52 薔薇恋獄
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……克希の小父さん、やっぱり来なかったんだな。
[あの天気の中、ひとの良さそうなあの男性が、連絡の取れない別荘の様子を気に掛けない、というのは考えにくく。
それならやはり、彼にも何かあったか、道が不通になっているのだろうなと、考え込む。
それよりも、ぶちぶち不安を漏らす後輩を宥めるほうが、建設的ではあり。
ごめんな、と空いた手でぽんぽん撫で]
ん。
オレも、調音のこと、好きだよ。ありがと。
[首を傾げられれば、照れ臭そうに笑って応え]
そうそう、上手い上手い。……、よし。
[きゅ、と包帯を直し終わり。
言葉を返されれば、ズレないか腕を振って調子を見ながら、笑顔を収めた]
別荘から、どうしてひとが消えてくのか。
別荘で、何が起きてるのか。知りたい?
な、お前、も。
[黒い絹に、手を伸ばす。
まだ、隔てる布が、あるなら。邪魔だ。邪魔だ。
そんなもの、いらない。]
ぶ、
[投げられたTシャツを顔面で受け取る。
ついでに眼帯も。]
…襲うぞ、ちくしょう。
[まぁ、我慢しますけどね。]
[すっかり反応してしまったコレをどうしたものかと考えあぐねていると顎を掴まれ強引に唇が合わさって]
バ?……んっ――
[驚いて眼は見開いたまま、道也の赤い顔を見ればそれも閉じる。手にしたあわあわは何処かへ落とし、その手を縋りつくように背中に回して]
[頭を撫でる手。『好き』という言葉。
嬉しくなる。
だからはにかんだ]
ぇへへ、こちらこそ、ありがとうございますー
[けれども、比べたら…土橋から貰った時の方が大きくて。
―…成人のくせに、生意気過ぎる]
上手く手伝えて良かったです。この傷、薔薇に突っ込んだんですよねぇ
無茶するなぁ、全く
……珀先輩が知ってること。全部、知りたい
当事者として、当然だと思いますけど
……あー、もう。
何、良数こんなキャラだったの。
ギャップ萌え、って。こわくね。
[好きという言葉。
閉じられる瞳。
背に回される手。
一挙一動を、可愛いと思う。愛おしいと思う。おかしなくらいに]
――は、……もっと。
[見せる顔はとても王子のそれではない。
餌を目の前に下げられた獣のよう。
こちらからも背に手を回し、次は赤い舌を喰らおうと自らの舌を伸ばして侵す]
[彼って、瞳の色も髪の色も……そう言えば本当に一番最初、赤毛に少し怯えた覚えがない訳でもなくて……薄い、と思っていたけれど。
その場所まで、淡い色だったとは想像してなかった。
だから今、見た時……一瞬だけ多分、ぱちぱちと瞬いてしまった。
いや、色の濃さを期待していたという訳ではない。胸にしても、肌そのものにしても。
それに、どんなであっても哲人であることに変わりはないんだから、気にもならなくなって……。
そして耳を突く小さな声に、その甘さに、更に身体が反応する。
少し口の動きを止めてから、胸の薄桃色にまた触れようと思ったところで。]
……あ。
[お前も、と言われて。見下ろして、そうだった、と気づいて。
自分で脱ぐ前に……哲人の手が、伸びてきた。]
う、うん。
[上気した面持ちで、その手が動くままに従った。]
襲う? お前が、俺を襲えるわけねーだろ?
[はんと鼻で笑って。薄い胸を張った]
[今度は、バカとは言われなかったし、調音もはにかんでくれたから。
好きだと伝え返した方が良いんだな、なんて考えていた]
うん、上手かった。さんきゅ。
……やっぱ、見えてたんだ? いや、まあ……うん、無茶ってか……。
[いろいろ、見えていなかったせいで。
全部知りたいと言われれば、それでも念を押す。
今まで通り、を望むなら、知らないでいたって良いと思うから]
別荘に残されてる誰かに負い目を感じたり、することになるかもしんない。
それでも良いんだな?
[なお、調音が頷いたなら。
薔薇恋獄の話、日向の話。此方が安全で、向こうが危険なこと。
すべてを伝えた上で、成人と共に来たことを、おめでとう、と祝福しただろう]
しるか、くそ。
キレイな王子じゃない、道也が好きだって最初から言ってる。
[最初から、それは多分出会ったときから。
女の子に見せない表情にばかり惹かれて、取り澄ましてない顔が好きで、でもそんな事伝えても仕方ないと思っていて。
舌が口内に侵入する、受け入れて絡めたらもう止まらない。肌を合わせてひとつに、なりたい]
[に、ぐ、と言葉に詰まるが]
実際に襲えないかどうか、試してみるか?
[にっこり笑ってみせた。]
え? いやぁ、僕も、その、薔薇に少し突っ込んだコトが…あはは
…見えてません。声しか聞えなかった。音しか聞えませんでしたから
え、え、ちょっと、負い目!?
そこまで、重っ苦しい話なんですか……?
[躊躇った。躊躇った。躊躇ったけれども…最後には頷いた]
[自分の肌に落とされた瞬きまでは、見えなかった。
自分の上げた甘い声に、耳の端まで熱くなるのを感じて、ただ必死で。
それから落ちていく身体へのくちづけは、唇を噛んでこらえていた。]
[脱がそうと伸ばした腕は避けられない。
指先で、黒いブラウスのボタンをひとつひとつ外す。ひとつ外れるごとに、近くなっていく素肌、近くなっていく体温。
恥ずかしくて少し逸らし気味だった視線が、そこに釘付けになっていく。
目を離せない。その身体から。
喰らいついてしまいたい、と思いながら、ボタンをすべて外せば素肌の腰に腕を回そうと、ブラウスから指先を滑らせていく。]
やぁん、土橋君ってば怖い目ぇ
[手を合わせて頬に寄せた。
にやり。
上げた口の端を。
ちらり。
垣間見せた]
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