215 【誰歓】エンドローグ
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でもまぁ、人間隠し事ないなんて奴いないだろうし、いいんじゃないの〜?
[軽い調子でそういって笑ってみせると、ふらつく少女>>72とそれを支える五十嵐が見えた>>73] オジサーン。いたいけな女子高生に手、出さないでよね〜?
[からかうようにそう言って笑って見せる]
(82) 2015/02/04(Wed) 00時半頃
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いえ、こちらこそすみません、無茶なことさせて
[頷き程度に会釈をして見せる。 ……続いて鳴った音>>81に、少し表情がほぐれる。]
……ああ、本当だ。お腹が空いた。 どうしてだろう。こんな、変な場所で、時間もわからなくて、ここだけ、取り残されてるみたいなのに。
[くすくす、と笑っても見せたが、依然として窓の外には、何も見えなかった。 何もない、というわけでもなく、見えない。無風。世界から切り離されているみたいに。]
食べ物はあるって、さっきの人たちが言ってましたっけ――
[先ほどのキャッチボール未満のやり取りを思い出す。 ――そんな時だっただろうか。やけに耳につく声>>80が鼓膜を打ったのは。]
(83) 2015/02/04(Wed) 01時頃
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[大人しそう。そう形容されることに、その言い方に、ほんの少しいらだちを募らせる。 もうそろそろ慣れても良い頃合いだと自分でも思うが、どうしても割り切れない。 おとなしくなんかないのに。ほんとうは違うのに、と。
それでも、受け流してしまおうと思ったはずなのに、続いた反応に、一気に顔が赤くなるのが、自分でも嫌になるくらいに分かった。]
だ、って、現実だって言われても、おかしすぎるじゃないですか ふつうに考えたって、こんな、ふつうの感覚も通用しないんじゃ
[そんなにこっちを見るなよ。 そうは言えないまでも、視線から逃げるように、紅潮した頬を隠すように、顔を背ける。
何がしたいんだろう、このひと。そう思う。 少し考えたが、答えは出そうにもない。 ひとつだけ思うのは、きっとこの人も、どう振る舞えば良いのか、周知している"上の人"なんだろうってこと。]
(84) 2015/02/04(Wed) 01時頃
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[ああ、もやもやする。 怒りにも振りきれない、諦観や自責の入り混じった感情が体の中に溜まっていく。 そんな感覚を覚えるようになったのは、いつのことだったか。
けれど、わたしだけじゃなくて、と思い返す。 さっきから、わざと揉め事でも起こしたげなこの人は、怒りを買っても当然なんじゃないかな、とか。
ぽろりと言葉が零れたのは、そんなことを少しでも考えてしまったからかもしれない。]
(85) 2015/02/04(Wed) 01時頃
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いちばん嘘ばかり言ってそうなあなたが、 その筆頭じゃないですか
[顔の赤みは引いていなかったが、横目でその目を軽く睨んだ。]
(86) 2015/02/04(Wed) 01時頃
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[返答は意外にも良い物だった。 もっと渋ることを想定して居たから、その事に少し驚いて、彼を見つめただろう。けれど、その視線が重なることは無くて。 視線を腕から手へと移す。太一が差し出した手は、薬物の症状からか細かに震えていた。 触り慣れない注射器を受け取っても、まだその震えは収まる気配はない。
その震えが気になって、視線の合わない彼と手を見比べる。
迂闊だと呟く声は、どこか投げ遣りにも聞こえて。>>76
躊躇いに瞳を揺らしながらも、その震えを自分の手で確かめるようにそっと手に触れる。 触れた事で、太一が驚けば苦笑を零して]
……薬の代わりっちゃなんだけど。 こうしてたらマシでしょ。
[空気を変えるように少し、声のトーンを上げる。 慰めのつもりで言ったそれは、きっと本物の薬にはならないだろうけれど。]
(87) 2015/02/04(Wed) 01時半頃
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[ ――良くないこと――
彼から預かったモノは、正しいか、誤りかで振り分けるのなら、 それは間違いなく後者なのだろう。
