人狼議事


308 【R18】忙しい人のためのゾンビ村【RP村】

情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


ヤカモト1人が投票した。
クシャミ8人が投票した。
ビアンカ1人が投票した。

クシャミは村人の手により処刑された。


時は来た。村人達は集まり、互いの姿を確認する。
ビアンカが無残な姿で発見された。


現在の生存者は、ヤカモト、フローラ、ヘイタロウ、ワット、みょんこ、ハルミチ、エニシ、ヨーランダの8名


天のお告げ (村建て人)


大切な人を、ペットを探して、
あるいは救いの手を、情報を求めて
人々はすがるようにインターネットをのぞきこむ。
 

(#0) 2020/10/24(Sat) 00時半頃


天のお告げ (村建て人)


「犬の吠える声に反応した」>>*2:15
「体液に触るとだめ」>>*3:17
「呼びかけても反応がない」「知能が低い」>>*3:42

ぽつり、ぽつりとそんな情報がかきこまれるなか、
ログインが途絶える人も現れてきた。
 

(#1) 2020/10/24(Sat) 00時半頃


天のお告げ (村建て人)


――――5日後。
 

(#2) 2020/10/24(Sat) 00時半頃


天のお告げ (村建て人)は、メモを貼った。

2020/10/24(Sat) 01時頃


時間貯蓄銀行 ヤカモトは、メモを貼った。

2020/10/24(Sat) 01時頃


【人】 墓守 ヨーランダ

― 秋葉原 ―

[街のあちこちにバリケードが作られ始めていた。
時間を稼ぎ。

その間に狙撃するなり、逃亡するなりすればいいと。
そして、この街の住民たちはどこまでも逞しかった。]

ああ、じゃあそっちも頼むわ。

[釘バットや銃で武装した自警団。
おかえりとばかりに街のあちこちでメイド姿の少女が出迎えていて。

飲んでいかないかと誘う様は。
まるで戦時中のようでもあり。

四浦自身もテイクアウトのケバブを買って。
店に戻って食べるつもりでいた。]

(0) 2020/10/24(Sat) 07時頃

【人】 墓守 ヨーランダ

[見上げると。
秋葉原で一番高いバリケード。]

ウオールオブゾンビ……か。

[進撃のなんとか。

或いは、特務機関と称して。
地下のスペースに基地を作る者たちもいた。

共通しているのは。
この日常から逃げたいという思いか。

あの頃のように、まとめサイトが取り上げるだろうと言って。
画像をSNSに上げるものたちもいた。]

(1) 2020/10/24(Sat) 07時頃

【人】 頭蓋骨と骨 ヘイタロウ

[宿のおじさんが、宿の入り口に椅子やテーブルでバリケードを貼ってくれた。
警察の機能していないこの国では、ニュースになるよりゾンビが目の前に現れる方が早かった]

 …もう、これじゃあ空港も機能してないんだろうな…

[帰国予定日になったが、そもそもまずここからでられる状況じゃない。
ガラス越しにこっちを見てるゾンビ達は濁った目でガラスを引っ掻きながら押しかけてきている。
その様子を写真に撮って]

(2) 2020/10/24(Sat) 10時頃

【人】 ビール配り フローラ

[朝、目が覚めて。

部屋を出て真っ直ぐ暖炉に向かおうとする。
パパが出してきた段ボールの箱と、ホームビデオのテープが散乱している。

途端に、違和感。]

 おはよう…?

[何だか、家の中が静かに感じた。
いつもキッチンからは、パパとママの話し声と、ママが淹れたパパの飲むコーヒーの匂いがするはずなのに。]

 パパ?…ママ?

[キッチンを覗いても誰も居なかった。]

(3) 2020/10/24(Sat) 11時頃

【人】 ビール配り フローラ

[パパたちの寝室の扉を開いた。]

 おはよう、まだ寝てるの?

[2人は居なかった。
でも部屋がなんだか散らかってて、写真立てが床に落ちててガラスが割れていた。
それを拾い上げると、赤ちゃんのわたしをママが抱っこして家の前に並んでパパとママが笑顔を向けている写真が見えた。いつもベッドサイドに立て掛けてある。
この2人の笑顔はどこにいったんだろう。

そんな時、ジリリリリリッと玄関の呼び鈴がなった。
わたしは飛びはねるように玄関へ向かう。
もしかしたらパパたちが戻ってきたのかもしれない。

でももしそうなら、なんで鳴らすの?]

(4) 2020/10/24(Sat) 11時頃

【人】 ビール配り フローラ

[玄関の扉の前までやってくると、外から微かに荒い息息づかいが聞こえた。
除き穴から見てみようと思ったら]

 「むやみに直ぐ開けなくなったわね。偉いわっ…」

[扉の外から聞こえてきたのは、ママの声。]

 ママッ!

 「ダメよ!開けないで!」

[更に息苦しそうになったママに止められる。]

 「パパね、ゾンビになっちゃった。街に行った時に、かまれちゃったんだって」

[ママはまるで何でもないように話を続ける。]

(5) 2020/10/24(Sat) 11時頃

【人】 ビール配り フローラ


 「ママもね、ゾンビになっちゃうみたい。
 だから…あなたはちゃんと戸締まりしてお家にいるのよ?
 お腹が空いたら、冷蔵庫のご飯温めて食べなさいね…」

 …ママ…マ、マ…

[信じられない。信じたくない。大好きなパパとママが居なくなっちゃうなんて。]

(6) 2020/10/24(Sat) 11時頃

【人】 ビール配り フローラ

[涙があとからあとから流れてきて止まらない。]

 「ご飯がなくなったら、お料理するのよ。
 包丁は気を付けて使ってね。ママのお気に入りのお鍋、底が焦げ付きやすいの……ごめん、ね」

 ママァ!行かないで!いやだよ!

[なんでこんなことになっちゃったの?
なんでゾンビなんて出てきたの?
なんで大好きな2人とは、もう一緒に暮らせないの?

なんで?なんで?……なんで!?]

(7) 2020/10/24(Sat) 11時頃

【人】 ビール配り フローラ

[ガタンッ、と何かが落ちる音がすると、ママの荒い息が一層強く聞こえた。]

 「ママ、もう行くね。絶、対…絶対に外に出ちゃダメよ
 あなたは、ちゃんと、生きなさいね…いいこでね。」

[まるで、どこかにお出掛けしに行くみたいに言う。

ママの息づかいが遠くなっていく。

ママは"出掛けて"いった。
パパもいつか"帰ってくる"。
わたしはちゃんと"お留守番"する。]

(8) 2020/10/24(Sat) 11時頃

【人】 ビール配り フローラ

[悔いのない選択って、どうすればよかったのかな]

(9) 2020/10/24(Sat) 11時頃

【人】 ビール配り フローラ

[わたしは、扉を開けて外へ飛び出した。]

 ママァーーー!!

[ママの姿は、もう見えなかった。]

 パパァァーーーー!!

[こんなに大きな声を普段出さないから、直ぐ喉が痛くなった。
でも気にせず、叫び続ける。

分かりたくないけど分かってた。
2人はもう帰ってこないんだって。

とうとう、わたしはその場で膝をついてわんわん泣いた。]

(10) 2020/10/24(Sat) 11時頃

【人】 ビール配り フローラ

[パパはいつもニコニコしてて、わたしのわがままは何でも聞いてくれた。
でも、悪いことをするとなんで悪いかちゃんと教えてくれた。

ママもいつもニコニコしてて、お料理とお洗濯とお掃除が完璧で、パパに怒られたあとは甘〜〜〜いのケーキと強めのバグで慰めてくれた。

ちょっとウザイくらい…あんなに優しい2人だもん。
わたしをゾンビにしないように、生き延びられるようにいなくなったんだ。

でもね。
独りぼっちになるくらいなら、2人にゾンビにされたほうがマシだったって思ったわたしは悪い子かな。]

(11) 2020/10/24(Sat) 11時半頃

【人】 ビール配り フローラ

[涙で地面き水溜まりを作りそうだった。
叫び続けて、もう身体に力が入らなくて。

だから、それが近付いてくるのに気が付かなかった。

直ぐ側で呻き声を上げたものに、わたしの肩を乱暴に押されて地面に倒れてしまった。
見上げれば、ママでもなくパパでもなく知らない人だった。

わたしは恐怖に襲われて悲鳴を上げた。
何とか立ち上がり、その手を振り切って家へと逃げ込んだ。
玄関の扉を閉めて鍵を閉めると、扉を背をついてヘナヘナと座り込んだ。]

