162 絶望と後悔と懺悔と
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―回想・キャロライナについて―
[初めて二人でお使いに行く事になった。>>118]
[言動がとろとろしている所為で、壁に穴が開くような やんちゃな遊びにはなかなか追いつけない。 そのせいか、ほんの一時期、男児たちの遊びを ぼんやりとみているだけだった事がある。丁度その頃]
……キャロ君。
[四つ角で急に立ち止まって、先を行く少年を呼び止めた。 明之進の顔はキャロライナが進む方とは明後日を向いている。
視線の先を、茶色い猫がのんびり歩いていた。
早く来ないと置いてくぞ、と一蹴された。
自分より重い方の買い物袋を抱えたにんじん色が遠ざかり、 少し速くした足取りで彼に追い着く。]
(195) 2014/02/08(Sat) 19時半頃
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――キャロ君……帰、ろう?
[当たり前だろ、と言った風に返されたような記憶がある。
後ろを振り返った。やっぱり、早く来いと呼びかけられた。 しばらくうろうろと視線を彷徨わせたが、 最後までキャロライナは明之進を置いて行かなかったし、 日がとっぷりと暮れてから二人でただいまを言った。
因みに養母さんからお小言をもらうのも二人一緒だった。]
……ごめんなさい。
[明之進がぼーっとしてたからだ、と言われ。 ひとのせいにするんじゃありません、と言われ。 キャロライナと養母さんが言葉を飛び交わさせる中間で、 ぺこん、と頭を下げた。
次の日、彼が飴玉をひとつくれて、 それから男児たちの遊びも見ているだけじゃなくなった。*]
(196) 2014/02/08(Sat) 19時半頃
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[なぜなら、他の子と違い、サミュエルには、確かに幸せな家族の記憶があったからだ。 畑で野菜を作っていた両親の記憶があった。
それが、付火で家がなくなり、親も死に、 残ったサミュエルを誰も引き取りたがらないとき、 誰の世話にもならないと、ひとり、この帝都にきた。
自然と裏の町の浮浪児の中に入り込み、盗みのグループに入ったのは、その足が認められたせいでもある。 リーと会った時、最初は訝しそうにこちらはみたのに、リーはにやにや笑っていたように見えた。
最初は言葉の訛りがとれないから、あまり人と喋りたくはなかったけれど、 段々そんなこと構わなくなってきたのは、 確かに、友達ができたからだと思う]
(197) 2014/02/08(Sat) 19時半頃
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『いいがら、野菜をぐえ』
[口癖のようにそういうのは、 おそらくは、自身の記憶もあったかもしれない。 何度口すっぱくいっても食べないリーに呆れながらも、 食事当番の時には、なんとか食べれるようにできないものかと、そんなことを考えるくらいに、
サミュエルはあっというまに、この生活に慣れていった。
周がきた時も、思うことは変わらない。 やさぐれてみえる周だが、その実、小さな子からしたわれているのもみれば、最初はびっくりしたが、 それが彼なのだな、と思って、接してきた。
ちなみに密かに周が企んでいたらしい襲撃事件は、知らないままだ]
(198) 2014/02/08(Sat) 20時頃
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[任せたまえ、と告げる声は頼もしく思えた。>>*67 それを信じて、じっとして体を休める。]
[次に目を覚ましたのはリカルダだった。 珍しく(自分なりに)ぱっと顔を上げてそちらを見る。 彼女について、最後に見たのは背後に迫る危機だったから]
リッキィ……大丈夫?
[急いだつもりで、彼女のベッドに行こうとした]
(*71) 2014/02/08(Sat) 20時頃
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2014/02/08(Sat) 20時頃
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―むかしばなし― [リカルダと名乗る少女が、歩きながら差し出す右手に当惑する。>>192 この手は誰かを殴り、傷つけることしかしてこなかった手だ。 誰かの手を取るなどしたことがない]
――……。
[自分の手とリカルダの手にそれぞれ一度、視線を向けてから ようやく、小さな手を取った。
言いようのない不思議な気分を抱えて、孤児院への帰路を*辿った*]
(199) 2014/02/08(Sat) 20時頃
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卑怯って…ちが…
[自分だけ。その言葉にはっとする。 自分は連れて行ってくれと言ったのだ。 自分は殺されないとどこか思っていて、 他の子供たちの生死間で考えられなかったのも事実で]
……そんなこと、ないし。 俺、友達を…助けたくて…
[腕を引き離そうとつかみ返したけれど、 その言葉にうなだれるだけ さげすまれるような目に、我慢していた悔し涙が滲んだ・けれど]
じゃー、そのガキに何しようってのさ、 いい大人のくせに。 悔しかったらアンタも取り入ったらいいじゃんか。
(*72) 2014/02/08(Sat) 20時頃
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[始祖の前を塞ぐ者はいない。 その横に並ぶ者も。 僅かに下がって付いて来るのはホリー>>*50くらいだった。 自然に生まれた暗黙のそれは力の差でもあった]
年齢も手ごろだ。 戦士として育ててもいいだろう。 彼らの手で、嘗て彼らを助けようとした守護部隊の 息の根を止めさせるのも面白そうだ。
[その守護部隊に雛達の生き残りが1羽でも混じっていれば もっと楽しいのだが、と付け足したが。 それが現実になると知るのはもう少し先]
(*73) 2014/02/08(Sat) 20時頃
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ハッ、化け物のお気に入りとやらのおともだちかよ。 そのおともだちを助ける為に誰を売ったんだ!?
