人狼議事


310 【R18】拗らせ病にチョコレヱト【片恋RP】

情報 プロローグ 1日目 2日目 エピローグ 終了 / 最新

視点:


【人】 大太刀源流 タツミ

─ バレンタインデー前日その後:昼頃の男子風呂 ─


[ 圷が洗濯を終えて立ち去ったランドリールームは、一人きりだった。

 なんとも言えない心地が再来しても紛らわせるものがない。
 乾燥まで終えて今度は自分が風呂に入っても、会話相手がいないと物思いに耽ってしまう。

 一番言葉を多く交わして、一番心地良い関係性になっていたつもりの隣人
 彼との会話でもバレンタインを意識させられるとは思わなかった。

 甘い香りは思ったよりも人々の心を動かしている。

 もしかしたら彼女もまた、恋をしているのかもしれない。
 圷に次ぐ意外性のある人物として浮かんだその顔。
 敷波玲。名と竜海が知る姿から想像させられるものは、夜の海。 ]

(1) ガラシア 2021/02/18(Thu) 01時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ

─ 敷波玲という女性 ─


……そうですね、そればかりはどうしても

[ 少し面食らったことは、恐らく相手には悟られていない。
 男女の会話は淡々と静かに行われた、しかし竜海と向かい合う女性の表情は無よりはクールと呼ぶべきだろう。>>112

 購入を求めた経験は多々あれど、そんな風に演技に言及し役者側の事情まで指摘した人は初めてだった。
 舞台の始まりは娘が青年を助けた直後から、理由は敷波の言った通り。

 頭の回転が速い、というのがもしこれだけの会話では過剰な表現だとしたら
 それは、普段の尖った足音を鳴らす完璧な立ち振舞いのキャリアウーマンへの評価が加点された故のことで、相応しいことには変わりない。

 目に映る女性は涼しげに何処までも凪いでいた。
 白く細い手にチケットを手渡し>>133別れたその後、彼女の評価が更に上がっていたことは言うまでもない。 ]

(2) ガラシア 2021/02/18(Thu) 01時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ



[ そうして、二人は観る者と観られる者になる。

 舞台に上がる男に応じて彼女が客席に座り、
 黒を纏い歩く凛とした様を、仕事帰りの男が目で追う。
 
 けれど竜海のそれは脚本をなぞる役柄であり、
 敷波の姿は一人の女性が必死に繕った努力だった。

 急な雨に降られ、バイト先に駆け込んできたいつかの記憶>>117
 ただそれだけで、彼女にもそんなことがあるのかと
 密やかに意外さを感じていたことが、どれだけ真の相手を見ていないのか。 ]

(3) ガラシア 2021/02/18(Thu) 01時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ



[ 敷波玲は一人の人間である。
 停滞せず懸命に凪いだ道を作ってゆく、生きている。
 水面下に努力を隠し優雅さを崩さない、白鳥の如く。

 だからこそ、大田竜海は気づかない。

 舞台を降り睦時を過ごすその時に、見ていた者“達“がいたことにも。 ]

(4) ガラシア 2021/02/18(Thu) 01時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ


[ 永久に融解しない氷の海には、白鳥は泳げない。
 互いを快く思う者達の間に存在する、境界。* ]

(5) ガラシア 2021/02/18(Thu) 01時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ

─ 我に返り ─

[ ああ。
 関係がない、興味がないと言いながら
 目にすれば幾度も気にしてしまうのは

 揺れる温かい水面に視線を移す、一人俯く。
 どんなものを愛していても、どんな秘密があっても
 誰にとっても恋とは難儀に変わりない。* ]

(6) ガラシア 2021/02/18(Thu) 01時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ

─ 余談:ある日の劇団の活動中 ─


はあ、ぶいちゅ……
すみません、もう一回言っていただいても

[ 音楽配信サービスでCDの売上が大幅に下降したように
 映像触媒とインターネットは、
 足を直接運んで貰いたい現場商売には仇敵に等しい。

 勿論大手ならディスクや配信を自分達でも行える。
 しかしプロ劇団など世界を股に掛けるものから実質本業がバイト先までピンキリ、全体から見ればそんな層は上澄みの上澄みだ。

