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― 結城遥の記憶 ―
大学1年生の春。
強引に勧誘されたサークルで、オリエンテーションと称して強引に床彼山に連れて行かれて、気付いたら置き去りにされていた。
携帯電話の電波も通じぬ山奥で、泣いていても始まらないと、ともかく下へ下へと降りていった。
きらきらと輝く水面が木立から見えて、惹かれる様に向かった。
「あ」
気付いた時にはもう遅く。つるりと足を滑らせ、水に落ちてしまった。
背負ったリュックサックの重みで沈みそうになり、慌てて捨てた。
腰の辺りで手をばたばたと動かし何とか身体を浮かせ、腕で水をかいて岸辺に辿り着く。
「はぁぁぁぁぁぁ。溺れ死ぬ…かと思った…」
水から上がり、振り返る。
「……ここは…」
息を飲んだ。
鮮やかな蒼色の水を湛えた池。あまりの蒼さに、有毒物質でも入っているのかと疑ってしまう。
水面に浮かぶ濃いピンクの桜の花びらが、余計に蒼さを引き立たせていた。
水はあくまでも透明で、池の底まで見通せる。
池の底に沈んでいる倒木の間で、魚が緩やかに泳いでいた。
暫く佇んでいたが、寒気に身を震わせる。
「……帰ろう」
池から離れたところで振り返ると、不思議なことに池の水から青が消えていた。
ぽつり。額に水滴が落ちてきて、慌ててその場を去った。
その後は、何とか山道に辿り着き、無事に下山出来たのだが、夢のようなあの池を忘れることが出来ず、市役所に問い合わせた。
地図上には存在しているが、名も付けられて居ない小さな池。
蒼池。勝手に名前を付けた。
履修登録も済んで、寮生活にも慣れた頃、改めて蒼池を訪れた。
桜の花は既に散ってしまったが、水の蒼さは変わらなかった。
池の周囲を確かめる。茂みや落ちそうな崖があったりしてぐるりと一周出来なかったが、石で出来た祠を見つけた。
肩の高さまであるその祠は朽ち掛けていて、彫りこまれた文字も全てを読むことは適わなかった。
解読しようと写真に収めた。
祠の下には、木で出来た丸いものが数個落ちている。
拾い上げると、どうやら睡蓮の花で。供え物なのか、何なのか。分からないので地面に戻しておいた。
文化学科の授業を受ける傍ら、図書館で祠の文字の解読に励む。床彼山の伝説、伝承、池の事。
どんどんと蒼池にのめりこんだ。
花屋の前では睡蓮の花に思わず立ち止まり。
造花を見かけて思わず購入してしまった。
夏に蒼池に訪れた際に、祠に奉る。本物の花では朽ちてしまうから。木の花を作る器量さもないから。
せめてこの白い白い睡蓮の造花を。
何が奉られているのか分からぬまま。
『雨乞いの為に、村の娘を龍神に捧げる』
龍神!
蒼池には龍が住んでいるのだ、と。ようやく辿り着いた時には1年が過ぎていた。
今度は龍神について調べ始めた。教授や老人や昔話に詳しそうな人に、話を聞きに回る。現地調査と称して、何度も池に足を運んだ。そして水の蒼さに目を奪われて。見えぬ龍神を想像し、思いを馳せた。
雨を乞う池。いつの間にか呼び名が変わり。
常に雨の降る池で在って欲しいと、最終的には『雨降り池』と呼ぶようになる。
ある日、学食で龍の話を耳にした。正確には、半龍のキャラクター。それまでゲームセンターには興味がなかったが、そのキャラクターに『なれる』と聞けば居ても立っても居られず。
――― ヤニク
俺は、君に、龍神に……なれるのだろうか。
そして今日も、ヤニクに会いに、ヤニクになりにゲームセンターに向かう。**
― 7階 ―
[夢は醒めるもの。痛みは治まるもの。
ぴくり。手が動いて。ヤニクは目を開けた。
視界に入るのはヤニクの身体。うつ伏せになって動かない。周囲に溢れる血に、あぁと息を吐いた]
ポプラと戦った時以上の、酷い負けっぷり…。
[フードを被り直し、目を背けた]
あ…れ。
ログアウト…は?
メモを貼った。
― 屋上 ―
そぅ、別の場所。俺にとっては用済みだから。
ん、どうしたの?
[モナリザが居る。白い腕。赤い爪。にこりにこり。笑顔が漏れる]
…まぁ、志乃ちゃんこそ、待って。
[ドナルドに干渉出来ないと知っていても。近寄られないように、彼女を腕の中から離さない]
[ポプラの言葉に、その姿を見る。
ポプラとは違う、女の子の姿。
だけど、それはなんとなく、ポプラっぽかった。]
うん
どうなってるんだろうか。
見てない。
それを考えると、
なにか、辛い
[仲良しだったには、仲良しというには、とも考えたけど]
【人】 小悪党 ドナルド『くっくくくくくくくくくくくく』 (56) 2011/02/25(Fri) 20時半頃 |
― 7階 ―
[自分の顔を覗きこむ影に気付いた。カミジャーが大きな目でじぃと見ている]
ぅ、わっ!
えぇと……。あはは…
[現状把握に困り、力無く笑った]
[ログアウトしていないのならば、とステージマップを呼び出す。19階と屋上に分かれているようだ。
多くの人数が居る19階に]
ねぇ、カミジャー。良く分からないけども、とりあえず19階に向かおう…か?
