299 さよならバイバイ、じゃあ明日。
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[こえがきこえる。>>45 滴が揺れる。
もしやあなたも たびじのあんぜんきがんができれば けれど きっとここで
靄がかかっているようにくぐもってそれは聞こえた。 言葉の理解はできている。]
(76) taru 2019/10/20(Sun) 20時半頃
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―――…
[枝にくっついていた滴がしたたり、 落ちて行き、それは葉の先へと到達する。
めぐりてんじて ならば また
―――また。>>46 ぽたりと落ちそうになった滴と、 恐らくその微笑みはかちあったのだと思う。]
(77) taru 2019/10/20(Sun) 20時半頃
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[ぱたり、 ぽたり、
恐らく同じタイミングで、]
(78) taru 2019/10/20(Sun) 20時半頃
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[地に落ちた滴の水たまりから顔を出したのは、 小さな小さな竜の幼体だった。]
きゅー
[くるるるると鳴く音は、 風にも乗らずその場にとどまる。
ふわふわした毛玉が、 風に乗って転がって、転がって、 途中でふっといなくなってしまった事を、 できたて生まれたての目で見送った。>>47]
(79) taru 2019/10/20(Sun) 20時半頃
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きゅー
[もう一度鳴く。 見上げると安らかに眠る狐が見える。
新しい竜は狐の事を知らない。 ただ刷り込みのようにもぞもぞごそごそとのぼり、 ぺたりと鼻先にのっかってみる。
途中で毛にうもれて苦戦したのはここだけの話だ。]
(80) taru 2019/10/20(Sun) 20時半頃
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―――― ぅるるるるる…
(81) taru 2019/10/20(Sun) 20時半頃
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[髭がゆれる。水面もゆれていた。 まるで生と死の境目のようだ。
小さな声は変わらず誰にも届かなかったけれど、 今見える景色全ては生まれたばかりの竜の中にあり、
ころんと風に地へと落とされると、 ぷふーっと息吹をかけて、 狐の周りに宝鐸草を芽吹かせた。]*
(82) taru 2019/10/20(Sun) 20時半頃
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(83) miseki 2019/10/20(Sun) 21時頃
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─ 皆の葬儀がすんだあとの晴れた日 ─
[ ボーッ ]
[ ボーッ ]
(84) miseki 2019/10/20(Sun) 21時頃
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─ 粉屋 ─
[心臓に日輪を背負っていた竜を抱く鉄の列車が流している汽笛の音は、高く高く空に昇っていく。
その音が聞こえるくらいの静けさの中、 粉屋を訪れた大鷲は、たっぷりの湖の水が入ったボウルのようなものを、店にある机の上のひとつにおいた。]
これで、よし……と
[はられた透き通った水の底には、弾けた粉屋の主人のかけらが沈んでいる。 そこに置いた振動で、カケラたちは少し揺れた。]
(85) miseki 2019/10/20(Sun) 21時頃
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[それから、虹色のカラフルな──粘液が固まったものを、鳥はそのボウルの横に置いた。]
……我は、これで粉屋とは、 さようならになるが。
[その水面に視線を向けて、鳥はカケラに声をかけた。]
おそらく、街のみなが おかえりと出迎えてくれるからな。
粉屋も、安心して帰ってくるがいい。
[大丈夫だぞ。とまるで無根拠にそう大鷲は答えのない水に向けて胸をそらした。]
(86) miseki 2019/10/20(Sun) 21時頃
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じゃあな。粉屋。
[まるであっさりと少し遠出するかのくらいの気軽さの挨拶を鳥は置いて、]
ゴティエのカラフルを乾かしたものを ここに置いてゆく故、 注文が入ったなら、潰してやってくれ。
きっと、好事家が喜ぶだろう。
[ボウルの縁を羽根でそっと撫でて、鳥は店を後にする。]
(87) miseki 2019/10/20(Sun) 21時頃
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[見上げた空は、よく晴れていた。 嵐のような雷光を落としたものとは おなじ空と思えないくらいの青だ。]
…
[ふーっと鳥は空に向けて息を吐いた。]
(88) miseki 2019/10/20(Sun) 21時頃
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─ 広場の舞台上 ─
[舞台の上には、広がる布に糸をつけたものと、それを入れた籠がある。 サイズは、ギロとンゴティエクが入れるくらいのものだった。]
よいか。我の雄姿を記憶する観客は 大歓迎ではあるが、 街に帰れるうちに落とすからな。
[端的に言えば、パラシュートだ。広げればゆっくりと下降する算段になっていた。]
(89) miseki 2019/10/20(Sun) 21時頃
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[ンゴティエクとギロの二人が、「死」との戦いを見送りたいと、そう言ったときに、鳥はカラカラと笑った>>55>>58。そうして、それから。
「ひとつ、交換条件を出そう」
と、そう鳥は言った。]
(90) miseki 2019/10/20(Sun) 21時頃
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[そして、その条件が伝わったなら]
我が次に街にくるは、 この街を照らす太陽としてであろうな!