 故に時代の進歩についていく活動者へ、妬みや羨みを持つ役者もいる。
 今人気だという、そのよく分からない人達が現在話の種として上がっていた。
 家にいながら可愛らしいキャラクターになって設定に準じて演技し、視聴者と交流し沢山のお金を彼らから貰うらしい。 ]

(10) ガラシア 2021/02/19(Fri) 00時頃

【人】 大太刀源流 タツミ



[ この子が今人気なのだと、スマートフォンの画面が向けられる。

 水色の髪に獣の耳がついた子供が独特の動きで緩やかに左右に揺れている。
 愛らしい容姿と裏腹、その瞳は静かで落ち着いた声をしていた。
 なんとなく敷波玲を彷彿させられる。 ]

つまり、こっちに反応してくれるアニメですか?

[ その声を聞き画面横の流れてゆく文字列を眺め、結論を出した。

 「おっさんかよ」
 自分より年上の団員に言われ、周囲から呆れのような苦笑が向けられる。

 やはり自分ではついて行けないらしい。
 同僚が暇な時に読んでる漫画本のタイトルくらいは、最近覚えたのだが。
 時代遅れの烙印を押された竜海を置き去りに、話題はチョコレートと迫る日へと移り変わる。* ]

(11) ガラシア 2021/02/19(Fri) 00時頃

【人】 大太刀源流 タツミ



「これ……受け取って下さい!」

[ 今日はきっと、そんな言葉があちこちで響いている。 ]

(22) ガラシア 2021/02/19(Fri) 22時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ

─ バレンタインデー当日昼/ガソリンスタンド ─


[ 背後からその声が聞こえたのは、バイト中のことだった。
 先程入ってきた軽の女性客が、応対している店長にチョコレートらしき贈り物を差し出したようだ。
 最も忙しくなる会社員の退勤時間を避けた、見事なタイミング。
 シフトまで知っていたのは分からないが、計画したものだろう。

 時間は短いが定期的に来なければならない、店員と近い距離で顔を合わせ話す、男性が中心となった職場。
 渡すタイミングこそ難しそうではあるが、ままあることらしい。
 大抵は喜んで受け取るそうだ。店長も笑顔で礼を言い、箱は彼女から彼の手へと渡る。 ]

(23) ガラシア 2021/02/19(Fri) 22時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ


[ ただ、彼女の想い人は既婚者だった。
 貴金属でお客の車に傷を付けないように、この業界は多くの店員が仕事中指輪をしない。
 きっと知る機会すら無かっただろう。開いた窓から垣間見えた顔は寒さではない理由で、赤く染まっていたから。

 お客が来れば対応せねばならない。実質的に休憩時間が無い扱いになりがちの職場で、運良く人が途切れたタイミング
 声を掛けてきた店長は、あの女性客とは対象的な眉を寄せた迷惑そうな顔をしていた。

 「君、どうせ貰う当ても無いんでしょ」
 「持って帰ると面倒なことになるんだよね」

 想像通りの二言と共に、彼からあの贈り物を渡される。
 綺麗な青い色をした、ハート型の箱だった。 ]

(24) ガラシア 2021/02/19(Fri) 22時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ




……店長がそう言うのなら

[ 彼女に出来ることは何も無い。 ]

(25) ガラシア 2021/02/19(Fri) 22時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ



[ 箱はそれなりに大きく、その割には軽い。
 僅かに開いて覗いた中には、
 青い薔薇の造花が敷き詰められた中心に、小ぶりでシンプルなチョコレートの粒が入っている。

 若い女性だった。
 気に入ってもらう為に彼女なりに考えた男性好みと、想いに気づいてもらう為の可愛らしさを
 この贈り物に託したのかもしれない。 ]

(26) ガラシア 2021/02/19(Fri) 22時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ



[ 花言葉は不可能、そして奇跡。
 演劇なんてものをしていると、らしくないロマンチックなことも記憶する。

 世界初の青い薔薇は実はこの国で生まれ、対極の言葉を与えられた。
 その色は紫に近く、本当の意味での青は未だ生まれていない。

 儚い花の生の中、掲げた奇跡が不可能を塗り替えるのは夢のまた夢。 ]