親か?教師か?嫌いな奴か?
[子供相手にムキになっている事を突かれて更に逆上する]
俺はな! 俺達人間はな! てめえみたいな悪魔とは違うんだよ!!
[怒りに任せ、家畜は首を締めようと手を伸ばした]
(*74) 2014/02/08(Sat) 20時半頃
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確かにそうですわね。
まともに戦えるのが、私とお父様だけですもの。
[そんな事を言いながら。 守護部隊に雛の生き残りが居ればと言う言葉には頷いていた。
自分に最後まで刃向かおうとしたサミュエルと言う雛。 彼が育っていればさぞ良い戦力になるだろうと。 口には出さないがそう考えていた。]
楽しみですわ。
(*75) 2014/02/08(Sat) 20時半頃
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…………明にーさん?
[とっても知ってる声が聞こえたけど、僕はまだ目を開けられないでいる。>>*71 僕が思い浮かべた光景の中には明にーさんが僕らを庇って切り裂かれたところも含まれてる。 もし明にーさんがあの時のまま、赤いままだったら……?]
(*76) 2014/02/08(Sat) 20時半頃
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[答える前に首に手が伸びて来た時、今まであげなかった悲鳴があがる。 …昔、父親にされたことだ。一瞬それがフラッシュバックしたからだ]
「お前が殺したんじゃないのか。自分だけ逃げやがって!」
売ってなん、か……
[絞められて、息苦しさに涙が溢れてくる。「悪魔」「人間」 どっちがどっちで、どこが違うんだろう]
うる、せぇ!ただの人間のくせに! 俺に手ぇだして、あいつに殺されてもしらねぇぞ!
[恐怖感になりふり構っていられない。 逃げられるなら…生きるならなんでも利用する。 暴れしながら口にした言葉に僅か顔を青ざめさせたけれど]
(*77) 2014/02/08(Sat) 20時半頃
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サミュエルは、肩の痛みと腹の痛みに耐えている。**
2014/02/08(Sat) 20時半頃
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――リッキィ。
[枕元につくと、己を呼ぶ声がした。>>*76 長く吐く息が零れた。 閉じた瞼の奥で、瞳が微かに揺らぐのをつぶさに見入る]
……僕たち、「生きている」って。
[直円の言葉を繰り返して伝える。]
リッキィ、大丈夫? 痛い、ところはある……?
(*78) 2014/02/08(Sat) 20時半頃
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記者 イアンは、メモを貼った。
2014/02/08(Sat) 20時半頃
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[雛鳥の過去や心など関係なかった。 関係あるのは、彼が始祖のお気に入りだと言う事]
くそがっっ………。
[上げた悲鳴>>*77が合図だった。 煩い口を黙らせようと、首を絞める手に込めた力が…抜ける。 雛鳥の眼前で、家畜の首が真後ろに折れた]
『立場を弁えろと言った筈だ』
[監視していた吸血鬼の忠告を聞く筈の家畜の命はもう無い。 雛鳥が口にした通り、報いを受けたのだ]
『…………』
[監視の吸血鬼は雛鳥に怪我が無いのを確認すると 忌々しげな色を隠しもせず、一礼して下がっていった。 そしてまた静寂だけが廊下を支配するのだった]
(*79) 2014/02/08(Sat) 20時半頃
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―始祖の城・雛鳥達に与えられた巣箱の中、で―
[零瑠の両の瞼は降り、未だ眠りに着いたまま。 日頃は左を下に、心臓を庇う様にして寝ているのに。 今は仰向けになり、胡桃色の睫毛が天井を向く。
顔や髪は綺麗に拭われ、血を被った跡など耳の内側にすら残されて居なかった。服も新しいものに変えられているのは、些細な事で意識を手離させない為であろう。
紅が良く映えるよう、それは真白な服。*]
(*80) 2014/02/08(Sat) 21時頃
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早速愚か者が出た様だな。
[静寂が支配する城では悲鳴がよく響く。 覚えたての囀り>>*77が聴こえて冷笑を浮かべた。 贈るのは雛鳥を鳴かせた相手。 監視は付けてあるので何も心配する事は無い]
雛鳥達は全員お目覚めか。
[囀りが聴こえても、方向を変える事も足を止める事も無い。 雛鳥達の仮初の寝床へと辿り着くと中の気配を探る]
(*81) 2014/02/08(Sat) 21時頃
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ひっ…!
