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[ラルフを殺すことができないのなら。
目の前にいる子どもは、
狼ではないのじゃあないかと、
──そう、信じることはできないかと、思っていたからだ。]
……
[リーの忠告を思い出す。
イアンが挑発めいて、自分で狼を見つけられるのか、と
そう言った言葉がついでよぎっていった。
自分は結局、情のようなものや、
村で生きる自分の常識や、
ごく狭いものの見方でしか、
きっと、判断ができていないのだろう。]
[これまでは、その狭い視野で、
生きることに不都合もなかった。
好きな相手を殺す感覚なんてものはわからない。
魚屋の女にとっての好きな相手は、
一緒に、時間を重ねていきたい人間だ。]
……………
[ただ漁師、と。少年が口にするのに、
ぴくりと瞼が引きつった。]
[少年が、オスカーが、一歩一歩を歩みくる。]
……そりゃ、何年前の話だい
[── 違うかもしれない。
サイモンの部屋に、
最初に行ったときと同じに、
声が震えかける。
けれど。]
…そいつは、
[漁師だった、その男は。
ときおり、湖の近くを歩くのが好きな男だった。
口数は多くはないが、優しい男だった。
もとより、暗く人の輪から外れがちの女の傍に
随分根気強くいてくれた、根っこがどこか、心配性の奴だった。]
[微かに震えそうな声で、女の声が尋ねる。
──2年も前の話だ。そのときのオスカーは、
まだ年齢も一桁の子どもだ。]
──ダンって 名のりゃしなかったかい。
[だから、──違うかもしれないと思いながら、
確かめずにはいられなかった。]
……
[一歩、また一歩と距離が詰まる。
足は、その場から動かなかった。]
……
[ラルフの名前に、眉を寄せて、
女は、大きく口を曲げた。
胸の内が苦い。]
…… ずっとね、
[問うた言葉に返事はあったかどうか。
女は子どもの顔を見たままに、
顔を顰めたままに、
低い声を漏らした。]
あんたが泣く気持ちがあたしにゃあ
よく、わからなかったよ。
[ダンがいなくなったときには、実感がわかなくて。
結局、今にいたるまで女は、夫のために泣いたことがない。]
[目の前にいる子供の手にかかったのか。そうだとするなら、と考えるだけで胃が焼けつくようだった。]
……、ガキだからって甘えてんじゃあないよ。
[その感情を押さえ込みながら、
詰まる距離から逃げずに子どもに真向かう。]
男の子なんだろ。
守りたいんだろ。
……生きていきたいんじゃあないのかい。
[きっと楽しい。と子どもが言った、
夢の話をうちこわしてもだ。
少しは。後悔を──しているのか、それともそこまで演技なのか。
女にはわからない。]
[ただ、リーは、話のわかる人狼がいると言っていて、
ラルフにとっては、この少年は、
──大事な人間だったのではないかと、
そう、ワンダは思っていて、
だから]
泣くぐらいなんなら、
──我慢のひとつでもしてみせな。
[要求を、ひとつ子どもに*投げつけた*。]
[遠く、遠く]
[ ── 狼の とおぼえが聞こえる*。 ]
メモを貼った。
―集会所 外―
……………っ
[集会所の中に入る、という頭は働いておらず。
窓の外から集会所の中を背伸びして覗きこむ。
人参頭が広間の窓の外からちょこちょこしているが。
鉄格子が邪魔して――――――。
いや、そもそも見えないだろう。]
……………。
[ああ、まだ、出られないんだ。
そう思ったまま、暫く広間の中を覗き込んでいた。
背伸びをしたまま無言で首を傾げる。
魚屋のあの人の姿が見えない気がした。]
……………。
[もしかして、が頭を過ぎる。
名前を書いてもらったメモを思い出して。
そして眉を下げた。]
【人】 愛人 スージーー広間ー (81) 2014/08/19(Tue) 22時頃 |
【人】 愛人 スージー
(82) 2014/08/19(Tue) 22時頃 |
……………うー……?
[なんだか、想像以上にもめている。]
わたしが……バケモノだったら……
よかったなぁ………。
[そうしたら、今日で全てが終わっていたはずで。
みんなが、こんなに苦しまなくていいのかな、って。
背伸びが疲れたのか、一度降りて。
もう1度、背伸びを繰り返した。]
―村長宅―
[また日が落ちて、街の影が深く深くなっていく]
[部屋の中も同じ。まだ灯りのともされていない部屋は暗く、
夕闇に暮れる部屋の中にホリーの息遣いだけが続く]
[ホリーとその見張り結社員が二人程。そして見えもしない幽霊が一人。そんな部屋の中に部屋に数人の結社員が入ってきた。
手には薬を持っていた。どうやら薬の時間らしい。
静かな部屋に人気が増えると、幽霊は黙ったまま、
そこから立ち上がって霧のように、姿を消した。]
―集会所 外―
[ふらふらと、霧のような幽霊が集会所へ向けて歩いている]
[歩く途中の茂みの中から、一匹の兎が顔を出した。
鼻を引くつかせてこっちを見ているようにも思えた。
その姿を、幽霊が見る事は無い。視線はずっと地へと向いている]
[僅かに頭を上げると、見覚えのある人参頭が、
背伸びをして窓から中を伺ってるのが見えた]
……。
何してるの。
[声をかけた後で気付く。この子に声は聞こえるんだろうか。
…そういえば、朝。集会場の中に
この子の姿は無かった気もした]
―集会所 外―
…………!