(27) ガラシア 2021/02/19(Fri) 22時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ



[ そんなものだ、結局は。* ]

(28) ガラシア 2021/02/19(Fri) 22時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ

─ バレンタインの夜に ─



[ 勝手に持って行ってくれる、罪悪感も減る、送り主に知られる可能性も低くなる。
 言うならば体のいいゴミ箱として選ばれた。

 テーブルに置いたままの箱を帰宅以降一度も開けていない、食べるか食べないかの選択すら思考していない。
 一言で言ってしまえば、重かったのだ。
 他者への想いが詰まった、よく吟味されたことが見て取れる贈り物は。 ]

(51) ガラシア 2021/02/20(Sat) 19時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ


[ あの箱に見られている気がしてならない。

 状態が良くなった圷の様子を見に行くことも無くなり、言うまでもなくこの日を共に過ごす相手のいない身
 一度『彼』に会いに行ったものの、見つめること以外には叶わない身では結局普段通り。名残惜しさは少しだけ歩みを鈍らせただけだった。
 明日も会えるのだから、──自分には結局、恋人達の日なんて関係ないのだから。

 そうして退勤以降の殆どの時間を、自室で趣味に充てることになる。
 今日は逃避という別の理由もそこに含み、閉じ籠もる世界は混ざり物となっていた。

 ベッドに腰を掛け、最近買った本を眺める。飽きもせず、日付が変わりそうな夜更けまで繰り返した。
 少し首を動かせば、すぐ側の窓から外の景色が眺められる位置だった。
 部屋には灯りがついており、現在カーテンを閉じていたが。 ]

(52) ガラシア 2021/02/20(Sat) 19時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ



[ だから、
 世界に傷を付けまいとする音は>>31届くこともなく

 しかし、
 位置が変わることで>>34何かを感じ捲る手が止まり

 決定的になったのは、
 軽いものが当たり、落下する音>>35。漸く顔を上げ

 眠り際の定位置に本を置き、カーテンを開く。
 窓を開け放ち吹き荒び痛むような寒々しさを齎す潮風を受けても、髪だけが乱れ表情は変わらない。

 最初に目に入ったのは欄干と窓の合間、ベランダと呼ぶには狭すぎる空間に落ちているもの。何の特徴も無い普通の鉛筆だった。 ]

(53) ガラシア 2021/02/20(Sat) 19時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ


……圷さん

[ 摘み上げた物から推理する必要もなく、その声と共に目は朧の間がある側へと向いた。
 大きな窓の枠に手を掛け、吹き込む風に逆らうように冬の夜の空気へ自らを晒した。欄干が落下を、外壁が隣への移動を阻む。
 伸ばすのは腕ではなく首だが、もし犯人が引っ込んでいても姿を見るくらいなら出来る筈だ。彼もそうして、この行為に及んだのだから。

 投擲用ではない文房具を、外から二階の窓へ向け放つ
 謎の行為をする理由と腕のある何者かがいるのでなければ、犯人とその居場所は自ずと一つに絞られる。
 この綿津見に隣室は一つしか無いのだから。 ]

(54) ガラシア 2021/02/20(Sat) 19時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ



[ こちらも同じようになっているだろう乱れた黒髪、マスクは外している。>>33
 まるで他にも落ちたものが無いか探すように、既に暗く見えづらい地面を一度見下ろした。
 音が一つだったことを、知っていたけれど。 ]

圷さんは、やっぱりお淑やかでは無いです

[ 酔っているのか、熱があるのか
 浮かんだ言葉は間違いであると分かっている。
 他に口に出せる言葉は一つしか浮かばなかった。何も、分からなかった。
 分かるのはあの裸足の足跡が圷の風邪の原因だろうということだけだ。 ]

(55) ガラシア 2021/02/20(Sat) 19時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ



[ 海霧は、温度がある空気が冷えた海面に接することで生ずる。
 朧気な風景は、意味も無く生じるわけではない。 

 感じた何かを流し、掴めないを良しとすることを心地良いと判断していた二年間。

 だが。圷文彦は、人間だ。>>32
 人間が不変であることは、難しいのかもしれない。

 昨日、そんなことを意識させられたばかりだった。 ]

(56) ガラシア 2021/02/20(Sat) 19時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ



…………。
……今持っていっても?

