299 さよならバイバイ、じゃあ明日。
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ん。
[かちゃり、という音が聞こえた気がしてそちらを向くと、耳長の鎧姿が見えた。]
ソルだ、ソルだ。
[毛玉はぽい〜ん、と飛び跳ねる。 ソルフリッツィは毛玉に気づいただろうか。 既に出来上がった住人に囲まれ、もう姿は見えなくなってしまっているが。]
(30) 2019/10/13(Sun) 20時半頃
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イナリはすごいのかンゴ?
おお、小さき者。 椅子の上にでも乗るといいンゴ、危険発生。
[ギロを促した。今回のように時々変な呼びかけをするのは自分の方が大きいと思っているからである。大きくなることがあるのは見ないふり。>>26
言いながら、自分もテーブルにつき。]
ふぅむ。それならば餞別渡そうかンゴ。 一回だけンゴ。
[粘液ぶしゃー。テーブルの上に吐いた。 嫌そうなギャラリーも居たかもしれないが空気は読まない。 既に手に入れているとは知らなかったので、もしかしたら必要でなかったかもしれないが、空気は読まない。]
(31) 2019/10/13(Sun) 20時半頃
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ンゴティエクは、ゲフッゲフッと咳き込んでいる。
2019/10/13(Sun) 20時半頃
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ソルフ?
[ソルフリッツィも参加していたようだが、くんずほぐれつして離れていっているようだ。まあ祭りとはそういうものだ。]
しかしイナリとはこれでサヨナランゴか。 残念ンゴ。最後に踊っていくといいンゴ。
[舞のことを言っている。 白い狐は、踊る姿を残していくだろうか。**]
(32) 2019/10/13(Sun) 21時頃
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「あ〜、ホンマ清々しますわ!」
[今度はその反対側からとても大きい声が聞こえて、毛玉のごまつぶのような目はそちらに向く。]
「キナ臭いお人や思てましたけど、異邦人やったなんて…でもこれで街の中に仏壇みたいな匂いせんようになって快適になりはるわ」
[キンキンと囀る声の主は、美の研究家を名乗るタイムだ。 何かとイナリに突っかかる節がある事で有名であり、イナリの美貌(と人望)に嫉妬している、と誰かが噂話をしているのを毛玉は聞いたことがある。]
「さ、飲みましょ飲みましょ!今日はええ日やからね!」
[タイムは周りにそう煽り、手にした飲み物を一気に飲み干す。 そしてテーブルにグラスを置くと同時に俯いたまま、ぷはー、と大きな息を吐いた。 その時、足元の方に居た毛玉には聞こえた。 とても小さなか細い声で「…ホンマ、清々するわ…」とタイムは言った。 それはトゲトゲした言葉ではなく、何処か寂しそうだと毛玉は思った。]
(33) 2019/10/13(Sun) 21時頃
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ん!
[ンゴティエクに促されると毛玉は頷いて、ぴょんと椅子に乗った。 しかし、ンゴティエクのように胴が長い訳ではないのでテーブルまで届かず。 結局、もう一段上がってテーブルの上にお邪魔することにした。]
イナリ、すごい。 おいのりで、あめふる。 ギロにおみずくれる。
[毛玉はとても主観的なイナリのすごさを語る。]
餞別? わー。
[鮮やかな色の雨が、きらきらと陽光に煌めきながらテーブルに降り注ぐ。 弱まったり強まったりしていた雨はいつの間にか上がっていた。]
(34) 2019/10/13(Sun) 21時頃
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ギロチンは、ンゴティエクの背中をさすさす。
2019/10/13(Sun) 21時頃
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ンゴティのせんべつ、すごい。 せんべつ。 せんべつ…。
あ。
[自分も何かできないかと考えこんでいた毛玉は、何かを思いついた。 持っていた花をそっと横に置く。]
んん〜。 ん!
