142 紅月の村【人狼vs吸血鬼RP】
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― 廊下 ―
[さて、サミュエルはどう答えたか。 家へと帰るというベネットを送り出せば、青年はすんと鼻を鳴らす。
ベネットの置いて行った果実。 熟れた葡萄の放つ香りに目を細めれば、青年は早速葡萄を食べようと踵を返して台所へと戻っていった。]
(9) 2013/08/31(Sat) 00時頃
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― 台所 ―
[台所に入った青年は、棚から皿を取り出して葡萄を乗せた。 紅茶入りのポットはまだ温かい。 茶葉を捨てておいて良かった。そっと安堵の息をつく。
以前に入れっぱなしになったまま客の応対をして、酷い味になってしまい。 その時は折角の茶葉を無駄にしてしまったと後悔して、全部飲み干した。 本来の風味が損なわれたあの味は、忘れたくとも忘れられない。
ポットを傾けてティーカップに注ぎいれれば、透明な琥珀の水色が白い器を満たす。 サミュエルが残っていたならば、もう一つ。]
(19) 2013/08/31(Sat) 00時半頃
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[砂糖の容器を取って来て机の上に置き、引いた椅子に腰掛ける。―椅子の数は三脚。 それは父母がこの世を去っても変わらなかった。
青年の紅茶の飲み方は砂糖を一匙。牛乳は気分で入れる。 今日は砂糖のみで飲む事にした。
皿に乗せた葡萄を一粒口にすれば、瑞々しい果汁が口に広がった。 果物は好きだ。 調理せずに食べられるし、甘いから。
逆に肉は好きではない。 何かと差し入れをしてくれるおばさんには悪いが、進んで口にしようとは思わなかった。 そんなだから痩せているのだ、とよく言われるが、青年はそれには困ったように笑うのみ。]
(21) 2013/08/31(Sat) 01時頃
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今年の葡萄も見事なものだな。
[そう言いながら口許に笑みを浮かべ、もう一粒口にする。 サミュエルが共にあれば、ど う ぞ、とゆっくり口を開いて彼にも葡萄を勧めるだろう。
青年が自分から話す事は少ない。 物音を立てる者のない静かな家の中で、時折聞こえてくる雑音に耳を傾け。
青年は葡萄の粒を食み、ティーカップを傾けながら、ぼんやりと視線を窓の方に向ける。**]
(23) 2013/08/31(Sat) 01時半頃
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[>>34自分の誘いにいつもの仕草で応じるサミュエルに、青年は笑みを浮かべて頷いてみせる。
かつて父が彼に文字の読み書きを教えていた頃も、それからも、彼は時折こうしてこの屋敷に本を読みにくる。 暫く姿を見せていなかったので一体どうしているのだろうと、少し寂しく思っていた。
>>35台所について紅茶のカップを受け取れば、サミュエルは床に座り込む。 その姿も、最初は驚いたものだが今では慣れたものだ。 紅茶を飲むのに本を読み続けるサミュエルを、青年は窘めたりはしない。 彼が本が好きで、大切に扱ってくれる事を知っているからだ。]
…ん。分かった。
[葡萄を断るのには小さく頷いて応じた。 彼が先に桃を食べていた事は知らないが、無理に勧める事もあるまい。]
(38) 2013/08/31(Sat) 11時半頃
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[時折、サミュエルの本の頁が雑音に混じる。 本の世界に没頭する彼の姿を時折視界に納めながら、紅茶のカップを傾け。
静寂の中に揺蕩っている時間は心地いい。 葡萄も半分ほど食べれば取り敢えず満足して。
さて、残りはどうしようかと考えていたところに変化が起きる。]
―サミュエル?