[ 幾分かの迷いを経て、一言問う。少し声が小さくなった。

 いくら割れるものでは無いとはいえ、
 他人の持ち物を地面に落下させる可能性は、避けたい。
 そんなものは半分は建前だろう。

 何処までが自己と相手にとって許せる範囲の踏み込みなのか、自分でも分かっていなかったが、此の行為は無視できるものでは無かった。

 無論、断られればそれ以上は強いれない。
 菓子を贈りたい女性と何かがあり聞いてほしいのではないか、そんな思考故なのだから。* ]

(57) ガラシア 2021/02/20(Sat) 19時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ


こんな季節に変なことを試すより、
その時に暴れて騒いでくれたら良いと思います

[ 鉛筆の位置は非常に危うく、落ちたというよりは奇跡的に引っかかったと言うべきだろう。

 異質な火災訓練、それが理由で持ち主に放られたというのだろうか。鈍感な隣人の為に本来の仕事から外れ、不憫なことだ。
 落ちた一滴の黒、濡れた裸足、見たことのない柔らかい表情、今夜の行動。言われるがままを呑み込むには、最近の彼は違和が多すぎる。

 空を叩くような仕草>>61は、舞台上で見る共演者の演技を思わせた。
 反論を返した時だけは滑らかに語ったこちらも、似たようなものだったかもしれない。

 簡潔な答えしか返らなかった指摘もそれも、本当に言いたいことでは無かった。
 いつもならそうして、冷たいものが生じた異物を覆い直してくれる。

 石が投げ込まれ続ければ、大きな流れもいつか堰き止められてしまう。 ]

(76) ガラシア 2021/02/20(Sat) 23時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ



[ 迷いを経た切り出しには、すぐに答えは返らなかったか。
 沈黙が終わるまで、目を閉じたその人>>62を見つめていた。
 二人の視線が合い続けることは出会った頃から無い。それだけは相変わらずだ。

 何処か遠くで鳴いていた鳥の種類は、自分には分からなかった。 ]

……! はい

[ 愛想が無い、語りきらない。隣人らしい返しだった。>>64
 息を吐き、こちらも短く返す。断られても圷がそれでいいなら構わなかった筈が、何処か安堵していた。

 彼の姿が見えなくなれば、振り返り部屋の反対側へと向かう。
 その前に窓は閉じているが、あの香りを未だ感じているのは、錯覚だろうか?
 強い風が空だけではなく隣の部屋まで運んでしまったのかもしれない。 ]

(77) ガラシア 2021/02/20(Sat) 23時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ

─ 朧の間前 ─


[ 夜更けの廊下にその音は>>65よく響き、こちらの部屋の中まで聞こえていた。
 先に待っていた圷と、改めて顔を合わせる。
 薄闇と乱れた髪>>61が曖昧にしていたものは、存外柔らかい。>>65それ以外は、普段と変わりなく見える。 ]

こんばんは、お邪魔します

[ 挨拶と裏腹、すぐには動かない。
 もうそうする必要は無くなったというのに、首を傾けてその顔を眺めた。

 小柄な女性や子供と話す時には、顔が見づらくそうすることがある。
 ただ、圷の身長差はこちらのほうが多少高く、相手の姿勢が正されればもう少し縮まりそうな程度だ。
 もしその行為について問われても、答えは返さない。廊下で話をするつもりはなかった。 ]

(78) ガラシア 2021/02/20(Sat) 23時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ



[ 掴めない、掴まないようにしていた朧の中に
 望んで踏み込んでいく。 ]

(79) ガラシア 2021/02/20(Sat) 23時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ



まだ二月ですよ、寒いでしょう

[ 迎え入れてもらった部屋の中を、差し入れの時のようには眺めなかった。
 しかし、大人しく誘導されるのを待つこともなく。
 ただデスクよりも更に奥、開かれたままの窓>>64へと視線が向き
 閉じ、冷たい空気の流れを阻もうと、歩いていく。

 止められても止められなくても、背を向けたまま途中で足は動かなくなる。 ]

圷さん。
本当に、試したかったんですか?