 …いたっ

[さっき押された左肩、服が切れて少しだけ赤く染まっていた。]

 いたい

[そんなに出血してないみたいだけど、痛かった。
そんなことより、この一人には広すぎる家に独りでいる方が、心が痛かった*]

(12) 2020/10/24(Sat) 11時半頃

【人】 ビール配り フローラ

[何日か経って。
その間、お腹が空けば冷蔵庫の中の、ママのご飯を温めて直して食べた。

独りで食べると涙が出た。
寝るときはパパとママのベッドで寝て、やっぱり涙が出た。

怪我した肩がずっと痛い。
我慢できる痛みだけど、なんだかそこだけズキズキする度に熱さを感じる。

何日かぶりにSNSを開く。
世界は混乱がおさまっていない投稿で溢れていた。

まさかと思っていたけど、わたしゾンビにならないよね?
噛まれたわけじゃないんだもの。
ゾンビになったら、ママたちが悲しんじゃう。

スマートフォンで文字を打っていく。]

(13) 2020/10/24(Sat) 11時半頃

【人】 ビール配り フローラ

[気が付いたら、また泣いてた。

涙を手で拭って、ホームビデオの続きを見始める。
暖炉の薪がパチパチ音を立てていた**]

(14) 2020/10/24(Sat) 11時半頃

ビール配り フローラは、メモを貼った。

2020/10/24(Sat) 11時半頃


【人】 地道居士 エニシ

[部屋はもう、使える状態ではなくなってしまった。
もう動かなくなったお隣さんは毛布でくるんで
ベランダから下へ放り投げたから。
お隣さんはもう部屋にいないけれど、
割れた窓や血しぶきは残ったままだ。

―――ゾンビを殺したら、人殺しになるのだろうか
ならないと、言ってくれる人は居るのかもしれない。

……優しい、お兄さんだったんだ。
深夜に夜食を買いにコンビニに行けば、
仕事帰りにお酒と夕飯を買い込むその人に出くわせば
こんな時間に悪い子だなあ、なんて笑われた後、
「飲むかい?」と、棚から取ったビールを見せられ
へらりと笑いを向けられて
近くの公園で二人、他愛もない話をしたものだった。]

(15) 2020/10/24(Sat) 12時半頃

【人】 地道居士 エニシ

[ベランダの下を、見下ろす。
毛布からはみ出た腕は、血に濡れて赤黒く。
血の匂いや落下した音に反応してか、
そっちに寄ってくる人影が見えた。

見えた人影は、
スーパーで見かける店員さんだった気がした。
お隣のお兄さんだって、あの店員さんだって。
なりたくてなった訳じゃない。
僕だって、兄貴だって……仕方なかったんだ。

兄貴と一緒に簀巻きにした毛布を持ち上げた感触が
まだ両手に残って居る。
僕は少しの間目を瞑り、きつく、拳を握りしめると
やるせない気持ちで、踵を返し、部屋へと引っ込んだ。]

(16) 2020/10/24(Sat) 12時半頃

【人】 地道居士 エニシ

[その日、僕の部屋は片付けず
二階ベランダに通じる僕と兄貴の部屋は封鎖した。

部屋から出した箪笥をドアの前に置いたりして
もしゾンビが入り込んでも簡単に出てこないよう
バリケードを念入りに作る。

必要な物だけを持って一階へ降りて
それからは……毎日。
居間のソファーで、兄貴と一緒に眠った。]

(17) 2020/10/24(Sat) 12時半頃

【人】 地道居士 エニシ

[兄貴は日に日に、何かに耐えるように頭を抑えたり、
自分の身体を掻きむしることが多くなっていった。
時には、何を言うこともなく、
ぼんやりと僕の方を見ているだけのこともあった。

 「自分が自分じゃなくなる気がする」
 「俺、どうなるんだろうな…えーくん、怖い……」

僕より全然大きくて、
いつも頼れるばかりの兄貴だったのに。
お隣さんを撃退したときの気迫や強さは
もう、見る影もなくなって。
泣きそうな声で漏らすのは、そんな弱音だ。

こんな兄貴は、今まで一度も見たことがなかった。
胸が破裂するんじゃないかってぐらい、辛い。]

(18) 2020/10/24(Sat) 12時半頃

【人】 地道居士 エニシ

[痛みで発熱する身体が辛いのか
(それとも、動いてると考えてしまうことがあるのか)
ソファーに横たわったままが多くなった兄貴は
僕が水と焼き鳥とか肉の缶詰を持ってきたのを見ると
ぽつ、ぽつ、と。決まって弱音を吐く。

兄貴は「連絡がつかない友人が毎日増える」と。
「次は自分の番なんだ」と。

 「俺はもう、駄目だからさぁ……
  えーくんは、安全な場所に逃げてよ」

……そう、震える声で、何度も言うけれど。
僕は笑って、言うんだ。]

(19) 2020/10/24(Sat) 13時頃

【人】 地道居士 エニシ

[他に行くところも、向かうところもないんだ。
最後、一人になんてするもんか。]

 大丈夫だよ、兄貴。
 僕は……最後まで一緒に、居るから。

[兄貴の、指先の冷えた手を握る。
それは自分でも驚くほど、穏やかな声だった。]

(20) 2020/10/24(Sat) 13時頃

【人】 地道居士 エニシ

[騒動からずっと、苦しいばかりが積もる毎日で
僕にできることはなんだろうと考えていた。
いつかSNSで見た"悔いのない選択"。

大丈夫。悔いなんてない。

そう信じて。手を、強く握った。]*

(21) 2020/10/24(Sat) 13時頃

地道居士 エニシは、メモを貼った。

2020/10/24(Sat) 13時頃



[ あれは恐ろしい夜だった。]
 



[ ずいぶんと長いこと、
 重いものが門扉にぶつかるような音が続いた。
 どん、どんと音がすると、
 どうしても犬たちが反応してしまうのね。

 わたしがリビングに戻ったころには、
 お隣の奥さんがヒステリー気味に、
 お願いだからあれをやめさせて!≠ニ、
 髪を掻き毟り、耳を塞ぐように蹲っていた。

 目を覚ましたゾーイのことを、
 弟さんとお嫁さんがあやしてくれていたわ。
 電気もつけていないリビングルームに、
 みんなで肩を寄せ合って夜を過ごしたの。
 お隣のご主人は銃を握りしめていたわ。
 オッドがくるると威嚇の声を上げていた。]
 



[ ジャーディンが落ち着かなさそうに、
 ちいさな声でわたしに話しかけてきた。

 わたしのスマートフォンを貸してと言うのね。
 街に探索に出たときに自分のを壊してしまったと。]

  それならおばあちゃんの使って。
  そこのテーブルの上よ。
  あなたが持っていてくれていいわ。

[ だって、あの子のほうがうまく扱えるわ。
 わたしは自分の端末を譲るつもりで、
 置きっぱなしにしていた場所を伝えたのね。

 ジャーディンはこくんとうなずいたわ。
 またちょっぴり瞼が赤く腫れぼったかった。]
 



[ どこかコソコソとしたふうに、
 ジャーディンは周囲を窺うようだった。
 そして、ささやくような声で言ったの。

 あれは、仕方のないことだった?

 ほかに誰にも聞かれたくないかのように、
 わたしの目を不安げに覗き込んでくるのね。]
 



            ・・・
  今は、ああするのがふつうなの?
 



[ わたしは言葉に詰まってしまった。
 咄嗟に、そうよとは言えなかったの。
 わたしにひどい仕打ちにも見えたし、
 一方でああするべきだったと言われれば、
 真っ向から反論する手立ても思いつかなかった。

 すると、低い声が代わりに答えたわ。
 声を抑えたって、皆で集まっているんだから、
 内緒話なんてとてもできそうにないわね。。

 そうだよ、普通のことだ。
  生きるためには仕方がなかった。
  同じ状況なら誰だってそうするさ

 お隣のご主人だった。
 どこか思いつめたような、暗く重い声だったわ。]
 



[ けれど、本当に?
 生きるためなら何をしてもいいの?

 わたしはご主人の言葉に動揺していた。
 その通りだと同調するには躊躇いがあったわ。

 けれど、もしかするとそうしたほうが、
 目の前で起きた出来事を肯定するほうが、
 子どもたちは安心するのかしら。わからない。]
 



[ あなたたちはどう思う?]
 



