299 さよならバイバイ、じゃあ明日。
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…………。
[狐は、大鷲の言葉を黙って聞いていた。 いつものように弧を描いた細い目と、扇子で隠した口元。 "出て行け"にも、"異邦人"にも。ゆったりと尻尾を揺らし、面白がっているようですらあった。
が。]
(1) jinro_coqua 2019/10/17(Thu) 00時頃
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[――どうやってこの街に来たか。>>4:3
死んだ後、生まれ変わる先は狐には決められない。 つまり、たまたまです。としか答えようがないのだった。 そうやって渡り歩いてきた世界の中でも、この街は特におもしろく居心地がよかったので。]
(*0) jinro_coqua 2019/10/17(Thu) 00時頃
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[――"残念だったな"。>>4:13
そう聞いた瞬間、狐の口が耳元まで裂けてつり上がった。]
ホホホ。 太陽の子に空振りなどありますまい。
[くわ、と大きく開いた嘴を見据えて狐は笑う。 妖怪めいたその笑みは、しかし脅かそうとか噛みつこうというつもりはなく、単にそれが狐の素の笑いというだけだった。]
見つかりたくなかった。 ええ、ええ、そうでございますとも。
(2) jinro_coqua 2019/10/17(Thu) 00時頃
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――わたくしは死んで、生まれ変わるためにこの街に来たのですから。
(*1) jinro_coqua 2019/10/17(Thu) 00時頃
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厳しくも優しいお言葉、されど太陽とはそういうものでありましょう。
いと眩しき太陽の子、貴方の前に現れる「死」とは、一体どんな姿なのでしょうね? 討ち果たした暁には是非とも、わたくしにも教えていただきたかったのですが。 ああ、太陽の子が「死」を打ち倒す瞬間をこの目で見られないとは。
[まことに残念です、と答える狐の口元は、いつの間にか再び扇子で隠されている。 青藍の扇子を顔の前でぱたり。ぱたり。と翻しながら、小首を傾げて大鷲を見上げる様子は、すっかりいつもの慇懃無礼な狐だ。]
(3) jinro_coqua 2019/10/17(Thu) 00時頃
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ああ、本当に本当に、お名残り惜しゅうございます。 これでお別れならば最後に、せめて貴方様の勝利を祈願させてくださいまし。 対価だけ受け取っておいてちっとも働かなかったとなれば、祈祷師の沽券にも関わりますし。
[だめでしょうか?と、狐はわざとしょんぼりした声色を作った。]
(4) jinro_coqua 2019/10/17(Thu) 00時頃
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[祈祷の準備は済ませてあった。 榊の枝も仕入れてあったし、朝起きて禊もした。
狐はこの八度目の生が終わりに近付いていることを予感しつつも、他者のために祈り願うこと――即ち狐の思う善行は、死ぬまで続けるつもりであったから。]
(*2) jinro_coqua 2019/10/17(Thu) 00時頃
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― 祝賀会にて ―
[そうして、広場の真ん中に設えられた祭壇――普段なら大鷲が演説やら大道芸やらを繰り広げているその場所で、祝賀会の最中に狐の最後の祈祷が始まった。 狐は両手で榊の枝を捧げ持つようにして一礼し、その場に座り込んだ。ぱし、ぱし、と両の袖を払い、ンン、と軽く咳払いをして、朗々とうたい始める。]
かけまくも畏れ多き いと高き日輪の座におわす方 ――
[独特の節回しと抑揚をつけて、まずはインティの勝利を祈願する相手――今回はインティの父ということになっている太陽である――への挨拶とご機嫌伺いから始まった。]
(5) jinro_coqua 2019/10/17(Thu) 00時頃
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その金色の眼 燃え盛る日輪の焔の如く 隆々たる体躯 逞しきことこの上なし ―― [三十分かけて挨拶を終えた後、太陽の子たるインティがいかに素晴らしく逞しく強い子であるかをかくかくと語り、]
(6) jinro_coqua 2019/10/17(Thu) 00時頃
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生きとし生ける全てに訪う 無慈悲にして平等なるその者 嗚呼かくもおそろしきその名は「死」 ――
[次にそのインティが討ち滅ぼそうとしている「死」がいかに恐ろしく強大な相手であるかをやや控えめにむにゃむにゃとやり、]
(7) jinro_coqua 2019/10/17(Thu) 00時頃
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遂に両者相まみえし時 太陽の子 やおら飛び上がり三度回転ののち 硬き嘴と鋭い爪以てこれをしかと捕らえ ちぎつては投げ ちぎつては投げ ――
[最後にインティがいかに「死」を見つけ出して相対し、壮絶な戦いの末これを打ち倒すかをしかじかとたっぷり一時間かけてうたい上げた。]
(8) jinro_coqua 2019/10/17(Thu) 00時頃
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[これらの長い長い祝詞の合間、榊の枝が拍子をとるようにしゃんしゃんと振られたり、興の乗った狐が立ちあがって祭壇の周りをぐるぐる歩きながら手にした枝であらゆる種類の「死」に見立てた見物人をびっしばっしと打ち据えたりなどした。
そして最初と同じく祭壇に向かって枝を捧げ持ち一礼し、とてつもなく長い祈祷の儀式はようやく終了したのだった。]
……ふう。 いやあ久々に真面目ンッンン、大掛かりな祈祷を致しました。 ホホ、流石に疲れますね。ああ、肉が食べたい。
[狐はやり遂げた顔で扇子をあおぎつつ、ぽろりと肉食獣の本音を漏らした。**]