[ 何か言いたいことがあったのではないか、と。

 あの時とはまた違う不躾と取られてもおかしくないが、こうしなければ踏み入ることも問うことも出来なかった。
 二人の間にあった距離感を、相手も望んでくれていると思っていたからだ。

 窓を叩く一石となる役をこなした鉛筆は、まだ竜海の手の中にいる。* ]

(80) ガラシア 2021/02/20(Sat) 23時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ

─ 朧の間 ─

……。

[ 分かりたかったのはそんなことじゃない。>>93

 求めた形とは違う答えと、追い越して窓に手を伸ばす背中。
 浮かんだままを子供の駄々のように口に出すには、27歳は充分に年を取りすぎていた。

 目を逸らす>>91よりも簡単に、圷の言葉と心は手からすり抜ける。
 遮るものは何も無い筈なのに、相手が分からない。
 口論など芝居の中での話、少しの反論すら珍しいことの自分では最適な続きが浮かばない、伝えられない。
 ──振り絞ったものが尽きかけている。

 この部屋の中も今の圷も、まるで変わりなく日常の中にいるようだった。
 でも、相手がそうあることを望んだのはきっと自分が最初だ。 ]

(105) ガラシア 2021/02/21(Sun) 03時頃

【人】 大太刀源流 タツミ




そんなことをしているから、風邪を引くんです

[ 本当の想いは押し込んでしまうのに、それ以外は簡単に口をつく。
 人間とはそういうものだろうか。
 灯る温度も無い声とまともではない愛情を持って、弱い部分だけは普通の者達と変わらないなどと。
 更に広くなった入り口から入り込む潮風が>>94、室温を更に厳しいものに変えながら嗅ぎ慣れた香りを巡らせていた。 ]

……え、

[ 振り向いた彼はこちらではなく、画面が消灯したパソコンへと向いた。
 ややあって告げられたのは、あまりにも予想外の内容。

 今ここでする話題がそれであることも、自分が教えてもらえることも。

 漏れた声には驚きが乗り、ほんの僅かな間、目を見開いてしまった。
 自分がこの部屋の異物のように感じ、行ったことに後悔を感じ始めていたところだった。 ]

(106) ガラシア 2021/02/21(Sun) 03時頃

【人】 大太刀源流 タツミ


そうなんですか、……おめでとうございます。
本当に驚きました。

こちらのことはどうぞ気にせず、専念して下さい

[ 冬の風より余程頭が冷える。全てそれが理由だったのだろうか。

 その業界には明るくないが菓子は担当か相手先への挨拶の為か、本当に誰かに何気なくあげたのか。
 悩みではなく明るい方向性だったのなら、自分も喜ばしく感じる。
 一度も感想を伝えてくれていない圷が、こちらの公演を思いの外気にしてくれていることも。 ] 

立ち退きの時に頼むことは、別に考えたほうがよさそうだ

[ ふといつかの冗談を思い出し、唇の両端が僅かに持ち上がる。
 隣人の突然の告白内容に意識が向いている当人にも、自覚がない程度の微細な変化だった。

 タイトルもペンネームも今は聞かなかった。今後聞くことや、本を手に取り知る機会があるかもしれない。
 本当に困窮しても、荘から去ることは手を尽くして避けるつもりであるように。
 これからも圷文彦と大田竜海は隣人であり続けるだろうから。 ]

(107) ガラシア 2021/02/21(Sun) 03時頃

【人】 大太刀源流 タツミ




次にお知らせがある時は、
窓じゃなく扉からお願いしますね

[ 長い鉛筆を差し出す。
 これを届けただけなら入る必要なんて無かった。
 入室を許した相手も>>91理解していただろうこと。

 返却は、此処にいる理由を手放すに等しい。
 今は惜しくもなくそれが出来る。 ]

こんな時間に入れていただいて、ありがとうございました

[ 一礼する時には表情は元の鉄面皮、何も無ければそのまま辞すだろう。* ]