[ わたしの動揺が目に見えたんでしょう。
 ジャーディンはそうっと立ち上がって、
 テーブルのほうへと歩いて行ったわ。

 お隣のご主人がどうかしたのかと聞いたけど、
 あの子はなんでもないとすぐに戻ってきた。

 そしてまた控えめな声でわたしに言ったの。

 ないよ

 そんなはずがないと思ったわ。
 昼間、絵本を取りに行く前にそこに置いて、
 それきり触っていなかったんだもの。]
 



[ けれど、わたしももうこんな年ですから、
 記憶違いだったのかもしれない。
 絶対にテーブルの上に置いたと思っていたのに、
 ないと言われるとなんだか不安になってきたのね。

 そうこうしていたらお隣の息子さんが、
 何かしたいことがあったのかと尋ねたわ。

 ジャーディンは少し考える素振りを見せて、
 近所の情報が出てないかと思って≠ニ言った。

 そんなのとっくに探してるよ≠ニいうのが、
 お隣の息子さんからの返事だった。

 聡明なジャーディンだって、
 本当はそんなことわかっていたと思うわ。]
 



[ とにかくまだ他の場所も探してみると、
 わたしはジャーディンにそう伝えたわ。

 それから皆でこれからのことを話し合った。
 まだ断続的に不穏な音がする中で、
 顔を寄せ合ってひそひそ話をするようにね。

 ひとまず物音がおさまったら、
 ノーリーンの亡骸だけでも中に運ぼうと、
 それに関してはすぐに決まったわ。

 それから、街にはもう探し回るあてもないと、
 ご主人は疲れ切った表情で言った。
 わたしやお隣の奥さんも、
 もうあと数日分しか食糧がもたないと伝えた。]
 



[ いっそこの家を出て、
 別の町に移動してみてはどうか。

 そんな意見も出たけれど、
 ガスがもうそれほど残っていなくて、
 全員が車で逃げることはできないと言うのね。

 もう手詰まりだと思ったけれど、
 でも、あと少しくらいは≠ニ誰かが言った。
 もうしばらくなら? 耐えられるというの?
 食べるものももうほとんど残っていないのに?

 ご主人も難しい顔をしたままうなずいた。
 少しずつ、家の外は静かになっていった。
 子どもたちは力尽きたように眠っていた。]
 



[ まだ日ものぼりきらない早朝に、
 わたしたちはそうっと静かに、
 玄関ポーチに伏した亡骸を家に入れた。

 噛まれたんであろう脚の傷よりも、
 顔にいくつかあいた穴が痛々しくて、
 わたしたちは彼女の顔に布をかぶせたわ。

 ねえ、大丈夫なのよね?

 お隣の奥さんが念を押すように言ったわ。

 大丈夫だろ、そのために、
  ああなる前に義兄さんが殺してくれたんだから……

 亡骸を整えてあげることもできないけれど、
 せめてスティーブンさんが迎えにきてくれるまでは、
 今のままの状態で帰りを待たせてあげたかったの。]
 



[ わたしたちは静かに祈りを捧げた。
 自らの手によって殺めたノーリーンに。]
 



[ あなたたちにはこれが正常に見えるのかしら。]
 



[ 世界に向けて尋ねてみようにも、
 その手段はもうここにはないのね。]
 



[ ここにいるのは9人ぽっちの人間と、
 イエスもノーも言わない7匹の犬だけ。*]
 


[目が覚める。

正確には、「私」として意識が戻る、かな。

それも最近は一日に一度あるかないかになっちゃった。

きょろ、きょろ、と緩慢な動きで眼球を動かす。
視界は良くない。

足を動かしたら、なにかを蹴ってしまった。
なんだろ、ボール?
毛糸みたいな、黒い、毛…]


  「る り ごめん ね」


[毛玉は、小さな声で謝った。
なあに? なんで? だって、わたし、扉を、バリケードを]


[扉は、開いていた。

積み上げたはずのものたちは部屋中に散乱して
引き摺られたような血の跡が廊下から部屋へ、
毛玉だと思ったニンゲンの身体へ続いていた。

なん で…… ?

なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで]



[夕暮れの道を歩いていた。
 沙良の亜麻色の髪が揺れている。

 友達のみーちゃんと喧嘩しちゃったの。
 そう悲し気に言う沙良に
 「仲直りできるといいな」って
 当たり障りのない事しか言えず
 俺達はとぼとぼと歩道を歩いている。

 後ろから追い付いてくる足音がある。
 振り向いた直後、どん、と軽い衝撃があって、
 俺の首を抱きしめる暖かい腕の感触があった]
 



[なにすんだよ、進、って俺は笑ってる。
 遅いよ、って沙良も笑ってる。
 遅れてごめん、と聞き慣れた声がして、
 柔らかい腕が離れていく前に俺の頭を撫でた]
 



[     腐った臭いがした。    ]
 


 
[振り向くとそこには頭がひしゃげた進の姿がある。
 悲鳴をあげる俺を、
 沙良も、通りすがる人々も気に留めやしない。

 いつの間にか血に濡れていた進の手が俺に伸びて、
 この首を、きつく、締めた。]
 


 

  「 ひとりにしないでよ、秋 」*

 


【人】 ビール配り フローラ

[ビデオを見ていたら、いつの間にか眠っていたみたい。
テープがも終わってた。

わたしはソファに横になってて、スマートフォンが床に落ちてるのが見えた。

熱くて目が覚めた。
覚醒しくてると、肩がジワジワと痛みを増してて、我慢できないくらいだった。]

 きもち、わるい…

[頭も痛くて息苦しかった。
今何時かわからないけれど、窓の外は暗かった。
暖炉の火も消えかけていた。

急にこんな風になるのなんて、もう1つしか考えられない。]

(22) 2020/10/24(Sat) 19時頃

【人】 ビール配り フローラ


 パパ…ママ…ごめん、わたし…

[わたし、きっとゾンビになるんだ。

パパとママがゾンビになって、もう一緒にいられないって思った時より落ち着いているのは、どうしてだろう。

肩は泣きそうなくらい痛くて熱いのに。
頭は痛くて胸は苦しくて気持ち悪くて死にそうなのに。
涙が出ないのは、どうしてだろう。

ここ数日で、一生分の涙出しきっちゃったかな。

床に落ちていたスマートフォンに、必死に手を伸ばした。]

(23) 2020/10/24(Sat) 19時頃

【人】 ビール配り フローラ

[懺悔と希望を込めて。

そういえば、たくさん(じゃないけど)投稿したなぁ。
以前のわたしが知ったら驚くだろうな。なんて。

時間は巻き戻せないけど。
地獄になった世界に、幸せを願いたかった。
もし少しでも世界に幸せ成分が増えたら、パパとママにも会えるかもしれない。そんな奇跡を願ってもいいよね。

消えそうな意識の中で思い出すのは、
過ぎ去りし"日常"**]

(24) 2020/10/24(Sat) 19時頃

【人】 百姓 ワット

[少し遅れているのだろうと、
 まだそう思っていたころには
 SNSを眺めたり、町に住む他の住人に電話をかけたりして
 情報を集めたりしていたけれど。
 1日たち、2日経った頃には焦燥ばかりが募っていった。

 何も食べる気がしない。
 それでも体力は残しておかないと、と
 無理やりにのどの奥へ押し込んだ
 梅干しがはいったはずのおにぎりは、
 何にも味がしなかった。

 テレビはもう、何も映さなくなっていた。
 どのチャンネルに変えてもノイズが走り、
 耳障りな砂嵐ばかりが鼓膜を揺らす。]

(25) 2020/10/24(Sat) 19時半頃

【人】 百姓 ワット


[まったく、生きた心地がしない。]
 

(26) 2020/10/24(Sat) 20時頃

【人】 百姓 ワット

[美奈子の時は、病気だった。
 だからある程度覚悟はできていた。
 だけどさ、このまま息子たちに会えない、
 なんてのはあんまりじゃないか?

 あの、大切な人を失った時の、
 とてつもない喪失感から
 立ち直れたのは、あの子たちがいたからだ。]

『お客様のおかけになった電話は、
 電波のないところにいらっしゃるか、
 電源がはいっていないため……』

 くっそ、なんででないんだ……!