ただ、今の彼にそれを告げることは躊躇われた。 この閉ざされているらしい施設の中では、すぐに彼を病院へ連れて行くことも出来ない。
一時的に薬物を与えればこの手の震えも落ち着くだろうが……。 快楽と安寧を求めて、苦しみ、中には我慢できずに錯乱状態で暴れ出すこともあると聞く。
預かっても、良かったのだろうか。
一抹の不安が、瑞希の胸を過る。 彼の腕から見るに、薬物投与を何度も経験しているのだろう。 中毒者を簡単に更生できない事は、薬物に関して詳しくないものでも周知の事実で。 これからの彼の事を考えると、想像できない彼の苦しみを感じて顔を伏せる。]
(88) 2015/02/04(Wed) 01時半頃
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[ それでも、見過ごすことは出来なくて。
預かった注射器を携帯と同じスカートのポケットへと仕舞う。 ポケットの重みが少し増した気がしたのは、単にその重みか、はたまた気持ちから来るものか。
太一の震えが落ち着くまで手は離さずに。
ちらりと隣のあおいに目を向ける。 ひとまず、この事は彼女以外には知られないほうがいいだろう。
特に――
梶くんには、絶対知られちゃマズいよなぁ……。
そう考えながら、太一が落ち着くまでその場に居る事を選ぶ。 太一やあおいから声が掛かれば、会話を挟みながら。 自身より少し幼く見える彼女に、この事をなんと説明すればいいだろうかと頭を悩ませた。**]
(89) 2015/02/04(Wed) 01時半頃
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ミルフィは、時折、あおいへと視線を向けて、何か告げたそうにしている。**
2015/02/04(Wed) 02時頃
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[ふわり、と手の平から注射器の感覚がなくなって。 自分の心の支えだったものが、あっさりと奪われたことを知った]
……っ。
[未練たっぷりに、瑞希の手に収まった注射器を目で追う。そんな卑しい自分が嫌になる。情けない。こんなんだから、俺はまた]
(あー。この感覚。久しぶりだな)
[野球をやっている時はあんなに自分を囃したてて、持ち上げていた人々が。自分がやさぐれていくにつれ。段々と離れていき。軽蔑した目を向けるようになり。やがて見放される。 今度もまた、その繰り返しだ。 自分は期待を裏切った。だから、また]
……え。
[しかし次に訪れたのは。 非難の言葉ではなく。糾弾の罵りでもなく。 優しい、手のぬくもりだった]
(90) 2015/02/04(Wed) 02時半頃
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……なん、で。
[声がかすれた。どくん、と心臓が波打った。 信じられない、という目で。瑞希をまっすぐに見つめる。 やがて優しい言葉>>87をかけられれば、唇が震えて。 堰を切ったように、言葉が溢れた]
お、俺を軽蔑してれよ。こんなことやってるクズだぞ。 なんでさっきの見て、そんな優しくできるんだよ。 いったい、なに考えてるんだよ。
[泣き笑いのような顔で、一気に捲し立てる]
頼むから。そんなに優しくしないでくれよ……。
[後の方は、ほとんど消え入りそうな小さな声で。 尻すぼみに呟くと。下唇を噛んで俯いた。 右手の震えが治まるまで、瑞希は手を離さないでいてくれただろうか>>89。 縋りたい気持ちをぐっと堪えて、立ちすくんだ**]
(91) 2015/02/04(Wed) 02時半頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2015/02/04(Wed) 02時半頃
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[ 坊ちゃんの軽口には反応して見せず。>>80 次の句にはさすがに一言二言言い返したけれど。]
ははっ、残念ながら年下は好みじゃあないんでね。
[ それだけ言えば、少女の体を丁重に抱きとめたまま、 坊ちゃんにウインクを一度。]
――手伝ってくれてもいいんだぜ、坊ちゃん。
[ 飄々と付け加え、その場を後にしようと今度こそ、 ホールからつま先を廊下へと差し出した。*]
(92) 2015/02/04(Wed) 03時頃
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― 廊下 ―
