191 忘却の箱
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[色々と言い訳しているが、私は知っている。 こいつには腕を切り離す”勇気”がないことを。
腕を切り離す痛みに、彼は耐えられない。 痛いのは嫌なのだと。…散々人にやってきたことなのに。 辛いことから逃げたいと。…『生える』腕を免罪符にして。
――身も、心も。 これを切り離すことを良しとはしないだろう…。]*
(43) 2014/09/07(Sun) 21時頃
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―回想・ローズマリーの記憶―
[デリカシーの無い人。 一言で表すなら、そんなところかしら? ――妙齢の女性の寝室に、無断で入ったりして!>>2:50]
やぁ、はじめまして。 美人の金糸雀さん。お邪魔しているよ。
……え?何? 怒ってるのかい? 一体どうしt…
[『パンッ!!』
…そりゃそうでしょう。 勝手に部屋に入って、"記憶”を覗き見て。 平手打ちを喰らっても仕方がないわよね。]
(44) 2014/09/07(Sun) 21時頃
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[けれど。 一瞬驚いたような顔をしたくせに、この男ときたら。]
うん、そうだね。 日記に残された記憶は、筆者そのものだと僕も思う。 いや、だから君のことをもっと知りたいと思、 …って、わかった!わかった! えぇ?そんなにダメなことだったかな…? いいじゃないか、少しくらい。どうせ忘れるのに――
[それは、あの子の大切なもの。”変わらぬ愛の心”。
貴方の本質は、全てを知り、暴こうとするのでしょうけれど。 誰にも見せず、秘めたい想いがあることも知りなさいな。 誰しも持つ、大切なものよ。
――たとえいつか、忘れてしまうのだとしても。]*
(45) 2014/09/07(Sun) 21時半頃
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奏者 セシルは、メモを貼った。
2014/09/07(Sun) 21時半頃
奏者 セシルは、メモを貼った。
2014/09/07(Sun) 23時頃
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―回想・セージの記憶―
[あの日のことは、よく覚えていますよ。 ずっと辛い環境で”耐えて”きた少女の話を聞いて。 彼は罪悪感に苛まれ、軽率な嘘を吐きました。]
…ねぇ、ペラジー。 僕の秘密を一つ、教えてあげるよ。
実は、僕はね… ―――君の”お兄ちゃん”なのさ。
きっと覚えていないだろうけれど、 君がうんと幼い時に、僕は家を出てしまったから……
(53) 2014/09/07(Sun) 23時頃
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……ずっと、遠くにいてごめんよ。 でも。もう、大丈夫だから。
これからはここで、ずっと一緒に暮らせるし きっと、楽しい毎日が待っているよ。
[彼が今まで、身寄りのない貧困層の人々にしてきた『酷いこと』。 これはその罪悪感を埋めるための、自己満足に過ぎなかったのでしょうけれど。 ……人の心を利用して、なんたる偽善。
嗚呼、けれど。 彼にも、あったのかもしれませんね。 ――“幸福な家庭”を、望む心が。]*
(54) 2014/09/07(Sun) 23時頃
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―回想・パセリの記憶―
[――あぁ!そうさ。 あの日、彼は”祝杯”を上げた。文字どおりね。 それを僕は、彼の左手から眺めていた。]
…これで。これで、やっと! 僕は解放される。この苦しみから、解放されるんだ…
もう、誰かを使って実験する必要なんてない。 僕自身が、被験者なんだ。 なんだってできる。きっと役に立つデータが取れる。
……それに。 それに、忘れることができる。いずれ何もかも忘れるんだ。 これまでのことを、全部。
今まで発症者達にしてきた酷い実験を、全部、全部―――
(55) 2014/09/07(Sun) 23時頃