[もう67(0..100)x1回ほど耳にした
 その機械的なメッセージに
 さらにイライラが増す。]

(27) 2020/10/24(Sat) 20時頃

メモを貼った。


百姓 ワットは、メモを貼った。

2020/10/24(Sat) 20時頃



[ あれから5日が経っていた。]
 



[ ゾーイが癇癪を起さなくなった。

 その代わり1日中ぐずって、
 ぬいぐるみの耳を吸いながら、
 誰かのそばに引っ付いていることが増えた。

 ママは?≠ニ時折尋ねてくるので、
 そのたびにパパを探しに行ったと伝えて、
 はちみつをひとさじ舐めさせてやった。

 胸が痛んだけれど、
 とても本当のことは伝えられなかったのね。]
 



[ 数日前気が付いたときには、
 電気が通らなくなっていたのね。
 冷凍していた僅かな食糧もダメになっていた。

 スマートフォンを充電しようとした、
 お隣の息子さんが真っ先に気が付いて、
 チクショウ!≠ニ声を荒げていたわ。

 事態に気が付いたお隣のご主人が、
 全員のスマートフォンを集めて、
 むやみに使わないようにしようと言った。

 バッテリーが残されている限り、
 何か助けになる情報を探していたけれど、
 安全な場所も食糧のありかも、
 結局はどこにも見つけられなかった。]
 



[ 自動車ももうほとんどガス切れで、
 最近はこの家から出られずにいるわ。

 このあたり一帯は、
 大きなおうちが多い住宅街で、
 歩いて外に出ていったところで、
 近くにはすぐに逃げ込めるような場所はない。

 住むには良い場所よねなんて、
 笑っていたのがずいぶんと昔に思えた。]
 



[ 日に日に外の世界が遠のいていく。]
 



[ 幸い、アレの知能は高くないらしく、
 しっかりと門扉を閉じてさえいれば、
 塀を超えて敷地内に入っては来なかった。

 それが逆にわたしたちを、
 ここから動けなくさせていたのかもしれない。

 少なくともこの中にいれば、
 ノーリーンのようになることはない。

 けれど、確実に状況は悪化していったわ。
 みんな元気がなくなっていった。
 イライラしている様子もあった。

 当たり前よね。
 閉じ切った空間の中に身を寄せ合って、
 食べることすらままならないんだもの。]
 



[ いくら襲われず安全だからといっても、
 わたしたちはじわじわと弱っていっていた。

 なんせわたしたちはもともと二人暮らしで、
 お隣さんだって、旦那さんと奥さんのところに、
 息子さんと弟さん夫婦が急にやってきたんだもの。

 いくらお互いの家の食糧を持ち寄ったって、
 これだけの人数で消費すればあっという間よね。

 今晩もクラッカーを少し齧るくらいかしら。
 ふと顔を上げたらリビングルームで、
 ゾーイとウィレムがお互いにもたれて眠っていた。]
 



[ ジャーディンはきっと自室ね。
 オッドを抱いて上がるのを見たわ。

 ほかの大人たちもきっと、
 それぞれに部屋で休んでいるんだと思うわ。

 あまり栄養をとれていないからか、
 だんだんと動くのもおっくうになってね。
 何もしない時間が増えていたの。

 いよいよ何か手を打たなくては。
 わたしはそう考えながら、
 犬たちの様子を見ようと部屋へ向かったの。]
 



[ ……ねえ、いのちに優劣があると思う?*]
 


メモを貼った。


メモを貼った。


【人】 卐黒帝會卐 ハルミチ

[その頃。
 グループLINEは騒然としていた。]

 ……マジだ……。

 ここ、写ってんの……サダじゃねぇか!!

[ダチのひとり、ニシが見つけたネット画像のなかに、サダミツらしき人物……いや、ゾンビが写っていたのだ**]

(28) 2020/10/24(Sat) 20時半頃

卐黒帝會卐 ハルミチは、メモを貼った。

2020/10/24(Sat) 20時半頃


【人】 地道居士 エニシ

[前にゾンビが二階に入ってきたときは
僕が寝ぼけて壁を蹴ったりしたのが原因だろうと。
不必要に音さえ立てなければ、
奴らは中に入ろうとしてこないだろうと。

兄貴のその推測は当たっていた。
それから今まで、ゾンビは家に入ってきていない。]

(29) 2020/10/24(Sat) 21時頃

【人】 地道居士 エニシ

 ……兄貴。もう、大丈夫だよ。
 じっとしてれば……ゾンビは、来ないんだ。

[一階の居間の横の、両親の寝室。
そこにあるクローゼットの前で体育座りをして
目の前で鈍く光る銀色を見つめる。]

 「えー、くん…………
  そ、か……よ、かっ た……」

[獣が唸るような音が混ざった兄貴の声が、
クローゼットの中から聞こえるのに、
僕は膝の間に顔をうずめた。

クローゼットは中から簡単に開かないよう、
外の二つの取手同士を紐で結んである。]

(30) 2020/10/24(Sat) 21時頃

【人】 地道居士 エニシ

[兄貴が噛まれてから、五日。

兄貴は最初、僕に逃げるよう何度も頼んで、
僕が逃げないなら、自分を殺してくれと言った。

 ――まだ、ゾンビになるって決まった訳じゃない。
 なってもいないのに、殺すなんてできるもんか。

僕は毎回、そう言って断った。
ワクチンの開発とかが間に合って
ゾンビになった人も助かるかもしれないじゃないか。

その言い分が何の気休めにもならないのは、
僕自信がが一番よくわかってた。
だって。毎日、テレビをつけてみても、
ネットのニュースを漁ろうとしてみても。
ここ数日は何の情報も流れてこなくなっていたから。]

(31) 2020/10/24(Sat) 21時頃

【人】 地道居士 エニシ

[対策を練る筈の政府や医療機関の人だって
今どうしているかの情報が、何も無いんだ。
今一番、リアルタイムの情報が流れてくるのはSNS。
それも悪い情報ばっかりで、
事態が良くなりそうな兆しは欠片も見当たらない。

両親だってもうゾンビになってしまったんだろう。
兄貴ももう、助からないんだろうか。
ゾンビになってから助かったという情報はない。
こんなんで、希望を持つことなんてできなくて。]

(32) 2020/10/24(Sat) 21時頃

【人】 地道居士 エニシ

[そして、兄貴は僕に言った。]

 「多分もう、俺には猶予がない。
  今のうちに、手を縛って。閉じ込めてくれ。
  俺……えーくんや、他の人達を、
  食べたりなんて、したくないんだ。
  だから、えーくん。こんなこと頼みたくない、けど
  逃げないなら……俺のことを、]

 ……ゾンビに、なっちまったら、だからな。
 まだ、ならないかもしれないじゃないか。
 でも―――、兄貴。約束、するよ。

[閉じ込めるのは、僕へ考える時間をくれたからだ。
ゾンビになって暫くは、迷えるように。
逃げるか、……兄貴を、殺すか。それとも。

僕は全部わかってた。もう避けられないことだって。
わかってて、兄貴を閉じ込めた。
けれどまだ僕は、どうするか何も決められてなかった。]

(33) 2020/10/24(Sat) 21時頃

【人】 地道居士 エニシ

[クローゼットに背を預けたまま、話す。]

 なぁ、兄貴。

 「な、に……えーくん、」

 兄貴は……心残りとか、悔いって、ない?
 僕は……後悔ばかりだよ。

 「……あるけど、さぁ…………
  でも、俺は、最後、
  えーくんの声聞けて、良かった。
  あぁ……そうだ。この後のこと、かな、
  俺の分まで、えーくんに生きて、ほし、、
  ……げほっ!!ごほ、っ……!!」

[ぜぇぜぇと、背中の下の方から蒸せる声。
クローゼットを開けようとして立ち上がりかけ、
"殺さないなら何があっても開けるな"
兄貴の言葉を思い出し、その場にまた座り込んだ。]

(34) 2020/10/24(Sat) 21時半頃

【人】 地道居士 エニシ

[背中からは、辛そうな息遣いに、笑い声。
僕がしたことは筒抜けだったんだろう。
その後また、咳き込む声と唸り声が続いて、]

 僕は、……兄貴だけだったんだ。
 兄貴が居なくなったら、僕、

[背中から聞こえてくるのは呻き声ばかりになった。]

(35) 2020/10/24(Sat) 21時半頃

【人】 地道居士 エニシ

[……ポケットで、震える感触がする。
SNSの通知だろうかと、スマホを取り出し。]
[通話相手の名前を見て。嘘だ、と思った。]

 ―――父さん…?

[酷い雑音の中で。発砲音や、呻き声がする。
その中でも近くで聞こえる、荒い息遣い。]

 『……エニシ。良かった、無事だな。
  ヨスガも、無事か。』

[父親と話したのは、本当に久しぶりだった。
間違いない。本人だ。でも……なんで、"僕"に。]

(36) 2020/10/24(Sat) 21時半頃

【人】 地道居士 エニシ

[こみ上げてきた涙を堪えて
数秒の悩む間を置いてから、震える声で答える。]

 大丈夫。僕も、兄貴も、無事だよ。
 ……母さんは?

