人狼議事


182 【身内】白粉花の村

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視点:


[不自由な体勢とはいえ、全力で押し返したのに動いたのは僅かばかりで。その事実はディーンの男としてのプライドを酷く傷つける。
けれど押さえつけられ、手を取られれば、すぐに意識はそちらにいった。
振り解こうとしても全く離れる気配の無い彼の手を、苦々しげに一瞥して。不穏な言葉と人の悪い笑みに、顔色を変える。

――冗談じゃないなら、一体何だというんだ。答えの分かりきった問いを口にする事はせず、彼をただ見詰める。
いつだかの猫耳野郎の様に、蹴り落としてやろうか。そんな事を考えて、足を浮かせ様とした所に明るい口調で落とされた言葉に、怪訝そうに口を開く]

えら、ぶ……?

[反射の様に繰り返す。けれど近付いてくる体に気付けば、何を選ぶのかという問いを返すまでには至らなかった。

ただでさえ近かった距離が縮められて、触れ合いそうなその距離に眉を寄せ。痛みのために抵抗を封じられた手の代わりに、不快感と――少しの怯えでもって彼を睨んだ]


……っ、

[掴まれた手を離されれば、咄嗟に再びその体を押しのけ様とするけれど。彼に抉られた傷口に触れられ、思わず体が竦む。
そのすぐ後に、危害を加えられるのが嫌いだという彼の言葉を思い出し、身動きすらも封じられてしまった。

自分が今どんな表情をしているのか、それすらも分からない。気丈な風を装えているのか。……それとも、怯えに歪んでいるのか。焦がれた筈のそれが、今は酷く煩わしい]

[擬似的な口付けと共に耳に入った言葉に瞳を揺らして。けれど我に返れば、すぐにその体を引き剥がした。
警戒を強めつつも、頭の何処かでは彼はただ自分をからかっているだけなのだと、そう思っていたのだけど。……流石に此処までくると笑えない]

――あんたに、

[意識して静かな口調で言葉を返す]

手篭めにされるくらいなら……舌を噛んで死んでやる。

[薄く笑みすら浮かべて、そう言い切る。
明確にどちらを選んだわけではないけれど、こう言っただけでディーンの意図は通じるだろう。……そもそも、やられっぱなしでいようとも思わないけれど]


ハッ……ハッ…!!

[病院に着いて真っ先にした事は延命処置だった。目の事はゆっくり治さなければいけなかったが、寿命だけは早急でなければ治る前に死んでしまう
治療が終わって真っ先に向かった所はディーンの病室だった。場所は看護婦に聞いていて、あまりの騒々しさに看護婦すらお手上げの状況だった]

ディンさん笑ってるかなー。ニハハ、楽しみ楽しみ

[そんなディーンが自分の事を殴りたいと思ってるとは梅雨知らず、看護婦に院内は走らない注意すら無視してディーンの病室の前に立つと深呼吸をして扉を勢い良く開けた]


やっほー!ディンさんげーんき!?

[そこで目撃したのはディーンと、見慣れた医者のヤニクが急接近していて、それはモノクロの目でも、遠くからでも何をしているかは一目瞭然だった。
二人がこちらの存在を確認するとクシャミはまるで不思議の国の猫のように、新しいおもちゃを貰った子供のように不気味に三日月のような口で笑うと無言で静かにその扉を閉めた。その行動は後ろめたい事がある者なら寒気を感じずには居られないだろう
もしもこのまま誰も止めなければこの病院内には誰も得のしない、そんな噂が流れるだろうが、二人の反応はどうだっただろうか]


[看護婦の声で目を覚まして、今まで無神経に部屋に入られることがなかったから目覚ましとしての効果は絶大だった]

…、
……、…ッお!?

[長らく時間を取った後で過剰な動作と声で飛び起きた。看護婦を驚いた顔をしていたけど。

何用かと問えば、外に出ろやら食事取れやらの説教だった。聞き飽きた小言は適当にあしらって、それでも何か食べなければとは思う]

…行くか

[看護婦が去ってからは、部屋でうろうろと適当に手持ちの小銭を漁りながら、少し立ち止まってポソリと呟いてから部屋を出た]


メモを貼った。


ー院内 廊下ー

[パタパタとスリッパを鳴らしながら、廊下を小走りで行く。]

だれかひまそうなひと、いないかなー。

[辺りを見回したけれど、忙しい時間帯なのか手が空いていそうな人はいなくて。

そのかわり『奇病患者』とか『転院』といった声が、ちらほらと聞こえてくる。]

だれかまた、こっちにきたのかなー?

[猫の縫いぐるみに問いかけても、もちろん返事は返ってなくて、それがちょっとだけ不満だったから、尻尾をぶら下げて歩くことにする。

ぺたぺた、ぱたぱた。
 ぱたぱた、ぺたぺた。

院内の見取り図を見ても、どこが何なのかはわからないから。
しかたなしに、食堂へと戻ることにする。
食堂なら誰かいるかもしれないし、行ったことがある場所ならば迷わないと思ったから。]


["舌を噛んで死んでやる"
その言葉を聞くなり、医者は小さく目を瞬かせた後――至極楽しそうに笑う。
そうして息の漏れるような笑みを零すと、微かに肩を震わせながら、一言]

どうぞ。

[――と。
嗚呼、彼は本当に自分を楽しませてくれるものだ。
手篭めにされるくらいなら舌を、大いに結構。やれるものなら、やってみるがいい。

"もしも君に、本当にその覚悟と勇気があるのなら。
何故俺は今も"無傷"で居れているんでしょうね?"

――なんて。
漏れる笑みと向けた眼差しの中に、そんな言葉が滲んでしまいそうになりながら]

俺は別に構いませんよ、君が例え舌を噛み切り死のうとも。

[追い打ちをかけるような言葉を、笑みの形に歪めた唇へと乗せて。更にもう少し体重をかけて、相手の顔に薄く浮かんだ笑みをなぞるように、触れた指を滑らせる。
――成る程、こんな顔も出来るのか。そんな事を思っていれば]


[――ガラリ。
自分が部屋に入ってきた時よりも幾分か騒がしく、部屋の扉が開く音が耳へと届いた]

おや、彼も退院したんですか。
…仕事が増えましたねぇ。

[パタン。軽い音を立てて閉じられた扉に一瞥をくれながら、特に何の感慨も無さげに呟いて。しかし去り際に彼が見せた笑みを思い出すと、思わずにまりと口の端が持ち上がる。

――さて、さて。
自分の下に転がっている青年は、今この状況で、一体どんな表情を浮かべているだろう。
少々気が削がれてしまったのは――そして微かな苛立ちを覚えたのは確かだけれど、それはそれで愉快な事には変わりない。

扉から視線を外し、頬へと触れる手はそのままに。眉を僅かに持ち上げて、きっと驚いているであろう青年の顔を見下ろした]


ーー……っ!

[転院して真っ先に連れて来られたのは、治療室で。麻酔で眠る間に処置が終わったらしく、のろのろと起き上がると身体に激痛が走り顔を歪める。身体の成長が急に再開した副作用のせいなのか、身体を動かす度に骨が軋んだ。いつまでこの痛みに耐えればいいのか、と弱音を吐きそうになる。治療法が見つかっただけマシなのに、そのまで考えた所でマリーの顔が頭に浮かぶ。]


そういえば、挨拶出来なかったなぁ……。

[手荷物の中からボールペンと三枚のメモを取り出して治療室のテーブルに置けば、それぞれにメッセージをさらさらと書き始める。

《1枚目》はマリーに。転院したこと、お酒に付き合ってくれたお礼、それからマリーの体調を案ずる内容を纏めて。右下には紫陽花のイラストを添えて、大事に育ててあげてねとコメントを書き足した。

《2枚目》はネルに。気遣ってくれたお礼とまたお話しようね、お互いの病気が治ったら絵本を読ませてね、なんて内容を転院したことを伏せて。

《3枚目》のメモはキリシマに。
これらのメモを何らかの方法で手渡して欲しいということ、見捨てなかったこと、約束通り治療できることへの感謝の気持ちを紙いっぱいに書き込んだ。

それを封筒に入れて閉じると処置室を後にして、院内のポストのへと向かった。]



[ポストの前でふ、と、これじゃあ紫陽花を人に分け与えたことがキリシマにバレてしまうな、と思ったけれどもう転院したんだし態々怒らないか、と勝手に考える。無事に届きますように、と手紙をポストの中へ押し込むと自室をさがして院内を彷徨い歩く。そうしている間に、クシャミや病気で出会った人に会えないかな、なんて淡い期待を持ちながら。]

ーーあ。

[廊下の先に見覚えのある着物の少女を見付けて、思わず声を漏らす。幼い少女が奇病で苦しまなくて良くなったんだ、と嬉しく思うと自然に顔が綻んで。]

朝顔ちゃん、久し振りっ!

[症状が完全に収まったかが分からず、しゃがみこんで話し掛ける。何処かへ向かう途中だったのだろうか、と推測すれば彼女の様子を伺った。一緒について行って良いようならばそうするだろうし、1人で行きたいようであれば再び自室をさがして彷徨ってみよう、と考えながら。]


メモを貼った。


……やっぱりあんた、医者は辞めた方が良い。

[自死を勧める医者なんて、聞いた事も無い。元々今更彼が医者らしくするとは思っていなかったけれど、これ程とは。
――もしかしたら、死ぬ気など毛頭無いと、気付かれていたのかもしれない。そもそも舌を噛んで死ぬなんてナンセンスだ。三流小説じゃあるまいし。

脅し文句が効かないのなら、どうしたものか。唇に触れる指先を拒む余裕も無くそんな事を考えて。
次の瞬間、能天気なかけ声と共に騒々しく開かれた扉に、何事かと視線を向ける]

く、クシャミ……?

[何故彼が此処に居るのか。ふとそんな疑問が脳裏を過ったが、今はそんな事どうでもいい。
助けてくれ、だとか。こいつを退かせ、だとか。そんな事を言おうとしたのだけれど……すぐに閉じられた扉にただ目を瞬かせた]


あ、有り得ない……。

[人が押し倒されているというのに、あの猫耳野郎は笑顔で扉を閉めたのだ。
突然の訪問者は、ディーンにとってはまさに天の助けともいえたのに。(そもそも奴のせいでこうなっていると思っているので、助けられた所で評価は上がらないだろうが)
一切の躊躇いも無く厄介な誤解をして、扉を閉めやがったのだ!

