25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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[現世に在った頃見た儚き姿が此方に頭を下げる。
現世の者と気に留めていなかった姿が不思議と、
近い場所に在るように感じられれば察するのは早く]
……熱いぞ…?
[引き止めるでもなく、それを感じぬことも判っている。
冗談の類のひとつのつもりなのだろう。
黒檀は、現世よりもはっきりと見える花の姿を見つめ]
――…想う場所で…逝けるよう、
[彼岸へと。業火へと入る花を見送り]
……悔いなく…、な…
[焔はその紅を深くし、大きく咲く業火の花弁。
鵠と華月、二つのこたえが返ると小さく頷き、
結わず下りた黒檀の髪が動きに合わせて揺れた。]
―――…華月…?
[常とは少し違う躊躇うような様子。
訊かれる言葉に黒檀が華月を見とめて、一度瞬く。]
……未だ、わからぬ。
[瞳を伏し添う月と鳥を見下ろすこともなく、
朧の月は選んだ二つの花の姿を映し]
…何故、そのようなことを…?
天上の鳥ならば、空へ続く道も知っていよう。
[それに、と、そこでは言葉を切った。
傍らにいた童を思えば言葉が切れる]
私は
[口が何かを告げかけて]
お前に言う事ではないな。
|
[イアンが名を呼んだ3人が見つからない。外へ、の言葉に不安そうな顔で振り返る。また何処かで崩れた音がした]
……うん。先に、外へ逃げているかもしれない。
[頷いて]
(108) 2010/08/09(Mon) 21時半頃
|
[明之進が業火に呑まれて行く様を、主の後ろにて見守る。
熱くはないのだろう。
けれど、その姿は、主が紡ぐ言葉が、華月の心を焦がす。
生まれる感情は ―――やはり、哀しい。]
朧様は、わての願いを叶えてくれはったから
やから……でしょか。
全ては巡り合わせもあるやろうけれど。
でも、もし、朧様の願いが叶ってないんやったら
[問いの理由に応える苔色は、少し揺らめいて。]
朧様は厭やろうけど、霞月夜様を憎う想います。
[怨み嫉み持つこと少なかった故の戸惑い。]
花の立場で出来ることは、あんまない想いますけど。
なんや、あったら謂うてください。
[いつになく上手く言葉を選べずに、眉尻が下がった。]
[音にならない音
矢張り告げられはしなかった
人喰花は、花主をやめた獣を見る]
…――――謂わずとも
構わない
です。
それで充分。
[吐息を洩らす。
紅い大輪の華が咲いた屋敷の大広間
ついに登る事のなかった舞台
ひとつ未練があるなら
歌曲を
聴いてほしかった]
さすらい人 ヤニクは、やっとのことで門の外へでるとべしょりと座り込む
2010/08/09(Mon) 22時頃
[苔色が戸惑うように揺らめく。
その色を見ながら言葉を待ち、
憂いの黒檀は驚くように 少し、大きくなる。]
―――…華月、
[名前を呼ぶ…、笑みが零れた。
困った時に零れる、微苦笑に近いもの。]
…心配をさせたか。
[鵠と華月、二つの花を見る。
双花となった二つ、
けれども選んだ理由は個と個への想いに。]
――…霞は私の願いをひとつ、叶えてくれた。
恨んでやるな…、そのようなことを考えるよりも…
[そこまで言って、迷うように一度言葉を切り]
――…花の姿である時は…、
……私の傍に…在って欲しい…。
[迷いの後紡がれる言葉は、
吐息のように消え入りそうな音…掠れた。]
…―――――
[話すから、黙して聞いて。
呼ぶ声が重なって。
双つ花はますます対の様相を呈した。
燃え盛る炎、
椿の花に、あの日手にした枝の感触を思う。
りん――――と、鈴が鳴り。
映すのは朧月、花の主。]
…―――花となって散り
命(めい)も守れなかった花で…
申し訳、なく
[いつの言葉切れたときか、詫びて。
流れる黒髪を見る。
結ったのはただ一度。
霞月夜と重なる下ろし髪に、どうすべきか迷い]
――――、…
[迷う間、黙して。
主を見、言葉はどちらへか]
はい。
[華月の名に返事をする。故に今は花。
主の浮かべる微苦笑に、浮かぶ感情――哀しい。
心配、その単語に頷きを一つ返す。
続く言葉に、緩く唇を噛むのは否定か、それとも。
少しの間、俯く。]
[けれど、途切れる言の葉に、苔色を黒檀に合わせた。
沈黙を持って、先を待つ。
まだ、鵠とは手をつないだままだったろうか。