 『そうか。……良かった。
  母さんは…………無事だ。』

[心配するな、とその後に続いたけれど
僕は、気づいていた。
僕が答えるまでの間と、父親が言い淀んだ間。
その意味が、殆ど同じものだってことに。
父親も気づいていたに違いないのに、
そのことに触れてこなかったのは、優しさなんだろうか。]

(37) 2020/10/24(Sat) 21時半頃


[ふっと意識が持ち上がる。

 さっきまで夕暮れの帰り道にいたはずなのに
 目の前にはぼやけた灰色の天井が見えている。

 近くにカーテンでもあるのか、
 さらさらと光が反射して煌めいて
 まるで休日部屋で昼寝をした時みたいだった。]
 



  ……う、

[ここは。

 もしかして、全部夢かな。
 ゾンビとか、進が死んだこととか、
 父さん母さんが死んだこととか
 振られたこととか。

 …………振られたことが嘘はさすがに無理か。]



[ともかくも、

 もしかしたら悪い夢でも見てたのかも、と
 そう思おうとした俺を現実に引き戻すように
 左肩がつきりと痛んだ。

 うめき声をあげると、近くで身じろぐ気配がする。
 のぞき込んできたのは――]

 「目ぇ覚めたか?」

  あ? …………
  ……なんで、あんたが、

[ぼさぼさの黒髪にやつれた顔。
 死んだ目をした、体格のいい男。

 ネコ元帥がそこにいた。*]



[ 部屋の前でお隣のご夫婦と鉢合わせたの。]
 



  あら、ちょうどよかったわ。
  ご相談したかったの。
  これからのこととか……色々と。

[ わたしはそう言って、
 彼らのもとへと歩み寄っていった。

 お二人ともやつれた顔をしていたわ。
 なにか話をしていたようだった。
 そうよね。このまま耐えてばかりいても、
 どうにもならないことは皆わかっている。]
 



  このままでは、
  皆動けなくなるのを待つだけだわ。
  でもまだ生きている人はいるはず。
  きっとどこかに安全な場所が──、

[ いつも落ち着いているご主人も、
 少し気が立っているように見えたわ。
 わたしの言葉を遮るようにして言うの。

 車はもうほとんどガスが残ってないんです

 腕を組んで、しきりに唇を噛んでいた。
 薄く剥けた皮を剥がしているのね。
 落ち着いた品のある人だったはずなのに。]
 



  ガレージの車。
  もうずっと乗っていないけれど、
  こまめにメンテナンスには出してるの。
  古くて小さい車だから不安だけど……

[ ご主人はゆっくりと首を横に振ったわ。

 仮に動いたとして、
  とても全員は乗れないでしょう

 きっとそんなこと、
 もうとっくに考えてたとでも言いたげにね。]

  誰かが生き残っている人に助けを求めて、
  そしてまた迎えに戻って来ればいいわ。

[ そう言った私に、ご主人は小さく笑ったわ。]
 



  ならキーを渡してください
   我々が行きますよ、大人を代表して
 



  それは……、

[ わたしは黙り込んでしまった。

 彼らに鍵を渡して、送り出して、
 帰ってくる保証がどこにあるの?
 戻ってきてくれなかったら、残された側は?
 外への連絡手段だってもうないのよ。
 今度こそどうしようもなくなってしまう。

 ご主人はため息をついたわ。
 ……そうでしょう。
  近所に食糧を探しに行くとは違うんです
 わたしの言葉を封じるようにそう付け足してね。]
 



  けれど、そうはいっても、
  このままだともう……、
  どうにかしないと。何か手はないかしら。

[ 庭で火を焚いてみるとか、
 バルコニーから信号を送ってみるとか、
 そんなことはもうとっくに試していたわ。

 少なくとも今まで、
 外界からの反応は何一つとしてなかった。

 外をうごめくものの数が、
 日増しに増えているように見えるばかり。

 私たちだって考えてはいますよ
 別に非難したつもりはなかったけれど、
 ご主人は少し気分を害したようだった。]
 



[ これからのことを考えるはずだったのに、
 あっという間に場は静かになってしまったわ。

 少しの沈黙のあと、
 唇をちろりと舐めてご主人が尋ねたの。

 ところで、その車のキーはどこに?

 ご主人はじっとわたしのことを見ていた。
 胸の内まで見透かそうとするみたいにね。]

  ……どうしてそんなことを尋ねるの?

[ 戸惑って、問いを返したわたしに、
 ご主人はだってアンフェアじゃないですか≠ニ。]
 



[ アンフェア?
 キーの保管場所を教えないことが?

 きっとわたしは納得のいかない顔をしたんでしょう。
 ご主人は当然だとも言いたげに言葉を続けるのね。

 だって、協力すると約束したじゃないですか

 なんだか少しまずい空気だった。
 わたしとご主人はお互いを見つめあって、
 少しの間黙りこくっていたように思うわ。

 そうすると突然、
 奥さんが仲裁するように口を開いて、
 わたしたちの間に割って入ってきたのね。]
 



[ 彼女ははじめにご主人を窘めたわ。
 脅すような言い方やめてちょうだい
  エドワーズさんが警戒して当然だわ
 そう言って、彼の前に立ったのね。
 わたしのほうを向いた彼女は言った。

 ごめんなさいね、夫も気が立ってるの。
  あなたの言うとおり、状況が悪すぎて。
  けれど、助けを呼びに行くのも、
  実際難しいのは分かってくださる?

 丁寧な物言いにわたしは当然うなずいたわ。
 彼女の言っていることはまっとうに聞こえた。]
 



[ わたしがうなずくのを見て、
 奥さんはどこか安心したようにも見えたわ。

 そして、それに≠ニ言葉を続けようとしたの。
 どこかぎこちのない笑みを浮かべて。

 どうしてかしらね。
 そのときの彼女、なんだか嫌な感じだった。]
 


 
 そんなことで揉めなくたって、エドワーズさん。
  ほら……ここにはまだ食べるものがあるじゃない
 



[ ── え? * ]
 


【人】 地道居士 エニシ

 『やっと電波が入るところにこれたんだが
  ヨスガに電話する暇は、もう無さそうだ。』

[ (え、…………)
言葉を、失った。
兄貴に電話してから、僕に電話したんじゃないのか。
僕は大学に入ってから学部に馴染めなくて、
苛めにもあった挙句不登校の引きこもりになって。

たまに家で顔を合わせても父親は僕には文句ばかり。
僕も食卓で父親と会っても一言も会話せずに
二階に上がることが殆どだったっていうのに。]

(38) 2020/10/24(Sat) 22時頃

【人】 地道居士 エニシ

 『……最後に、お前に言わせてくれ。』

[最後って何だよ。
僕は父さんに、まだ聞きたいことが、]

 『俺も、母さんも。
  お前のことを本当に大事に想ってた。
  ヨスガだって、お前が居ないところで
  あいつは自慢の弟だって、いつも言ってた。
  だから―――お前は、胸を張って、生きるんだ。』

 待、っ…………!!!

[プツッ……ツー……ツー……ツー……]

(39) 2020/10/24(Sat) 22時頃

【人】 時間貯蓄銀行 ヤカモト

  ――――パリーン!ガッシャン!!

