うのよ。
[あたたかな食事の風景は とても大切なものとして心の中に沁みた。 花の香りができれば彼女たちには 遠くありますようにと願う。
風に、髪が遊ぶ。]
(329) 2010/03/25(Thu) 11時頃
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―公園―
[足音がした。 ベンチに座り、日傘をさしたまま、顔をあげる。 探している、待っている子では無かったけれど――]
こんにちは。
[至近距離で見つめてくる少女 ―幼く見えたゆえそう思ったのだ―へ 笑みを浮かべ、言葉を向けた]
どうしたの? 迷子さん、かしら。
(339) 2010/03/25(Thu) 11時半頃
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―公園>>341―
……?
[小首を傾げて]
わたしも、迷子? …どうかしら、道には 迷ってないのよ。
[曖昧に濁すような言葉に返す言葉は やはり少し曖昧か。 じっと猫のような大きな眸が見つめてくるのに 不思議そうに見つめ返した]
なあに? わたしの顔、なにかついてる?
[少し、子供に語りかけるような調子なのは 実際年齢よりも幼く見ているからだろう。]
(342) 2010/03/25(Thu) 11時半頃
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―公園>>345― …そう思ってるわ。
[琥珀の色の眸は空へ。 横顔を見ていたが、つられたように マルグリットも空を見た。]
いいお天気ね。 ……「ついてる」 って なあに?
[不思議そうにまた小首を傾げた。]
ええと。待ち合わせ、かしら。 約束 したの。お散歩の約束。 こんな状況だけど…約束って、まもりたいの。
今日は、こんなにいい天気なのだもの。
あなたも、お散歩?
(348) 2010/03/25(Thu) 12時頃
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―公園>>350― … 別の?…ひあっ
[くすぐられてびくりとする。 首筋を押さえて声を上げたことを恥ずかしそうにした。]
もう、いたずらはだめよ。
[め、と人差し指を立てて見せた。 続く言葉には居住まいを正し]
来てくれると、いいけれど。 でもね、来てくれなくてもいいのよ。 わたしが約束を守りたくてここにいるだけなのだもの。
…そう、…会いたい人がいるなら…しかたない わね。
[彼女が義肢なのには、気づいていない様子で。]
おうちには、かえらなくて…大丈夫?
(354) 2010/03/25(Thu) 12時頃
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―公園>>358― [素直な侘びには頷いて、 手を握り締められれば少しだけ目を丸くする]
…、……あなた、手…。
[聞いていいものかと琥珀色の眼を見た。]
待ってるのは―― 昨日会ったばかりの子なの。 来てくれると、うれしいけれど。
[待っているのもきっと悪くないことなのだ。 やわらかく笑った。]
…ひとりぐらし?そんなに、ちいさいのに? あ、…ひょっとして、…
[年齢を、勘違いしていたのだろうか、と申し訳なさそうな表情を浮かべる。]
(364) 2010/03/25(Thu) 12時半頃
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―公園>>368―
…足も、なの。――そう。 いたくは、ないの?
[傘は腕に凭せ掛け、 開いた方の手で、手をそっと撫ぜた]
…、昨日でも、約束は、約束なのよ。
[と、笑みのまま謂う。]
…14歳?中学生でひとりぐらしなの…?
