162 絶望と後悔と懺悔と
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マユミは、
おでが殺すっでいっだし……。
[そういったけれど、やはり辛かったことは間違いなくて]
[その周であった獣の姿、
その存在はわかるのだろうか。
周であったのなら、気がついてしまうだろうか。
マユミを貫いて、そして、己を貫いたその刃が彼のものであることを]
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[鬼の腕を断った苗刀は、こんな時だけ軽い。]
………
[目が、見えているのか居ないのか。 今振り下ろせば簡単に落とせるだろうに。
だからか。]
零瑠だよ。キャロライナ。
[名を呼び、柄を握り直した。]
助かったね?
(69) 2014/02/22(Sat) 00時頃
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わたしは自分で死ぬべきだった?
お父様にころされるべきだった?
……それとも、あなたを殺すべきだった?
[今彼が感じる痛みは、
本来、自分が負うべき痛みだった]
あなたはわたしを殺すことで、
あなたを殺す苦しみから、わたしを救ってくれた。
だから、
わたしは最期に幸せだった……、
あなたのおかげで、幸せだったの。
[マユミの言葉をきいて、
その重なる単語、やはり哀しくなって……]
――……違うだや。
お前は生きるべきだっだだや。
人間としで……。
[そんなこと無理だった。わかってて、
でも、哀しいから。殺すべきか死ぬべきか、その二つしかない女の子なんて]
おでは、お前を幸せにしたがっだだ。
もっと違う幸せを……。
[丸くなって背中、そのおかれた手を掴めば、振り向いて]
もっがいお前に会いたいだな。
――……こんどはころさね、がら……。
[やっぱりその身体を抱きしめてしまうのだ]
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[腕を、伸ばす。 指先が人参色に触れる。乾いた血の張り付いた、髪。
彼の手に在る苦無を一瞥し、 抱き寄せた肩に顔を寄せて、耳許で囁く。]
……助けに、きたよ。キャロライナ。 俺を、覚えている?
君の『家族』の零瑠、を。
(74) 2014/02/22(Sat) 00時半頃
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……そうね、
あなたは幸せな未来を描いてくれた。
運命を捻じ曲げた父を、
始祖をいつかこの手で討つ、と。
ただ、それだけしか残っていなかった私に、
未来を聞かせてくれた。
[望みなどなければ絶たれることはない。
幸せを願うことは無かった、
幸福も家族もあの頃ももう返ってこない遠くの場所にある、
だから、その遠くの場所で幸せでいてくれればよかった。
自分はその幸福に微塵も関係なくても、よかった。
だから絶望はなかった、しかし希望もなかった。
生きていようとも、死んでいようとも変わりない]
だから私は、
人間として生きられなかったけど、
……人間として死ねたような気がするの。
[彼の描いてくれた叶うことのない望み。
鬼となってから初めて想像した気がする。
人の心を思い出せた気がする]
うん、そうだね。
もう一回会えたら、今度は――
[抱きしめる腕に、
記憶の中の温度と匂いと甘苦しさに、
泣き笑いのような顔になる]
あなたのお嫁さんにしてね……
[きっとありえない約束。
死んだら、きっと、終わりなのだろう。
いや、自分はもう、この場から離れられない気さえするのに
でも、彼女と違う、どうしても願い続けてきていた
家族を取り戻すことを。
取り戻すためには、自ら、家族を捨ててもいいと思ったほど。
あの時のあの食卓。
あれは、幻なんかじゃなかったから]
――……約束だがんな。
[マユミに向けるのは、それでも、一ヶ月年下の顔。
でも、確かにそれは、今でなく、
あの頃の顔を一瞬見せることになる]
――……そうだ。
周は、どうなっだが、しっでるだが?
[ふと、尋ねるのは、
あの時、零留に連れていかれ、そして、眷属になっただろう周のこと。
マユミはわかるだろうか]
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そ、だよ。零瑠だ。 ……覚えて、くれてた、だなん
あぁ、キャロライナ……。 俺も会いたかった…ずっと、ずっと…
[右の腕は上がらない。 だから、左の腕だけで抱き締めた。
彼が出来ない分、余計に。
腕を落とされた女鬼が、叫ぶ。言葉にならぬ悲鳴を。 キャロライナと零瑠に振り下ろされる爪。]
っ! あぶな!