あの顔は絶対に今見た光景を周囲に広めようとしている。あの猫耳にとってはディーンの窮地など玩具ぐらいにしか見えていないのだろう。……そう考えると、腹の底から怒りが湧いてくる]

――っどけ!

[先程までの恐れは何処に行ったのか、言葉のままに目の前の彼を蹴り付ける。不意打ちだし、この距離だから、当たらないという事は無いだろう。
恐らく腹の辺りに当たっただろうそれに、せめて体勢を崩してくれれば良いのだけれど。

先程まで萎縮しきっていた筈のディーンの反撃に、彼は一体どうするだろうか]


[その顔に寸時浮かんだ希望の色。しかしそれも、扉が閉まればまたすぐに絶望へと変わる。
信じられない、とでも言うように目を瞬かせながら、どうやら怒りに震えているらしい彼に思わず吹き出せば、突如腹の辺りに走る衝撃]

――…ッ、

[流石に油断していたのか、綺麗に入ったその蹴りに僅かに息を詰め、咳を一つ。
小さく崩れた体制を見て、彼はこの状況から逃げ出そうとでもしただろうか――だが、しかし]

…何をするんです、痛いじゃないですか。

[淡々と、不気味な程に平坦な声で。怒りも揶揄も含まずに、ただ言葉だけを唇に乗せる。
彼が逃げ出そうとしたのであれば、その腕を引き今度こそシーツに押さえ付けでもしたであろう。そうすれば、彼に逃げる術など無いのだろうし]


まったく。足癖が悪い。

[ギシリ。蹴り上げてきた脚の腿の辺りを膝で押さえ付け、体重をかける。下は柔らかなシーツとは言えど、有る程度の痛みは伴ったであろう。

口には笑みが浮かんでいれど、その瞳には笑みの色は無く。
――完全に、不意打ちだった。それが何とも気に食わない。
唯でさえ、突然の来訪者に気を削がれて少々苛ついていたというのに。その苛立ちのままに、その顎を掴み力を込め――

――ようとした所で、ふと気が変わる。
嗚呼、そうだ。ただ痛め付けるのもつまらないではないか。ならば。
込めかけた力を緩め、ただし押さえ付ける力は決して緩めないままに]

……今頃、噂になっているかもしれませんね。

[白々しく、まるで困ったようにそう呟いてやれば、彼は一体どんな反応を返しただろうか。
猫耳の青年の事だ、喜々として周りに言い触らしたとしてもおかしくない。そして目の前の青年は、それを何よりも嫌うだろう]



――折角ですし、噂に信憑性でも出してやりましょうか。ねぇ?

["丁度鍵もかかっていませんし"、と。
不自然な程に穏やかな笑みと共に告げたその言葉の意味を、彼はどう取っただろう。
何時ものように、クスリと笑う事もせずに。相手の身体を押さえ付けたまま、片手で髪を梳きながら顔を近付けてやれば――彼は、どうしただろう]


[階段を降りて、処置室の前を足早に通り抜ける。
治療の時間じゃないのはわかっているけれど、お医者さんにあったら注射されてしまいそうで、何と無く怖くて、半分走り抜けるようにパタパタとスリッパを鳴らす。

一気に通り抜ければ廊下の端っこ、ここの角を曲がればすぐに食堂だ。
さっきあんなにご飯を食べたのに、少しだけお腹が空いたようで、くぅ。と小さな音がする。]

〜〜!!!

[恥ずかしくてお腹を押さえた時、後ろから優しい声が聞こえ、満面の笑みが浮かぶ。]

あー!キラキラのおねーちゃんだ。
おねーちゃんも、こっちのびょういんにおひっこししたの?

[知っている人にまた会えたことが嬉しくて、レティーシャに抱きつこうと、精一杯手を伸ばす。
抱きとめてもらえば嬉しくて頬を寄せるし、抱きとめられなかったとしても、洋服をグイグイ引っ張ってこう尋ねるだろう]

あさがおね、これからしょくどうにいくの。
キラキラのおねーちゃんもいっしょにくる?

[都合が合うなら、そこで読んでもらおう。と強く手紙を握りしめた。]


メモを貼った。


メモを貼った。


メモを貼った。


[相手の体勢が崩れたと見れば、今しかないと逃亡を試みる。
さっさとしないと奴が逃げてしまう。あんな所を見られて、噂でも広められたら非常に面倒だ。
……そう、思ったのだけれど。逃げ様としたところで腕を掴まれ、そのまま引き戻される。

聞いた事もない声音で話す彼を、恐る恐る見て。勢いのままに行動した事を酷く後悔する事となった]

――あ、っぐ!

[踏みつけられる痛みに小さく悲鳴を洩らした。
もしかして自分は、逃げる機会を完全に逸したのではないか、なんて。ふとそんな事を考えて、表情を強ばらせる。
彼の体を押し返す事は不可能だと先程実証したばかりだし、逃げ出す為の足も封じられてしまったし。――まさに絶体絶命、というやつだろうか。これまで本で得た知識なんて、力技の前には及ぶべくも無い。

顎を掴まれ強制的に彼を見る事になれば、浮かべられた笑みに口端が引き攣る。流石のディーンも、この笑顔がただの笑顔だとは思えなかった]


だ、れの、せいだと……。

[あんたが伸し掛ってきたのが悪いんじゃないか、と。震える声で続ける。
こんな状況でも悪態を吐いてしまう自分が憎らしい。かといって言わせっぱなしも耐えられないのだから仕方ないだろう]

……っ!
そ、そんな事したら、あんただって困るだろう!

[患者に手を出した、だなんて知られたら、この病院にいられるかどうか。そういう意図でもって言葉を返す。
もし此処でそういう事をして、その現場を見られたとしたら。困るのはむしろディーンより彼だろう。ディーンはいずれ退院するが、彼は此処が仕事場だ。

――流石に彼も自らの社会的地位は大切だと、そう思いたい]

や、め……っ!
近寄るな!

[不自由な体のまま、必死に顔を背ける。彼の胸の辺りに手を当てて、必死に突っ張ってみるのだけれど、恐らく意味は無いだろう。
ディーンの力が彼に及ばないという事は、散々証明されているのだから]


メモを貼った。


[――カリ。
近付けた唇を開き、腰に当てられた手などものともせずに。肩を押さえ付けたまま相手の唇へと歯を立てる。
小さく裂けて滲んだ血を軽く吸い顔を離すと、自らの唇に付着した血液は舌で舐め取りながら。
尚も悪態を吐くその様を嘲るかのように微笑み、少し身体を起こして相手の顔を見下ろした]

俺が困る?
……何故。

[困るだろうと彼に問われ、今度こそ蔑みの色を露わにする。
まったく、一体何を期待していると言うのだろうか。まさか自分が、そう言われてここでみすみす引くとでも思っているのだろうか、と。
呆れたような溜息を吐き、嘲笑じみた嗤いをひとつ、零す]


――あぁ、もしかして。
俺の立場でも心配してくれているんですか?
そんなもの、意外と何とでもなるものですよ。

[そう告げてやれば、果たして彼はどう思うだろう。
口端を上げて見下ろしながら、"それとも被害届でも出しますか"、なんて煽ってやれば…彼は狼狽えでもしただろうか、と]

……明日から楽しみですね。

[もしも誰かに聞かれたら、笑顔で肯定してやろうか、と。
そんな事を考えながら、顔へと添えた手の指の腹で傷を掠めるように擽ってやる。
そのまま喉仏へと滑らせる。出張ったそこを軽く押し、ピタリと閉じたシャツのボタンへと指をかけながら。

――さて。此方も此方で楽しみましょうか]



――――

[細く、深く息を吐く。
吐き出された煙は、薄暗くなってきた部屋に広がり、やがて霧散していく。ベッドサイドへと腰掛けて足を組み、傍らの机にある葡萄の実をひとつ、摘み。

――そう言えば、結局あれから林檎を一欠片しか食べませんでしたね。

その事実と空腹に気付いたのは、その実を口へと含んでからだった。視線を向けた先の皿にある林檎は既に黒ずんでおり、流石にそれを食べる気にはなれなかったけれど]

…お腹、空きましたねぇ。

[それに喉も乾きました、と。
空腹の為に気怠さを増してきた肩を落としながら、ポツリと呟く。
そろそろ煙草で誤魔化すのも限界だ。いい加減、何かを胃袋に入れなければ。
部屋の主に特に断りも無く吸った煙草を、懐から取り出した携帯灰皿へと押し込めながら口を開く]

何か食べますか。

[チラリ、と背後を振り返り。そこに居る筈の部屋主に、医者は何とも呑気な声で問うてみた]


[手を伸ばす少女を抱きとめれば、そっと頭を撫でて。これなら仮に彼女の病気の症状が残っていても怖くないだろう、と考えて。]

うん、一緒に行きたいなー!

[彼女の言葉に頷いて立ち上がり、いつかのように手を差し出して笑む。そんなに日は経っていないはずなのに、なにもかもが懐かしく感じる。]

おねーちゃん、食堂の場所分からないから案内してくれるかな?

[そういえば、この病院に来たばかりで食堂がどこにあるか分からないんだった、と思い出して少女に問う。]


[頭を撫でられれば、飼い主に褒められた子犬のようにキラキラとした視線を注ぐ。

実際、朝顔に尻尾があったなら、きっと千切れるほどに振っていただろう。]

うん!あさがおがあんないしてあげるー。
あのね、おいしーの、いっぱいあるんだよ。

[さっきはパフェ食べたんだよー。なんて得意げに言いながら、しっかりと手をつなぐ。]

キラキラのおねーちゃんはなにたべる?