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[手元のワインより、歓喜による酔いの方が強いようだった。 まぁ確かに”苦味を消し”て、”お祭り気分”にさせるのがパセリの役目ではあるけどね。 こんな皮肉なことがあるかい?最初に芽吹いたことを呪ってしまうよ。]
―――もしもし。 そちらのサナトリウムで現在、患者の受け入れは可能ですか…。 えぇ、はい、そうです。勿忘草病です。大至急手配して欲しいのですが。
担当医の…スティーブン先生、ですね。 よろしくお願いいたします。
…あぁ、すみません。発症者は、僕自身です。 いえ、容体は悪くないのですが、早く安定した環境に身を置きたい。 色々と、やりたいことがあるのです。 条件を統一しなければ良いデータが…
[電話越しに話していたのは、行き先と定めたサナトリウムの医師のようだ。 たぶん、優しい人。そんな声が、受話器から漏れていた。]*
(56) 2014/09/07(Sun) 23時頃
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[今の彼はもう、 この日々のことを断片的にしか覚えていないけれど。
代わりに、僕たちが覚えているよ。 だってこの記憶が、僕たちの糧だから――…]*
(57) 2014/09/07(Sun) 23時頃
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―診察室―
[歌を歌いながら。記憶の断片を繋ぎ合わせ。 パセリにセージ、ローズマリー。それからタイム。 ―― さて、何の記憶だっただろう。
そうして最後の一節かかる頃、重なる歌声に気付いて>>47]
ふふふ、怒れる子猫ちゃん。起きてたのかい? 君も、知ってるんだね。この曲を。
でも… もしかして、気に入らなかったかな?
[悪態には軽く肩を竦め、気にした風もなく。]
(58) 2014/09/07(Sun) 23時半頃
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たしかに君の言う通りだ。 不可能だろうと、妄言だろうと。 …何もしないよりは、マシなんだろうね。
でないと彼女の愛は得られない。 何かを手にしようとするならば、努力はいつだって必要なものさ。
僕も、僕なりに努力しているよ。 まぁそれも…なかなかに難題なのだけどね。
[――そう、ただそれは君と違って。 主に『忘れる』方向へ向けられているのだけれど。]*
シーシャ。君は…
――"花"は、嫌いかな?
(59) 2014/09/07(Sun) 23時半頃
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奏者 セシルは、メモを貼った。
2014/09/07(Sun) 23時半頃
セシルは、どこかでスイートピーが揺れた気がして。小さく微笑んだ。
2014/09/08(Mon) 00時頃
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おかしいなぁ。何か嫌われることをしたかな。 ……あ、なるほど。子猫ちゃんがダメだった?>>63
――だって君、 よくあちこち引っ掻いたり、悪戯したり、してるじゃないか…
この口調については、もう癖だからなぁ。 そういう記憶なのさ。きっと最後まで忘れないよ。 でも気になるようなら、謝ろう。申し訳ない。
[悪びれた様子もなく、くつくつと笑う。 が、そこでふと、思案する。]
(66) 2014/09/08(Mon) 00時頃
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ふーむ。そうか。『内容以前に』、ねぇ。 …ということは少なからず、 口調だけでなく、内容にも要因があるわけだ……
[彼に嫌われる話題。思い当たるものと言えば。
――そうして浮かんだのが、この質問。>>59]
(67) 2014/09/08(Mon) 00時頃
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……そう。 やっぱり、嫌いなんだね。
残念だな。 こんなに綺麗に、一生懸命咲いているのに。 毟ったりしたら可哀想だ。 …そうは思わない?