[>>36突然、立ち上がるサミュエルに、青年は驚いたように視線を向ける。
そして]
(39) 2013/08/31(Sat) 12時頃
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―…っ。
[>>37背筋をぞわりと悪寒のようなものが走る。 人でない身が感知したのは、サミュエルの身の内の魔の蠢く気配。 ‘同族’のものではない、同じく人ならざる存在でありながら宿敵でもある吸血鬼の気配だ。
そうした気配を感じたら注意せよ、と父に何度も言い含められていたものだと直感的に思った。 当時の自分は、漠然とし過ぎていてどんなものか分からない、と言ったが、その時には絶対分かる、と父は複雑そうな顔をしながら言った。]
(41) 2013/08/31(Sat) 12時頃
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なん、で…。
[何故、サミュエルからそんな気配がするのだ。 これまで一緒に過ごしてきたが、こんな事はなかったのに。 混乱する自身を宥めるように無意識に右手で左肩を擦る。
>>37手話で詫びながら慌ただしく出ていく昔馴染みの背を追おうとするが、獣の本能はそれを拒む。
―近付いてはいけない。あれは宿敵の気配だ。
でもサミュエルだ。昔馴染みじゃないか。
青年の中にある、人の意識と獣の意識が対立し、思うように動けない。 その結果、その場で立ち止まって彼の後ろ姿を見送らざるを得なくなった青年は黙したまま、苦しげに顔を顰めた。**]
(42) 2013/08/31(Sat) 12時頃
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[無意識に同族にしか聞こえぬ声を飛ばしていたらしく。 自分に応じるような声を耳にすれば、青年はただ戸惑う。]
……。
[生まれた子は先天的に人狼となる家系−しかし群れを為さず、居住地を転々としながら人間の中で暮らしてきた−に生を受けた青年は、これまで自分の家族以外の声を聞いた事はなかった。 −父母を失って以来だから、三年ぶりか。
父母亡き今、この村に人狼は自分一人だと思っていた。 村人達に世話になりながら暮らしつつも、人を喰らう獣の孤独は、周囲を騙している罪悪感は消える事はなく。
昔馴染みから宿敵の気配を感じて動揺する青年は、其処に一縷の希望を求めて恐る恐るそれに応じる。**]
(55) 2013/08/31(Sat) 14時半頃
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[攻芸の声に答えてはみたが、果たして彼の耳に届いただろうか。
そっと息をつけば、裏口の扉にノック音が聞こえ。 思わず青年は身体を固くする。 その瞬間、鉄色の瞳が濃紅に変化した。]
―どなたですか?
[硬い口調で誰何する。]
(68) 2013/08/31(Sat) 21時半頃
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[マリアンヌの声が扉の向こうから聞こえてくればそっと息をつく。 いつもの如く、夕食のお裾分けに来てくれていたらしい。
扉を開いて彼女を出迎える頃には、瞳の色はいつもの鉄色に戻っていた。]
あぁ…ありがとうございます。
[彼女に差し出されたパンと具沢山のシチューの入った籠を受け取り、机の上に載せる。 青年の嗜好を反映してか、肉は少なめにされていた。 皿の上に食べかけの葡萄が乗っているのに気付いた彼女は、シメオンのところから貰ったのか、と聞いてきた。 それにはのろのろと頷く。 精神的な消耗で仔細を話す余裕はなかった。
顔色が悪い、という彼女に指摘されて自分の頬に触れる。 触れて顔色が分かるわけではないのに。
―だが。]
(69) 2013/08/31(Sat) 22時頃
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[頬に触れた自分の指が震えているのは分かった。 風邪でも引いたのか、と心配そうに聞いてくる彼女には首を横に振って。]
…今晩は早めに休む事にします。
[だから大丈夫だと、彼女を早々に家に帰した。 彼女の背中を見送れば、扉を閉じてそれを背に座り込む。]
…あぁ。
[俯いて頭を抱える。 人ならぬ声を飛ばした所為か、飢えがじりじりと理性を焼いていくのを感じていた。
そういえば、狩りの時期が近付いている。 …よりによってこんな時に。 青年は苦しげに唇を噛み締めた。]
(71) 2013/08/31(Sat) 22時頃
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― 台所→書斎 ―
[青年はシチューとパンを食べるのもそこそこに、灯りを手に書斎へと向かう。
四方にある書斎のランプに火を灯せば、暖色の灯りに本棚がぼんやりと照らされる。 この書斎には様々な種類の書物が集められていた。 その中にはベネットやサミュエルが見つけた人狼について取り上げた書物もあったが、吸血鬼について記されているものもあり。
青年は目的の本の背表紙に人差し指を掛けて引き出す。 父に読むように言われて幼い頃に読んだものだったが、もう一度読んでおかなければならないと思った。]
(79) 2013/08/31(Sat) 22時半頃
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[薄暗い書斎の中で書物の頁を手繰りながら、その記述に目を通す。
―吸血鬼は、一度死んだ人間が何らかの理由により不死者として蘇ったものだと考えられる。 多くの吸血鬼は人間の生き血を啜り、血を吸われた人間も吸血鬼になるとされており…]
……。 血を啜る魔性と、肉を喰らう魔物のどちらがマシなんだろうな。
[吸血鬼へと対抗する術についての残酷な記述を読みながら青年は苦く笑う。]
(84) 2013/08/31(Sat) 23時頃
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[青年は、飢えに飢えて本能が理性を凌駕するまで狩りを行わない。 それ故にか、狩りの間の記憶はひどく曖昧だ。 自分が何処で、誰を狩ったかを覚えていなかった。 ―思い出そうとしない、というのが正しいのかもしれない。
身を焦がすような渇望が満たされた後、自室で血塗れになった自分の姿に気付いてようやく狩りをした事を理解する。 だからこそ、肉を欲する獣の本能を恐れる気持ちがある。]
出来るわけ…。
[もし宿敵であっても、昔馴染みをこの手に掛けるなど。 何か方法がある筈だ。 彼と戦わずにすむ方法が。
その方法の手がかりはないか、と書物の頁を手繰る。]
(88) 2013/08/31(Sat) 23時頃
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