(108) ガラシア 2021/02/21(Sun) 03時頃

【人】 大太刀源流 タツミ

─ 朧の間 ─


[ 傷ついた顔をしたように見えた気がした。>>111それは表情を変えるには至らない。
 思い上がりじみた錯覚に違いないとすぐに考えたからだ。

 口にしたのは冗談の続きで、自分は圷にとってただの隣人。
 もしかしたら他の者達よりは話す機会が多いかもしれない、その程度の存在。

 対するこちらから見る彼は、言葉選びがシニカルで、人とは違う視点から物事を見ていて、こちらの伸ばす手など容易にすり抜けてしまう。相応の年の差を感じさせられる大人の男。
 もし寂しさを感じてくれても、表層に現れるような傷を付けることなんて無い筈なのだから。

 大切な欠片をまた自分の物差しで歪めて測り、途絶えなかった一方的な喜びが心を落ち着つかせていく。
 望む距離をどれ程危うい薄氷の上で育んできたのか>>110
 相手を思って行ったつもりの踏み込みが、どれだけ足元と彼に負担を掛けていたのか。
 何も知らないまま、伝えられなかった言葉など分かる筈もないまま。
 彼が口を閉ざすことで訪れる沈黙を、届け物を差し出すことで容易に壊してしまう。 ]

(136) ガラシア 2021/02/21(Sun) 16時頃

【人】 大太刀源流 タツミ



[ なぞるような撫でるような、けれど触れることはない動き。>>112
 煙が流れてゆく様を彷彿とさせられた。

 ただその仕草を目で追った。日常に帰還した頭が意図を問うことを選ぶ程の時間は、そこには無かった。
 隣人が思っていたよりも綺麗な指をしていることに、今更気づく。 ]

いいえ。
必要があれば、何度でも呼んで下さい

[ 辿り着いた指先が迷子を掴めば、あっさりと引き抜けただろう。
 この異質を終わらせることに憂いはもう、無くなっていたから。

 普段相手から受け取っているような、答えにならない答え。
 互いの手が握手にも似た形を作る状況では、まるで重大なことを告げたようであったが
 ほんの少しの踏み込みで何かを知った気になり満足した男は、先程の様子を気にしていたわけではなく。
 当たり前にあると思っているこれからについて、ごく自然に口にしただけだった。 ]

(137) ガラシア 2021/02/21(Sun) 16時頃

【人】 大太刀源流 タツミ

─ 朧の間前 ─

そちらも夜更しは程々に。
風邪は治りかけが危険ですよ……お休みなさい、また明日

[ どちらともなく向かった出口。
 なんともぶっきらぼうな言葉選びの見送りだろうか。>>113

 隣人がらしくあることが、何より落ち着き安心させられる。
 迎えられた時よりは口数多く残していくこととなる。

 冷え切ったのか、拳を形作り握りしめていた手。>>109
 一度視線をそこに落としてから、背を向けた。

 思いもよらなかった打ち明け話は
 甘くもなく、潮風で冷えて形もない、癖がある煙の香りをしていたが。
 他人への誰かの想いではない、良い贈り物だった。 ]

(138) ガラシア 2021/02/21(Sun) 16時頃

【人】 大太刀源流 タツミ




[ 真夜中の邂逅を誰かが目撃し、今尚座り込んで待っている>>90ことに気づくには
 目線は高く、視界は狭く、夜は深く、帰路は短すぎる。
 そして凪いだ表層の奥で、未だ完全には冷え切らない暖かなものがあった。

 大田竜海は彼女が潜む方向を見ることも無く、朧のすぐ隣、最奥の201号室へと消える。*  ]

(139) ガラシア 2021/02/21(Sun) 16時頃

【人】 大太刀源流 タツミ

─ 2月15日 ─


[ カーテンまでは閉じ忘れていた窓から、色の変わり始めた空が見える。
 未だ世界は薄暗く、布団から露出した首と片腕が上がりきらない温度を感じている。

 五指を折り、緩く握り込むと
 指先の冷えが掌に伝わった。

 規則正しい出社する会社員すらも、眠っているだろう時間帯。
 バレンタインデーは終局し、新たな日が訪れた。 ]

(186) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ


[ 不必要な早起きだというのに、妙にすっきりと目覚めている。

 忌避し恐れていたあの箱は、一晩眠った後で開いてみるとただのチョコレートと造花が入っているだけだった。

 一粒を口に放り込み、無言で咀嚼する。
 見た目にも味にも飾り気のない、素朴な甘さ。

 女性と比べると、男はあまり甘い物が得意ではないことが多い。
 きっとそこまで考えたのだろう。
 巡る思考はもう既に、何処までも他人事だった。


 そして──── ]