[何か聞こえた気がして、背伸びしたまま振り返った。
暫しの瞬き、そして口を開いた。]
…………おばけ………?
[首を傾げた。
目の前にいる人は、あの日――――――。]
………………。
[背伸びはやめないまま、相手を見た。]
―集会所 外―
[どうやら、姿も見えているようだ。
彼女の言葉に伏目を一つ瞬かせた。]
[…昨日会った死んだ狼も、自分の姿も見えていた。
…ならばこの子もそうなのだろうか。朝姿が見えなかった理由が分かった気がした]
…………………………………ああ…
うん。そう。 おばけらしい。
[なんだかまぬけな響きなものになったのだな、と俯いて袖でゆるゆると口を覆った。僅かにくつ、と笑う。
自分の境遇を他人事のように認め、小さく頷く]
………きみも、おばけじゃないの?
[それから、窓の内側をちらりとだけ見る。背伸びをしている足とを見比べて]
………中に入りたいなら、入ればいいよ。
きっと、誰も怒らない。
―集会所 外―
…………おばけ…?
[自分もおばけと言われて首を傾げる。
暫く考えて、初めて気付いた。]
………………!!
[何だかすごく驚いていた。]
……うん………しょぶん……された…から…。
……おばけ……だね……。
[困ったように笑う。]
……なにも……できない…から…
…はいっても…なにも…
[怒られないんだ。
もう――――誰にも怒られない。
それは、とても寂しいことだと気付いた。]
―集会所 外―
[すごく驚いている様子に首を傾げながら。
困ったように笑う様を一瞥し、ゆるゆると視線を地へと戻す]
……………………………、 さみしい?
[ぽつりと。静かに尋ねた]
[何もできない、という言葉には、
幽霊は頷くことも頭を振ることも無く]
………………………何もできないけど。
最後まで。 そばで見てはあげられる。
[その言葉を宛てたのは、目の前の彼女だったのか。
…それとも自分に宛てたものだったのか。
幽霊は静かに静かに、言葉を零した]
―集会所 外―
…………………。
[背伸びをやめて、視線を男から逸らす。
きっと、寂しいのだと思うけれど。
それを肯定したとしても、ただ空しくて。]
………………。
……そばで…………かぁ……
………それは…わたしより………
[突然、ラルフの腕をとって引っ張った。
おばけになったんだから、壁なんかも余裕できっとすり抜けられる、と壁へ突進する。]
………やったー。
…はいれたよー……?
[ラルフを道連れに集会所の中にお邪魔する。]
……………。
……おにーさん……も…さみしい?
[掴んでいた手をはなし、首を傾げる。
広間の中を見渡して、また困ったように笑みを浮かべた。
きっと、これを見届けたら――――。
この世界に本当にさよならするんだろう、と。
そんな風に悟った。]
―集会所 外―
……?
[紡がれた言葉の先に、首を傾げていると突然腕を掴まれた。
俯いていた幽霊が、驚いたように引っ張られた腕を見る]
……っ ちょ、
[振り払う前に壁が目の前に迫る。条件反射で目を瞑った。
「はいれたよ」との声に、再び目を開けた先は、数日で見慣れた集会所の中だ。
少し罰が悪そうに、僅かに顔を顰めてキャロライトを一瞥した後辺りを見回す。困ったように笑う顔が視界の端に入った。]
[さみしい、と問われて、伏し目を一度瞬かせた]
………………………………、どうかな…
[死の直前の幸福感と。僅かな落胆と諦観。
触れられなかった、ホリーの髪を思い出す]
[しばらく黙った後、幽霊は袖で口を押えて。
小さく小さく困ったような忍び笑いを零した]
……………………、 そうかも しれない。
メモを貼った。
―集会所 広間―
………………。
[もうすぐ、今日の投票を終えて。
また、怯える夜を皆で過ごすのだろうか。
やはり、この場所は。
人がたくさんいるのに、心が孤独で。]
………………。
…きこえなくても……
…みえなくても……
そばに……いられる……
…おねーちゃんがんばれー……っておうえんもできる
[痛々しいスージーをそんな風に指さしながら呟く。
小さな頃、羊毛を取りに来た彼女の少し遊んだことを思い出した。
随分変わったけれど、今になって思い出した。]
………わたしたちしんだけど。
……ゆめはみられる…みたいだよ…?
[ラルフに向かってそう呟いた後。
広間の様子を満足そうに見て。]
…………だから……
おにーさんが、うそつきでもなんでも
…………わらってほしいな、って。
……なんていうんだっけ……?
えっと…おしつけ…?がましい…?
[そう笑みを浮かべれば、そのまま姿を消した。**]
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