(40) 2020/10/24(Sat) 22時頃

【人】 時間貯蓄銀行 ヤカモト


[けたたましい音があたりに響いた。

 3階の事務所の窓を体当たりで蹴破り
 そのまま路上へと転がり落ちる。

 衝撃。胃が浮く嫌な感触。落下。

 素人が香港映画のスターのように
 受け身を取れるはずがない。
 男は無様に肩を強打し、血反吐を吐いた]
 

(41) 2020/10/24(Sat) 22時頃

【人】 時間貯蓄銀行 ヤカモト



  ち、くしょう。
  死んで……たまるか、よぉ。


[落下の衝撃で、眼鏡のレンズが割れた。
 よく前が見えない。

 ぼやけた視界の中で、
 コンクリートジャングルを歩き出す。

 強打した全身が痛かった。
 刺さった硝子の破片が痛かった。
 痛くて、痛くて、ぐずぐずに涙が溢れた]
 

(42) 2020/10/24(Sat) 22時頃

【人】 時間貯蓄銀行 ヤカモト



  なんで、こんな目に。
  ちくしょう。ちくしょう。ちくしょう。


[情けなかった。
 あんなに必死になって金を稼いでいたというのに。
 結局のところ、金なんて何の意味も為さない]
 

(43) 2020/10/24(Sat) 22時頃

【人】 時間貯蓄銀行 ヤカモト




  (オレは今まで、何をしてきたんだろう)


 

(44) 2020/10/24(Sat) 22時頃

【人】 時間貯蓄銀行 ヤカモト


[嗚咽した。
 泣きながら走って、無様に転んで、立ち上がって。
 無人のコンビニにやっとのことで辿り着いた。

 眼鏡のレンズには蜘蛛の巣状の罅が入り、
 無精髭は伸び放題。スーツはボロボロだ。

 消費期限なんてとっくに過ぎた、
 腐りかけのパンを齧る。
 何日ぶりの、ちゃんとした食事だろう]
 

(45) 2020/10/24(Sat) 22時頃

【人】 時間貯蓄銀行 ヤカモト



  ……おいしい。


[乞食のように、貪る。
 子供のように泣きじゃくりながら、
 ただパンを齧り続けた]*
 

(46) 2020/10/24(Sat) 22時頃

[――やだ。
 そう言って顔を膝に埋める青年が小さく見えて、
 まるで昔に戻ったみたいだなと笑う。]

  私も、……君も。 
  キャロルにはなれそうにないな。

[その名を聞いて、シーシャの肩が跳ねたように見えた。
 目端にちらつく動きに視線を外し、目を閉じる。]

  ……せめて、食事はとりなさい。

[昨日ここに来てから何も食べていないのだろう。
 意識のなかった間に強盗でも入っていない限り、
 ・・・・
 人ひとりが生きるだけの蓄えはあるはずだ。

 空腹はない。
 それなのに喉の渇きばかりが頭を満たしていく。
 眠るフリをして、あたたかいものから目を逸らした。]*


【人】 地道居士 エニシ

[ ]
[   ]

[電話が切れてから、どれだけ経ったのか。
僕は呆然と、画面がついたままのスマホを見ていた。

打開策を調べる気力ももう起きなくなっていて
ここ数日、SNSを見る頻度は落ちていたけれど。
それでも、数日間充電をしていないスマホの電池は
後数%だと表示されている。

かりかりと、ドアを齧るような音を背にしながら
いつもスマホを持ったらするように、
僕は無意識に、SNSを開く。]

(47) 2020/10/24(Sat) 22時頃

【人】 地道居士 エニシ

[本当は、兄貴に噛まれてしまうのもいいと思ってた。
兄貴を殺す勇気なんてないし、
一人で生きていく自信もないから。
約束までした頼みを聞けないのは悪いけれど、
僕は、臆病で何もできないやつなんだと、思ってた。

でも。これが最後かもしれないっていうなら
託された想いに応えるのもいいかもしれない。
だって、今頑張らなかったら、もう。
僕は本当に、兄貴のただのお荷物になってしまう。

僕は生きていていいのかと
そう思っていたのは間違いだった。
兄貴と、両親の言葉を、思い出す。]

(48) 2020/10/24(Sat) 22時半頃

【人】 地道居士 エニシ

[生きていていいか、じゃない。
がむしゃらに、生きないといけないんだ。

僕の大好きな兄貴の分まで。
父さんと、母さんの分まで。]*

(49) 2020/10/24(Sat) 22時半頃

地道居士 エニシは、メモを貼った。

2020/10/24(Sat) 22時半頃



 「なんでって、お前、配信してただろ
  それで近くに来てるんじゃねえかと思ってな

  植え込みン中で伸びてんのを確保した。
  ……あ、左手無理に動かすなよ」

[丁寧に忠告してくれる元帥の言う通り
 右手だけを動かして起き上がる。

 よくよくみれば左腕は固定されていて
 誰かが治療してくれたのだとわかった。

 投げ渡される乾パンの袋を慌てて受け取って
 ぱさぱさに乾いた口に放り込んでは
 あまりの湿り気のなさに噎せた。

 げらげらと元帥の笑う声が聞こえる。]



  でもさ、なんで、俺なんか

 「生き残りだから?
  食料は心もとねえけど
  だからと言って人手を減らせば
  あいつらの数の暴力に負けるからな」

[腐った死体どもの。

 と、元帥は言った。
 その一瞬だけ、死んだ目にきつい眼光が宿った。
 
 多分、目の前の男もまた、
 ゾンビに大切なひとをやられたんだろう。]
 



  俺がゾンビになってたらって考えねえの

 「噛み傷がないから問題ないだろうと判断した。
  駄目なら、――――」

[その手が鉈を手に取る。
 俺はひきつった笑いを浮かべて首を横に振ると、
 せめて茶化すように冗談を口にした。]

  噛み傷ないって、確かにないけどさあ
  まさか寝てる間に剥いたりとかしてないですかにゃ?!
  きゃーーおまわりさー いでっ

[黙って水入りのペットボトルで殴られた。ひでぇ。]


  
 「服の上からでもフツーにわかんだろーが。
  お前もう一回ゾンビの群れに放り込むぞ」

  ふぇー。やめて。ごめんなさい。勘弁して。

[俺は配信の時みたいに軽薄に笑う。
 笑いながら、滲んできた涙を拭った。 
 手渡されたペットボトルの蓋をあけて水を飲む。

 ようやく、震える声で「ありがとう」の言葉が出た。
 
 知ってる人と話せることが、 
 こんなに嬉しいなんて、知らなかった。]



[乾パンを喉に流し込んだところで、
 がちゃりと扉が開かれる。

 数人の男たちが、
 ネコ元帥に向けてひらりと手を振った**]


メモを貼った。


【人】 百姓 ワット

[健司たちを迎えに行くべきかとも思ったが、
 今どこにいるかわからず、行き違いになる
 可能性がある以上、家で待っていることしか
 できなかった。]

 くそ……、

[毎朝毎朝、仏壇の前に座って、
 美奈子にあの子たちを守ってくれと祈った。

 いや、あの子たちだけでなく、
 俺の家族の健康を願ってくれた
 心優しい少女やその家族も。
 SNSを始めてほんの数日だが、
 何かの縁で繋がって、知り合った人々が、
 みんな無事で過ごしているといいと。]

(50) 2020/10/24(Sat) 22時半頃

【人】 百姓 ワット

[いくら情報が遅いとはいっても
 世界がもう日常からかけ離れた場所に
 なってしまっていることは、
 町中の人が理解していた。

 八重ばあさんの家や沼太郎の家、
 他にも応援にいった人々の家の方面には
 行かないようにと通達が回ってきた。
 親戚の子どものうちの一人が、既に感染していたのだと。

 ああ、やっぱり。

 その知らせを聞いた時に、
 俺は間違っちゃいなかったんだと思った。
 思わずにはいられなかった。
 見殺しにしたのと同じようなものだと、
 わかってはいても。]

(51) 2020/10/24(Sat) 22時半頃

【人】 百姓 ワット

[町長からの連絡だったが、
 田舎だから、家と家との間には
 数百mの距離がある。
 そっち方面にさえ行かなければ、
 いきなり襲われることはないはずだ、との考えらしい。

 戸締りをしっかりして、家の外には
 でないようにと、ニュースと同じような
 注意もされたけれど、
 それでも毎日畑にいき、圃場管理はしていた。
 毎日山ほど収穫しては出荷していた野菜たちが、
 収穫しない分は少しずつ痛んでいったが、仕方ない。

 7日目には、ごっそりと、
 一部の区画の野菜がなくなっていた。]

(52) 2020/10/24(Sat) 22時半頃

【人】 百姓 ワット

[猪よけの柵はしているが、
 触れてもわずかにビリっとくるだけのものだ。
 畑の敷地に鍵なんてかけるわけもないから
 人の出入りは止められるもんじゃない。]

 ……食うもんがなかったんだろうな。

[実際、SNSの向こう側でも、
 そんな言葉があふれている。
 見も知らぬ人たちだが、
 この野菜たちを届けられたらどんなにいいか。

 健司たちが来ても困らないだけの食料は
 すでに収穫して、
 保存がきくように加工もし始めている。

 このまま畑で腐っていくよりはずっといいかと、
 いくらか収穫して、青いゲージにいれ
 畑の前の道路の隅に置いておいた。]

(53) 2020/10/24(Sat) 22時半頃

【人】 百姓 ワット

『好きなだけお取りください』

[そんな看板もそえた。]

(54) 2020/10/24(Sat) 22時半頃


[ 彼女の言っている意味が理解できなかった。]
 



  ──どういうこと?