[歩きながら、顔を上げて見つめた相手は、もう巨人ではなく、自分よりも大きい普通の女の子に見える。

金色の髪の綺麗な女の子を見上げ、にっこり笑う。]

ほら、しょくどうはあそこだよー。

[まっすぐ指差した先、サンプルが飾られたショーケースと、食堂のドアが見えた。]


[シーツ越しでも彼の吐き出す煙が喉に染みて、じくじくと痛む。勿論痛むのは其処だけではないけれど、必死に目の前の事実から目をそらした。

……人の部屋で勝手に喫煙しやがって。ふと、そんな思いが浮かぶけれど。とてもじゃないがそんな事を言う気分にはなれなくて、シーツを握る手に力を込めた。

呟きには答えずに。続けられた問い掛けに、シーツから手だけ出して扉の方を指し示す]

……かってに、食堂にでもいけ、

[吐き出した言葉は酷く震えていた。否、震えているのは、声だけでは無いけれど。

――嗚呼、本当に飛び降りてしまうべきだったか。
彼から逃げようとした時の選択肢を思い出して、そんな事を考える。けれど舌を噛む勇気すら無い自分に、そんな事が出来る筈は無いと自嘲を洩らした]

ぜんぶ、持って帰れよ。

[見舞いの品だとかいう何もかも、この部屋に痕跡を残さないで欲しい。ぶっきらぼうな口調のわりに、その声音は哀願めいていた。
彼が出て行くか行かないか、それは分からないけれど。彼がこの部屋から出ない限り、自らシーツを取り払う事はしないだろう。
――この、惨めな顔を見られない為に]


そうですか。

[扉へと向けられた手につまらなさそうに肩を竦め、机の葡萄をもう一粒。
柔らかなその実を喉へと通しながら、震えるその手とその声に、底知れぬ充足感が胸に広がる。
決して此方には向けられないその顔に浮かんでいるであろう表情を思い浮かべながら、漸く何時ものようにクスリと笑みを零した]

それはまた随分ですね、結構いい物を買って来たんですよ。
…林檎はもう駄目でしょうけど。

[哀願めいた声に、まさか同情心など煽られるわけも無く。立ち上がると、そのままだったナイフを軽く拭いてしまい、黒ずんだ林檎を紙皿ごとゴミ箱へと放る。

――それにしても。
"こう"までされて、まだ自分に返答を返すのか、と。何とも律儀で素直な彼に、少なからず感心を覚えながら、盛り上がったシーツに視線を向けた。
嗚呼、きっと彼は今、死を願う程に絶望しているに違いない。そしてそれでも死ぬ勇気すら持てぬ自分に…嫌悪でもしているのだろうか]


…何時になったら、"同じ目に"合わせてくれるんでしょうね。

[シーツに潜る彼に顔を近付け、態とらしく呟いてやりながら。いつぞや、彼に言われた恨み言を思い出させるかのように。
そうしてそっと身体をなぞるようにシーツ越しに触れてやれば、彼はどんな反応を返しただろうか]


[体を這う手の感触に、シーツ越しだというのにぞわりと皮膚が粟立つ。咄嗟に嘔吐きそうになる胃を、喉を押さえて、耐える様に強く目を瞑った。
は、と。短い息を何度も吐き出して、込み上げてくるものをやり過ごす。いっそ吐いてしまおうかとも思うが……少なくとも彼の前でだけは、もう惨めな姿を晒したくはなかった]

さ、わるな、

[彼の問いには答えずに、何度も繰り返した言葉を再び口にする。……それが果たされた事は一度も無いと、分かっているのに。

随分遅れて振り払おうと動いたその手には、どうにも力が入らなくて。彼の手に辿り着く前にシーツにぱたりと落ちた。
握り締めた右手は、例の如く傷が開いて血が滲んでいる]

さわら、ないでくれ。
――もう、嫌だ。

[この言葉も、いつだか彼に向けて言った気がするけれど。あの時とはもう随分と違ってきてしまっていた。

シーツの下、顔を覆って。涙と、汗と。その下にある歪んだ顔につくづく嫌気が差す。
……嗚呼、こんな事なら]


治らなくて良かった、のに、

[呆然と落とした言葉は、彼にどう届くのだろうか。
――そんな事、ディーンにとってはどうでも良い事だったけれど]


それじゃあ、わたしもパフェにしようかなぁ……。

[甘いものには目がないんだよねぇ、と頬を掻きながら問いに答える。少女をちらり、と見下ろして見ると以前のように怯えた様子はなくて病状が良くなっているのか、と心から嬉しく思う。]

わぁぁ、なにこれっ……すごい、すごい!

[転院前の病院にはなかったサンプルが飾られたショーケースをキラキラとした目で食い入るように見つめると子供のようにはしゃいで。]

朝顔ちゃんは何か頼む?
一緒に注文するよー?

[食堂へ入るとまわりを見渡してから少女に問う。食堂行く予定だったようだし何か注文するのだろうと考えたのだが、彼女はどうするだろうか。]


メモを貼った。


[触れた手から伝わる小刻みな呼吸。短く浅い息を吐き、何かに耐えるように小さく震えるその身体に、まるで子供をあやすように触れながら。
嗚呼、何と惨めで傷ましい事か。屈辱に震え、恐怖に怯え、嫌悪に嘔吐きながらも、尚。この手を振り払う事すらも出来ないだなんて]

何が嫌なんですか。
あんなに焦がれていた物を手に入れて、命の危険も取り払われたのに。

[いつか聞いたものと同じ言葉。
己のの行く先に絶望し、か細く吐かれたあの言葉と同じ言葉を、あの時とはまた違う心境で吐くと言うのか。
その顔はもう、動くではないか。
その命はもう、病に侵されてはいないではないか。
ならば何故、その言葉を吐くと言うのだろう]

……………、

[ピクリ、と。呆然と吐かれた続く一言に、触れる手が止まる。
――そして目を見開き、嗤う。あれ程までに焦がれていた物を、自ら拒絶するだなんて。

そうして呟かれた声に微かな嗚咽の響きを見れば、深く被られたシーツを剥ぎ取りその顔を掴み取る。
身体を乗り出し手に力を込め、余程の抵抗が無い限りは汗と涙で濡れて歪むその顔を、無理やり此方に向けただろう]



…なら、今度こそ。
その皮を剥いであげましょうか。

[僅かに高揚したような呟きは、彼にどう届いただろうか。
すぐにまた"――冗談ですよ"と呟いたとしても、彼にその言葉が届いたかどうか。

――医者は気付いているのだろうか。
自分が今、恍惚としてそれでいて――まるで慈しむように、その泣き顔を見下ろしていることを]


――う、あ……!

[止められた手に、ああやっと帰る気になったのかなんて、見当違いの事を考えて。だから身を守る様に纏ったシーツが剥がされれば、抵抗の間も無く彼の眼前に晒される。

無理矢理顔を向けられて、険しく顔を顰めた。拭う間の無かった涙がぼろぼろと流れ、彼の手を伝う。

きもちわるい。
触るな、と。もう一度震える喉で繰り返して。今にも迫上ってきそうな内容物を遮る様に必死に喉を押さえて、嗚咽めいた悲鳴をあげた。
何度無駄な事を繰り返すのかと、自分でも思うけれど、言葉を重ねる以外に出来る事なんて無い。全てが全て彼に支配されている様な気すらして、惨めで堪らなかった]

……いや、だ。

[喉に当てていた手を、彼の腕に持っていく。
どうにか服を掴んで、引き剥がす様に力を入れるけれど、恐らく意味は無かっただろう。常でも抗えない力の差に、憔悴しきった今抗えるとも思えない]


もう……痛いのは、いやだ。

[懇願する様に言葉を落とせば、ひ、と。喉が鳴った。
高揚した彼の声音と、いつもとは違うその表情が、酷く恐ろしい。これなら未だ、あの胡散臭い笑顔の方がマシだ。

溢れる涙も、引き攣る喉も自分の力ではどうにも出来ない。彼が居る手前落ち着く事も出来なければ、ただただ泣きじゃくるだけになる。
――今はもう、情けないと思う余裕すら無くなっていて。込み上げる嫌悪感と恐怖に飲まれる様に震えていた]


[己の喉を抑える様に、ボロボロと零れる涙に。そしてそれが指の間を伝う感触にす、と目を細め。
嫌だ、触るなと力無く繰り返す彼はまるで、追い詰められた鼠のようではないか。
此方の行動一つ一つに翻弄されるその様は、実に愉快で堪らない]

…痛いのは嫌いですか。

[袖へと添えられた手を取ると、するりと触れた後にシーツへと落とし。ついに泣きじゃくり出した彼を見下ろし、小さく笑う]


[――最初は、ただの興味だった。
己を見せる事を嫌う自分と、己を見せる事の出来ない病を嫌悪する彼と。
この仮初めの不完全な笑顔を羨む彼は、それは何とも惨めで滑稽で、そして何よりも自分の優越感を煽ってくれたから。

彼の退院を知った時。胸に渦巻いたのは紛れもない"嫉妬"。
自分へと漏らした、か細いあの絶望の声はどれほど甘美に自分の心を擽っただろうか。
それなのに彼はその絶望を無きものにしようと、胸に希望を抱いているだなんて。

存外素直な彼の事だ、きっとその冷たく氷った顔が溶ければ、躊躇いも無く己の内を晒すのだろう――晒してしまうのだろう。
それが、その素直さが。歪んだ自分には何とも妬ましく、そして許し難かった。
素直に内面を吐露したとしても、きっと何も失わないであろう彼に――そう、羨望に似た思いを抱いていた事は、終ぞ認める事は無かったけれど]


[しかし、まさか。先程まで見下していた相手を妬むだなんて。そんな事を、自分のプライドは許さない。
――ならば、いっそ。
彼が苦難の末にようやく得た、その希望を塗り潰してやれば良いと。笑みを浮かべる度に、自分に与えられた恐怖と痛みを思い出させてやれば良いと。
そうして彼が自ら切り裂いた傷を、この手で更に深く抉ってやったと言うのに。

思い出せば良い。笑う度に、泣く度に。焦がれてやまなかったその表情を浮かべる度に。
恐怖で、痛みで、絶望で。
この自分に縛られてその生を終えれば良い。

――縛られているのはむしろ自分の方なのだと、最後までそれに気付く事はなく]

…………、

["泣かないでくださいよ"、なんて。
そんな優しい言葉を、精々態とらしく、さも心配しているかのように、かけてやるべきなのかもしれないけれど。
尚も震えるその頭を、不気味なくらいに優しい手つきで抱き寄せて。あやすように髪を梳いてやれば、彼は一体どんな反応を返しただろうか。
――しかし、その口から出た言葉は]



