218 The wonderful world
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―――終わり際の記憶―――
[――俺の放った音が鮫の姿を貫いて、一体のノイズがインクを吹きだし、霧散していくのが見えた。
口角を僅かに引き上げて、その場に膝を折る。
残念なことに、"痛み分け"では済まないらしい。
やってられるか。魚類まで湧くなんて聞いてねぇぞ、俺は。]
はっ……ざまぁ…ッ!
[つきかけた悪態は、せり上がる鉄の臭気に邪魔されて最後まで紡げない。
脇腹の傷口から流れ出るのは赤か、それともノイズどもと同じ黒か。それしきの判断も、今は怪しい。
頭を強く打ったせいで、色覚も狂っているんだろうか。今は、そんなことはもうどうでもいいが。
死んでも血の味はわかんだな…なんて、どうでもいいことに感心しながら、視界の中に探すのは、相方の姿。]
…シメオン?まだ、居るか?
[奴からの返事は、あっただろうか。
野郎、俺の見てねぇところでやられたりしてねぇだろうな。
余計な考えが頭を占めて、判断力を鈍らせたんだろう。
足元に浮かぶマークに、気づくのが遅れた。ついさっき、同じ手を食らったばかりだってのに、だ。]
しまっ――
[真下に、がばりと開く大口。数列並んだ鋭い牙。
たぶんっつーかほぼ絶対に、今からじゃ回避は間に合わねぇ。
一度死んだときの光景、目の前に迫る電車のライトがノイズの姿に重なって、足が竦む。
こんなときだってのに…いや、だからこそか。ふと過るのは、どうでもいいようなこと。*]
――なぁシメオン、ひとつ、約束しよーぜ
[そういや、あのとき。
向かってくる禁断ノイズのシンボルを前にして、あくまで能天気な声を装って。
相方に向けて、何であんなことを言ったのだったか。
馬鹿な頭に、変な勘でも働いたんだろうか。]
もし今後、俺かお前が下手踏んだとして
冷静に見て、もうどうしようもねぇと思ったら
…そん時はお前、俺を捨てていけよ
逆の立場なら、俺もそうする
[自分のためにだけ動けと、そういったのはお前だ。
だからお前の壁も、てめぇを守るために使え。
責任だか何だか知らねぇけど、そんなもんに足を引っ張られんな。こんな一時の相方なんかより、自分の求めるもんを選べ。
…大まかに言や、そんな意味のことが言いたかったんだが。長々喋るのは苦手だから、それだけ伝えて背を向けた。
蘇った記憶は脈絡なく掻き消え、意識は少し前へと、飛ぶ。*]
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