白き翼を持つ雷光としての 最後の雄姿!
二名に見届けてもらうとしよう!
[と、高らかに宣言をした。]
(91) miseki 2019/10/20(Sun) 21時頃
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[たとえ、その内心がどうであれ。
その時、鳥は確かに、 朗らかに笑ってそう言ったのだった。]
(92) miseki 2019/10/20(Sun) 21時頃
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─現在、舞台の上─
[滑走の準備はさほどはいらない。 高く高く飛ぶには、 風の見極めが何よりも重要だった。]
聞け! 聞け! 聞け!
いまより我は、陽光の主になる! 暗がりを乗り越え、 空に輝き続ける太陽となって見せよう!
(93) miseki 2019/10/20(Sun) 21時頃
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「死」を打ち倒す勇猛な大鷲の在り様、
──皆々、よくよく語り継ぐが良い!
(94) miseki 2019/10/20(Sun) 21時頃
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[声は震えず、高らかに甲高く、 それはいつも、鳥が吠えていたのと まるで同じような声で、出立を告げた。]
よし! では、行くぞ!
ギロもゴティエも途中で落ちるでないぞ。 拾いには戻らんからな!!
[かっこつかぬし。と、鳥は言って、 籠の持ち手を爪で掴むと、大きな声で 景気づけのひと鳴きをした。]
(95) miseki 2019/10/20(Sun) 21時頃
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ク ワ ーーーーーーーーー ッ !!!!!
(96) miseki 2019/10/20(Sun) 21時半頃
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(97) miseki 2019/10/20(Sun) 21時半頃
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─空─
[白い翼は、高く高く高く、太陽を目指して まっすぐにどこまでもどこまでも飛んでいく。
ビュウビュウと吹く風に煽られて、 途中、>>8 ぐるりと空中で三回転。
籠をぐるぐると振り回す結果になり 中の乗客にとっては 大変迷惑だったかもしれない。]
(98) miseki 2019/10/20(Sun) 21時半頃
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[高く、
高く、
高く]
[嘴で風を切り裂き、 街が豆粒になるほどまで高く飛び、 それでもまだ、まだ遠い父を目指して 鳥は翼を広げて飛んだ。]
(99) miseki 2019/10/20(Sun) 21時半頃
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[そうして、風を切る音が少しか静まり、 雲より高いところまで来たころ。]
…おい、 そろそろ下すぞ。
[昇り詰めるうちには、空気も何もが薄くなる。 そうして陽が強くなり、綿毛と軟体動物を熱から庇えなくなるころに、鳥は籠の中に声をかけた。]
(100) miseki 2019/10/20(Sun) 21時半頃
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[羽ばたきで空気を叩き、その場にとどまり、]
フフン、……よくよくと 我の雄姿を焼き付けたであろう。
ここらが別れの時だ。 後は下りながら、 我の背をよく見届けることだ。
[尊大そうに鳥は二名に向けて胸を反らした。]
(101) miseki 2019/10/20(Sun) 21時半頃
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いいか、無事に地上にたどり着け。
二人には、これから、 もっとも重要な役目を 任せるのだ。
[よくよく聞け。と風に負けぬように声を張り]
これから我が太陽となったとしても 今のこの姿、狐の祈願に語られる雄姿 それを忘れずに伝えゆくは 貴殿らの仕事だ。
[任せたからな。と、念を押し]
(102) miseki 2019/10/20(Sun) 21時半頃
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必ず、我は「死」に会い、 そして打ち勝ってみせようとも。
狐の戦勝祈願、 誰よりよく効いたと、 誇ってみせよう。
[そう言って、不安もないように鳥はカラカラと笑った。]
(103) miseki 2019/10/20(Sun) 21時半頃
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いいか。
我は夜を超えて、必ず毎日会いにくる。 雲が遮る日があろうとも、 我はいつでも空にいるのだ。
いいか。さみしいなどとは、 思ってくれるでないぞ。
──我は、「死」を乗り越えて、
これより永遠になるのだ。
(104) miseki 2019/10/20(Sun) 21時半頃
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[鳥は、──
元々はただの、 「死」に気づいただけの、
死をおそれただけの鳥は、
けれど、微塵もそのおそれを感じさせない、 朗らかな声で、残していく 街の住人にそう言ってみせた。]
(105) miseki 2019/10/20(Sun) 21時半頃
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