………もっと泣けばいい。

[ポツリ。零した言葉は、果たして彼へと届いただろうか。過去に一度だけ零したものと同じ"本音"を、彼は一体どう受け取っただろう。

そうして今宵もまた、その傷へと手を伸ばすのだろうか。癒えかけたのならば、また抉ってやろう、決して忘れる事のないように。
お気に入りの玩具に傷を付け、自分のものだと誇示するような。そんな子供じみた事をしている自覚すらも持たずに。

その瞳にこの姿を写しているその間だけは。その間だけは、ざわつくこの胸の内が何とも穏やかなものになってくれるから。
――例えその瞳が、恐怖に怯え、嫌悪に染まり、昏く冷たく青ざめていようとも]


[ショーケースを食い入るように見つめる姿に、大人でもこんなふうに喜ぶんだな。なんて新しい発見をしたような気持ちになる。

実際目の前の少女は、見た目だけでは『大人』とは言い難い姿だったけれど、朝顔の目には自分よりは大人に見えるから。]

ねっ。おいしそーなのいっぱいだよね。
キラキラのおねーちゃんもパフェにするの?
あさがお、さっきイチゴのやつたべたんだよ。

[ショーケースに陳列された、苺パフェのサンプルを指差す。
こうやって話してその味を思い出せば、もう一度食べたくなってしまったけれど、苺パフェばっかり食べて他のが試せないのも勿体無い気がして。]

んとね、あさがおはプリンにするー。

[つい、と視線を動かせばパフェの隣、可愛らしいガラスのお皿に盛られたプリンのサンプル。
果物や生クリームで飾られたそれは、パフェとはまた違った魅力があって、目が自然と惹きつけられる。]


[食堂の入り口から中を覗き込めば、
カウンターには優しそうなおばちゃんの姿。
あの人は、さっきディーンと来た時にもいた人だ。そう思うと余計に嬉しくなってしまう。]

いっしょにちゅーもんしにいこっ!

[何を頼むのかは決まった。
宝石箱のような、可愛らしいプリンアラモードの姿を思い浮かべれば、はしゃいだ声をあげ、レティーシャの手を引っ張るように歩いていく。

もちろん、彼女がもうちょっとショーケースを見ていたいようならば、足を止めるけれども。
このまま注文しても平気なようならば、カウンターにむけて元気良く注文を行うだろう。
お手伝いは大好きなのだから。]


メモを貼った。


あぁ、つまらない…

[結局クシャミは誰かに言いふらす事も無く、ナスステーションで「ディーンの部屋が騒々しい、何かあったんじゃないか」という旨を伝えただけで終わらせていた。別に言いふらしたいわけでもなかったし、間も無くナースがディーンの部屋に行く頃だろう]

………はぁ

[小さくため息を吐くとヤニクとディーンの二人が密着しているのを思い出す。自分が前にも似たような事をされた事、それはディーンは誰でもするのか、と考えると恥ずかしがっていたのも、引きずっているのも、そこから少し良い人だなんて信用したのも全てこっちの独りよがりと思い知らされたようで]

なんだかなぁ…
ディンさんのバーカ


[恐らくもう会う事はないのかな、と思うと寂しく、少しだけ泣きそうになったがそれも自分だけがそう思ってるのだと思うとどうでも良くなった。病気が治ると聞いてからあまり笑う事が無くなり、寿命と引き換えに笑顔を失った、そんな気もした
その足は何も納得出来ないまま食堂へと向かっていた。所謂やけ食いでもしようと思ったわけなのだが、そこで見慣れた二人()を見付ける。二人は何か注文するのに夢中になっているようで、後ろから近付いても自分の存在に気付かないくらいだった
後ろからこっそり、と言うわけでもないが食堂のおばちゃんの前に立つと自分も、と注文し始めた]

ショートケーキとパフェ、ティラミス、チョコブラウニー、あとは板チョコあればそれも。えーっと…チョコケーキもお願いできる?

[食堂のおばちゃんは少し驚いていたようだが、全ての注文を聞き入れてくれたようだ。これはクシャミにとって有難かった。未だに目が治っていないため白と黒しか認識出来ないのでそれに合わせたデザートにしたのだが、誰かが気に留める事は無いだろう]


あ、お金はやに……

[ヤニク、と言おうとしてからその言葉が止まった
元々医者が嫌いで接していたヤニクに対して元々良い印象なんて無かった。それに加えて先程の事がまた思い出されてとてつもなく勝手な思考だが、まるで“友達を取られた”気がしてその名前を呼ぶ事すら抵抗を覚えた]

……良い、僕が払います
あ、そこの二人分も

[朝顔とレティーシャを指して言うと、ニヘラと笑って好きに頼むように促した]

や、久しぶり。レティもこっちに転院したんだね


メモを貼った。


[痛いのが好きな奴なんて居るのか、と。
いつもならばそう言ったのだろうけれど。じりじりと焼け付く様に熱い喉は、上手く動いてくれない。息をする事すら苦しいというのに、どうして無駄な悪態など吐けようか。

薄い抵抗を示していた手が取られてびくりと跳ねる。そっと下ろされるそれにすら抗う事が出来ずに、ただ体を震わせた]

[零された言葉の意味になんて気付けないまま、死んだ様に濁った瞳をそちらに向ける。
嗚呼、この期に及んでそんな事を言うのか。絶望を通り越して笑ってしまいそうになる。そう思っても、勿論笑う事なんて出来なかったけれど。

けれど傷に手を伸ばされれば、大袈裟なくらい体を震わせて。その傷をつけられた時の事を思い出せば、耐え切れなくなって体をくの字に曲げた]

……ッお、え゛、

[悲鳴をあげて酷く傷ついていた筈の喉を、熱い液体が滑り落ちていく。舌を通るその苦味に先程の行為を思い出して、尚更嘔吐いた]


う、う゛う゛、
っぐ、ぇ……、

[震える手で彼を押しのけ様と手を伸ばす。それは吐瀉物が彼にかからない様に、なんて配慮なわけがなく。
ただ醜く歪んだ顔と、零れ落ちる汚物が見られたくなかっただけだ。

ひとしきり吐いて、無理矢理自分を落ち着かせれば。虚ろな瞳でシーツを汚すそれを見て、そろそろと唇を拭う。浅い呼吸はそのままに、隠す事も出来ないそれをどうするかと、そればかりを考えて]

……は、ぁ。
み、るな、クソ、

ちがう、こ、こんなの、わたしは……。

[こんな筈じゃ無かったのに。
涙に濡れる声でそう言って、また顔を覆う。
こんな事の為に顔を取り戻したわけではない。こんな歪んだ感情をぶつけられる為に、焦がれていたわけじゃあない。

消えない傷を押し付けられて、抗う隙も無いくらい絶望させられて。それで済ませれば良いのに、今尚傍らに居ようとする彼から、どうすれば逃げられるのだろう。
……そればかり考えるのに、結局答えを出す事は出来なかった]


あっ、プリンも美味しそうだね…!
なんだか宝石箱みたいーーひっ⁉︎

[話している途中に自らの名前を呼ばれて、声のする方に視線を向ければ見覚えのある猫耳が視界に入って。同じ病院に転院していたことと、急に目の前に現れたことに驚いて間抜けな声をあげた。…正確には着物の少女と何を注文しようか、なんて話題に夢中でまわりが見えていなかっただけなのだけど。]

え、……うん、実はねぇ。

[言うタイミング逃しちゃって、と頬を掻くと再会出来た喜びから満面の笑みを浮かべて。彼と同じ転院先で再会出来たこと、珍しく会計をツケにしないこと、目は回復しているのかなど、嬉しい気持ちに気になること、彼に話したいことがたくさん頭に浮かぶ。その中でまず一つを選ぶと彼に投げかけた。]



ーーそれにしても、折角の再会なんだだもん、もっと驚いても良かったんだよ?

[転院することを言っていない上での再会だったからもう少し驚くかと思ったのに、と頬を膨らませて見せる。もちろん、本当に怒っているわけではなくて、すぐに悪戯っこのように声を出して笑って再会を喜んで。

彼に促されパフェと葡萄酒、それから着物の少女のプリンというアンバランスな注文をすると、会ってそれほど日の経たない青年に奢ってもらうのはなんだか申し訳なく思って財布を取り出した。]


[向けられる眼差しに、僅かに不服そうにピクリと眉を持ち上げる。
――嗚呼、その瞳は気に食わない。そんな虚ろで濁った瞳は…感情の無い瞳は気に食わない。
恐怖も嫌悪も滲まないそんな瞳なんて。きちんと映してくれなければ――"意味がない"のに]

…どうしました、大丈夫ですか。

[微かな苛立ちのままに、抉った傷へと触れてやれば堪らず嘔吐くその様に、ようやく嗤う。
それでも言葉に載せるのは、さも心配しているような一言――"あぁ、満たされますね"なんて、心の中では思っているけども。
押し退ける手をそっと払いながら、まるで介抱でもするように背中をさすってやれば、その体は果たして震えてくらいはくれただろうか。

ひとしきり吐き終えた彼を見つめ、微かに嘔吐物の散った白衣を脱ぐ。
見るな、見るなと呟きながら顔を覆い、嗚咽を漏らす彼の前に広がる、ツンとした臭いを放つそれ。
そこへ脱いだ白衣をパサリと被せて立ち上がり、彼の涙で濡れた頬へと手を伸ばしながら]

口を濯ぎましょう。立てますか?

