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好きだったけど、
あいつは、俺より、お前のほうが好きなんだ。
[階段を上っていこうとする珀に急いで呼びかける。]
士朗に首を傾げて立ち止まった。「?」
……うーん……?
[そう、なんですか? と。
いまいち分かりかねている表情で、いちおう士朗には頷いてから。
再び歩を進めた]
珀、よく聴け。
いいか、お前、あいつからどう聞いてたか、俺は知らん。
だけど、あいつが好きなのはお前だ。
それを、
伝えておこうと思った。
[その背中に、ちゃんと聞こえるように。]
――…だ、だって……ぁ……ぅあ
[くす、と笑う文にやや抗議っぽい声をあげるも、
その指の動きにかくん、と腰は落ちる。]
ぁ……くぅ……
[押し込んで、そして、広げられる…。
その内に震える感覚……。
目をぎゅっと閉じて、受け流せるようにと、息を整えようと…。]
…………。
[ますます、分からない。
あいつ、何考えてんだ。
そんな想いが強まったが、ちゃんと伝えてくれた士朗には、再び振り返る]
せんせ。そんなに言わなくても、大丈夫っすよ。
[蛍紫のことを、誰より大事に思ってくれていたなら。
そんなに繰り返し、言いたいものでもないのだろうと。
好きらしいのは、せんせに免じて信じてやります、と茶化すように、けれど真剣な眼差しで、笑い。
ひらり手を振ったのだった]
[今度はもう少しはっきりした明るい笑い声を、顔を逸らした哲人に向けた。
けれど彼の言葉に、いつかのその日がふわりとよみがえって、少し弱った眉の下げ方をした。]
や、そうだった。
[あの時はまだ、哲人への想いを自覚もしていなかった頃。
どこか懐かしい記憶に、けれど、くすぐったさも込み上げて微笑んで。
……が、だるいのは自分も同じ。
着替えなくても良いじゃないか、とは流石に言わなかったが。]
うーん……もーちょっと、このままでいっかな。
テツの側、心地いいし。
[そして、その笑みは薄らぐ]
……ユリも、皆も、どうしてるんだろ。
[どうにか床を汚す前にバスルームへ到着して。
同じように体表の白濁を流すと、湯船に沈んだ道也をちらりと見てから。
部屋よりも余計に声が響くタイル張り、吐息のみを漏らしながら体内のものを指で掻き出しては流し、何度か繰り返せばもう大丈夫だろうか]
あ、痕つけた?
[ふと鏡をみると、赤い花びらがついていた。
嬉しそうに指でなぞり、道也の方を見てにへっと笑みを浮かべる]
―― 階段 ――
[しかし]
…――まじ意味わかんねえ。
[蛍紫は、士朗が好きだった筈で。
それはこう、何と言うか、好きなやつのことだから、分かってしまう、というか。
確か、だと思う。
で、士朗も好きだったわけだ。
めでたく相思相愛、何の問題も……や、生徒と先生とか、男同士ってのは、今の状況、問題じゃねえ。うん。
それでどうして、オレが。
オレのほうが好きって話になる?]
……あれか? あれだ、文せんせが士朗せんせ好きなのは、多分当たりだろ。
だから、こう……遠慮、したとか?
[夕輝らが消えた時。
真っ先に文が向かった部屋が、士朗と蛍紫の部屋と聞いた時に、何となく感じたこと。
その予想が正解とすれば、あながち間違った発想ではないんじゃないかと、思う]
いや、でも…… うーん……。
[が。
それでどうして、オレが以下略。
やっぱりさっぱり、分からない。
ああでもない、こうでもない、と階段を上りきるまで、うんうん考え込んでいたのだが]
[そう言えば、いつかのその日。
哲人と自分と共にいたのが、悠里であり桂馬であり。
そのどちらも、今まだ此処に姿を見ていない人だった。
見ていないのは寧人もそう。蛍紫も、蘭香も、それから……]
…………。
[いわゆる、想い、があるわけではないから。
その追憶は何の力も持ちはしない。
ただ、過るだけ。
そしてただ……この現状の元凶かもしれない存在を意識するだけ。]
[つまり、自分。
「彼」に自分自身が呑まれてしまうような感覚はもう大分なくなってきていたが、原因の可能性としての自分の存在については、まだ答えが出せていなかった。]
[つーか。
何で、オレがこんな延々と、目の前に居るわけでもねーあいつの気持ちを考えてやらなきゃならねーんだ?