[いたずらっぽい言葉を真に受けて、そんな風に返した。]
(376) 2010/03/25(Thu) 13時頃
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―公園>>379― …、――。 …… つらかったの、ね。
[痛ましげに、眉を寄せた。 どこか不器用な握手のような仕草を見せる手を包む。 続く言葉には眼を一度瞬かせて]
… そう かしら。 そうなら、うれしいわ。
[少女が零す笑みに、 なにかおかしなことを謂ってしまったろうかと おろ、とした仕草を見せるが、凭掛られればそっと肩を撫ぜて]
わたしでよければ、お話し相手には、なれるのよ。 …今日はいい天気だもの。
[お菓子も在るの、とケイトに約束した分から 少しだけ差し出せる。]
(385) 2010/03/25(Thu) 13時頃
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―公園>>388―
…――、… ――…そうね。
[無邪気な笑みを、何処か哀しげに見つめる。 死が間近に迫るなか、 胸中に訪れるものはそれぞれだろうが。]
…――木。そう在れるなら、うれしいのだわ。
いいのよ、お話は好きだし、 お菓子はたくさんあるもの。
[小首を傾げば肩から黒髪が流れ落ちた。 息を吹きかけられ、くすぐったそうに目を細める。]
あなたはなんだか猫さんみたいね。 まあるい眼の、チェシャ猫かしら。
(391) 2010/03/25(Thu) 13時半頃
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―公園>>393― …――。…そうね。 うん。わたし、最後までいつもどおりにいられたらいいな、 って思ってるの。
こんなときだからこそ。 だって…世界は、こんなに綺麗なのに。
[見上げた先、桜の花が咲き誇る。 この花が終わって仕舞う前に 世界はきっと、終わるのだ。]
…――わたし、ともだちや、父にも のんびりやさんね、っていわれるのよ。
[冗談めかして小さく笑い]
ちがうのよ。わたし、チェシャ猫すきなの。 チェシャ猫は、いたずらずきで、でもきっと、とってもやさしいの。
[ハンカチを膝に広げて置くのは、クッキーやサブレ。それから、小分けにしたパウンドケーキ。]
(395) 2010/03/25(Thu) 14時頃
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長老の孫 マーゴは、ふと、震えた携帯を見て、あまり慣れない手つきで確認する。
2010/03/25(Thu) 14時頃
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―公園>>396― …そうかもしれないわ。 でもね、…それでも世界は、きっと まだ、あいしてくれていると 信じたいの。 わたし、臆病なのよ。 怒ったり、憎んだりするのは、こわいの。
[何処か静かに、笑みを浮かべ。桜の花びらを受け止める。]
ふふ、でもね、ゆっくりも、すてきなのよ。 …うん、楽しんでくれるとうれしいわ。
[紅茶のクッキーと、これはココア、それから、と指し示す。]
わがままも、かわいいとおもうの。 偶然でも、いいの。わたしには「本当」になるのよ。
…?結婚? いいえ、していないわ。でも、どうして?
[唐突な問にはきょとんとしたあと、ゆったりとそう答えた。]
(398) 2010/03/25(Thu) 14時半頃
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―公園― ごめんなさいね、後輩からなの。 おたがい無事ね、って。
[えっと、とキーをゆっくり押した後 携帯電話をそっと閉じる。]
こういう機械、 つかうのあんまり得意じゃないのだけれど、 そう謂ったらね こうすればっ、て簡単に使えるようにしてくれたから、 あのことは連絡がとれるのよ。
連絡があると、やっぱりほっとするのね。
[ひらり、桜の花びらが舞落ちた。]
(400) 2010/03/25(Thu) 14時半頃
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―公園>>402― …うん。
[影もない、青空に似た調子の声に小さく頷いた。 頬を撫ぜられると擽ったげに、それでも少し 哀しげに笑んだ。ありがとう、と添え。]
ね。…いろんなものが、見えるのよ。
[押しとどめた言葉は、見えなくて。 彼方の約束を思い。]
ええ。わたしは、それがいいの。 …、――。
[またきょとんとしてから、もう、と小さく困ったように笑む]
おませさんなのね。 大人をからかったらいけないの。
(404) 2010/03/25(Thu) 14時半頃
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うん。よかったわ。
ほんとう、いろいろボタンがあって、 なかなか覚えられないの。 むつかしいのね。
ううん、約束の子とは別の子。 後輩といえば、どっちも後輩なんだけれど。
[――ゆっくり、ゆっくり、人を待つ。 雲は変わらず流れて行く。]
(406) 2010/03/25(Thu) 14時半頃
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―公園>>408― …――そうね、… [頬を撫ぜる手にくすぐったげに目を細める。それから首を傾いで]
おひとよし…そうなのかしら。 うん、メールと、電話と。できたら、いいの。 [困った様子に首を傾いだまま瞬く。]
ええ。おはなし、ありがとう。 楽しかったのよ。公園には、よく来るの。よかったら、また――
[と、前髪に重なる唇に眼を丸くした。]
え、えっと。
[少し頬が赤くなった。]
え…?