[ 理解ができなかったから尋ねたわ。
 わたしにはまったく見当がつかなかった。
 もしかするとわたしの知らないところで、
 食糧を隠し持っていたのかと思ったくらい。

 ご主人は少しばかり驚いた様子だった。
 けれど、なんていうのかしらね。
 理解ができていないという風ではなかった。

 奥さんはしっかりとした口調で言ったわ。
 まっすぐにわたしの目を見ていた。]
 



  ねえ、わかるでしょう。
   助けを求めにはいけない。
   じゃあ待つしかないじゃない。
   誰かが見つけてくれるのを、
   ここで生きて、助けを待つしか
 



[ 揺らぐことのない強い目をしていたわ。
 それが最善だと信じて疑わない声をしてた。

 ……犬、たくさん飼ってるじゃない
  どうせもうじき餌もなくなるわよね
  どうせ死んじゃうわ、それならいいでしょう

 彼女ははっきりとそう言ったわ。
 わたしは信じられない思いで立ち尽くしていた。

 そのとき理解したのね。
 ご主人は彼女が言ったことではなく、
 今わたしにそれを告げたことに驚いてたのね。

 けれど、それはとても受け入れられない提案だった。
 そんなことを考える人がいるだなんて、
 わたしには信じられないような惨い話に思えたわ。]
 



  冗談でしょう?!
  ばかげたこと言わないで。
  ほかに何か方法があるはずだわ。

  ……そうよ、
  わたしのスマートフォン。
  家の中でなくしてしまったの、
  まだ充電が残っているかもしれない。

  見つけたら、そう、
  SNSを通じて助けを求めて──、
 



[ わたしは必死に反論したわ。
 絶対に許すわけにはいかないと思ったの。

 何かほかに手立てはないかと、
 記憶を探って知恵を振り絞って言ったのね。

 けれど、奥さんは非常に苛立った素振りで、
 ぶんぶんと大きく首を横に振るばかりだった。
 そしてヒステリックな口調で叫んだわ。]
 



  ないわよ!
   そんなの出てきっこないし、
   助けなんてさんざん求めたわ。
   でも、この混乱の真っ只中で、
   誰も気に留めちゃくれなかった。

   無理なのよ、今はまだ。
   状況が落ち着くまで、
   なんとかして生き延びないと……
 



[ 奥さんはぜいぜいと肩で息をしていた。
 呼吸を整えるように深呼吸をして、
 そして、またわたしをじっと見るの。

 良いわよね、あれだけいたら、
  しばらくの間はきっとしのげるわ

 真剣な目でそういう奥さんに、
 わたしはこれ以上何と言えばいいの?
 代替案が何も思い浮かばない、
 自分の頭とこの状況がひたすらに憎かった。]

  だめよ、絶対に。
  あの子たちを食べるだなんて……

[ わたしの声はいつしか泣きそうだった。
 そんなわたしを見たご主人が、
 ずいぶんと落ち着いた様子で口を開いたわ。]
 



  エドワーズさん、考えてみてください。
   普通の状況ではないんです、そうでしょう。
   きっと皆そうしています、家畜だけじゃない。
   乗馬用の馬やペットのミニブタを食べてでも、
   人々は生き延びようとしているはずです。

   それと何が違うんですか?
   何としてでも生き延びようとすることが、
   そんなにも残酷で、醜いことなんでしょうか
 



[ 顔を覆ってしまいそうなわたしの手首を握り、
 わたしの目を覗き込むようにして彼は言った。

 ご主人もやっぱり真剣な目をしていたの。
 正しいことを言っていると信じている者の、
 まっすぐで強い眼差しをわたしに向けていた。

 ……言葉が出てこないの。
 ノーリーンを撃ったときと同じよ。

 彼らの言うことは間違っていないようにも思えた。
 けれど、わたしの心は確かにノーと言っていたわ。

 それでも小さく首を横に振るわたしに、
 ご主人は畳みかけるように言葉を重ねたわ。]
 



  お孫さんを死なせたいんですか?
   私は、息子に生きていてほしい
 



[ 喉がからからに乾いていたわ。

 魂を吸われてしまったみたいに動けないわたしに、
 ご主人は考えておいてください≠ニ言った。

 その場を去っていく二人の背を見送りながら、
 わたしの頭の中はもうめちゃくちゃだった。

 あの子にひもじい思いをさせたくないわ。
 いつか自分の綴った言葉が頭の中に響いていた。
 けれど、そんな惨いことが許されるはずない。

 ねえ、そうでしょう?
 わたし、何かおかしなことを言っているかしら。]
 



[ お願い、答えて。いのちに優劣があると思う?**]
 


― 数日後・コーヒーショップ『abbiocco』 ―

[あれから何日が過ぎただろう。
 窓から覗く空模様だけでは、正確な時間は掴めなかった。
 壁掛け時計の針は、濁った膜に覆われてよく見えない。

 畑の間を走る道路から、車の音は聞こえなかった。
 規制がかかったか、
 あるいは車に乗る人そのものが少なくなったのだろう。
 数少ないエンジン音も、明らかに壊された形跡のある
 ドアを見れば、速度を上げて走り去っていく。

 ここを訪れる者はいない。
 孤独が満ちるはずだった――それなのに。

 例外は、いつもと変わらぬ体勢のまま俯いている。]


[最初、彼がその場を離れた時、助かったと思った。
 好きな方を選べと言ったけれど、
 あんなもの、二択の皮を被った一本道だ。
 悔いのない選択など、今ここには存在しなかった。

 しかし彼はすぐに戻ってきた。
 その手にあったのは、
 申し訳ばかりの缶詰と土のついたままの野菜だ。

 彼はコートの袖で拭った人参に齧りつく。
 眉間に皺を寄せ、泣きそうな顔をしている癖に、
 目の光だけは消えないまま。]

  ……ふ、 ふ。

[思わず小さな笑い声が零れた。
 シーシャが視線だけでこちらへ問いかける。]



  ふ……いや、すまない。
  前言撤回しようと思ってね。

  私はキャロルにはなれないが、
     ははおや
  君は、キャロルによく似ているよ。

[薪を燃やす炎に似た赤毛を思い出す。
 太陽が落ちて来たみたいな笑顔を思い出した。
 シーシャは虚をつかれたような顔をした後、
 一瞬だけ眉間の皺を解いて笑みに近い表情を浮かべた。]



[それからずっと、10フィートの境界は保たれている。]
 


[寝る時は私のベッドを使いなさいと言ったけれど、
 シーシャは頑として聞かなかった。
 生きる為に必要な分だけ動き、
 必要ない間はすべて店の壁に背を預けて過ごしていた。

 会話はほとんどない。
 日に何度か彼の名を呼んでは、拒否の一言で幕を閉じる。
 あの日から、状況は平行線のままだ。今日も駄目だった。

 ――嗚呼、
 そんなことをしている間にまた夜が来てしまうのに。
 空が暗く滲んでいくのを、濁った左目で見つめていた。]*


【人】 時間貯蓄銀行 ヤカモト


[コンビニのカウンターの奥から
 商品の煙草を数箱拝借して、懐の中に入れた。

 髪を掻き上げ、大きく溜息を吐く。
 誰もいないコンビニの床に、ずるずると座り込む。
 煙草に火を点し、男はのんびりと紫煙をくゆらせた]


  ……どーすっかな。


[あてもなく、コンビニの白い天井を見つめた]
 

(55) 2020/10/24(Sat) 23時頃

【人】 硯友社 みょんこ

[ それから、同じことの繰り返しだった。]

(56) 2020/10/24(Sat) 23時頃

【人】 時間貯蓄銀行 ヤカモト


[このコンビニの出入口はひとつ。
 逃げ場所も隠れ場所もない。

 長居してはいけない、と
 理性は警鐘を鳴らすのだが、
 どうにも一向に足が動かない。

 煙草片手にスマホを開き、SNSの投稿を追った。

 ふ、と口元を微かに緩ませ返信を打つ。
 スマホからの手動投稿だ。
 スパム文はその発言から消えていた]
 

(57) 2020/10/24(Sat) 23時頃

【人】 時間貯蓄銀行 ヤカモト


[投稿ボタンを押した瞬間、
 スマホに影が差した。

 見上げれば、口から涎を垂らし
 瞳から理性を失くした女が
 こちらを見つめていた]


  う、うわああああああああああああ!!!