[ 暫く前には、チアキチと通った廊下へと、もう一度。 からころと下駄の音を響かせ、男は足を進める。 抱き抱えた少女に意識はあっただろうか。 あってもなくても、件の柱の前(0:>>100)へ差し掛かれば、 ちらりと視線を遣る。 同行者が居ればその挙動に違和感を覚えたかもしれない。
少女を抱えた腕では触れることは出来ずとも、 それは間違いなく、数年前、男が刻んだ傷の跡。
それだけが確信できれば、それで、よかった。 廊下を歩く度にからんこんと鳴る下駄の音は、 少女を抱えているからか一人の時よりも重いもの。
暫しその場へ佇み、男は再び歩き出した。]
(93) 2015/02/04(Wed) 03時半頃
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― 和室 ―
[ 男が目を覚ましたのは確かにここだった。 簡素な和室。畳から漂うイグサの匂いは、張り替えて、 そう時間が経っていないことを示していた。
男は少女の肢体を畳の上へと横にすると、 きょときょとと周りを見渡し、何か上にかけるものはと、 探してみたが、見つからず。
羽織っていたパーカーを少女の上へとかけて、]
――安静に、してろよ。
[ 聞こえているかいないかはどうとして、 そんな言葉を少女へかけ。 和室の扉を静かに閉めると、あてどなく歩き出した。*]
(94) 2015/02/04(Wed) 04時頃
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[ そこまでに同行者は居ただろうか。 居たのなら少し探索してくると改めて告げ、 和室の更に奥。見える階段へと足を掛けた。
二階には何があったけなァ。
ぼんやりと薄い記憶を浚いながら思い出そうと試みる。 ――そうして、個室が幾つかあったはずだと思い至った。
現実離れした出来事が続き、少しばかり疲れている。 自己分析を行えば、疲労感を感じている事に気付く。
少し休むのもいいかと、 男は階段を軽快とは言い難い足取りで登り。 目に付いた木製の扉を開いて中へと入る。 6畳程度の和室に誰が敷いたのか布団が敷かれていた。
此処が誰かの部屋だとまで考えが至らず、 男は布団の上に身を投げ出すと半眼を覆う目蓋を引き下ろし、 闇の中へと意識を落とした。*]
(95) 2015/02/04(Wed) 04時頃
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― 現実と夢想の境界 ―
朝早くから重い荷物を背負って趣いては、理不尽な言葉を浴びせられる場所。 臨也にとって学校とはそういうものだった。
まるで軍隊か何かのように真っ黒な同じ服を着て、同じ鞄を持って。 センパイやセンセイという存在には逆らってはいけない。
誰も口にせずとも誰もが知っている暗黙の了解。 …だけれど、臨也は堪らなくそれが異質で異常なものに思えて厭だった。
教室の扉を蹴り開けて入るなり、クラスを担当する「センセイ」へ、
「――屋上行ってくらァ。」
告げるだけ告げて、可否も聞かず扉を閉める。 あとは廊下の端に位置する閑散とした階段を鼻歌交じりに登って、 立ち入り禁止の札のかかった屋上に続く鉄扉へ手を掛け、鍵も無いそこを開く。 そうして、校庭や町並みを見下ろす屋上の、――更に給水塔の上。 日当たりのいいその場所が臨也の指定席だった。
(96) 2015/02/04(Wed) 05時半頃
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何度も何度も出席が成績がと時には親すら呼ばれ、 話し合いの場が設けられはしたが、臨也は頑として定められたその部屋へは入らなかった。
…ただただ、退屈だったのだ。 既に頭の中にある知識を一時間近くも滔々と聞かされ続けることも、それを何度も繰り返すことも。 それに、狭い箱の中で他人サマがめいめい眠ったり喋ったりしているのを見ることも。
入学して暫くはそれでも退屈凌ぎと本を片手に椅子に身を屈めて聴講していたが、ヒステリックな女教師に気に入りの本を没収されてからとんと寄り付かなくなった。 教師の心情が理解できないわけではなかったが、よりによって珈琲を没収した本に零すとはどういう了見だと腹を立てたのは忘れ難い。…教師の顔は、忘れた。
本は一人の人間が丹精込めて作った一つの世界であり、それを覗く事で読者が作者の脳世界の一端に触れることが出来ると臨也は思っていた。 故に、知識ではなく世界を垣間見ることを欲して幾つもの本を読み漁るのが目下の日常であった、が。
日当たりのいい給水塔は程好く暖かく、眠気を誘う。 此処へ来るたび、――此処へ来る時だけは、臨也は無防備にも本を枕に寝てしまうのだった。
(97) 2015/02/04(Wed) 05時半頃