[毛玉は毛の中から伸びた細くて黒い手で自分の毛を一掴みして、ぎゅっと引っ張る。 毛はモッチリと毛玉の身体から離れ、毛玉はそれを丸くこねてテーブルに置いた。 すると、小さな毛玉にこれまた小さな黒い耳とごまつぶのような目がついて、ぱちぱちと瞬きをする。 毛玉が小さな毛玉に向かって敬礼のポーズを取ると、小さな毛玉も同じように毛から手を出して敬礼を返した。 挨拶を終えると、小さな毛玉は毛から足も出してイナリの元へ向かい、しゅっと荷物の中に潜り込んだ。]
(35) 2019/10/13(Sun) 21時半頃
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[これは毛玉がいつも誰かを送り出す時にやっている事。 あの人が死んでしまった時、あの人がどうか寂しくないようにと、棺に小さな毛玉を添えた。 それ以来、毛玉は送り出す時にこうして小さな毛玉を添えている。 この行為に意味があるのかと問われると、毛玉のエゴでしかないかもしれない。 でもこれが、毛玉なりの見送り方なのだ。
なお、毛玉がどういう構造なのかはきっと街の誰も知らず、もしかしたら毛玉も知らないかもしれない。 火葬の際に「あ゛ー」という声をあげる時もある事から、小さな毛玉とリンクしている可能性も考えられるが、実証はされていない。]
(36) 2019/10/13(Sun) 21時半頃
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[また、この小さな毛玉は言葉を持たない。 そして、動くのもこの街の中だけ。 だからイナリの荷物に潜り込んだ小さな毛玉も、この街を離れれば本当に”ただの毛玉”になることだろう。 それどころかもしかしたら、いつのまにか消えてしまう事だってあるかもしれない。*]
(37) 2019/10/13(Sun) 21時半頃
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[たまたま小さな毛玉が増殖する現場を目撃してしまい、凝視。>>36
ああして増えるのか、とまじまじ見つめてしまったが、変な生き物いっぱいの街なのでそういうこともあるだろうと納得するのである。]
『ソランジュがいたら粉でもっと綺麗な飾り付けできたかもねえ』 『そうだね。贔屓の染料も残り少ないし、これからどうしようかな』
[ふと、そんな会話が聞こえて。 軟体動物は聞き耳をたてていた。
その後の会話も聞くに、どうやら青い方の軟体動物は死んでしまったらしい。知っている者は知っていて、世間話の一つとして話題に出たようだ。]
……ンゴ。
(38) 2019/10/13(Sun) 23時頃
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[新しい情報が気にはなったが、祝賀会も終わりの空気を醸し出しはじめていた。パーティーが終われば狐はこの街を出ていくのだろう。
それならば先に。]
ンゴンゴ。 お見送りするンゴ。
[ワッショイワッショイ。 無理矢理胴上げされているイナリを眺めた。*]
(39) 2019/10/13(Sun) 23時頃
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[ぽんぽん跳ねた毛玉には軽く手を上げる程度。 ンゴティエクの声も聞こえた気がしたが、彼の小さい身体は、虹色をしていたとしてもなかなか人混みでは見つけづらい。
結局満足に話すようなこともないまま、街の見回りに戻った。]
(40) 2019/10/13(Sun) 23時頃
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[雨が降っている。 多少の水なら鎧が弾いてくれるから、耳長は雨を気にしない。 祝賀会に浮かれて人気の少ない街並みを、自警団員は歩いていた。]
……草屋は、どうしているかな。
[雨の日は、草にとっては恵みか、試練か。 買い物もあったので様子を見に行こう、と足を向ける。]
(41) 2019/10/13(Sun) 23時半頃
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[そうして。 生い茂る草花に囲まれた草屋の棲家と、息絶え尾を齧られた草屋を、見たのだ。]
ああ――――
[逝ってしまったのか、と呆然とした。 彼が最期の灯火を懸命に燃して生やしたらしき一面の草々には、チモシーやクローバー、とりどりの花をはじめ、街の人がいつも草屋に買い求めるすべてが揃っていた。 無論、いつかは枯れるか、使い尽くすか、不足することはあるだろう。 それでも、出来うる限りのすべてを――彼は、街の人々のために使ったのだ。]
(42) 2019/10/13(Sun) 23時半頃
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[草屋は昨日の姿のまま。
様々な植物に覆われている。
その成長はコーラの死と共に止まっているが、
それらはその場所に生きており、
これからも死ぬまで生きるのだろう。
生態系が少し狂ってはいるが、
ささやかな問題である。
ぽっかりと空いた空から滴が降り注ぐ。
雨だ。
恵みの雨だ。
コーラも雨は好きだった。
そのコーラの生きた結果が、
雨に打たれ、風に吹かれ、揺れている。]
