人狼議事


308 【R18】忙しい人のためのゾンビ村【RP村】

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メモを貼った。


― コーヒーショップ『abbiocco』 ―

[ストーブの中で、薪が爆ぜる音がする。
 それに返事でもしたような呻き声が聞こえた。
 床吸う耳は、硬いものを落としては引き摺る振動を拾う。

 細身の男だった。ルパートより高く、シーシャより低い。
 最初は、乱暴な客が来たのだと思った。
 ベルを掻き消すくらい強く、ドアを開く音がしたからだ。

 自身の足は、そういったものに対峙した際に弱い。
 歩けない訳ではないが、逃げることに向いていないのだ。
 だからどんな意見の相手に対してだって、
 否定から入ることはない。
 争うことは、不得手だ。

 腕を掴まれ、パソコンを巻き込んで放り投げられた。
 全身を強く打ちつけたせいか、
 痛みはあるのにどこか遠く感じる。]


[――間違い、だったのだろうか。

 シーシャの説得に応じて街に帰っていれば、
 ルパートと共にこの地を離れていれば、
 食料を分けた誰かに伴って西へ向かっていれば、
 あるいは、何もかも拒んで閉じこもってしまえば、
 異なる未来に出会えていたかもしれない。

 しかし、たぶん無理だ。
 そんな曖昧な可能性では何度同じ場面に巡り合っても、
 頑固な自分はきっと同じ選択をしてしまう。

 慕ってくれる彼にも、
 頼りにしていた隣人にも伝えた選択を繰り返す。]

  (死ぬ時は、どこまでも広がる大地のそばがいい)

[瞼の裏に、トウモロコシ畑に揺れる赤毛が見える。
 その上に太陽をそのまま形にしたような笑顔を描いた。]



  だ、けど 、

[ボウルの中で丹念にすり潰したような声が出た。
 最初の衝撃で起きた目眩がようやく落ち着いてきた。
 それが叶ったのは相手の反応が遅かったおかげだ。
 揺れる視界にその姿を収めると、
 左腕がだらりと下がり、右足を引き摺っていた。

 肩が外れたか、足を挫いたか。
 あるいは筋肉自体がやられているのかもしれない。
 来店した時には特に違和感を覚えなかったから、
 きっとこちらを放った時に負傷したのだろう。

 あまりにも、己の身体を鑑みていない動きだ。
 身体に見合わぬ強い力はそのせいだろうか。
 リミッターが外れているような、
 理性が跡形もなく溶けたような、そんな印象を受けた。]


 
  わたしは……べつに 、
  しにたいわけ、じゃあ 、ない。

[死ぬために、喧騒から離れた訳じゃない。
 死ぬために、周囲に甘えている訳でもない。

 写真を上げるのは、それが生存証明になるからだ。
 相槌のような印は共感の意味合いも含まれる。

 そんな風に写真を落とすばかりだったアカウントで、
 昨日と今日多く文字を残した。
 それだって、存在を確かめる作業に近いものだった。

 世界中の誰かと、顔も知らない状態で言葉を交わす。
 それは遠くとも近い、不思議な距離感だと思う。

 これはルパートにだって打ち明けていないことだが、
 要は、自ら残ることを選んでおきながら、
 少しだけ心細かったのだ。]


[周囲に視線を巡らせる。
 パソコンは裏返しに開き切ったまま伏せっているし、
 横たわる車椅子もロックがかかり完全に沈黙している。
 薪ストーブへ向かっても、それより男の手の方が速い。

 胸ポケットのスマホをドアの近くへ投げてみても、
 呼びかけてみても何の意味もなかった。
 男はなぜか他に興味を示さず、こちらへ近づいてくる。
 相対し初めて、その目が酷く濁っていることを知った。]

  ッハ、 これは……こまったな。

[何もなかった。何もできなかった。
 何か、残せたら良かった。

 まだ正常に動く男の右腕が、
 じりじりと後ろへ下がっていた自身の左腕を捉える。

 ――ふ、と。
 シーシャが食べた、あの厚いベーコンを思い出した。]*


メモを貼った。



  [はじめ、助かったと思った。
   つぎに、もう助からないと思った。
   最後は、せめて助けたいと思った。]
 


[何日たったんだろう?
日付の感覚なんてとうに失くしてしまった。

ただ、朝日が窓から差し込むから
それは網膜を焼くほどに眩しいから
また一日、経ったのだってことだけわかる。

だけど私の脳はどんどんふやけてくみたいに
わかってたことがわかんなくなってってる。

たとえばこれ。
手にもってるこの、長方形の…板?

