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[ これからのことを考えるはずだったのに、
あっという間に場は静かになってしまったわ。
少しの沈黙のあと、
唇をちろりと舐めてご主人が尋ねたの。
ところで、その車のキーはどこに?
ご主人はじっとわたしのことを見ていた。
胸の内まで見透かそうとするみたいにね。]
……どうしてそんなことを尋ねるの?
[ 戸惑って、問いを返したわたしに、
ご主人はだってアンフェアじゃないですか≠ニ。]
[ アンフェア?
キーの保管場所を教えないことが?
きっとわたしは納得のいかない顔をしたんでしょう。
ご主人は当然だとも言いたげに言葉を続けるのね。
だって、協力すると約束したじゃないですか
なんだか少しまずい空気だった。
わたしとご主人はお互いを見つめあって、
少しの間黙りこくっていたように思うわ。
そうすると突然、
奥さんが仲裁するように口を開いて、
わたしたちの間に割って入ってきたのね。]
[ 彼女ははじめにご主人を窘めたわ。
脅すような言い方やめてちょうだい
エドワーズさんが警戒して当然だわ
そう言って、彼の前に立ったのね。
わたしのほうを向いた彼女は言った。
ごめんなさいね、夫も気が立ってるの。
あなたの言うとおり、状況が悪すぎて。
けれど、助けを呼びに行くのも、
実際難しいのは分かってくださる?
丁寧な物言いにわたしは当然うなずいたわ。
彼女の言っていることはまっとうに聞こえた。]
[ わたしがうなずくのを見て、
奥さんはどこか安心したようにも見えたわ。
そして、それに≠ニ言葉を続けようとしたの。
どこかぎこちのない笑みを浮かべて。
どうしてかしらね。
そのときの彼女、なんだか嫌な感じだった。]
そんなことで揉めなくたって、エドワーズさん。
ほら……ここにはまだ食べるものがあるじゃない
[ ── え? * ]
[――やだ。
そう言って顔を膝に埋める青年が小さく見えて、
まるで昔に戻ったみたいだなと笑う。]
私も、……君も。
キャロルにはなれそうにないな。
[その名を聞いて、シーシャの肩が跳ねたように見えた。
目端にちらつく動きに視線を外し、目を閉じる。]
……せめて、食事はとりなさい。
[昨日ここに来てから何も食べていないのだろう。
意識のなかった間に強盗でも入っていない限り、
・・・・
人ひとりが生きるだけの蓄えはあるはずだ。
空腹はない。
それなのに喉の渇きばかりが頭を満たしていく。
眠るフリをして、あたたかいものから目を逸らした。]*
「なんでって、お前、配信してただろ
それで近くに来てるんじゃねえかと思ってな
植え込みン中で伸びてんのを確保した。
……あ、左手無理に動かすなよ」
[丁寧に忠告してくれる元帥の言う通り
右手だけを動かして起き上がる。
よくよくみれば左腕は固定されていて
誰かが治療してくれたのだとわかった。
投げ渡される乾パンの袋を慌てて受け取って
ぱさぱさに乾いた口に放り込んでは
あまりの湿り気のなさに噎せた。
げらげらと元帥の笑う声が聞こえる。]
でもさ、なんで、俺なんか
「生き残りだから?
食料は心もとねえけど
だからと言って人手を減らせば
あいつらの数の暴力に負けるからな」
[腐った死体どもの。
と、元帥は言った。
その一瞬だけ、死んだ目にきつい眼光が宿った。
多分、目の前の男もまた、
ゾンビに大切なひとをやられたんだろう。]
俺がゾンビになってたらって考えねえの
「噛み傷がないから問題ないだろうと判断した。
駄目なら、――――」
[その手が鉈を手に取る。
俺はひきつった笑いを浮かべて首を横に振ると、
せめて茶化すように冗談を口にした。]
噛み傷ないって、確かにないけどさあ
まさか寝てる間に剥いたりとかしてないですかにゃ?!
きゃーーおまわりさー いでっ
[黙って水入りのペットボトルで殴られた。ひでぇ。]
「服の上からでもフツーにわかんだろーが。
お前もう一回ゾンビの群れに放り込むぞ」
ふぇー。やめて。ごめんなさい。勘弁して。
[俺は配信の時みたいに軽薄に笑う。
笑いながら、滲んできた涙を拭った。
手渡されたペットボトルの蓋をあけて水を飲む。
ようやく、震える声で「ありがとう」の言葉が出た。
知ってる人と話せることが、
こんなに嬉しいなんて、知らなかった。]
[乾パンを喉に流し込んだところで、
がちゃりと扉が開かれる。
数人の男たちが、
ネコ元帥に向けてひらりと手を振った**]
メモを貼った。
[ 彼女の言っている意味が理解できなかった。]
──どういうこと?
[ 理解ができなかったから尋ねたわ。
わたしにはまったく見当がつかなかった。
もしかするとわたしの知らないところで、
食糧を隠し持っていたのかと思ったくらい。
ご主人は少しばかり驚いた様子だった。
けれど、なんていうのかしらね。
理解ができていないという風ではなかった。
奥さんはしっかりとした口調で言ったわ。
まっすぐにわたしの目を見ていた。]
ねえ、わかるでしょう。
助けを求めにはいけない。
じゃあ待つしかないじゃない。
誰かが見つけてくれるのを、
ここで生きて、助けを待つしか
[ 揺らぐことのない強い目をしていたわ。
それが最善だと信じて疑わない声をしてた。
……犬、たくさん飼ってるじゃない
どうせもうじき餌もなくなるわよね
どうせ死んじゃうわ、それならいいでしょう
彼女ははっきりとそう言ったわ。
わたしは信じられない思いで立ち尽くしていた。
そのとき理解したのね。
ご主人は彼女が言ったことではなく、
今わたしにそれを告げたことに驚いてたのね。
けれど、それはとても受け入れられない提案だった。
そんなことを考える人がいるだなんて、
わたしには信じられないような惨い話に思えたわ。]
冗談でしょう?!