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[いつも花を手向ける長耳も、今回ばかりは何を送っていいかわからなかった。 コーラの生やした花を送るのは、突き返しているみたいに思えたし、かといって玉ノ木の実はいつも渡している。
だからといっては何だが、長耳はひとり、草竜の傍に添うことを選んだ。 夜が更けるまで、彼の身体が葬儀屋か或いは別の住人の手によって、ここを離れるまで。 長耳は少し痩せたような気がする草竜の背を撫ぜた。 鱗が少し、かたかった。]
(43) 2019/10/13(Sun) 23時半頃
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[昨日の姿のまま←ちょっと嘘だった。
下半身、
草と繋がっている所が食べられている。
約束通り、喜ばしい事だ。
もしこのままここで体が朽ちるとしても、
それは草花の栄養になっていくのだろう。
さわさわさわと、
頭の上の葉っぱが風に揺れた。]
[竜の死骸が撫でられても、
いつものように首を擡げる事はない。]
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[次第、祝賀会も終わり夜が更けるにつれて、雨脚が強まる。 垂れ込めた暗雲は分厚く、そら寒く。 雲の中の氷つぶてさえ、祭り囃子に踊っているような天気になってきた。 流石に帰らねばならぬか、それともこのまま草竜の傍、雨宿りも兼ねて夜を明かすかと悩んでいた最中のこと。
視界をカッと強い光が焼いて、すぐ真近くに雷が落ちた。]
(44) 2019/10/13(Sun) 23時半頃
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[それは、自警団員の職業病と言ってもよかったかもしれない。 街に異変が起きた、と頭が認識した瞬間、外に駆け出していたのだ。 そこには、恐怖も何もなく、ただ衝動だけがある。 自慢の健脚で鎧を鳴らし、鳴らし。]
――っ!!
[落雷の現場にまさに着こうとしたときだ。]
(45) 2019/10/13(Sun) 23時半頃
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[落雷は、一度だけでは終わらない。]
(46) 2019/10/13(Sun) 23時半頃
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[声を返す事も無い。
遠くから祭囃子が聞こえても。
楽し気に問う声はここには二度と。
―――強い光にすべての植物が、
一度同じ色になる。]
[竜の身体から離れていく気配、
それを感じる事も出来ないし、
それになにかを言う事も出来ない。
死とは無力だ。]
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[雲の中溜まりに溜まったエネルギーが、駆け出してきた金属の塊を狙い撃ちにする。 空を裂く稲光を、誰かが見たろうか。 その真下に、街を守る長耳がいたのを、誰かが見たろうか。
ほんの一瞬、一瞬のことだ。 苦しむ暇もないまま、長耳は全身を落雷に貫かれて、命を吹き飛ばした。]
(47) 2019/10/14(Mon) 00時頃
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[けれど植物は、
枯れる前に種子を残す。
遠くに、遠くに運ぼうとする。]
[だからこそ、
この街を去っていく誰かの手元。
"コーラの育てた植物の中で一番遠い場所に在るそれ"
に。
新たな生命が宿っても、
それは草の竜にとっては
珍しい事でもなんでもなかった。]
[イナリはいつ気付くだろうか。
榊の葉に褐色の宝珠のような滴が不自然に一つ。
くっついて、小さなそれは
時折ふるふると揺れている事を。]*
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[あとに残るのは、がらがらと崩れた金属鎧と、焼け爛れた獣**]
(48) 2019/10/14(Mon) 00時頃
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イナリ、はねてる。 たかい、たかい!
[胴上げされているイナリを見て、毛玉は同じようにぽよぽよ跳ねる。 イナリがどんな心境なのか毛玉にはわからないが、みんなが笑って、楽しく見送る。 死ぬのも、街を出るのも、毛玉にとっては今生の別れ。 同じ別れなら、こちらの方がいいなと、毛玉は思った。 そして、別れの時は来る。]
イナリ、ばいばい!
[街を出るイナリの背に、ありったけの声をかける。 毛玉の声が届いたかはわからないけど、イナリの姿が見えなくなるまで毛玉は手を振り続けた。*]
(49) 2019/10/14(Mon) 00時頃
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達者でンゴ。
[たくさんの住人の中に埋もれて見えづらかったかもしれないが、虹色の軟体もお別れの言葉をイナリに伝えて。
いつまでも、とはいかないが結構長く、街の出口に佇んでいたのだ。*]
(50) 2019/10/14(Mon) 00時頃
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