[続いた耳元の囁きに、顔を少しだけ少女の方に向けた。]
(412) 2010/03/25(Thu) 15時頃
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―公園>>415―
お菓子、… 。
[琥珀色のまあるい眼。小さな笑みは猫を思わせる。 とても近いから、少しどぎまぎとした。]
ないしょなの?
[鼻先撫ぜられて一度だけ眼を瞑る。 指先と、それから琥珀の眼を視線で追って]
猫さん、わたしは、マルグリットというのよ。 ええ、また、ね
[こんな状況だけれど、再会を願う言葉を重ねた。 花ではない、残り香。 前髪にそっと触れてから、彼女の姿が見えなくなるまで、ずっと見ていた。]
(417) 2010/03/25(Thu) 15時半頃
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長老の孫 マーゴは、良家の娘 グロリアと――
2010/03/25(Thu) 15時半頃
長老の孫 マーゴは、墓守 ヨーランダと、そしてコリーンの無事を、祈りながら。
2010/03/25(Thu) 15時半頃
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―公園― [風が吹いた。桜は咲く。 荷物からショールを出してきて、羽織る。 花の香、琥珀色の眼の猫の香水の残り香。 クッキーをひとつつまんで、かじった。]
うん。
[おいしくできた、こどもたちのお気に入り。 腕の中で消えたゾーイ。 朝、ピアノの稽古の時間になってもだれも来なかった。]
…。……――。みんな、いってしまったのね。
[日傘を抱くようにして、眼を伏せる。 大学も――静かだろうか。]
(428) 2010/03/25(Thu) 16時頃
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―公園ベンチ― [ベンチに腰かけたまま、 マルグリットは遠い喧騒を少しだけ聞いた。]
…みんな、いきたいのね。
[祈りの形に手を組んで、空を見上げた。 とてもよい天気だった]
…、…?
[遠くか近くか、泣き声を聞いた気がして 桜並木の向こうへ目を向ける。]
(440) 2010/03/25(Thu) 20時半頃
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―公園のベンチ―
…ぁ、
[日傘を両手で持って、立ち上がる。 窓際で見たあかいろが見えたからだった。]
――――、 …
[少し離れていてもわかる 痛ましい表情に 心配そうに眉を寄せた。 約束どころではない事態なのは分かっていたから。]
ケイトさん、
[名前を呼んで、少し早足で歩み寄った。]
(447) 2010/03/25(Thu) 21時半頃
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―公園>>449―
[駆け寄ってくるケイトをそっと抱きとめた。 あやすように背中を撫でる]
…こわかったわね、 ……ここは、だいじょうぶ。
[桜の花が、風に舞った。]
うん…ゆっくりで、いいのよ。 ……すわる?
[何か話そうとするのを、そうやって促した。 ベンチのほうがいい?と小首を傾げた。]
(451) 2010/03/25(Thu) 21時半頃
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―公園>>456― …、…うん。 ……うん――…、あの、病気、ね。…――、
[ゆっくり、言葉一つ一つに頷きながら 悲しげに眸を揺らす。 ――たったひとりの、かぞくだったのに]
……お母さまが………、そう……。
[あやすように撫でる手は変わらず。]
…お母さまは、…他でもないあなたに、 最後に触れてもらえて、…きっと、よかったの、よ。 …見ず知らずの人に、くだかれてしまうより、ずっと。
(458) 2010/03/25(Thu) 22時半頃
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……つらかったわね、ケイトさん。
[とん、とんと背を軽く軽く、撫ぜる。]
(459) 2010/03/25(Thu) 22時半頃
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―公園― [ケイトが泣きじゃくる間、ずっと背を摩りながら。 桜は、変わらず咲き続けている。]
いいのよ。…つらいときは、泣くの。 こころが、そうしたいって謂うのよ。だから。
[笑んで、そっとハンカチを差し出した。]
…これから。
[ほんの少し、眸が曇る。]
――……きっと、もう ここからはでられないわ。 ……国がね、ここを、とざしたの。
[声は小さくて、風に揺れた。]
研究所って、お母さまは…なにか研究してらしたの?
(464) 2010/03/25(Thu) 23時頃
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