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『 …らしくん。――ごじゅうあらしくん! 』
そんなある日のこと。常と同じように日差しに微睡んでいた耳を煩い音が叩いた。 臨也の意思とは関係なく、覚醒を強いようとするその声。…女の声だということは理解する。何処かに幼さを残したそれは、きっと教師のものではないだろう。聞き覚えも、無かった。 それに、臨也の名前はごじゅうあらしではない。……そう読めなくはない姓ではあるが。
漆黒を覆う目蓋を気怠く持ち上げれば、春の日差しが眼球を撫でて何度か瞬いた。 陽光が眩しい為に常は開ききりの本を顔の上に被せて置くのだが、今はそれがない。 そして、それが、臨也を覗き込んでいる女の手にあると知った時、臨也は露骨な舌打ちをした。
「 ――…俺に、何か、用? 」
誰か知らないが、「センセイ」の差し金だろうか。――堪らなく、気に入らない。 感じる不快さを隠そうともせず、ぶっきらぼうに問いかけ、臨也は眠気の残る半眼を眇めた。
(98) 2015/02/04(Wed) 05時半頃
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固いアスファルトの上、起き上がった臨也は女の顔を睨め上げ、嘆息した。 恐らく眼前の女はそう珍しくもない所謂学級員タイプの女で、教室へ行こうだとか、ちゃんと授業を受けなきゃなんて、教師が言う事を繰り返しにやってきたに決まっているのだ。 今までが、そうだった。すげなく断り、すこぅしキツい言葉で追い返せばそういう人間は寄ってすら来なくなったものだったけれど。 だから臨也は殊更不機嫌を装い、対する女を見上げて、
「 その本、返してくれねェか? 」
女の手にある気に入りの本の一つ。――珍しくもその時は絵本だったか。…の返却を求めたきり、押し黙った。 人と交わることよりも、本を通じてその作者の世界を覗き見ることの方が余程好ましいと思っていた臨也にとって、人との会話はそうそう好き好んで行うものではなかったのである。
『 やーだ。返したら、 ごじゅうあらしくん、私と話してくれないでしょう? 』
にこにこと笑いながら女――柔らかそうにふわりと広がる茶色髪の少女は首を傾げて、言った。
(99) 2015/02/04(Wed) 05時半頃
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少女の正体は知らなかったが、初対面を契機として、少女は時折屋上へと訪れるようになった。 ――とは言え、昼休みや空き時間の僅かな間。臨也とは違って、少女は狭い箱庭の中で日常を過ごす人種だった。 煩わしく思いながらも、名前を名乗り、苗字は五十嵐(いがらし)であると告げると、少女は驚きと照れたような表情で、間違えてごめんねと謝った。
…そうして、代わりに聞いた少女の名前は、明日香(あすか)であると知れ。ついでにと苗字はとてもありふれたものであった。 個を殺すことを良しとしない臨也は、名前を聞き出したその時から少女の名前を呼称する事を選んだ。
明日香が何処で、臨也の名前を知ったのかは分からなかった。 彼女の首のリボンは臨也よりも一つ下の学年のもの。今時学校へ通わない人間や授業を抜け出して一箇所に屯する者など後を絶たないというのに。
一度、本人にそれを聞いてみたことがある。
『 空が見たくて此処に来てみたら、 たまたまリーくんが居たんだよ。 』
明日香はそう言って笑っていたっけ。その時には、臨也の呼び名はリーくんになっていたのだった。……明日香は、人にあだ名を付けるのが好きであったから。
(100) 2015/02/04(Wed) 05時半頃
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――そして、学校の端々を彩る桜色もすっかり見えなくなり、暫くして、騒々しい蝉の鳴き声も止み。 屋上も時々薄ら寒い空気が漂うようになった頃だったっけ。
『 リーくん、演劇に興味ない? 』
すっかり少女が屋上の一角に居ることに慣れてしまった臨也へ、そんな提案が持ちかけられたのはその頃のこと。 屋上から見下ろす校庭の端々にも、遠くに見える町並みの中にも、橙色がぽつりぽつりと日々混じっていく中、その言葉は想像だにしなかったもので。柄にもなく驚いたのを憶えている。
それでも、戯曲や演劇を鑑賞することが嫌いではなかった臨也は、興味があると答えたのだった。明日香に告げていないことではあったけれど、共働きの両親は深夜過ぎまで家に戻ることはなく、閑散とした家の中、七色の羽の鸚哥だけが長い間、男の話し相手であったから。 何時の間にか、鸚哥相手に戯曲の一節を郎じてみたりなどすることが臨也の密かな趣味であった。