[告げる声は優しく、穏やかに。そしてたっぷりの憂慮の色を乗せて。
絶望に咽ぶその顔へと触れる手には、一欠片の悪意すらも乗せぬままに]


["こんな筈じゃなかった"
小さく聞こえたその声に強まる笑みには、彼はきっと気付かなかったに違いない。
微かに昂る感情に小さく息を吐きながら、医者は顔を覆う彼のを取り、両手でもってその涙で汚れた顔へと触れただろう――彼に振り払う事が出来なければ]

――あぁ、でもやっぱりこっちの方がいいですね。
笑顔よりもずっと、こっちの方が。

[まっすぐに相手の瞳を見つめながら、さも嬉しそうな声でそう言ってやる。
笑顔よりも、泣き顔の方が。きっと感情が分かりやすいと、そう告げた言葉を裏付けるような――甘美な泣き顔。
そうして触れる事が叶っていてもいなくとも、医者はそっと、その頭を抱き寄せただろう。彼はそれを、拒絶したかもしれないけれど。

自分に縛られ、支配され。恐怖と絶望を植え付けられても尚、逃げる事も許されず。
只々、一人咽ぶだけの存在に、底知れぬ愛おしさすらも感じながら。
――自分のこの歪みに歪んだ愛憎の念は、彼には到底理解出来ないものなのだと。そんな事は――とうに知っている]


[驚いても良かったんだよ?と言う少女に困ったように笑う。ヤニクとディーンの事で驚く暇が無かっただとか、八つ当たりのように忘れたくて話しに行ったから驚くほどでもなかったとかは言うべきではないだろう]

ニハハ、驚いたよー?だからこっそり、今度は僕が驚かそうと思ってね

[ヘラリ、といつものように笑ったが2人の反応はどうだっただろうか。おばちゃんからトレイいっぱいのデザートを受け取ると適当な席を見つけて座った]

それにしても、みんなこっちに来てるんだね。キリシマ先生が院長の紹介だからかな

[偶然と呼ぶべきか、これもあのやせ細った医者の故意的な物なのかは今はどうでも良かった。2人共ここに居ると言う事は治る見込みがあっての事だろう]

あれから、病気で何か変化あった?


[汚物を隠す様に被せられた白衣に視線を向けて、気遣いのつもりだろうか、なんて考えてみる。けれどこれまでの彼を見るに到底そうは思えなくて、すぐにその考えも消えてしまった。

頬に伸ばされた手と穏やかな声音には小さく目を細める。
――今更優しくしたところで、何になるというのだろう。もう、全て壊れてしまっているのに。
それこそ、あちらの病院に居た頃……傷を抉られる前であれば、絆されもしたかもしれないが。事此処に至っては、ただざわざわと不信感を煽るだけだ。

立てるかという問いには、いやいやをする様に首を振る。事実体のあちこちが痛くて、立つ事なんて出来そうも無かった。痛くなかったとしても、彼の言う通りにしようとは思わなかっただろうけど]

――なに、

[今更頬に触れられたぐらいでは、もう振り払う気力も湧かなくて。けれど包む様に触れてくる両手に、僅かに戸惑いの色を見せる。
何度言っても差し伸べられる手は、妙にあたたかく感じられて、それがまた不快なのだと、彼は気付いていないだろう。気付いたらより触れようとするだろうから、決して言ってはやらないが]


……。

[泣き顔の方が良いと、至極嬉しそうに語る彼に眉を寄せる。
確かにそういえば、そんな事を言っていた様な気もする。戯れだと聞き流していたけれど、なるほど、あれはまぎれも無い本心だったわけか。

く、と。嗚咽のような、笑い声のような吐息が洩れる。
そのまま声をあげて笑えれば良かったのだけど、零れ落ちたのは透明の液体で。はらはらと涙を流しながら、しゃくりあげていたら、震えるその体を抱きすくめられた]

……なんなんだよ、あんた。

[申し訳程度に押し返そうとして、力の入らない手のひらを彼の体に添える。けれどこの格好は、思いの外気が楽だった。何より顔が見られない。
……勿論、張り付く様なその体温は酷く気色悪いが、我慢出来ない程ではなかった。
少なくとも、力でねじ伏せられるよりはずっと楽だ]


良く泣きますねぇ。
…何か、解らない事でも?

[抱き竦めた中、ポツリと呟かれた言葉にそう問い返し。ほんの小さな力で押し返して来るその腕は、少々邪魔臭くはあったけれど。
しかし、何と白々しい。我ながらそう思いながらも、失笑は胸の内だけに。彼からすれば、むしろ解る事の方がきっと少ないのだろうか。

解らなくとも構わない。
理解される必要など何処にも無い。
"君はただ、そうやって素直に足掻いていればいいんですよ"、なんて。
――それで十分、自分の心は満たされるから。

そんな自分勝手な思いを胸に、抱いたその背をその髪を、宥めあやすように撫でてやれば。心も身体も抉りに抉られ、弱って力の無くなっている哀れな彼は、一体どうしただろうか。
ここまで何もかもを壊した何もを壊した中でのそれがきっと、余計に彼の不安や不信を煽る事など…容易に想像出来るけれども]



…また開きましたね、手の傷。

[包帯の巻かれた手を取り、そこに薄っすらと血が滲んでいるのを見るなり嘆息混じりにそう呟く。
"誰のせいか"なんて、そんな"意味の無い"事をこの医者が考えるわけもなく。ただ包帯の上からそっと傷をなぞり、"もう少し気を付けてくれないと、治るものも治りませんよ"なんて嫌味としか取れぬような言葉と共に、もうひとつだけ溜息を]

少し待っていてください、物を持って来ますから。

……ちゃんと、待っていて下さいね。

[顔を近付け囁くように呟かれた声には、"逃げようなんて馬鹿な事は考えないように"なんて言葉を言外に込めながら。
最後にもう一度だけ、涙を拭う為に伸ばした手は、果たして受け入れられただろうか――相も変わらず、その顔には愉悦の笑みは浮かんでいたけれども。

そうして立ち上がると、おもむろに部屋の出口へと向かう。
扉を開けたところで鉢合わせた、"噂"を聞いてやってきた看護師は適当に追い返しておき、そのまま部屋の外へと出て行った]


[カラカラ、カラカラ。小さな音を立てて転がる回診車を引きながら、あの病室へと戻る。
さて、果たして彼はちゃんと"待って"いてくれているだろうか]

(…まぁ、あの状態で逃げられるとも思いませんけど)

[浮かんだ懸念に微かに笑いながら、扉に手を掛ける。程なくして、音と共に病室の扉が開いたであろう]


[何故自分にこうも関わろうとするのか。何故こんな事をしたのか。
――それは自分でなくてはいけなかったのか。
聞きたい事は数あれど、上手く言葉に乗せる事が出来ない。
それに、どうせ答えを聞いても納得なんて出来ないだろうから、今更どうでもいい事だ。

宥める様に撫でてくる手に、再び胃が震えるけれど。喉元まで出かかった物をどうにか耐えて唇を噛み締める。
一瞬このままぶち撒けてやろうか、なんて考えもしたが、流石に吐瀉物まみれで抱き合うのはごめんだ。(吐いたら彼がどうするか、非常に興味はあったけれど)]

……今更、

[医者みたいな事を言いやがって。
そう続けようとした言葉は、形にならず吐息と共に霧散した。どうせ何を言っても無駄だ。
落とされた溜息には、そもそもあんたのせいでこうなったのだと、少しの憤りを覚えはしたが]


……ッ、

[近付けられた顔に、思わず体を引いて。呟かれた言葉に顔を顰めた。
こんな惨めななりで、一体何処に逃げられるというのだろう。もし万が一、先の無体を見破られでもしたらと思うと、そんな事が出来る筈も無い。
――頼る宛として、一瞬猫耳の青年を思い出しはしたけれど……彼には一番知られたくはなかった。

投げやりに一つ首肯いて、離れて行く彼をちらと見送る。
扉から出た彼が、誰かと言葉を交わしている事は気になったが、どうする事も出来なかった。例え噂を笑顔で肯定されていたとして、自分が足を引きずって姿を現せば、ただそれを裏付けるだけではないか]


い゛、つ……ッ。

[軋む体でどうにか立ち上がって、震える手で着衣の乱れを正す。どうにか見られるくらいになれば、よろよろと洗面所に向かった。
中に入り扉を閉めて、鏡の前に立つ。……随分とまあ、酷いなりだ。これを彼に晒していたのか、と。喉の奥で自嘲った。

手早く顔を洗って口を漱げば、幾らかスッキリした。勿論、最悪の気分は変わらないが。

タオルで顔を覆って、壁に体を預けて座り込む。
ベッドから抜け出した自分を、彼は見付けられるだろうか。いっそそのまま帰ってはくれれば良いのに。そんな事を考えて。

遠くに聞こえるカラカラという音を聞きながら、そっと息を潜めた]


[彼の笑顔に感じた違和感は未だに消えず、病気の治療法が見つかったはずなのに、と密かに首を捻る。何かあったのか、と思ったけれど聞いていいことなのか分からなくて、難しい顔をして彼の隣の椅子に腰掛けた。それから手を繋いでいた少女に1人で座れるだろうか、と視線をおくる。1人で座れるようならすごいねぇ、と頭を撫でるだろうし、大変そうならば手助けをしよう、と考えながら。]

みんな?

[彼の言葉をなぞるように呟くと青年に視線をおくる。みんな、とはこの病院に猫耳の青年と着物の少女の他にも奇病患者がいる、ということだろうか。]

ーー変化、かぁ。
少しずつだけど身体は成長し始めているみたいだよー?

[そのうち身体が中身の年齢に追い付くんじゃないかな?と微笑みながら続けると、彼に同じ質問を投げ掛けて、反応を待った。]


[カチャリ。小さな音を立てて扉を開き、まず真っ先にした事は――空っぽのベッドを見て、怪訝そうに眉を寄せる事だった。
寄せた眉は、次第に深いものへ。柔らかかった表情も、徐々に不機嫌そうなものへと]

…ディーン?

