95 File.2:Do you Love me?
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[前屈みの姿勢で早送りの映像を
じ、と見詰める涅色は研究者の顔をしている。
考え事をする時の癖なのか、指先で下唇を撫でながら
時折、訝しげに柳眉を寄せて、それに見入る]
―――…ふぅん。
[見終われば身体を起こし腕組みをした。
胸の谷間が強調される形となるが当人にその意識なく]
ピエールと心中したかったわけでもないみたいね。
モリスからの攻撃でかなりのダメージを受けていたから
余命を悟りチームに尽くした、って感じかしらぁ。
チームに、というより、
オスカーに、かもしれないけどぉ。
私のクローンが誰かに尽くす、なんて――…
[くすくすと笑う音はアイリスと似ているが
婀娜な響きが滲むあたりで印象は重ならない]
もう少し賢く動くかと思ってたのにぃ
期待はずれ、ね。
[ライブ映像に切り替える。
自分とそっくりな姿の死体を見るのは奇妙な心地だった。
悔いのなさそうな死顔。
組んだ片腕ほどき細い顎先の裏に親指の腹を宛がう]
何を思ってたのかしら。
[わからない、と言う風にさらと呟いて
二チームの攻防へと注意を移ろわせる]
オスカーのダメージが増えてる。
――…満身創痍、ね。
[悩ましげな吐息を漏らし、女はかるく肩を竦めた]
[ダメージを受けないフィリップをじーっと見据え]
――…運がいいのかしらぁ。
それともぉ、
身体能力が他のクローンより優れている、とかぁ?
[揶揄る響きは甘くも意地悪な響き]
[古株である志木に声掛けられれば身体ごと其方を向き
ぺこりと頭を下げるは敬意を払ってのこと]
志木さぁん。
何日ぶりですっけ、ご無沙汰してます。
あ、この前の約束、覚えてますぅ?
若い頃の写真、見せてくれるって言ったのに
私、まだ、志木さんから見せて貰ってませんよぉ?
[拗ねたような口振りはやはり甘い]
ですよね、私も予想外でした。
誰かに一矢報いる為の手段だったならぁ
なんとなーく理解できるンですけど。
― Side:OFFICE FLOOR ―
[10の席が島を作るフロア。
そのフロアにて、その一つの島を見渡せる位置に独立して席があり。
そこに座る鉄面皮の男が一人]
……。
[仕事の最中である。メールが一通届き、少しだけ手を止めて。動かした]
=============
To: 志木
From: 米斗
--------------------------
Title: Re:管制室入構許可
--------------------------
Subject:
お疲れ様です。米斗です。
筌瀬の自殺ですか。
=============
[メールのあて先と内容から推測した内容を送信して、仕事を続けようとするそぶりを見せつつ――]
……。
[首を左右に曲げた後、煙草とライターを持って、喫煙室に向かった**]
お疲れさまです。
この実験が終わったらゆっくり休めるといいンですけどぉ。
あんまり無理しちゃダメですよ、志木さん。
[詰めっぱなしだという志木を労い案じる言葉]
えー、今も素敵ですけど
若い頃も素敵だったって所内でも噂ですよぉ。
ふふ、見せて貰えるの楽しみにしてますね。
[写真については嬉しそうに笑み浮かべる。
面白い育ち方と言われれば頷きを返し]
環境や経験が違えば性格も違ってくるンですね。
自分とそっくりなのに行動も考え方も違うみたいで
見ていると、何だか変な感じです。
[志木が米斗の名を紡げば
少しばかり気まずそうな表情。
自分のクローンが彼とそのクローンに迷惑を掛けた。
理解するが故に悩ましい吐息が漏れる]
米斗くん、何か言ってましたぁ?