(101) 2015/02/04(Wed) 05時半頃
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【 とある少女の記憶 】
少女がこの世に生を受けてまだ五年かそこらの話。
『 アンタなんか欲しくなかった。 』
度重なるごとに母親はそう少女へ告げるようになった。男の子がよかった。アンタなんて、要らない。 事あるごとに少女へ告げる母親の顔は、能面のようにのっぺらぼうだった。
それでも、毎日食料は与えられていたし、例え、背中に煙草の火が幾度も押し付けられようとも、母親の機嫌次第で殴られ蹴られたとしても、少女にとっては母親が全てで、見捨てられては生きてはいけないと、そう、思っていた。 父親というものは少女の世界には存在していなかった。小学校へ入ったばかりの頃、「お父さんって何?」と他の生徒へ聞いて、笑われたくらいだ。
だから、それ以来父親の話はしなくなった。そうして、顔以外の場所に火傷に青痣とが増えていく毎日。やがて少女は自分の事が嫌いになっていった。 母の言う通りの"いい子"で居られない自分。人に好かれることもなく、ただ影のように生きている自分。 ――ただ、それでも、自分が自分では無くなる瞬間。自分では無いものになる事が出来る演劇はとても、――とても好きだった。
(102) 2015/02/04(Wed) 05時半頃
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だから、だろうか。何の気まぐれか、立ち入り禁止のはずの学校の屋上にふらりと訪れた時に知り合った少年。 その少年に、演劇について問いかけてみたのは。
ただ、自分と同じ価値観を持つ相手を探したかった。 ――そんな無意識も、少女は知ることがないまま。
(103) 2015/02/04(Wed) 05時半頃
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― 何時かの発端 ―
少女から問いかけられた言葉に、臨也は好きだよと即答する。 役を演じることも、演じている人間を観察することも、臨也は嫌いではない。…寧ろ、好きな部類に入る。
『 演劇部をね、作ろうって思ってるんだ。 』
だから、そう提案を受けたときには大して間を置かずに承諾した。 たった二人の演劇部。――それでも、志を同じくするものが集まるならきっと楽しくなるのだろうと。 詰まらないことも、退屈なことも嫌いな臨也であったが、きっと、この少女とならば退屈しないのだろうと臨也は当てのない確信を得ていた。
(104) 2015/02/04(Wed) 05時半頃
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果たして、少年と少女の作った演劇部は宣伝を打つこともせず、細々と戯曲の一場面を演じたり等して活動をしていた。
勿論、人数の極少数である部活に部費など下りる訳でもなく。――それでも、作り上げられた精巧な世界に触れ、常の自分から脱却して別の人物に成ることは楽しかった。
やる気のない顧問のセンセイも、なんだかんだと気を払って古びた部室を一つ与えてはくれ。屋上へと入り浸っていた臨也も次第にそこへと居場所を変えた。 閉じた世界。一人の少年と少女は「現実の自分とはかけ離れた存在」を幾人も幾人も小さいその箱の中で演じ続けた。
そうしているうち、少年は殆ど教室という狭い箱庭に顔を出さなかった弊害でそのままの学年に留まる事になった。 知っている知識ばかり。強制的に受けさせられていたテストとかいう代物は満点を取ることは容易であれど、狭い箱の中に自分を閉じ込めている事が臨也には耐えられないことであったのだ。
何時か、別の時に誰かに語った(>>0:264)ように多くの個に埋没することを臨也は許容できなかった。
(105) 2015/02/04(Wed) 05時半頃
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そうして、幾らか時が過ぎ。 何処から聞きつけてきたのか、臨也よりも年上の男が一人。ある夕暮れのこと。 入部届けと乱雑に書かれた紙を一枚、持ってきてにかりと「藤堂晋也」と名前を名乗った。
『なんや、おもろそうな事してる部活がある聞いてな。 俺も混ぜてくれや。』
第一声は確かそんな文句。独特のイントネーションで話すその男を拒否するでもなく、臨也も明日香も受け入れることにした。
二人では演じる演目には限界があったし、演劇は人が多いことに越したことは無いのだから。
その場で入部を許諾すると、臨也にも明日香にもセンパイというものに当たる男はよろしゅうな。と言ってにかりと白い歯を見せて笑ったのだった。