[首が真後ろに折れた瞬間を見てしまった。 ありえない方向に曲がった首がそのまま元に戻らない。 手は放されて床に落ちた。 静かな言葉を落とす吸血鬼の眼は冷たくて何も返せなかった]
う、ぅ……うわぁああああああ!!!!
[あの血まみれの現場よりもある意味衝撃的な場面だった。 人とはこんなに静かにあっけなく死ぬのだと 静寂を破るような大声で叫んだ後、 自分は今来た道を情けないほどみっともない姿で逃げ戻った タイミング的にあの金髪が来るちょっと前のこと]
死ぬ…殺される…殺される殺される殺される……
[何をきかれても、これだけしか言葉にできなかった] y
(*82) 2014/02/08(Sat) 21時頃
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―回想・サミュエルについて―
[自分と同じ歳の子が来た、と養母さんから聞いて、 実はちょっと期待していた。 仲良くしてあげて、とも言われていたものの、 明之進が試みた行動が功を奏していたかは今でも不明だ。]
……これは、なに?
[指差した緑色の苗。 野菜を丹精する手つきを見ているのが興味深かったのを 今でも覚えている。>>194 身の上話も、そこで聞いた]
(200) 2014/02/08(Sat) 21時頃
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お母さん、が……病気で。
[死というものをきちんと理解したのは、もっと後からで]
お父さん――? は、いない。
[父というものの存在を知ったのも、孤児院に来てからだ。]
お母さんは、きれいで、優しい……かった。
[母のことを、少しずつ過去形に出来るようにもなった。]
……、……
[そこで懐に手を置き、少し考える。 父というものの存在を知って、思い出したのは この形見の手鏡を見つめて、母が誰かを呼んでいたこと*]
(201) 2014/02/08(Sat) 21時頃
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僕たち……、生きてる? 生きて、 〜〜〜っ。
[僕は近くまでやってきた明にーさんに手を伸ばそうとする。痛くなって途中で止まるまで。>>*78 手さぐりするように手の指だけ動かしたら何かに触れたかな]
明にーさん、良かった……。生きてて、よかった。
[僕のふたつの眼には明にーさんの顔がしっかりと映ってる。泣いて視界がぐしゃぐしゃになっても、にーさんをちゃんと見たって事実はかわらない。 よかった]
僕は、だいじょうぶ。それよりにーさん、起きてて……いいの? みんなは、………アヤは!?
[せめて涙拭いてから訊いた方がよかったかな。でももう遅い]
(*83) 2014/02/08(Sat) 21時頃
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明之進は、アヤワスカ達のことが脳裏をよぎった。
2014/02/08(Sat) 21時頃
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その様ですわね。
[トルドヴィンの声に頷く。
囀りは彼女の耳にも届いていたのだった。 監視役の吸血鬼に何が起こったのかと聞けば、家畜が雛鳥に手を出そうとしたと聞いて笑みを見せた。
監視役も、短気を起こせば同じようになると優しげに告げる。 その言葉に監視役の中には嫌な顔を見せた者も居たようだった。]
(*84) 2014/02/08(Sat) 21時頃
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[リッキィは痛そうな顔をする。>>*83 動いている指に、そっと手を添えて握った。 こちらの手はまだ熱いままだが、彼女はどうだろう。
泣き出してくちゃくちゃになってしまうから、 少し迷って、着物の袖で拭ってみるものの、 続いた問いには答えられない。]
――――あ……絢矢、は
[解らない、と、唇が戦慄いた。]
……ごめん、なさい。
(*85) 2014/02/08(Sat) 21時半頃
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―むかしばなし― [孤児院にも大分馴染み、孤児達に向ける感情も変わってきた頃。 『読書会』とやらで知識を仕入れてきた直円が、孤児の誰かにどこかの国のことや陰謀論を熱く語るのを、聞くともなく聞いていた]
陰謀なぁ。 直円のやつ、折角利口なのに……勿体ねえ。
[周はよく分からない事柄を延々と述べる様子に、溜息交じりに零した]
(202) 2014/02/08(Sat) 21時半頃
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[けれど直円の知識に対して貪欲な様子や、難しそうな本を読んでいることには素直に感心する。
何しろ自分は無学の極みで、まともに読み書きなど出来やしないのだから。 ふと、零瑠に字を教わっているのか、読めた書けたと喜ぶ年少組の笑い声が聞こえてきたから]
――俺、もしかしてチビ共より、馬鹿なのか?