縁についてる突起を押すと表面が明るくなるけど
これはなんのためのものなのか、わからない。]


― ??? ―

[空気の音が聞こえた。木を軋ませる、風の音だ。
 鳴き声みたいなそれをきっかけに、意識が身体に宿る。]

  ……?

[瞼を持ち上げたつもりだったが、前が見えない。
 まだ寝ぼけているのだろうか。
 昨晩は何をしていたんだったか……そう、そうだ。]

  ……。

[緩慢な思考は混乱も動揺も許してはくれない。
 ただ耳を澄まし、記憶に霞んでしまった呻き声を探る。

 風の音、軋む音。 風の音、   軋む音。
    小さな呼吸音。

 何かが、いる。]


[お腹空いたな。
おかあさんのお味噌汁が飲みたい。

…おみそしる?


なんだっけ。]


[今度は失敗しないよう慎重に瞼を持ち上げたが、
 一向に視界は晴れなかった。
 原因を確かめるよう無意識に手を伸ばすと、
 何者かに覚醒を気づかれたのだろう。
 呼吸を捉えられなくなり、代わりに衣擦れの音がした。]

  ……あ゛、 あ。

[生きているのなら、逃げなくては。
 思考よりもっと深い部分が警鐘を鳴らす。
 荒くなったはずの呼吸は、淀んだ呻き声になった。]

  あ……?

[その時。ミケ、と呼ばれた。動きが止まる。
 最近じゃ皆に合わせてマスタと呼ぶようになっていたし、
 同じ仕事に就いた時点で遠ざかっていた響きだ。

 後退の為に床についた手を止める。
 その指先は、眼球に触れてほんのり湿っていた。]


[左目に色素の薄い髪が映る。
 日に翳せば透けるような色は、くすんでしまっていた。
 けれど、それはきっと彼だけのせいではなく。]

  しー、 しゃ。

[どうして君が、ここにいる。
 濁った瞳の向こうに、いるはずのない命を見た。]*



  ……いつ、 きた。

[昨日、と返答があった。]

  いまは、

[日付だけを告げられる。
 それを受けて考えるよりも先に4日と続いた。]


― 4日後・コーヒーショップ『abbiocco』 ―

[壊れたドアを端材で無理矢理留めた場所から風が入る。
 その度にささくれた木がきぃきぃと甲高く鳴いた。

 どうしてここに――なんて。
 答えの分かりきった質問はしない。]

  ……触れた?

[代わりに、たっぷり時間をかけて別の問いを投げた。
 自身よりも大きく育った彼は壁際で膝を抱えている。
 膝頭に額を押しつけてから乱暴に首を横に振った。
 まるで水浴びをした後の犬のようだった。

 そうだ。それでいい。
 10フィート先からぐうるりと目玉を揺らして笑う。]


[思考も声も徐々に元通りへ近づいていったが、
 本当にただ近づいただけだった。
 安堵の吐息や笑い声には、まだ時折呻きが混じる。
 その度シーシャは怯え、警戒するように身を固くした。

 右目は相変わらず開いているのによく見えないままで、
 左目もごく稀に持ち主の意思に反して巡る。
 その時視界の端に映った左腕はずたずたになった
 どす黒い布地の向こう、生白い肌が歪に繋がって見えた。

 まるで、死にたくない心に肉が応えたかのように。
 応えてしまったかのように。]



  シーシャ、

[あの子はシーシャ。
 元部下で、半月に一度物資を届けてくれて、
 礼儀正しく、それでいて子どもっぽいところもある、
 どこへだって行ける足を持った若者だ。
 うんと小さい頃から知っている、可愛い子。

 やめろ。“あたたかいもの”なんかじゃ、ない。

 渇き張りつく喉を粘ついた体液で押し流し、口を開く。]



  出て行くか、殺すか。
  好きな方を選びなさい。**
 


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