はた、と腕組みしたまま立ち止まる。
今まで喧嘩で、折れて貰ってばかりの傲慢さが、にょきりと鎌首をもたげた。
だって、だ。
そりゃ察しろって言ったって無理だけど、アイツのことが好きなオレに、蘭香を選べとか言いやがったヤツだぞ。
オレが怒っても、調音の反応で何か納得するまで、さっぱり分かんなかったみたいだし。
たしかに、状況が状況だったのは分かってる。
だけど、今だってそうじゃないか。
よし。
何の問題がある。いやあるわけが無い。
あるって言って良いのは、日向だけだ。
あいつの気持ちなんか、知るかぼけ]
[そうして。
考える。
考える。
考えるのは、別荘の人々の こと]
その時
お前、そんなに甲斐のこと、好きじゃなかったのか?
[
なんでだろう。]
言わなくても大丈夫ってどういう意味だ?
俺のもとに、あいつは来なかった。
なんでか知ってるか?
俺はお前の代用だったからだよ。
[そんな言いたくないことを言う。]
だから、俺はあいつを選ばなかった。
お前の代わりなんて、ごめんだからな。
[悠里せんぱい。
結局、あの女の人は誰だったんだろう。
でも、それはどうでも良いかもしんない。
だって先輩が、知らないかもしんない事のほうが、問題なんです。
うちのパフェ、本当に旨いんですよ。
先輩いつも、あんな顔で、仕方なく付き合って食べてたけど、それってすごく勿体無い。
本当に、美味しいんです。
だから、ちゃんと、今度先輩が来た時は、それ、分かって欲しくて。
爆笑されたのはムカついたけど、でも、あんな感じに、普通に笑って欲しくて。
オレ、先輩の席で付きっ切り、給仕するつもりだったんだ]
![]() | 【人】 墓守 ヨーランダ……そういえば、紅子さんのことも聞かなきゃね。 (54) 2011/05/24(Tue) 23時頃 |
[寧人せんぱい。
誰とか聞かなかったけど、先輩の『難しい』恋、上手くいけばいいなって思ってた。
えろいとかえろくないとか、オレは良く分かんなかったけど、先輩の手は好き。
不思議で繊細で、優しい手。
観客の天才って言ってくれたけど、オレをそうさせたのは、先輩の手なんだ。
二千円でも、オレにとっちゃ結構痛い値段だから、真似は出来ないけど。
部活の時間なら、ちょっと習わせてくれるかな、頼んでみようかな、ってこっそり、企んでた]
[桂馬せんぱい。
蛍紫と仲良いのに、そういや全然話したこと無かったっすね。
この旅行中は、なんか結構お世話になっちまって、良いひとだなあって思ったりして。
最後、怒らせちまってごめんなさいって、謝れてないや。
恩を仇で返すような後輩で、すみません。
それに、せんぱいが、怖いばっかりじゃなくて、やわらかくも笑える人だってこと、やっと知れたのに。
リアルがどうとか、良く分かんねーけど、オレで良かったら、いくらでも一緒にご飯、しようと思ってたのに]
[と、必死に訴えてみたけど、
そのときにはもう、珀は、階上に行ってしまっていたか。]
[日向。
友達になりたいって言ったのは、ほんとだ。
今も、思ってる。
こんな寒いとこじゃなくて、うちに来たらいいのにって、誘いたかった。
先客いっぱい居るし、あっちはあっちで大変かもしんないけど、寂しい想いは絶対させないから。
助けられてばっかで。
助けて貰って、ばっかで。
ごめんな。ありがとう。
未だオレ、お前も救われれば良いのにって、諦められてない。
ごめんな]
[蘭香。……蘭香。
大事な、誰より大事な、幼馴染の片割れ。
最後に抱きしめてくれた記憶の残るシャツを、洗ってしまったら繋がりも消えそうで怖い、なんて言ったら、呆れて笑われそうだ。
むしろ、笑ってくれ。オレも紅子さんも、大好きなお前の笑顔で。
紅子さんは、オレよかよっぽどお前の傍に居てくれた相棒は、ちゃんと役目を果たしてくれたか?