[怪訝そうに名を呼びながら、部屋の扉を閉める。脱いだ白衣も汚れたシーツもそのままに、ただ姿だけが無い。

ひとつ、頭に浮かぶ顔があった。へらりと笑い、掴み所の無い振舞いをする――先程見事に邪魔をしてくれた、あの青年の顔。
退院して真っ先にここに来るくらいだ、そこそこに仲が良いのだろう。それについては、特に何の感想も無いのだけれど。

――正直な所、猫耳の青年の事など"どうでもいい"。別に彼自身を気に入っていない訳ではないけれど、それでも自分にとっては取るに足る存在でないのは確かで。
自分がディーンの心を最も蝕んでいる自信くらいは優にあったから――他の、追随を許さないくらいには。
例えそれが、暗くドロリと粘ついている、忌むべきものだったとしても]


[嬲られ惨めな姿のまま、誰かに助けを求める事などありはしないと。そう思っていたのだけれど。
――もしも、あの猫耳の青年が彼にとってそこまでの信頼を――その姿を見せれる程の信頼を寄せられているのだとしたら。
それは少々、"面白く無い"。

一歩、足を踏み入れながら。首を回して部屋の中を見回してみる――まさか本当に、あの状態で逃げたわけでもあるまいと]

――あぁ。
そこに居たんですか。

[タオルで顔を覆い、壁に背を預ける彼の姿を見つけると、寄せた眉をようやく解いて、また表情を和らげる。内の心を隠すように、ただ"良い"ものだけが見えるように――そんなものに、今更意味など無いのだろうけれど。近くに引いた車をそのままに、首を傾げて彼の前へとしゃがみ込むと、精々心配そうな視線を彼へと向ける]



どうしました、気分でも優れませんか。

[そんなもの、優れているわけが無いだろうに。
それでも口からそんな言葉を吐いてみせるのは、癖か何かだろうか――"医者"としての、自分の。
最早遠慮する素振りすら見せずに、蹲る頭へと触れながら幼子にするようにその頭を撫でようとすれば、その手は振り払われでもしただろうか。
外も内も散々痛めつけてやったその後には、何とも気分が穏やかになってくれていた――どうやら自分は今、すこぶる機嫌がよろしいようで]

痛むでしょう、傷。包帯を変えましょうか。
…痛いのは、嫌いなんでしょう。

[手を差し伸べ、立ち上がるように促してみるも、彼は果たしてそれに従うだろうか。
従うのならば、医者は彼を椅子に座らせただろうし、従わなかったとしても、肩を竦めて仕方無しに床の上で――医者としてどうかとも思うけれど――手当を始めようとするだろう]

……どうして、"君の泣き顔"が見たいか。
教えてあげましょうか。

[浮かべた笑みの中で漏れた、そんな小さな呟きと共に]


[隣に座るレティーシャ()を確認して、朝顔の方に目をやる。朝顔を見つめるレティーシャから、自分の手助けは要らないだろうと考えて。そこでレティーシャからされた質問に少し考えてみる
もしもここで自分の症状が悪化していて、寿命だけ伸びているという旨を話したら…それはそれで治る見込みがあるんだ、と祝福してくれるだろう。ただ、それではまだ不便がある事が知られてしまう。それはクシャミにとってなるべくしたくない事実だった]

……完治っ!

[親指を突き立てるとニヘラと笑ってレティーシャに答えた。寿命が延びている事も伝え、自分が死ななくてもよくなったという事から少しでも安心させようと]


[かけられた声に、少しだけ顔を上げる。そうして彼の顔が目に入れば、深く息を吐いた。
一度泣かせてしまえば、自分はもう用済みではないのか。怪我の事など放っておけば良いだろう。
――口には出さずに、そんな事を考えて、しゃがみ込んでくる彼を睨み付ける。
白々しいその視線が酷く煩わしかった。元を正せば全て、彼のせいだというのに]

きもちわるい、

[吐きそうだ、と。薄ら笑みすら浮かべて見せて。頭に伸びてきた手をぱしんと振り払った。

あんたに触られると、余計気持ち悪くなる。
ぽつりとそう零して、つ、と視線を下に落とす。自分とは正反対に上機嫌な彼の顔は、直視に耐えなかった。
そりゃあ踏みつけた側は良い気分だろう。だが、そのダシにされた此方は堪ったもんじゃない。

とてもじゃないが、ディーンにはここまでされる心当たりなど無かった。目の前の医者にとっては、ただの戯れなのかもしれないけれど。それでも、許せる範疇を越えている]


……ああ。
さっさと済ませよう。

[大人しく差し伸べられた手を握って、よろりと立ち上がってみせる。
先の言葉と裏腹に取られた手に、彼はどう反応するだろうか。
此方はもうあんたなんか何とも無いんだと、そう示したいのだけれど。まあ、震える手のひらでは、それには役者不足だっただろう。(そもそも、一度座り込んでしまったら立てなかった、というのもあるのだが)

案内されるままに椅子に座って、彼が手当を始める様なら、黙ってその右手を差し出した。
触れられる度に強ばる体は隠す事は出来なかったけれど、意識して無表情を貫く。
……これ以上彼を楽しませたくはない]

――どうして?

[復唱とも、問いともいえない言葉を落とす。
その時のディーンの視線は彼の笑顔ではなく、机の上のナイフに注がれていた。……手当をしている彼が、それに気付くかは分からないけれど]


[払われた手に肩を竦め、これ見よがしに溜息を一つ。
薄ら笑みと共に吐かれた拒絶の言葉には、やはり嗤いはしたけれど――嗚呼、本当に。その素直さは何処から来るのだろう。
自分を偽り、媚びへつらう事の一つでも覚えていれば、もしかしたらこうも酷い事にもならなかったかもしれないのに。

先には振り払っておきながら、今度は取られた手には僅かに目を瞬かせる。
手のひらを震わせながらも取られたその手が、彼の虚栄を表しているとは気付く事も無かったけれど。

包帯を取り、傷を見て処置をすすめながら、聞こえてきた曖昧な一言に一瞬だけ彼の顔へと視線を向ける]


泣き顔は、笑顔よりも"作りにくい"ですから。
内を晒させるには、うってつけです。

[傷へと包帯を巻きながら、視線は手へと戻し、ポツリ。
此方が触れるその度に、目に見えて強張るその身体に苦笑を零しはしたけれど。
その顔に――恐らく無理に浮かべているのであろうその無表情は、何処か以前の彼を思い出させて。それが何とも可笑しくて小さく吹き出せば、彼は気分を害したかもしれない。

顔を上げ、彼の視線が未だ机のナイフへと向かっていたとしても、特に何も咎める事もせず]

――見たかったんですよ。
表情が無くてもあれ程"分かり易い"君が、泣けばどれだけその内面を晒すかを。

[本音と、嘘と。細切れにしたそれらを、流す言葉に混ぜながら。
常のように笑うでもなく、ただ曖昧な笑みをその顔に浮かべ、何処かぼんやりとした口調で呟いていく]

………痛い思いを、させましたね。

[彼の顎の傷に視線を移して零した最後の一言は、故意に何の感情も込めずに。恐らく気付かれない程度に目を伏せて、ただ淡々と、言葉だけを彼へと送る]



…美徳ですよ。君のその――愚かなまでの素直さは。

[吐いた言葉はまるで揶揄るように、しかし紡ぐ声は――まるで微かに羨むように。
呆れたような溜息と共に、いつもと"逆"に作られたその言葉を残し、包帯を巻き終えた手を眺める。そうして小さく肩を竦め、"終わりましたよ"と一言告げて]

……吸っても?

[邪魔な回診車を脇へと追いやり、椅子の背にもたれながら煙草の箱を掲げて見せる。
彼が許せど許さねど、医者は結局は吸うだろうけども。
掲げた箱を相手に向けて、"君もどうです"なんて勧めてみれば――彼は、どうしただろうか]


ー回想ー

[レティーシャは、どのパフェを選ぶのかな、もしかしたら一口くらい交換後してもいいな。
なんてワクワクしながら考えていたら、突然後ろからかかった声]

ひ、ひぇ?にゃーにゃのおにーちゃん?

[驚いて、素っ頓狂な声をあげてしまう。少しだけ後ずさった拍子に、カウンターに踵をぶつけたのは、多分ばれてはいないだろう。

パフェとお酒を頼んだレティーシャに続いて、カウンターでプリンを注文する。
厨房にいるおばちゃんが、プリンに飾りつけするのを、魔法でも見ているかのように夢中で見守って。]

わーい、ごうかなぷりんだー。

[出てきたプリンの豪華さに、すぐにでもスプーンでつついて見たくなってしまう。
けれども"払う"といったクシャミの言葉と、お財布を取り出そうとするレティーシャを見れば、どちらにしようか迷い。]

(あとで、おしえてもらおう)

[元々、自分では計算できないので、後から教えてもらおう。と袂に収めたお小遣い袋を撫ぜた。]


[席に着く二人の真似をするように、椅子に座ろうとしたけれど。
大人用の椅子は朝顔には大きかったから、カウンターの横に置いてあった子供用の椅子を引きずってくることにした。

レティーシャとクシャミは、もしかしたら手伝おうとしたかもしれないけれど。
テーブルにプリンだけ置いて、トコトコと一人りで行くことにする。
自由に動けるようになった今、そういう小さなことでも全てが楽しかったのだから。]

ただいまー。

[そうして椅子を引きずって来れば、自分の力でよじ登り
朝顔が椅子を取りに行っていた間、二人は何やら会話をしていたようだけれども、それを尋ねるよりも今はプリンのことで頭がいっぱいで。]

いただきまーす!

[最後のお楽しみにフルーツを全部取り除けた後、プリンをスプーンでつついた。]


……。

[ぽつりと落とされた言葉に視線をそちらに向ければ、肩を震わせる彼が目に入って。思わず苛立ちに眉間に皺が寄る。

蹴りの一つでもくれてやろうかと思ったが、流石にさっきの今でそれをする程馬鹿にはなれなかった。あんな思いはもう二度としたくない。――今回の反省が、いつまで続くかは分からないけれど。

代わりに舌打ちを一つして、彼を視界から外す]

――理解出来ん。

[自分でなければいけない理由を教えられても、やはり納得など出来るものでは無かった。
曖昧な笑みも、ぼんやりとした口調もどうでもよくて。ひたすら早く時が過ぎてくれれば良いと願う。
身勝手な感情に振り回されるのは、もういい加減たくさんだ。解放ばかりを求めているのに、ただ徒に言葉を重ねる彼に苛立ちばかりが募っていく。

無感情な言葉には、一瞥だけをくれてやる。
今更何なんだ、こいつは。そんな感情を隠しもせずに眉を寄せて。深くため息を吐いた]


……とてもじゃないが、褒められている様には思えんな。

[しかもその美徳とやらのせいでこんな目に遭ったのであれば、そんなもの、微塵も良いものだとは思えない。
怒りと理解出来ないものへの戸惑いに満ちた頭では、微かに洩れた羨望に気付く事も出来なかった。――そもそも、気付いた所で何が変わるわけでもないのだろうけれど。

手当が終わったと告げられれば、振り払う様に手を引き寄せる。これ以上触れ合っていたら、頭がおかしくなりそうだった]