(106) 2015/02/04(Wed) 05時半頃
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それからは、演じる演目も増え、ビデオに演じる様子を記録したりと活動の幅も増え、放課後に一緒に帰宅するなんてことも増えていった。 「合宿」という言葉は誰が言い出したんだったか。一度、泊りがけでみんなで遊びに行かないか、なんて演技の練習を名目として、誰かが提案したのだった。
――それでも、部費も無い部活の合宿ではそうそう高い設備の場所に止まるわけにも行かず。 お世辞にも綺麗だとは言い難い隙間風の頻繁に吹き込む古い合宿所へ泊まりに行く事になったのだった。
元々が放任主義である臨也の両親は反対もせず、必要資金を渡しては行ってこいとただ一言告げただけだった。
(107) 2015/02/04(Wed) 05時半頃
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合宿所はそう広くもなく、設備も古いものだったが、偶然にも他の利用者は居ず。 深夜まで話を続けていても咎めるものもなく、非常に楽しいものとして記憶のそこに残っている。
『 ねぇ、花火。しない? 』
それを提案したのは明日香だったか。合宿も最後だというその日、三人は明かりも疎らな合宿所の近くの空き地で花火をして、そうして暫くの三人だけの合宿は幕を閉じたのだった。
(108) 2015/02/04(Wed) 05時半頃
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演劇部として実のある合宿ではなくとも、それまで人と殆ど会話を交わすこともなく生を送ってきた臨也にとって、それは忘れられない記憶になった。 ――それでも、そんな日々は長くは続きはしなかった。
「 藤堂センパイが事故に遭った 」
そんな話を耳にしたのは合宿も終わって、僅か数日が経った頃。毎日のように顔を出していた彼が部室に姿が見えなくなって、案じはすれど、元々が気儘な人であったから、深刻な心配はしていなかった。 事故がどの程度のものであったのか、臨也は知らない。藤堂は自分の事を殆ど語ることがなく、ふらりと現れてはいなくなる。そんな人であったから。
ただ、風の噂で、もう彼の飄々とした顔を見ることは出来ないのだと知った。――知って、しまった。 それでも、そのことを知った明日香が泣きじゃくり、暫く食事も喉を通らないような状態になり、それを間近で見ていたから、臨也は涙一つ流すことが出来なかった。 ただただ、明日香が立ち直れるようにと、尽力しているうちに、自分が悲しいのか、泣きたいのか、それすら分からなくなった。
(109) 2015/02/04(Wed) 05時半頃
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しかし、時の流れは残酷で――ある意味、救いでもある。 それから幾年が経ち、臨也の黒い学生服も、明日香のセーラー服も、どちらも思い出の底や箪笥の底へと仕舞い込まれ。 古傷が時折じくじくと痛むだけになり、藤堂センパイの顔も朧のように思い出すことが難しくなり始めた頃。 臨也も明日香もそれぞれ別の学校へと進学し、そうそう頻繁に会うことも無くなっていった。
将来の夢を語る程にははっきりと進む方向が決まっていたわけではなくとも、何となく先へ先へと進んでいた。 きっと、このままレールの上を進み続けて大人というやつになるんだろうと臨也は思っていた。
(110) 2015/02/04(Wed) 05時半頃
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【 とある少女の記憶2 】
少女が偶然に出会った少年に好意を抱いたのは偶然だったかもしれないし、必然だったのかもしれない。 その少女はそれまで異性と関わることが殆どと言っていいほどになかった。 ――…それに、少女と話したがる異性など滅多にいなかった。
長い前髪で両目を隠して教室の中では目立たないように、目立たないように。 何年も何年もそうして息を殺して生きてきたのだから。
だから、自分と普通に接してくれる五十嵐臨也という少年は、とても珍しく、少女には嬉しい存在だった。 それがやがて仄かな恋愛感情へと変わるまで時間はかからなかった。
彼と顔を合わせるときはヘアピンで長い髪を止め、顔を隠さずに向き合った。 二人で演技の練習をしている時が、一番、幸せだった。
(111) 2015/02/04(Wed) 05時半頃
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