僕は、好きなんだけど。 ――だってこれは、僕らの記憶の分身じゃないか。
[揺れるシーシャの声。>>64 嫌い。嫌い。嫌い。――そう聞こえてしまう。]*
(68) 2014/09/08(Mon) 00時頃
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[突如、強い力で引き開けられたカーテン。 見せつけるように、目の前で引きちぎられる白い花々。>>73 どうやらいつにも増して、虫の居所が悪いらしい。]
……あぁ、また。 君はそうやって。 すみません、先生。診察室を荒らしてしまって。
何か、というより。 見た通りなのですけれどね…。
[それはちょうど、待ち人の来たタイミングだったから。 問いかけ>>49には、状況を指し示して答えとした。]
(77) 2014/09/08(Mon) 01時半頃
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[スティーブンがシーシャに駆け寄る間に、 投げつけられた花と言葉の切片を大切に拾い集め、ゆっくりと立ち上がる。 真っ白で純粋な、彼の記憶を失くしてしまわないように。 彼の大切な友人の、その想い出を聞き逃さないように。
――サミュエル。 …そうか。きっと君も、もう。]
彼のことも。彼の大切にしてたものも。 僕は知ってるし、けれど知らないとも言えるんだろう。 君がそう言うのなら、きっとサミュエルはそうだった。
…サミュエルも。彼もよく、花を潰してたっけ。
[物言わぬ植物となった彼を想って数瞬、小さく目を瞑る。]
(78) 2014/09/08(Mon) 01時半頃
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君の言う通り。…そう、普通に生きたいだけだ。 ――僕らも、彼らも。きっとそれは、同じこと。
彼らに罪があると、誰が決めたんだい? わからないことの多い病気なのに。どうして。
ただそこに偶然、『生まれた』だけじゃないか。
[激昂する男に対して。静かに、淡々と自分の見解を告げる。]
(79) 2014/09/08(Mon) 01時半頃
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花が咲くから、記憶を失うのか? 記憶を失うから、花が咲くのか?
……もし、 僕たちが"際限なく記憶を失う病"に罹っていたとして。
その永遠に失われゆく記憶を、 この花々達が、懸命に留めようとしてくれているのだとしたら。 何らかの形に残そうと、僕らのために咲いているのだとしたら?
感情だって、そうじゃないか。 ――心に『芽生える』って、言うだろう?
潜在的に、僕らの中に『いる』のかもしれない。 見えない"花"が―― それが。記憶として、外に芽生えただけかもしれない。
(80) 2014/09/08(Mon) 01時半頃
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……ただ、ちょっと。不器用なだけなんだ。 加減がわからないんだよ。 だから、こちらが上手く付き合ってあげなきゃ。
僕らの"忘れる"病は、治らない。 だったら。受け入れてあげたっていいじゃないか。 そこに懸命に咲いてるのは、失った僕らの記憶そのものだ。
――だから。僕は大切にしたい。 咲いた記憶も、まだ咲いてない記憶も。
(81) 2014/09/08(Mon) 01時半頃
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[くるり、そのまま踵を返す。 扉を開ける前、最後にもう一度だけ振り向いて]
……でもね、シーシャ。
君の考えは、否定しないよ。 君は君の、正しいと思う道を進めばいいと 僕は思う。
この運命に、最後まで抗ったっていい。 …僕には決して、選べない道だけれど。
君なら。 君なら、或いは―――
[――――無理難題を乗り越えて。 …認めてもらえるかもしれないね。真の恋人に。]*
(82) 2014/09/08(Mon) 01時半頃
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あぁ、先生。 すみません、お伝えするのが遅くなったのですが。
マーチェの部屋に、行ってあげてください。 ……彼らしく優しい、甘い香りのする、綺麗な黄色ですよ。
[右腕に抱えたの紫のキャンバスをひょいと示して。 皆まで言わずとも、きっと伝わるだろう。
シーシャは何か言っただろうか。 しかしそれを聞いたとて、振り返ることはせず。
そのまま、診察室を後にした。]**
(83) 2014/09/08(Mon) 01時半頃
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―廊下―
[誰もいないリノリウムの床に、壁に、一つの足音が響く。 無意識に唇が紡ぐのは、書庫で聞いた妖精の歌>>1:38。]