そうであれば、少し握るを強めた。]
御意。もちろんや。
[主の願いに惑うことなく告げる。
鵠の言葉は聞かずとも判る。
それは、主の言葉途切れた時の、鵠の言葉にも見てとれる。
もしかすれば、
また双花の答えは重なったのかもしれない。]
あるじと呼ぶ
其の時から
繋ぎとめられるのは
花だけでなく
[静かに呟く
瞳は現世を映し]
迷い断ち切れぬのは
キミも、同じじゃないのかい明之進
[熱さは感じず。ただ花主と花の様子を見ている。
抱いた花の頭を撫でる。
もうすぐ――]
お前の歌を、もう一度聴きたかった。
[眸に移るのは寂しげな色]
[秋色の髪に触れた手
気付くに間が空いた]
主さま
歌も、笛も、足が治れば舞いも
この身が覚えた芸事は
幾多もありましたのに
[腕の中、背を靠れさせたまま
主の顔は見えず]
…――
───ああ。
[冬の花の言葉。
己にはそれで十分。
そう思えば、何処かから聞こえる喧騒。
───姿は消え。
そしてある場所に降り立つ。
視界には、歎く椿の姿]
[彼は、椿の事を何と呼んでいたか。
その椿へと、一つ、二つ。
足音のない歩みは近づく。
少しためらったが迷いはない。
椿の背から、そっと。守る様に両の腕を伸ばして、包むために。
確か研師はこう呼んでいなかったか]
───明。
[一度で反応がなければ、もう一つ。
自分に気づけば、合わせるようにと鉄色の瞳は無言で告げる]
聞こえる自分の扇の音に少しだけ口元を緩めたが、笑みはすぐに消える。
―――――御意。
[ごく丁寧に、答え。
それさえ重なり、しろい鷺の花が
小さく揺れた。]
屋敷なくしては
保てぬ
……きっと
[琥珀伏せる姿に
ぽつり、囁き落とす]
|
……俺は大丈夫……疲れただけだから。
[炎の中、燃えぬ様服の中にしまい込んでいた黒の笛を取り出して。傷が無いのを確認すればほっとする]
……明と、虎鉄と、刷衛さんは……
[燃え上がる屋敷を振り返り]
(120) 2010/08/09(Mon) 23時頃
|
[二つの声、重なった返事が戻れば黒檀を伏せて]
―――…うん、
[少し、幼い頷き。下りた髪が揺れる。
安堵したかのように浮かぶ笑みは、
死に際にも浮かべた憂いの乗らぬ穏やかな…]
[少し遠くから聞こえるのは儚き花を呼ぶ声。
炎は止まぬ、花を留めようと呼ぶ声も。]
生者は、生者の道を
死者は、死者の道を
もし
同じ道を望むなら
生者死さねば
叶わない
[呟き、溜息ひとつ
視界が紅くあかく]
望みはひとつ
願いはひとつ
ふたつ心懐いたなら
[するりと。
手元に残ったものは何もない。
椿は既に、向こう側に]
───。
[驚きのあと、小さく苦笑が零れた]
こちらへと招く手は、必要なかったか?
[椿に尋ねる。
主と呼ばれた男に、決別を進めたのは自分。
そこまで情が深くなったというのであれば、行方知れずの椿の主のかわりに
椿をこちらへと招くための手を差し伸べてこそと思ったけれど]
[2つの同じ返事、受けて主は幼く頷いた。
それに愛惜の念を持つ。
―――2つが花であるとき。
それは、主が花の名2つ呼ぶ時。
鵠と呼べば白鷺が。
華月と呼べば胡蝶が。
それぞれ花に身をかえて、糸を頼りに蒼穹より舞い降りよう。]
[今は花として、主の隣に控え、同じものを見る。
駒鳥の啼く唄に想いを馳せながら。
望みはひとつ――蝶でありたい。
願いはひとつ――花でありたい。
ふたつ心懐いて。]
[邦夜達が無事な場所まで辿り着けたのを確認して。
ゆらり光は人影に。
手には主が持つ笛を強く意識して構え。
別れ告げる長い音色]
されど。
こころはきえることなく。
[現の風には乗らぬ一音を吹いた**]
さすらい人 ヤニクは、始末屋 ズリエルに話の続きを促した。
2010/08/09(Mon) 23時半頃
[――朧月は、笑む。
憂いの乗らない笑みに、
自然、つられるように顔がほころぶ。
頷けば
――りん、と鈴が鳴る。
双翼は蝶であり白鷺。
華月であり鵠。
朧なる月の傍に舞う。]
繋いだ手はここに。
見失う事は無いでしょう
死期を悟ったそのときに、体は勝手に動くもの
[虎鉄の笑みに混じるいろ
あの微笑み方を知っている]
燃える、もえる
あかく、紅く
黒煙のぼる その先は
現し世か 移し世か
ゆく先は、ありやなしや?
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