20 Junky in the Paradise
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― 回想 ―
はじめまして? 其れとも久し振り? 莫迦だから素敵なヒトしか覚えられないの
[以前にも顔を合わせた事があったスティーブンの顔を、 阿婆擦れは覚えておらずそんな風に挨拶した。 従兄の悪友と遊ぶのに忙しく彼を気に留めていなかった。
逆に人の記憶に残りそうなスティーブン特有の訥る口調や、 時に不快感を与えそうな張りついた愛想笑いにも、 負の感情すら擁いておらず遊び相手候補への愛想よい応対]
何もなくて退屈してたの アタシと遊びましょ
[誰彼へ掛ける誘い文句を囁きスティーブンに身を寄せる。 不器用な彼が女の抱き方を覚えはじめるまで、 幾度かはそんな会話が繰り返されたのかも知れない]
(*30) 2010/07/07(Wed) 18時半頃
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コレをアタシに?
[スティーブンに贈られた花束を抱えて不思議そうに、 或いは鞄や服の包みを贈られた時は、 クリスマスプレゼントを前にする子供の様に無邪気で]
ありがと
[折々にスティーブンが覗かせていたであろう想いには、 目の前に並ぶ贈り物に夢中で気付かぬまま。 だから彼がアイを囁きだした折には眉根が寄った。
其れでも暫くは聞き流し目を瞑ってもいただろう。 スティーブンの奮ったであろう勇気も、 息衝く想いも受け流しながらも快楽を貪っていた]
(*31) 2010/07/07(Wed) 18時半頃
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[下心を擁く男が女を誘うのと其の理由は大差なく、 仮令デートに誘われたとて断りはしなかった。 貪りあう快楽に徐々に熟成されてゆくものは互いに別。
スティーブンに明確なプロポーズをされた時か、 或いは其れを何度か仄めかされた時か。 何時ものように顔を合わせると何時ものように口を開く]
別れましょ 付き合ってた気もないけど
[スティーブンにとっては誘い文句と同じく唐突だったか。 少なくとも別れのおもさは等分ではなかっただろう。 けれど着ていた服が彼の贈り物だったのは*偶然ではない*]
(*32) 2010/07/07(Wed) 18時半頃
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『もっと』
[柔らかいくちづけに心が躍り上がるよう 優しく与えられるものはその先を予感させるから。]
もっと…
[それが──けして、確約なわけではないのだと けれど、男は気づかない。]
もっと……
[もっと。と、褒美に歓びを覚えて先を強請る 「愛情」と、綺麗な大義名分を被せられた慾は 底なし沼のようにより多くを求めて縛ろうとする。]
(*33) 2010/07/07(Wed) 20時半頃
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[ノーリーンに与える手で褒美を得られるなら、 その手を休める事はなく──ただ、]
… … …
[ホリーとの様相を気にしていた耳に、 >>*29 紛れ込む言葉にぴくりと肩が揺すられた。
ノーリーンに与える言葉が途切れるのは 肌へのくちづけで誤魔化しても、 挟まれるのは、聴こえた──"特別待遇"への長い沈黙。]
(*34) 2010/07/07(Wed) 20時半頃
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[硝子の奥の目は、目の前だけを見詰める。 眼鏡のフレームの中に覗く世界だけに、 視野が狭められてしまったかの様に。]
………、こわ、こわさ…
壊さ 、さな さなきゃ。
[沈黙の以後。口内で繰り返されていた篭る声が 外に出されたのは、 与えられた"使命"をなぞる言葉]
こわ 壊さ、さなきゃ…… せ 世界、全部。
(*35) 2010/07/07(Wed) 20時半頃
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とく…"特別"は、
ひと ひとりで い、いいんだよ。
[他の特別は要らない、と、男の目は、 目の前にはいない──*サイモンを網膜に描く*]
(*36) 2010/07/07(Wed) 20時半頃
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─ 回想 ─
[スティーブンが付き合いはじめたは、 彼女よりもサイモンが先。 大学の講義の一部が同じであったとか、 その程度の縁からはじまり気まぐれに付き合いに呼ばれ なし崩しに悪友たちの集いの末席に座るも、 いつもは壁際によって中心には寄らない。]
あ、う、うん。
は はじ、はじめまし、て……
[だから、サイモンの従兄妹であるマーゴを見たことはあって挨拶をしたことがそれより以前にあっても。最初に誘いを声を掛けられたときには抗議をするでもなく、愛想笑いで挨拶を繰り返し]
えっ
[マーゴにしてみれば、誰でも構わないからの対応であれど、女性から男として扱われる事の殆ど無かったスティーブンにしてみれば、寄せられるマーゴの身体はやわらかくて熱く。きっと、それは、なによりの誘惑だった。]
(*37) 2010/07/07(Wed) 23時頃
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[知らなかった女の身体の味を教えられて、 貪ることを恐れる臆病な性質は、けれど、 白く上質なやわらかい女の身体を与えられたことで、 欲しがる事を赦されたように──錯覚したのだろう。]
う、うん。 マーゴに、も…貰って…ほ、欲しい、な
[花よりも、服や鞄。そういうものの方が、 贈ったときに喜んでくれるように感じれば、 そう学習をして 次はより彼女が喜ぶものを、と貢物を買い漁れば そのうちに財布も空になる。]
(*38) 2010/07/07(Wed) 23時頃
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[それでも。
そのうちに、財産や学業や自分の身を崩し出しても、 己の払った代償が、彼女を繋ぎとめてくれる、と、
そう信じていられる間は、 男は、きっと、とても幸せそうだった。]
(*39) 2010/07/07(Wed) 23時頃
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[幾度目の誘いか、白くやわらかな肌に顔を埋めて]
── あ、愛してる。 [欲しいものは教えれば覚えるけれど 自分の欲ばかりに曇る目は、 彼女が──嫌がることには鈍感で 同じ想いをのせた言葉が返らない意味に気づかない。]
マーゴ。
き きみに、 わた …渡したいものがあるんだ。
[だから。]
(*40) 2010/07/07(Wed) 23時頃
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[個人的に会いたいと誘いをかけて、 その日。
男が懐に忍ばせていたのは、 オーダーメイドの、揃いの指輪。
贈り物の服を着てきた彼女が、 いつもどおりに口を開いて]
…う、え。
[彼女を繋ぎとめてくれると信じていた贈り物を着て、 別れの言葉にぽかんと間抜け面を晒すことになる。]
(*41) 2010/07/07(Wed) 23時頃
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["どうして"、"なぜ?"──"わからない。"と、
その顔にわかりやすく書いて]
(*42) 2010/07/07(Wed) 23時頃
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[そうして、 今日こそ受け取ってもらおう、と 意気揚々と取り出した、
小さな箱だけが、
──急落下した心地の *男の掌の上に、取り残される*。]
(*43) 2010/07/07(Wed) 23時頃
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[ こっちに ]
[ 堕ちて ]
[ おいでよ ]
(*44) 2010/07/07(Wed) 23時半頃
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[良識ある女中が快楽に堕ちて
屋敷の良識が壊れてしまえば、
罪悪感を刺激されることも無く楽になれる]
こわ…こわし、 … 壊し、ちゃえば
(*45) 2010/07/07(Wed) 23時半頃
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ほ 他の、もの、 ものが
… な なけ、れば……。
[繰り返し繰り返し繰り返して、繰り返すたびに視野の端から黒く塗りつぶされて──見えるものが、狭まっていく。]
(*46) 2010/07/08(Thu) 00時頃
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[ 見たいものしか、残らない。 ]
(*47) 2010/07/08(Thu) 00時頃
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