[咄嗟にパンの入った戸棚を手で倒し、
 女を下敷きにしようとする。
 足がもつれ、うまく立ち上がれない]
 

(58) 2020/10/24(Sat) 23時頃

【人】 時間貯蓄銀行 ヤカモト


[――――食料を。

 床に転がった菓子パンを
 ひとつふたつ拾い上げてから
 ゾンビから逃れようと、出口へと駆けだす。

 あまりにも必死すぎて、
 男は周囲への警戒を怠っていた。
 それが仇になった。

 死角から、今度は老婆のゾンビが飛び出して
 男へと飛び掛かったのだった]**
 

(59) 2020/10/24(Sat) 23時頃

【人】 硯友社 みょんこ

[ ビルの非常階段で、眠りに落ちかけては目覚めた。
 せめてもの護身用にと抱えたモップの柄。
 何度目だろう、がくりと体が揺れて、頭を振る。
 ビルの隙間の空は白んできていた。

 朝日の差す空をぼんやり眺めていると、
 "何か"が非常階段の扉を突然叩いた。]

ひ───

[ ここにもこれ以上いられない。]

(60) 2020/10/24(Sat) 23時半頃

【人】 硯友社 みょんこ

[ モップを持ったまま、階段を駆け下りる。
 路地を出ようとするとその先には"何か"の姿が
 ちらりと見えた。
 こちらはダメだ。
 踵を返し逆に走り、通りへまろび出る。
 できるだけ安全なところへ。

 でもそんな所どこにあるんだろう?]

(61) 2020/10/24(Sat) 23時半頃

【人】 硯友社 みょんこ

[ 逡巡し、足が止まると斜め後ろから呻き声がした。]

や───

[ 思わず振ったモップの柄に、鈍い感触が響く。
 そこにいたのは呻き声を上げる"何か"で。]

───っ!!!

[ 声にならない悲鳴を上げながらモップを引く。
 "それ"はぐらりと後ろに大きく揺れた。
 私は通りを走る。走る。走る。

 ビルの路地、エントランス、自販機の陰。
 非常階段、駐輪場、マンションの裏。
 止まっている車は大抵ロックが掛かっていた。
 他人の家は──どうしても罪悪感が消せなかった。

 つまり、私の居場所は今この世界には
 どこにもなかった。]

(62) 2020/10/24(Sat) 23時半頃

【人】 百姓 ワット

[日が暮れる前にはいつも家に戻り、
 インターネットで情報を集める日々だった。

 対策を練りたい、そんな投稿も見かけたが、
 俺自身はこの目でまだ見てはいない。
 なんの有益な情報も出すことはできないでいた。

 SNSで告知されていた配信、とやらもみていた。>>3:56
 同じように見た人が保存していたものが
 YouTubeなどにもあげられて、
 繰り返し見られるようになっていた。

 これが親切に教えてくれた謎のX君なのか。
 マスクと長く伸びた前髪のせいで、
 表情や顔つきまではよくわからなかったが、
 本当に、現実にいる誰かが
 あれらの投稿をしていたのだなと
 なんだか不思議な感じがした。]

(63) 2020/10/24(Sat) 23時半頃

【人】 百姓 ワット

[それと。
 ゾンビが、本当にいるのだということも。
 それまでにもニュースや動画も見かけてはいたが
 俺が目にしたのは、どれもヤツらが遠目で
 映っていたものばかりだった。
 荒れ果てた都会の光景の中、
 カメラ?をもつ謎の猫X君の走る音が響く。]

 よじ登るのは、時間がかかるのか……。

[謎の猫X君が言っていた台詞と同じことを口にして
 ヤツらがどんな動きをするのかを、
 つぶさに観察した。
 綺麗な空をみたい、というセリフには>>3:85
 なんだか無性に目の奥が熱くなった。]

(64) 2020/10/24(Sat) 23時半頃

【人】 硯友社 みょんこ

みず……欲しい……

[ 何度目だろうか、小さなコンビニの裏手で
 座り込んだ私は思った。
 水も、食べ物もない。
 頼りのスマホもバッテリーが心許なくて。
 そもそもこんな状態でスマホの決済も
 使えるのかどうかわからなかった。

 きっと私は"あいつら"と変わらない目をしていた。
 そのまま横に積んであったコンテナに少しだけ
 身を預けると。

 ごとん。

 コンテナの影からコロコロとココアのボトルが
 転がり出た。
 恐らく廃棄予定だったのだろう。
 いくつかは袋が破られていたが、賞味期限切れの
 おにぎりも落ちていた。]

(65) 2020/10/24(Sat) 23時半頃

頭蓋骨と骨 ヘイタロウは、メモを貼った。

2020/10/24(Sat) 23時半頃


【人】 硯友社 みょんこ

余計、のど乾くじゃん───

[ へへへ、と笑い声が漏れているのに、涙が出る。
 ココアを拾い上げて飲み干すと、やっぱり甘くて
 喉に絡まって仕方なかった。
 乱暴におにぎりのパッケージを開けると、
 海苔が全部持っていかれてただの白いおにぎりに
 なってしまった。

 何もかも滑稽で、笑いが止まらない。
 早く飲み込まないと、またあいつらが来るのに。]

(66) 2020/10/24(Sat) 23時半頃

【人】 硯友社 みょんこ

[ そうして、何度も同じことを繰り返して、
 やっと自宅だった場所に帰り着けたのは
 4日目の夕方だった。]

(67) 2020/10/24(Sat) 23時半頃

メモを貼った。


硯友社 みょんこは、メモを貼った。

2020/10/25(Sun) 00時頃


【人】 硯友社 みょんこ

[ どうして家へ戻ってきたのか自分でもわからない。
 でも、もしかしたら──あの猫がいる気がした。

 マンションは、半焼というレベルだろうか。
 火の手の出ていた東側は真っ黒になっているが、
 私の部屋近辺は多少煤けているだけに見えた。]

う、わ。

[ エントランスに人気はない。
 プラスチックが焼けたような臭いがあたり一面
 充満していた。

 あまりの焦げ臭さに口元を手で覆いながら
 とぼとぼと階段を上る。
 あの時猫を連れて逃げ出せたのが奇跡かもしれない。]

(68) 2020/10/25(Sun) 00時頃

【人】 頭蓋骨と骨 ヘイタロウ

    ガシャーーーン!!!!!

(69) 2020/10/25(Sun) 00時頃

メモを貼った。


【人】 頭蓋骨と骨 ヘイタロウ

   『逃げろ!!!!』

[聞き慣れた宿屋のおじさんの、叫ぶ声が響く]

(70) 2020/10/25(Sun) 00時頃

【人】 百姓 ワット

[家の本棚から地図を引っ張り出し、
 健司たちの家からここにくるまでに
 通るかもしれないルートを書き込んで。

 9日目には、朝から玄関に張り紙をした。]

(71) 2020/10/25(Sun) 00時頃

【人】 硯友社 みょんこ

[ 家に帰ってこれたのも、運が良かったと思う。
 そう私は自分に言い聞かせる。

 日常を失っても体が無事で良かった。
 火事になっても家が焼け残っていて良かった。
 せめて猫を外に連れ出せて良かった。

 今までずっと、自分にかけてきた呪いの言葉を
 また自分に向けて唱える。]

(72) 2020/10/25(Sun) 00時頃

【人】 百姓 ワット


『健司へ
 お前たちを探しに行ってくる。
 夕方には一度戻るつもりだ。
 もし入れ違いにここについたら、
 家の鍵はポストにいれてある。
 番号はお前の誕生日だ。
 勝手にあがって待っていてくれ。』
 

(73) 2020/10/25(Sun) 00時頃

頭蓋骨と骨 ヘイタロウは、メモを貼った。

2020/10/25(Sun) 00時頃


【人】 百姓 ワット

[ゾンビは知能がない。
 SNSの情報をもとに、そんな内容をつづった。

 これなら鍵のあいた玄関から、
 ゾンビに勝手にあがりこまれる心配もないだろう。

 武器になりそうな鍬や鎌を積んで、
 もし健司たちが見つかれば、
 乗せてやらなきゃならんだろうと、
 仕事用の軽トラではなく、バンへと乗り込んだ。

 きっと、ここに向かっている途中の健司たちと
 どこかで会えると信じて。**]

(74) 2020/10/25(Sun) 00時頃

【人】 硯友社 みょんこ

ただいま。

[ 誰もいないはずの私の部屋。
 そろりとドアを開け、中に入る。
 電気のスイッチは反応しない。
 部屋中にもやはり焦げた臭いは充満していた。

 部屋の鍵を後ろ手に閉めようとした時、
 「みゃおん」と声がした気がした。]

──アーサー…──!!

[ 私は声を上げて部屋に入った。
 最後の最後で神様は]

(75) 2020/10/25(Sun) 00時頃

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