お前に言いたいことは、言わなきゃならないことは、いっぱいあるんだけど。
何を言っても、今はごめんにしかならないから、昔のこと、ひとつだけ。
オレの初恋って、お前だった。
紅子さんしか知らない、オレの黒歴史。
何が黒歴史って、そん時オレは、お前を女の子だと思ってたってトコだ。
お前を好きだったのは、後悔なんてする訳ない]
[大事なひとたち。
大好きなひとたち。
それでも。
彼らの中から、ひとりを。
ひとりしか、選べないなら。
ごめんなさい。
ごめん。
答えなんて、考える前に、こころが知っている]
メモを貼った。
…………。
[掻き出す間はずっと目線をそらしていた。
だって、見ていると、慣らすために自らそこに指を突き入れていた先程のアレを思い出してしまいそうだったから]
ん、付けた。
……俺のだから。
[自分にも付けられていることには相変わらず気づいていない]
―― 2階廊下つきあたり、休憩所 ――
――オレに、手を伸ばせよ 蛍紫。
[ひたり。
硝子へ伸ばした手は、ただ自分の姿を映すだけ。
けれど、信じる。
向こうであいつも、手を伸ばしてくれると]
お前みたいな分かり難くて面倒くさいやつ、オレ以外の誰が、最後まで付き合うってんだ。
[嘘だ。
彼が愛されていることは知っているし、それなら蘭香だって、きっと同じはず。
それに代用なんて、そんな失礼な感情で、蛍紫が士朗を好きだったとは思えない。
そのあたりは、きっちり吐かせてやる]
オレみたいな、無謀で面倒くさいやつ、お前以外のどんなお人よしが、最後まで付き合ってくれるってんだ。
[これは、嘘 だろうか?
なんか、愛されていたらしいという実感は、全く無いが。
愛されないわけでもないらしい。オレは。
でも。
それでも、]
オレを、選べ。
オレも、お前を選ぶから。
[他の誰が、なんて関係ない。
この手は、ひとつしか選べないなら、お前にしか伸ばせないから。
そう、真っ直ぐに。
硝子に映った手のひらを、その先を。見つめた]
士朗の言葉は、しっかり聞いていた。ただ、考える様子なのは、変わらなかっただけで。
[耳に、鳴瀬の吐息のような声が届くたび、血の巡りが早くなり、欲望が増してゆくような気がした。
何故、日頃あれだけ抑制できていたのか自分でも不思議なほどに。
求めて止まない]
……っ。
士朗………。
[いちいち訊かなくていいと言われたから。
だから訊かずに。
否───たしかめる余裕がなかっただけかもしれない。
指を抜きさり、かわりに、ひどく熱を帯びた己のものを宛って]
───っ。
[強く押し付ける。
まだ少し抵抗感があるようならば、もう一方の手指を舐めて濡らして、其処に添えて]
メモを貼った。
[気づいてないまま、誰かに会って変な反応されるのを待っても良かったけれど。
一応指摘しておく]
……お前にも、ついてるよ。俺の痕。
[スッキリすれば、忘れていた空腹も思い出してきた。
こういうところが甘い雰囲気を保てないダメな所かもしれない]
よっし、着替えて誰かいるか行ってみようか。
まあ、ギリお前に言われんのは、嫌じゃない。
[だからもっと言え、なんて流石に言わないけれど。
あの時は正直、焦りで必死で。泣かせたこと、あの瞬間の涙が、思い出されるよう。
ずっと好きだった。忘れようとしていた。クラスメイトでいようとした、のに。
壊した、と思った。その相手が今ここにいるなんて、なんて奇跡。]
だからさ、
[そんな顔、すんなって。言わないけれど。
抱き締める。もーちょっとこのままで、なんて言った男を、強く抱く。
ここにいるのは蓮端夕輝なんだから、]
もっと俺のこと、見てろ。
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