(187) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ



[ 時を止めたように数字の代わりに名を掲げる部屋の前を、通り過ぎてゆく。
 足取りは時間を考え静かで、しかし重みは無かった。

 全てが解決し、隣人からは吉報を受け、互いが許せる範囲で距離を少し縮めたと思っているのだから。

 引き戸が受け止めた重さも、彼の悲鳴も>>148
 その後のことも何もかも、認識出来ない境界の向こう側の出来事。

 獣にはなれない誰かが己にばかり傷を抱えることで、大田竜海は多少の変化を経ても保たれ続けている。
 盲目に、偏執的に、ただ唯一への想いを宿して。

 木の板を軋ませ降りてくる妄人を、揺らぎなき美が冷ややかに迎える。
 眠れない時、時間を持て余した時、密やかに会いに行くことは今までもあった。 ]

(188) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ



[ 常の眺める距離より近く、触れるには至らない場所で
 片膝をつき、絵の中の冬に佇む青年を見上げた。

 いつかの舞台でもこんなことをした。
 真の恩人の想いも知らず、他の女性を愛する役だった。
 男は物語の終盤に彼女に跪き、愛を伝えるのだ。あの娘が見ていることも、知らないままに。

 差し出すのは言葉ではなく、青。
 人造の奇跡は彼にとてもよく似合っている。

 そう、会いに来る次いでに思いつきを己の視界で試してみたかっただけだ。

 指の先が摘む海色の花の生首は、
 想い人を振り向かせることも彼の世界へとその色を届かせることも無いまま、虚しく床に落ちる。 ]

(189) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ


[ そんな風にあっさりと手放せたのなら、楽になるだろうか。
 いや、常人にとっては拗れて歪み理解の外にあるのだろうそれが、今更まともになる筈もない。

 陰る想いと相反し、笑みも苦渋もこの顔には浮かばない。
 当然だろう、完全を前にすれば全てが停滞する。

 大田竜海は人間である。それでも────
 いつか同胞と命なき作品を比べより美しいほうを選び取ったように、その目が映す世界では美が何よりも優先される。

 揺らがせるものがあるとすれば、それは不定で未完結の何かだ。
 自分が愛することはない、何かだ。 ]

(190) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ


[ 陽が登り、数多の足音が外へと通り抜けて行っても
 風も光も、その場所には当たらない。
 誰の目にもゴミとしか見えず、やがて片付けられるだけ。

 きっとそうなるだろう。
 拾い上げた指は、想像の未来を否定する。

 誰にも気づかれたくなどない、糾弾を受けたくなければ認められる筋合いも無い。

 これは自分だけの、恋なのだから。 ]

(191) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ




[
  
   Werd ich zum Augenblicke sagen:
   Verweile doch! du bist so schön!

                     ]

[ 声として捧げることはない、恋の賛美。 ]

(192) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ



[ 此処にはただ一人の男と一つの作品があるばかりで、
 悪魔の声も祈りも、聴こえない。いつまでも幕は降りない。

 完成を良しとしながら、何処かで愛されたい想いを抱えた矛盾に気づいていながらも
 悲恋の結末すら、不変の海に呑み込まれる。 ]

(193) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ


[ その日以降も大田竜海は、何気ない毎日を過ごしている。

 バイトに追われる合間に少しづつ、次回の公演に向けて仲間と進んでいく。
 たまに商店街の片隅の店に足を運び、隣人と世間話をする。

 どこまでも無表情で、平坦に。殆どの住民が思う自分の姿で
 温度の無い視線を最愛に注ぐ。

 変化と言えるものは、美術本の新刊が入らなくても定期的に本屋に通うようになった、それくらいだ。 ]

(194) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃

【人】 大太刀源流 タツミ


あっ……

[ 小さく声を上げ、一冊を手に取るのは

 取り上げられた終わりの代わりにそれを抱えて帰るのは、未だ遠い未来。* ]

(195) ガラシア 2021/02/21(Sun) 22時半頃

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