嫌だと言ったら止めるのかよ。

[先は無断で吸った癖に、今になって確認してくる彼がおかしくて、小馬鹿にした様に笑った。
向けられた箱には、暫し逡巡して。結局眉を寄せたまま、それに手を伸ばす。自分が吸っていないのに、相手に吸われるというのは気に食わない。ただそんな感情でもって。

礼も何も言わないままそれを咥えて、自分のマッチで火をつける。一口吸えば、それだけで喉の痛みに小さく咳き込んだ]

……まずい、

[誤魔化す様に呟いて、吸いかけの煙草を突っ返す。
もし拒絶されたとしても、そのままその手を下げようとはしないだろう]


[彼の言葉が嘘なんじゃないか、と直感で思う。それでも転院したのだから治療法が見つかり、死ななくてもいいということなのだろう。たとえ彼の言葉に嘘があったとしても、こうして彼が生きていてくれるのならばそれでいい、と思った。]

――クシャちゃん。

[色のない景色とは、どういうものなのだろうか。毎日が味気なく感じるものなのか、そんな日々に耐えてきた彼はなんて強いのだろうか。静かに彼の名を呼べば、右の掌で彼の長い前髪の上から包み込むように目に触れて。]


頑張ったね。

[ぽつりと呟く。投げ掛けた言葉は同情とかそういう気持ちではなく、ここまで病気と向き合った彼に対して素直に思ったことで。彼が生きていてくれたからこそ、レティーシャ自身も病気と向き合う気になれたのだ。彼に真意が伝わったかは分からないけれど、彼に向けて心から幸せそうに笑みを浮かべた。

それから少女が椅子によじ登るのを見れば、おかえり、と声を掛けて。注文した苺のパフェと葡萄酒をテーブルに置く。いただきまーす、と隣の少女に続いて手を合わせた。]

んふー、苺のパフェにしたのー。

[うっとりとした表情で、それを勧めてくれた少女に話しかけると上に乗っている苺をひとつ除けられたフルーツの山に乗せて、お裾分け、と葡萄酒を手に持ち言った。こんな時間がずっと続けばいいのに、と心の中で思いながら。]


[目の前の物が正常で食べられる幼女(+69)を幸せそうだな、と眺める。きっとこの子は今が楽しくて、何をするんでも自分で動ける事自体が楽しいんだな、と思って
急に髪に手をやるレティーシャ()にまた素顔を見られるんじゃないか、と警戒したが髪の上からとわかると頭をレティーシャの方へと差し出した]

ニハハ、届くかにゃー?なんちゃって
ありがとね

[小さくお礼を言うと頑張ったのは僕だけじゃないでしょ?と朝顔とレティーシャを交互に見た。それから自分のデザートが2人に比べて多いため早く食べようと思って、どれから食べようか悩んでからチョコレートパフェに手を付けた]


[言葉を落としていくたびに、彼から伝わってくる苛立ち。それを感じれば、思わず漏れそうになる苦笑を堪えて。
嗚呼、そうだろう。そうだろう。君には到底、理解出来ないに違いない。
手前勝手な我儘で、傷付け、嬲り、振り回している自覚は大いにあるとも]

(…それでも。俺を追い出す事すら出来ない癖に)

[ここまで痛めつけられて尚、大人しく手当を受けている青年の事を嗤いながら。
褒められているとは思えないと言われれば、"褒めてますよ、心から"なんて平然と言ってのけてやる。
――褒めている事自体は、事実そこそこに嘘では無かったのだけれども]

止めるわけ無いでしょう。

[小馬鹿にしたように笑って見せた言葉には、肩を竦めて言い返しながら。しかしそれでも相手が箱から一本取れば、少し驚いたように目を瞬かせる。
マッチで火を付ける様を――そもそもマッチを持っている事に驚きながら――半ば呆然と見つめながら、咳き込み始めれば思わず失笑を漏らした]


おや、煙草は嫌いですか。

[取り出そうとした手を止めて、突き付けられた煙草を肩を震わせて受け取り、そのまま口へと含む。微かに俯き、ゆっくり、少しずつ肺へと送り込みながら]

(……少し、喋りすぎましたかねぇ)

[吐き出した煙を見つめ、ぼんやりとそんな事を思う。そう言えばいつぞやも確か、同じ事を思っただろうか。
――どうにも喋りすぎてしまいますね、なんて。常ならば、こんなに自分の事を話す事などしないと言うのに。
しかしその理由など、考えるだけ"意味が無い"と捨て置いておく。いつにも増して饒舌なのは、余程機嫌が良いのだろうか、と適当な結論だけはつけておいたけれど]

(………、まぁ、いいか)

[どうせ、嘘を混ぜてしか無いのだし。彼にこの、歪んだ心の内を晒す気など、更々無いのだから。

深く息を、肺に溜まった煙を吐き出しながら。顔を上げてチラリと彼の顔を見て、手にした火の付いたままの煙草を向けてやれば、彼はまた怯えてくれるだろうか。
――そうして、そのままその頬へと触れれば。顔を近付けて掠めるように、唇に触れてやれば。
煙草の匂いと共に掠めた、きっと不意打ちになるであろう口付けは――果たして成功しただろうか]


[煙草を拝借した時の相手の表情は愉快だったけれど、その後に見せた自分の痴態に眉を寄せる。
零れる失笑に苛ついて、取り敢えず睨んでやった。――それに効果があるとは、とても思えなかったけれど]

……あんたの趣味が合わんだけだ。

[咳き込む口元を拭いながら、せめてもと言い訳を重ねるけれど、実際の所を言う気にはなれない。それに言及したら、先の行為を思い出してしまいそうだ。
ち、と。ひりつく喉を押さえながら、また一つ舌打ちを落とす。

ぼんやり煙を見つめる姿を横目で見て。こいつはこんなに話す奴だっただろうかと、どうでもいい事を考えてみる。あちらでにこにこと話をしている時は、もっと壁があったように感じたけれど]

……ふ、

[小さく吐息混じりの笑みを零して。取り払われた壁の無意味さに哂う。
言葉を重ねられれば重ねられる程理解し難くなっていくというのに、妙に饒舌になるものだから始末に負えない。まあ、勝手に一人で話して意見を求めない分、此方は楽だけど]


おい、なにを――、

[火の燻る煙草を向けられて、思い切り顔を顰める。これ以上消えない傷はごめんだ。しかも顔だなんて、冗談じゃない。
そんな思いでもって避けようとすれば、頬に手が添えられて。振り払おうと手を動かす直前に近付いてきた顔に、ぱちりと瞬いた]

は?
……っん、

[不意打ちの口付けには、間抜けな声と、小さく吐息を洩らす。
最初は状況を理解しきれず、ただ目を見開いて、信じられないという様に相手を見た。
――今更そんな事をしてくるのか、と。呆然と考えて。あまりに驚いたものだから、抵抗する事も忘れて、ただ苦いその口付けを甘受する。(先程まで吐き出されていた煙の味がして、顔を顰めはしたが)

……とはいえそれも少しの間の事で。すぐに我に返れば、その体を押し返した。そんな抵抗、彼には無意味かもしれないけれど]


(……噛みつかれるくらいの覚悟はしていたんですけどね)

[ポツリと胸の内にそう零しながら、聞こえてきた間抜けな声に目を細める。
そうは言うものの、噛みつかれでもしてきた日にはそれ相応の報復はしてやるつもりだったのも確かだが。

小さく息を吐きながら、火を向けた時の顰められた顔を思い返せば、どうにも愉楽を感じざるを得ない。
火の燻るその煙草を、自分の顔に、或いは傷にでも押し付けられると思ったのだろう。
――まさか、まさか。痛い思いをさせるつもりはありせんよ――"今は"。

触れた時間はほんの僅かな間だけれど。押されて僅かに離れた距離に、クスリと笑い。
押し返してきた手を掴み、カタン。小さな音を立てて立ち上がり、身を屈めてもう少しだけ深く唇を押し付けてみようと顔を寄せれば、彼はまた更に抵抗しただろうか]

――喉。痛みますか。

[顔を離し、先程から幾度か喉を抑えている彼にわざとがましくそう尋ねる。
心当たりなんて、それこそあり過ぎる程にはあったけれども。それでも素知らぬフリをして、不思議そうに首など傾げてみせながら。
――きっと、この一言がまた、彼の不信と苛立ちを煽る事を期待して]


[手にした煙草はそのままに、寸刻その髪へと髪を指を絡ませようと手を伸ばす。揺蕩う煙がその髪を撫でるのを、彼は嫌がりでもするだろうか。

そのまま距離を取ると、棚からコップを取り出し水差しから水を注ぐ。先程酷く吐いていたし、そろそろ水でも飲めるだろうかと。
小さな音を立て、彼の目の前にコップを置いて、チラリ。持ってきた果物の籠へと視線を寄越す]

食べませんか。腹が減って。
……君が食べないと食べにくいんですよ、これ。

["一応見舞いの品ですし"、なんて不服そうな溜息と共に、何とも自分勝手な要求を押し付ける。そろそろ麻痺してきた空腹に、げんなりとした顔を浮かべながら。
食堂に行こうにも、この空腹では持ちそうにない――いい加減、動くのも億劫だ。
たかだか葡萄を二粒食べた程度では、それが癒されるわけもなく。

椅子に腰掛け机に肘をつき、そして見舞いの果物達を軽く指で指しながら。来訪者にしては酷く尊大な態度で、部屋主の顔を見つめた]


うん、そうだね。
みんな……頑張ってる。

[その頑張りが報われているだけ幸せなんだよね、と言い掛けて折角楽しい雰囲気なのに、こんなことを言うのは無粋だと口を噤む。葡萄酒をひとくち飲めば、満足げに頷いて。やっぱりウイスキーよりも葡萄酒だね、と誰に言うでもなく呟いた。グラスからふんわりと漂うアルコールの香りを感じ、マリーはどうしているだろうか、と宙を見つめて。]


――ねぇ。
クシャちゃん、いつまでわたしを子供扱いするつもり?

[ふ、と思い出したように猫耳の彼に問う。これから身体が成長していくのに彼に子供扱いされるのはなんだか複雑な気待ちで。もっとも、彼自身は子供扱いしているつもりはないんだろうけど。心の内を全て曝け出せとは言わない、ただほんの少しだけ頼ってくれてもいいのに、なんて思ったりもして。]

(――見た目が大人なら、何か違ったのかな。)

これでも大人なんだもん……。
気を遣って貰うより、頼られたほうが嬉しいんだよー?