Parsley, sage, rosemary and thyme…
[繰り返すフレーズ。 何度も。何度も何度も。何度も――……]
(86) 2014/09/08(Mon) 02時頃
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―回想・タイムの記憶―
ううーん、そうだね。 実は、腕とか肩にも、花は生えてくるんだけど。 左手に生まれた紫の花だけを残して、 他は切って鉢に植え換えてみたり。 毎日を楽しく過ごして、悲しい記憶が消えるよう願ってみたり。
…まぁ、どうしたら効果が出るのかわからないから、 色々とね、試行錯誤中なのさ。
[興味を持ってもらえたことが嬉しかったんだろう。いつもより饒舌だ。>>51 そのまま上機嫌で語り続ける。…どうせ自分を誤魔化すためだろうが。]
(87) 2014/09/08(Mon) 02時頃
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ブーケができたら? マーチェに、絵を描いてもらおうかな。 女の子にウェディングドレスを着せて、結婚式の真似事をしてもいい。 なかなか面白いだろう?ここじゃ、そうそうないことだし。
それが終わったら、次は青だ。 手首からこの辺まで、全部青色。 その時までに『生やす』コツを掴めていればいいな。
で、次は、緑、黄、橙、赤…って。 ――虹色の縞の、花壇にするつもりだよ。
[可笑しいかな?…そう訊ねるように、笑いかける。
…こいつは、道化だった。可笑しいくらいが、ちょうどいいと。 それで誰かが笑えばいいと、そう思っているようだった。]**
(88) 2014/09/08(Mon) 02時頃
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奏者 セシルは、メモを貼った。
2014/09/08(Mon) 02時頃
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[――青を。 探してたんだ。
突き抜けてゆく、空の蒼。 どこまでも深い、海の碧。
幸せを呼ぶ、青い鳥。 ……哀しみに、別れを告げる藍い花。]
(149) 2014/09/09(Tue) 00時頃
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―何時か何処かで―
[ただ独り、廊下を歩きながら。 ふと視界に入った左腕。
――そこに咲くのは、濃藍の花弁。]
(150) 2014/09/09(Tue) 00時頃
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[嗚呼、ずっと。この日を待っていた。 …そんな気がする。
どうして、待っていたのだっけ。 理由は、わからない。 ……わからない、けれど、
気持ちはとても晴れやかで。 全ての重荷から、解放されたような。そんな。]
(151) 2014/09/09(Tue) 00時頃
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[――青い色は、幸せの色。 悲しい色だなどと、誰が言ったのだろう?
ずっとずっと待ち望んでいた、幸せを呼ぶ青い鳥は、 今やっと、この左腕を訪れてくれた。
“幸運は必ず来る”。”幸せは、貴方のもの”。 そう、これはきっと”贈り物”なんだ…
開く花弁は、羽ばたく小鳥の翼のよう。 この止まり木にも、ようやく君がやってきた。]
(152) 2014/09/09(Tue) 00時頃
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[その一輪をきっかけに。 左腕に、左肩に、左半身に。 まるで芽吹きの春のように。
花が、花が、花が―――]
ようやく僕にも、やってきたかな。 ずっと、待ってたんだ。 もう。…もう、いいよね。休んでも。
(153) 2014/09/09(Tue) 00時頃
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[どこをどう歩いたか、 気付けばそこは、白い箱の中心で。 見上げれば空が、迫る闇夜と満月が。]
……最後に、メモでも残そうか。
[ポケットの手帳、いつも持ち歩いているそれを取り出して。]
(154) 2014/09/09(Tue) 00時頃
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『このサナトリウムを訪れる皆へ
紫色のブーケを探して。 パセリ、セージ、ローズマリーにタイム。 その傍にいるはずの。幸運の青い鳥を見つけて欲しい。
それができたなら、あなたは私の真の恋人―――
再会の約束は、そこで果たそう。
あなたの永遠の恋人より』
(156) 2014/09/09(Tue) 00時頃
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