[それを零瑠は避けなかった。 寧ろ、彼に当たるようにすら――…]
(81) 2014/02/22(Sat) 01時頃
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[あの頃のようで、
もうあの頃とは違うから。
子供ならば、それは指きりだったけど]
……約束、
[それはもう少し別の方法に、した。そして]
……周も、抗い続けているわ。
[ 見やる先、
父を屠らんと駆ける獣の姿は、
見えはしなかったけれど]
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……少しの顔段を上がると扉があって、 それを開くと、台所から良い香りがして……
皆が、出迎えて、くれるんだ。
あぁ、帰ろう? 一緒に……。
[『殺す』と殺気を向けないキャロライナだから、 最後まで彼の望む『家族』で居たかった。 服に皺が寄る。
構わず、預けてくれる身ごと動く。 彼が鬼の爪が引き裂いても、人参色の髪が散っても。 踊るかのように。]
キャロライナ、きゃろ……らいな。
(88) 2014/02/22(Sat) 01時半頃
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[彼のトレードマークともいえる緑色は見当たらない。 ざんばらと束で切られていく人参色に、良く映えていたのに。>>91]
人参は、甘く煮詰めて花の形にしよう。 それとも細かく刻んで混ぜてしまう?
……風呂は薪を焚いたものが一番だ、ね。 湯が軟らかくて……。
(98) 2014/02/22(Sat) 02時頃
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眠ると本当に天使みたいで、ね。 眠る君たちを、見てると疲れなんて、吹っ飛ぶんだ……
[彼の目が閉じる。瞼の裏に何が映るかだなんて。孤児院での事しか思い至らない。]
………渡す? なに?
[唇が動いているのに、声が――聞こえない。]
(99) 2014/02/22(Sat) 02時頃
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………もう、行けよ。 行けったら!
[紅の眸で睨み付けると、女鬼は罵倒を残して他へと向かった。残っている守護隊を、殺す為に。]
きゃろ?
[前髪をかき揚げてやるには手が足りない。 額を合わせて覗き込む。
笑みを浮かべたその顔を間近で見て。]
(100) 2014/02/22(Sat) 02時頃
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[唇が声なく紡ぐに、泣きそうな笑みを見せて。>>91
彼を抱き締めたままその場に座り込む。
首に爪を当てて頸動脈を掻き切ると共に]
……祝ってくれて、ありがとう。
[牙を突き立て、 『家族』の終の血を――**]
(103) 2014/02/22(Sat) 02時頃
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―聴こえぬ初音の―
……これは。
[キャロライナの身体をその場に横たえて身を探る。 緑のスカーフがあればと思っての事だが、ポケットの内には小瓶。手の内に収めて口許を拭った。]
……遠回りになってしまった。
っ、早く…
[骨が見えていたままの足に筋肉が纏う。 主の元へ。これなら疾く行けるだろうと。]
……?
(108) 2014/02/22(Sat) 02時半頃
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[邪魔にならぬようにと右腕を抑え、 両脚に力を入れる。
鬱金の主と、風が運ぶ強い血の香に 焦燥を隠せない。
何を踏もうとも、何を蹴飛ばそうとも。 速く、疾く。
共に在ると言ったのだから。誓ったのだから。]
(110) 2014/02/22(Sat) 02時半頃
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トルドヴィン、さまっ
[貴い名を呼ぶのを躊躇わなかった。 主の周囲に居る者の数は4であっても。
傍にと、駆けるのを止めはしない。]
(112) 2014/02/22(Sat) 02時半頃
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[――…ふわり。
―――浮遊する感覚。
――…ゆらり。
―――揺蕩う、意識。]
[死の間際。 望んだのは、全てからの解放。
…だから、この魂は黄泉路を逝くとばかり思っていたけれど。]
――まぁ、
そういうわけには、いかないよなぁ…
[抱かれたのは、昏き地の底でなく、朝焼けの空。
嗚呼、眼下で今、起こっていることの結末は、
自分が向き合わねばならぬこの終焉は、
これまでの行動、その罪に対する罰となり己を縛り責め苛むのか、
それとも希望を遺し、この魂の標、次への福音と生り得るのか。]
[今まで散々逃げ続けた男に対する神の選択は、きっと正しい。]
…最後まで見届ける、責任が、あるよな。
[正面から向き合ってやれなかった弟、妹へ。
長く肩を並べ、共に闘ったジャニスへ。
もういなくなってしまった兄、姉へ。
憧れ、背を追い続けたあの人へ。
…そして、刃の届くことのなかった仇敵へも。
――それぞれに対する想いがある。
自分の行いと、それの齎す結果を、今一度見つめて。]
[遂に戦場に姿を現した獣の双眸に映るのは
総身を紅に染めた黄金の鬼に、
細い首を締め上げられる少女の無惨な姿。
嗚呼、――かの鬼は獣から
後、どれだけ大切なモノを奪えば気が済むのか]
[今、獣を駆り立てる衝動は、怒りでも憎悪でも無い。
この足を動かすのは、金色の呪縛から逃れるため、捨て去ろうとしていた願い。
『囚われた家族の自由を取り戻す』
だから、斃すためではなく、
リカルダを奪い返すため、獣は――周は、黄金の鬼の元へと疾駆するのだ]
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