ばかげたこと言わないで。
ほかに何か方法があるはずだわ。
……そうよ、
わたしのスマートフォン。
家の中でなくしてしまったの、
まだ充電が残っているかもしれない。
見つけたら、そう、
SNSを通じて助けを求めて──、
[ わたしは必死に反論したわ。
絶対に許すわけにはいかないと思ったの。
何かほかに手立てはないかと、
記憶を探って知恵を振り絞って言ったのね。
けれど、奥さんは非常に苛立った素振りで、
ぶんぶんと大きく首を横に振るばかりだった。
そしてヒステリックな口調で叫んだわ。]
ないわよ!
そんなの出てきっこないし、
助けなんてさんざん求めたわ。
でも、この混乱の真っ只中で、
誰も気に留めちゃくれなかった。
無理なのよ、今はまだ。
状況が落ち着くまで、
なんとかして生き延びないと……
[ 奥さんはぜいぜいと肩で息をしていた。
呼吸を整えるように深呼吸をして、
そして、またわたしをじっと見るの。
良いわよね、あれだけいたら、
しばらくの間はきっとしのげるわ
真剣な目でそういう奥さんに、
わたしはこれ以上何と言えばいいの?
代替案が何も思い浮かばない、
自分の頭とこの状況がひたすらに憎かった。]
だめよ、絶対に。
あの子たちを食べるだなんて……
[ わたしの声はいつしか泣きそうだった。
そんなわたしを見たご主人が、
ずいぶんと落ち着いた様子で口を開いたわ。]
エドワーズさん、考えてみてください。
普通の状況ではないんです、そうでしょう。
きっと皆そうしています、家畜だけじゃない。
乗馬用の馬やペットのミニブタを食べてでも、
人々は生き延びようとしているはずです。
それと何が違うんですか?
何としてでも生き延びようとすることが、
そんなにも残酷で、醜いことなんでしょうか
[ 顔を覆ってしまいそうなわたしの手首を握り、
わたしの目を覗き込むようにして彼は言った。
ご主人もやっぱり真剣な目をしていたの。
正しいことを言っていると信じている者の、
まっすぐで強い眼差しをわたしに向けていた。
……言葉が出てこないの。
ノーリーンを撃ったときと同じよ。
彼らの言うことは間違っていないようにも思えた。
けれど、わたしの心は確かにノーと言っていたわ。
それでも小さく首を横に振るわたしに、
ご主人は畳みかけるように言葉を重ねたわ。]
お孫さんを死なせたいんですか?
私は、息子に生きていてほしい
[ 喉がからからに乾いていたわ。
魂を吸われてしまったみたいに動けないわたしに、
ご主人は考えておいてください≠ニ言った。
その場を去っていく二人の背を見送りながら、
わたしの頭の中はもうめちゃくちゃだった。
あの子にひもじい思いをさせたくないわ。
いつか自分の綴った言葉が頭の中に響いていた。
けれど、そんな惨いことが許されるはずない。
ねえ、そうでしょう?
わたし、何かおかしなことを言っているかしら。]
[ お願い、答えて。いのちに優劣があると思う?**]
― 数日後・コーヒーショップ『abbiocco』 ―
[あれから何日が過ぎただろう。
窓から覗く空模様だけでは、正確な時間は掴めなかった。
壁掛け時計の針は、濁った膜に覆われてよく見えない。
畑の間を走る道路から、車の音は聞こえなかった。
規制がかかったか、
あるいは車に乗る人そのものが少なくなったのだろう。
数少ないエンジン音も、明らかに壊された形跡のある
ドアを見れば、速度を上げて走り去っていく。
ここを訪れる者はいない。
孤独が満ちるはずだった――それなのに。
例外は、いつもと変わらぬ体勢のまま俯いている。]
[最初、彼がその場を離れた時、助かったと思った。
好きな方を選べと言ったけれど、
あんなもの、二択の皮を被った一本道だ。
悔いのない選択など、今ここには存在しなかった。
しかし彼はすぐに戻ってきた。
その手にあったのは、
申し訳ばかりの缶詰と土のついたままの野菜だ。
彼はコートの袖で拭った人参に齧りつく。
眉間に皺を寄せ、泣きそうな顔をしている癖に、
目の光だけは消えないまま。]
……ふ、 ふ。
[思わず小さな笑い声が零れた。
シーシャが視線だけでこちらへ問いかける。]
ふ……いや、すまない。
前言撤回しようと思ってね。
私はキャロルにはなれないが、
ははおや
君は、キャロルによく似ているよ。
[薪を燃やす炎に似た赤毛を思い出す。
太陽が落ちて来たみたいな笑顔を思い出した。
シーシャは虚をつかれたような顔をした後、
一瞬だけ眉間の皺を解いて笑みに近い表情を浮かべた。]
[それからずっと、10フィートの境界は保たれている。]
[寝る時は私のベッドを使いなさいと言ったけれど、
シーシャは頑として聞かなかった。
生きる為に必要な分だけ動き、
必要ない間はすべて店の壁に背を預けて過ごしていた。
会話はほとんどない。
日に何度か彼の名を呼んでは、拒否の一言で幕を閉じる。
あの日から、状況は平行線のままだ。今日も駄目だった。
――嗚呼、
そんなことをしている間にまた夜が来てしまうのに。
空が暗く滲んでいくのを、濁った左目で見つめていた。]*
メモを貼った。
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