[恐ろしい事実に思いが至った*]
(203) 2014/02/08(Sat) 21時半頃
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落胤 明之進は、メモを貼った。
2014/02/08(Sat) 21時半頃
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― ゆめ ―
『――――。』
[穏やかな声で名を呼ばれ、男児は目を開けた。顔を上げて姿勢を正す。訪れを待つ間にうたた寝してしまったようで、濡れた口許を慌てて拭う。
畳上に白い布が敷かれ、次々と反物が運ばれてくる。人の出入りが多い中、男性と男児だけが並んで正座して居た。机に面した男性の手元では、硯と刷り合わされ水に溶けた墨が海に流れていく。]
『準備が出来ました。では―――どうぞ』
[女の声に促され、男児は1つの色を選ぶ。 初めは赤みの紫。]
『あゐかちたるをききやうといふ、赤みかちたるを、あやめと、となふ』
[細筆がゆっくりと半紙の上を滑り、2文字を顕す。―――『菖蒲』。]
(204) 2014/02/08(Sat) 21時半頃
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[白い天井の病室で、安吾と話した時か。 助けられなかった自分が、許せなくて唇を噛み締めながら呟いた。]
僕は、年上なのに。 男なのに。
[大人で、しかも訓練を受けた隊員たちもやられた。 だから仕方がないと言われた。
でも、そんなことはどうでも良かった。 伸ばした手が届く範囲は、とても狭くて。]
(205) 2014/02/08(Sat) 21時半頃
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[僕の目の色に似ている。そう呟いて次に差した色は、暗い青味の緑。]
『したそめをこんにてそめて。うへにかりやすにて五六ぺん程つけ。右とくさのごとくに染申候』
[読めるかと問われても『天鵞絨』は読めずに首を傾げる。 男性の指の先に、暗い灰味の緑。 あれの方が似ていると『革色』を綴る。
『黒橡』『蜜柑色』『紺鼠』――…
色の漢字を書いた紙が部屋に散らされていく。**]
(206) 2014/02/08(Sat) 21時半頃
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―孤児院のある日―
[帝都の中央を覆う空は鈍色。何れ来るだろうと思っていた雨雲は予想よりも早い。>>151]
あぁ……しずかに、降っているなぁ。 リッキィ。洗濯物仕舞うの、手伝ってくれる?
[頭に手を置き、軽く撫でて訊ねる。 首を振るような子ではないと思っていても、頷いて欲しくて。 文字はそれから、と文鎮で紙を留めた。]
きぼう……。リッキィは、何かお願い事があるかい?
『ねがい』を二つ重ねて『希望』ができる。ただ望むだけでは足りないんだよ、きっと。
[書き順を覚えられるように、紙と筆が立てる音は雨音よりも静か。書き終わると表情を緩ませ、リカルダが覚えるまで、何度でも何度でも『希望』の文字を書き綴る。 髪に残っていた雨粒がぽたり、1枚の紙に落ちて墨を滲ませた。
『きぼう』の漢字を書いた紙が部屋に散らされていく。**]
(207) 2014/02/08(Sat) 21時半頃
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[その沈黙を破ったのは、理依が駆け戻ったこと。>>*82 何事かと視線を向けると、出て行った時とは真逆の 凍りついた蒼白の顔になって見える。]
理依君……
[そちらへ体が傾きかけて、リカルダを振り返る。 しばし二人の間で視線を彷徨わせて、 少女の指を、きゅっと握った。]
(*86) 2014/02/08(Sat) 21時半頃
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[大きくなったら。 強くなったら、手が届く範囲は広がるだろうか。
助けられなかった彼らも、助けることができるだろうか。 行方が分からないなら、死んではいない。 死んでは、いないのだ。そう信じて。
死んでいなければ。もう一度会って、手を伸ばして。
また、一緒に暮らしたい。]
(208) 2014/02/08(Sat) 21時半頃
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