[無理にとは言わないけどさ、と続ければパフェ用のスプーンで苺をひとつすくって以前に彼が医者へやったようにあーん、と言いながら差し出して。]

なんちゃってー。えへへー。

[そのまま、楽しそうに彼の真似をして呟いた。]


[自分の事を子供扱いされたのが不機嫌なのか、拗ねているようにも見えるレティーシャ()を見てそんな事ないよ、とニヘラと笑って返した。ただ、背の小さい大人の人、としか見ることが出来なくて]

ニハハ、そういえば葡萄酒なんだけど前に持ってたの僕ちょっと飲んじゃったんだよねぇ。運んだ時も丁度この三人だったっけ

[ふと前に居た病院を思い出す。最初に出会ったのはレティーシャであって、葡萄酒を一緒に運んだ時に朝顔を肩車して。そういえばそんな状況になる前に一緒に居たマリーは今元気してるだろうか、とか思いつつも]

大人扱いしてるよ?ただ、大人にしては背が小さくて可愛らしいにゃー

[いつものように、軽く笑うと頭をくしゃりと撫でた。本当は朝顔にも撫でたかったが少し距離が遠かったので無理だろう。後で肩車でもしてあげようかなとか考えて今回頭を撫でるのは断念した
頼っても良いんだよ?と言う彼女には自分の醜い所を晒す事が出来ず、同性の友達の方が良いよなぁ…と思っていた。それで一番最初に思い浮かんだのは自分の部屋で泣きそうになった自分の話を聞いてくれたくすんだ金髪の彼であったが、それはすぐに振り払われた]


(…独りよがりだもんなぁ、恥ずかしい)

[差し出されたパフェには少し驚いたが、白が多い所から普通のソフトクリームと認識出来、躊躇わずに一口貰った]

ニハハ、冷たくて美味しいね。じゃあ、僕もおすそ分け

[そう言うと自分のチョコレートパフェからひとすくいして、レティーシャと同じようにあーん、と差し出した]


――っは、

[押し付けられる唇に短い吐息を洩らす。屈められる体をぐっと押して、必死に顔を背けた。
――気持ち悪い。やっと落ち着いてきたというのに、これでは全て無駄じゃないか。
再び震え始める体を自覚して、浅く浅く息を吐き出す。呼吸の数が増えて、疲弊した喉からは酷く頼りなげな音が洩れた]

……う、るさ、い。
関係無い、だろう。

[離された顔にやっと安堵し、口元を覆って。
態とらしい質問には吐き捨てる様に答え、俯いたまま眉を寄せる。そうして、ともすれば再び痙攣を始めそうな胃袋を押さえ、必死に嘔吐感と戦った。
もう少し長く口付けていたならば、彼の口にそのまま吐き出していたかもしれない。それはそれで面白かったかもしれない、とは。流石に思えなかったけれど。

――きっとこいつは、全部分かって聞いてきているのだろう。この喉の痛みの意味も、それを口にしたがらないわけも。分かって敢えて、自分に口にさせようとしているのだろう。
嗚呼、腹立たしい。これじゃあどちらにしても、全て彼の手の上で踊らされているだけじゃあないか]


やめろ、よ。
……臭いがつく。

[煙草をそのままに絡められる指に、酷く嫌そうな顔をしてみせる。髪についた煙草の香りは、中々取れないというのに。
――その臭いがする度に、彼を思い出してしまいそうで。出来る事ならこれ以上は、そんな物は作りたくはなかった。ただでさえでかい傷を負ってしまっているのだから。

彼の持ってきたコップには視線だけをやった。そして手に取るでも無く、何を言うでもなく、小さく息を吐く。正直な所、喉は乾いているけれど。……けれど彼に施される物なんて、口にしたくもない]

勝手に食ってろ。
――あんな事をする奴が、変な所で常識的なんだな。

[は、と。馬鹿にする様に鼻で笑って、くしゃりと顔を歪めた。
忘れようとするのに、自分で掘り返したんでは笑い話にもならない]


もう、いい加減満足しただろう。
それを持って帰ってくれよ、

[口元を押さえたまま、不明瞭な声で言葉を紡ぐ。
いつまで苦しめるのかと、非難の視線を向けて。けれどすぐにそれが意味の無いものだと気付けば、ついと視線を下ろした。

尊大な態度には、今更怒りも湧かない。けれど勿論それを歓迎するつもりも毛頭無いから、此処らで退出してもらおうと、再び扉の方を指し示す。
――果たして彼が、このまま素直に部屋を出て行ってくれるものか。到底、そうは思えなかったけれど]


……"あんな事"?
さぁ、"どんな事"ですか。

[馬鹿にしたような一言に、目を瞬かせてとぼけてみせる。その後くしゃりと歪んだ顔には、思わず苦笑を漏らしはしたけれど。
――折角、口にしないでいてあげたんですけどね。
殆ど空気を震わせずに呟いたその言葉は、果たして彼には届いただろうか。届いても届かなくとも、医者は小さく肩を震わせて笑っただろうが]

あんまり邪険にされると傷付きますよ。
…"さっき"はあんなに素直だったんですけどねぇ。

[懐の携帯灰皿に灰を落とし、短くなってきた煙草をまた口へと咥え、近くのタオルで手を拭い。態々言葉を強調するように揶揄ってやる。素直もなにも、力で無理矢理ねじ伏せて、有無を言わせずそうさせていたのは――他ならぬ自分なのだけれど。

チラリ、と愉しむように相手の顔へと視線を向けて、おもむろに傍らの籠の中に入った桃を掴む。
置いたナイフで皮を剥きながら――彼はまた、怯えるかもしれないけれど、そんな事は気にもしない風に溜息をひとつ]


そうそう、2階でお話したんだよねぇ。
――ん?クシャちゃんって成人してるの?

[葡萄酒を飲まれたことは構わないけれど、彼が未成年なら小言のひとつは言うべきか、と考える。すぐに自分自身も禁酒の言い付けを破っていることを思い出して、未成年でも見逃そうと考え直したが。]

もー!
そのうち身長だって伸びるし、ぼん、きゅっ、ぼんになるんだからねー!
なんたって大人だからね!

[いつものように頭を撫でる彼に、負け惜しみのように言葉を投げ掛け口を尖らせる。大人の女と脳内で思い描くのはマリーの姿で、もう少し治療が進んで時が経てば、自分だって彼女のようになれるのだ、と確信して“今は”まだ真っ平らな胸を一瞥した。]

ふふー、ありがとー!


[お礼を言うと差し出されたパフェを貰い、彼の笑顔に視線を移して。いつも笑っている彼の顔は何だか仮面が張り付いたみたいだ、と目を伏せた。マリーが何度か言った『似た者同士』という言葉を思い出す。彼女もまた彼の笑顔に違和感を抱いたのだろうか。
それならば、彼の仮面の下を――彼の素顔を見たことのある人はいるのだろうか。本当の彼が見たい、そんな欲求が心にじわりと広がる。彼が隠す素顔と本心はどうしたら見せてくれるだろうか。隠されれば隠されるほど、執着心は増して欲望の色は黒く濃く染まっていった。いっそ、その仮面を己の手で引き剥がせないだろうか、と思考を巡らせて。]

――やっぱり甘いものはいいねぇ、

[感情を隠すように言葉を述べれば微笑んで、そっとスプーンでそっと下唇をなぞった。]


(…我ながら、酷い執着ですね)

[胸中の呟きと共に、微かに自嘲じみた笑みを浮かべ、ペロリ。先に触れた味を――その時の彼の顔を思い返すかのように唇を舐める。震える身体に浅い呼吸に。嗚呼さぞかし自分は憎まれているのだろう、忌まれているのだろうと笑いながら。

髪に着いた煙草の匂い。部屋にも僅かに残るであろうこの匂いに、また自分を思い出して苛まれてくれるのだろうか。
――元々、一つの事に酷く執着する性質でありはするのだ。今回はたまたま、その対象が"彼"だっただけで]

(まぁ、やめる気も治す気もありませんけど)

[欲しい物が手に入らない事など慣れている――分かりきっている。
ならばいっそ、無理矢理奪い傷付けて、決して逃げる事の叶わぬくらいに縛りつけてやればいい。
そうして得たものが例え紛い物なのだとしても、そこに違いなど――きっと無いに違いないと。
今迄だって、ずっとそうしてきたのだから。そしてこれからもきっと、そうしていくのだろう。
――自分はこれしか、やり方を知らない]


…そろそろ空腹で苛ついてきました。
痛い思いをしたくなければ、食べて下さい。

――あぁ、それとも。
食べれないのなら、食べさせてあげましょうか。

[微かに感じる苛立ちを隠す素振りすら見せず。にこりと笑い立ち上がると、摘まんだ桃の一欠片を彼の口へと近付ける。
そのまま桃を口にすれば、自分もまた別の一欠片を口にしただろう。
彼が桃を口にしないのであれば、医者は笑みのままに顎を掴み、その喉の奥へ無理矢理ねじ込むくらいはしたかもしれない]


う、るさ、い、

[癇癪を起こす寸前の様な声音て、つっかえつっかえ言葉を口にする。
……もう、何も言わないで欲しかった。自分でも、言わなければ良かったと思っているのだから。

思い出したくない光景がチラチラと脳裏に浮かんで、険しく眉間に皺を寄せた。
ふるりと頭を振って、どうにそれを頭から追い出せば、自嘲とも失笑ともつかない笑みを零して、睨み付ける気力も無く俯く。
――素直、だなんて、笑わせてくれる。力にものを言わせて従わせただけなくせに。

取られたナイフには、ぴくりと小さく震えて。一瞬詰まった息を、どうにか深く吐き出す。
彼の一挙一動に支配されてしまう自分を自覚すれど、だからといってどうする事も出来ないのだ。

それこそ"素直"に許しを乞う事が出来れば、幾らかはマシになるかもしれないけれど。残念ながら、それが出来る性格なら、最初からこんな事になってはいない]

く、そ……。

[痛い思い、と彼が言えば、泣きそうに顔を歪めて]


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