(9) jinro_coqua 2019/10/17(Thu) 00時頃
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[一度目の狐の死は、苦痛と怨嗟に満ちたものであった。
死の間際、手を差し伸べたあの人間がいなければ、それこそ怨念が石と化していたかもしれない。 かつての狐はそれほどの悪狐、八つに分かれた尾を持つ化け狐であった。
悪狐であったが故、狐は数百年にわたり人の世で悪を為し続けた。 狐の尾はその生で悪を為せば増え、善を為せば減る。 かつての狐は九尾に成ろうとして、あと一歩のところで遂に、退治された。]
(*3) jinro_coqua 2019/10/19(Sat) 18時頃
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[致命傷を負いながらも山中に逃げ込んだ狐は、しかし最早命が尽きるのを待つばかり。 そんな狐を見つけたのは、毬栗頭の少年だった。 狐のことなど何も知らない少年は、ただ弱った獣を哀れだと思い、たどたどしい手つきで傷の手当てをし、食べ物を狐の元に運んだ。 少年の手当てはヘタクソで全く功を奏さなかったし、置かれた食べ物を口にする力すら狐には残っていなかったが。
狐は初めて、人の無垢な善意というものに触れた。
それはただ弱っていたからこそのことで。 普段の狐であれば、迂闊にも近付いてきた少年を食い殺して成り代わるくらいのことはしていただろう。 身動きがとれなかったからこそ、狐は初めて善良な人間の顔を、間近でまじまじと見ることとなったのだ。]
(*4) jinro_coqua 2019/10/19(Sat) 18時頃
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[数日後、狐は事切れた。 天寿を待たずして死んだため、それまで生きてきた九尾への長い道のりは全て水の泡、最初からやり直しとなった。 もう一度九尾を目指すか、そうではない道を選ぶか。
狐は最期に見た少年の顔を思い出して。 そういえば礼を言いそびれたな。と思った。]
(*5) jinro_coqua 2019/10/19(Sat) 18時頃
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[以来、狐はあの日の少年にもう一度会うために生き、死に、生まれ変わることを繰り返している。 彼は善き人間であったから、会いにゆく狐もまた善き狐でなければならない。 狐は狐なりの理屈でそう結論し、空狐を経て善なる狐の高み、天狐を目指すことにした。
そうして八度目の生で、狐はこのまぼろしのような街にやってきた。 あと一度。九度目に生まれ変わった時、狐は遂に天狐へと昇る。 そうしたら、あの日の少年に会いにゆく。
そのはず、だったのだが。]
(*6) jinro_coqua 2019/10/19(Sat) 18時頃
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……まあ、追い出されただけですから。 最初からやり直し、なんてことにはならないと思いたいですけれど。
いずれにせよ、時間はいくらでもありますし。 これまで通り気長にやるとしましょうか。
[思わぬ事態になってしまったが。 もう一度、寄り道をするのもまた一興。 狐の感覚はどこまでも妖のそれだった。]
(*7) jinro_coqua 2019/10/19(Sat) 18時頃
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……さて、この辺りがよいでしょうかね。
[街から盛大に追い出されたのち。狐は、小さな泉を見つけて足を止めた。 傍に生えた木の根本に腰を下ろして、深く、深く、息を吐いた。]
(43) jinro_coqua 2019/10/19(Sat) 18時頃
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[最期の瞬間をよりよいものにする。 狐にとってそれは、見苦しくなく逝くこと。 最期の瞬間まで美しくあること。 深青の着物も虹色に輝く紅も、そのために準備したものだ。]
(44) jinro_coqua 2019/10/19(Sat) 18時頃
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[祈祷に使った分の榊の枝は、焚き上げるように言い残して置いてきた。 狐の手元には、一本だけが残っている。肩に立て掛けるようにしたその枝はまだ濃い緑を保っていた。
狐は榊を見上げて、目を細めた。 草屋で手に入れた榊は数日たってなおみずみずしく、空に向かってしっかりと葉を広げている。
遠くに、遠くに行こうとするように。]
おや、もしや貴方も。 旅路の安全祈願ができればよかったのですが。 けれど、そうですね、それならば。 きっと此処で立ち止まって正解だったのでしょうね。
[ちょうど水もありますし。 狐はそう呟いて、肉球のついた指で枝をそっと撫でた。]
(45) jinro_coqua 2019/10/19(Sat) 18時頃
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……廻り。転じて。また生まれる。 ならば、その先で。 また会うこともあるでしょう。
[さらさら、さらさら。 榊の葉が風に鳴る。 その枝葉の先に何を見たのか、狐は僅かに微笑み――ゆっくりと、目を閉じた。]
(46) jinro_coqua 2019/10/19(Sat) 18時頃
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[白い前脚がぱた、と地面に落ちて。 袖の間から小さなふわふわしたものが転がり落ちた。 毛玉はてってけてってけと風に乗って転がってゆく。何処までゆくのか、途中でふっといなくなってしまうのか。
どちらにしても、狐がその先を見ることはない。 狐の魂はもう此処にはない。 閉じた目も、ゆるく笑んだ口も。 まるで眠っているようだ。]
(47) jinro_coqua 2019/10/19(Sat) 18時頃
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[――さらさら、さらさら。
静かに息の絶えた狐の髭を、榊の葉を。 風が優しく撫でていった。**]
(48) jinro_coqua 2019/10/19(Sat) 18時頃
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