早めに謝っておいた方がいいかしら。
[最後は小さく独り言ちるように紡がれて
つ、と扉の方を見遣り思案。
彼が今どこにいるかは知れないから
探しにいく、という行動にまでは至らない]
それなら、少し安心しました。
志木さんに何かあったら大変ですもん。
[大丈夫と志木が言えば笑みを返し
首傾げる様にはくすくすと楽しげな音]
がっかりなんてぇ、しませんよぉ。
大人しい子、ですかぁ。データを見る限り、そのようですね。
運動には余り興味なく、隣人と接する事を重視……
知識欲はあったようですけど、内向的な子のようで……
[似た面もあるが違う面も多く其れが気になる。
面白いことと笑う志木にふ、と目を細め同意の言葉]
――…この違いは興味深いです。
そぉ、ですかぁ。
[特に何も、と志木から聞けば
はたりと瞬きして、またくちびるを撫でる]
――…ええ。
近いうち会えればいいンですけど。
[ワーカーホリックである米斗を思い
僅か悩ましげに柳眉を寄せた]
[和蓮の声に涅色が其方に向けられる]
如何するのかしら、ねぇ。
次に誰が脱落するのか、も、
興味深いですよ、ね。
[モニタに映る対象をチラと見遣り
くす、と小さく微かな笑みを漏らした]
どんな結末を向かえるンでしょうね。
――結果が楽しみです。
[プロジェクトの結果までは予測できず
志木にならうように画面に視線を向けた]
素敵な志木さんと二人っきりで
緊張していたのかも知れませんよぉ。
[自己主張の少ない理由をそんな風に言って笑う]
私も、環境と経験次第では
あのクローンのような性格になっていたかもしれないと思うと
何だか複雑な気分になります、ね。
抱えている案件があるなら
会いに行くのは控えた方がいいかもしれませんね。
忙しい時にお邪魔して邪険にされたらぁ
私、暫く、立ち直れないかもしれません。
[志木の忠告に心のうちで同意しながらも
しなを作り悩ましげな吐息を零してみせた]
― Side:OFFICE FLOOR ―
[喫煙室から戻ると、メールが戻ってきていた。返事を打つ]
=============
To: 志木
From: 米斗
--------------------------
Title: Re:Re:Re:管制室入構許可
--------------------------
Subject:
お疲れ様です。米斗です。
この組合わせだとそれ以外が考えられなかったもので。
回答ありがとうございます。
=============
― Side:OFFICE FLOOR ―
…予想通りか。やれやれ。
あのお嬢さんはクローンでも私に迷惑をかけるらしいな。
[そのまま流れでいくつかメールを返したり送信したり。
どこかに電話をかけたり――忙しそうであった**]
この記録――…
分析するのも楽しみです。
[記録をデータとして処理し分析する。
成果という志木にこくりと頷く仕草はクローンと似る]
ふふ、素敵な異性が傍に居れば
緊張するものですから、ね。
[徹底した制限はデータとしてしか知らず
志木の言葉にゆるく頷き、微か安堵の色を見せた]
[上役からの覚え目出度い鉄面皮、米斗・Pierre・理人。
一目置いている相手であるが
当の本人は彼に迷惑を掛けたという意識はなかった。
なればこそ、先のような台詞が出てくるわけであるが]
邪険に、されなければ、良いンですけど。
――…ん、そう、ですね。
米斗くんは心を読ませて呉れないので
すこぉし、難しいです。
[どう思うか。
志木に分からぬなら女にも分からずとも当然か。
零された彼の笑みに、困ったような表情を浮かべる]
このデータが次への糧となるなら――…
分析も苦ではありません。
[何か思う志木にゆると目を細め
甘さを残しながらも落ち着いた声を紡ぐ]
おじいちゃんだなんて、そんな。
志木さんはまだまだ現役なんですから。
[流す空気を感じ、軽く言葉添えるのみに留める]
[志木のフォローに目を瞠り
それから、仄かな笑みを刷く]
それなら、良いンですけど。
[嫌われているのではという懸念を抱きながら
其れは口にせず、顔にも出さずに再びモニタへと目を向けた]
決着が、つきそう、かしら。
[痙攣するオスカーの肢体が見える。
感情らしきものは表に出さぬまま涅色が其れを見詰めた]
[流の呟きが聞こえればことと首を傾げて]
流くん、如何かしたのぉ?
[尋ねを向けて流へと歩み寄る。
手元の飲み物を認めれば、ゆるく弧を描く涅色]
おいしそうね。
一口、ちょうだい ?
[ねだる声はカフェオレ同様甘かった]
[誉が姿を現し手を上げるを見てゆるく腰を折る。
頭を下げた拍子に長い涅色の髪が胸元へと流れた]
誉さんもお疲れさまです。
お疲れさまはクローンの方ですねぇ。
[くすくすと笑み声を漏らす]
―廊下:自販機横―
[飲み物を買いに出る前、
入り口付近ですれ違った筌瀬に手を振った後。
自販機の横で、アップルティーのペットボトルに口をつけている歌田の姿があった。]
ふぁーあ。
[誰もいないと思って、大口で欠伸を一つ。]
[オスカーの眸がチョコレート色に向くのがチラと見える。
何か思うように一度目を伏せてから淡い笑みを湛えた。
その一瞬、婀娜な色は薄れる]
――…オスカーとパティ、のようですねぇ。
[ぽつ、と結果を呟いてくちびるの弧を指先でなぞりゆく]
あとはまあ、3VS3で、強い方の勝ち、ってとこかなー。
[あれから先は、死に物狂いで戦うチーム戦、
という所だろうか。きっちりチームが分かれての殺し合い。
それは、小さな戦争のようなものに思える。]
結局は、弱肉強食だろうねえ。
あら、そんな事を思ってたのね。
なえたならぁ、くすぐってみようかしらぁ。
[流に悪戯な双眸を向け軽口を紡いだ]
――…ほんとぉに冗談?
そう、ねぇ。盛り上がりに欠ける、かぁ。
裏切りで言うならぁ、アイリスは隣人を裏切ってるからぁ。
[あまり気にした風でもなく、ゆるゆる言葉紡ぎ
差し出されたカフェオレを受け取り、一口含む。
こく、と嚥下すれば零れるは笑み]
相変わらず甘党なのねぇ。
ふふ、ご馳走さま。
[紅の跡を指の腹で拭い取り、
流の右手へとカフェオレを差し出す]
[ならば、結末を見るのは最後の4人、
あるいは3人になってからでもいいか、と考える。]
雑用してから戻ろっと。
[冷えたアップルティーを煽りながら、自身の研究室へと向かった*]
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