[ロビーの時とは違い、今度はヤニクの方からカミジャーの手を取って。エレベーターで19階に向かった]
メモを貼った。
ナユタは優しい、ね。
[辛い、というナユタ
いま、できることはしているんだから……
それ以上はどうしようもないし。
きっと、セシルもがんばってるんじゃないかな。
[どうなんだろうと首をかしげる。
あのイメージがほんとうなら。
夢を見続けるのを選ぶ可能性も、あるんじゃないかな、とは思って。
そんな話をしてる間に、ヤニクたちはきただろうか]
待ってって、これ以上何を待てと言うのですか!
……離して下さい。
[リュヌドは言っても聞かないか。
ならばと懐剣に手を伸ばし掛けるも、
内に巣食って蠢くものが、従えと命じて来る]
ぐぅっ……
[じりじりと、紅と瑠璃紺の間で目の色が明滅し、
動けなくなる。
ドナルドが連れて行かれるのも、どうする事も出来ず]
メモを貼った。
優しい?
何いってる。違う。
でも、
だって、
あいつ淋しいんだろ?
だから、こんな世界で、オレたち呼んで…
じゃないかと思ったんだ。
[ポプラにそう話すうちにヤニクの姿も確認するが、声をこちらからかけることはない。]
― 19階・無限病棟 ―
[エレベーターが開き、フロアに集まる姿に驚きを隠せない]
……えぇと、こんにち、わ…?
[話を聞けば、リアルの姿に戻った事に首を傾げつつも納得しようとする]
ポプラ……
セシルは女の子だと、なんか、思う。
そんな女の子が、
こんな病院にずうっと…。
しかも、世界をみおろして……。
[考えた。やはり、何か、辛い。
どこかが、すごく、すうっとする。
悲しい?淋しい?そんなものじゃない?
ああ]
うぅん、離せない。というか離れたら、ちゅーしちゃうよ?
[叱られるかもと思いながらも軽口を叩く
うん、いい子。
[ドナルドが繭に包まれ、一つ目と共に消えた
あぁ、志乃ちゃん。俺たちも行こう、か?
[否定するナユタ
続く言葉に耳を傾け]
セシルが呼んだ、のかな。
そうなの、かな……
[狭い世界。
遠くから見ているだけの。
触れ合っていても気持ちの悪い人たちに囲まれた生活。
そんなイメージを思い出して、よくわからない、と首をふった]
うん、セシルは、なんかそんな感じがするね……
[女の子、には否定はせずに。
ただ、小さく頷いて]
[ヤニク
あ、ヤニクっ。
こっちにきたんだ……
ああ、うん、わたしは、ポプラだよ。
なんだか元に戻ってる、けど……
[不思議そうな様子に簡単に説明した]
きゃあっ?!
[いつ、皆そろったのかわからない。
ただふいに光
とっさに瞳をかばった]
な、なに?!
[光にくらんだ瞳を瞬かせて、おびえたように周囲を見た]
【人】 小悪党 ドナルド―― 19階 ―― (61) 2011/02/25(Fri) 21時頃 |
―19階どこか―
[どうやら1901を開けても誰もいないらしい。それどころか皆同じ扉がどこまでもどこまでも続いていると。
……ということを扉を開けているナユタ達を見て悟った。開けてそこにセシルがいるなら、彼らがいつまでも廊下に立っているはずがないのだ]
――皆、キャラの格好のまんまだね。
[やはり思い入れの差なのかと考えたけれど。アイリスの中の人――和図の姿を見れば、あれは誰の中身なのかなと軽く思ったりしつつ]
[ライトニングの傍で微笑む"リンダ"を見れば、すごく嫌そうな顔をした]
…………。悪趣味。
[そして視線をそらした。そらした先のエレベーターが白く光っているのが、見えた]
[
あぁ よかった 気がついたんですね!
血だらけだしもしかしたらもうダメかと…おもって
[力がぬけてペたりと床に座り込みそうになる]
えーっ カミジャー?さっきもそうよばれたけど
この被り物…なんか新しい子供向けヒーローとか?
えっ?
[突然てをとられてエレベーターへと引っ張られて]
えっと…大学生ですし
ひとりでも大丈夫…
[いいかけて]
えっと、何か こんなこと 前に ありましたっけ?
[ぎゅっと繋ぎ合った手を何故か思い出した]
やっと、開くのかな。
[待ちくたびれた、とでも言うように呟く。
なんだかんだでリンダだったときより、今の姿のままこの世界にいる時間のほうが長いのではないだろうか?なんて思いながら]
この先がボスなんでしょ。
そして今までの傾向を考えると多分僕らも襲われる。
入る時十分気をつけてね。
[と、ナユタがいればそちらに声を掛ける]
― 19階:無限病棟 少し前の話 ―
(ヤニク、消えちゃったの――…?)
[アシモフとレティーシャの様子を見ながらも、考えずにはいられなかった。
ふと、白の中の抜けるような青に目が行った。
窓に顔を近づけると、其の目は僅かに吊りあがったこげ茶色の目をしていた。]
え―――…
[少し身を引いて身体全体を窓に映してみた。
肩よりも少し長い栗色の癖っ毛。
ヨーランダの其れよりも少し大きい猫目。
大きな牡丹が袖にあしらわれた橙色の着物。
ばん、と音を立てて彼女は窓硝子を叩いた。]
まだ、奈々には戻れないの―――…
[自分はヨーランダ、ヨーランダ、と彼女は自分に念じた。
まだ、戦わなくちゃいけない時が、あるかもしれないし。
それに――――…
手をどけると、そこにはアイスブルーの瞳が戻っていた。
記憶を取り戻した今、保つのが難しくなってきているのは明白だった。
顔を悲しそうに、歪めた。
ヤニクが19階に着いたのはそのしばらく後だったかもしれない。]
何?!
[光の乱舞、そして、その瞬きがぐるり終わったあと、
現れるドア]
[ここにヨーランダも、居るのだろうか…]
[大きいポプラとナユタが話をしていた。説明を聞いていると…光
何、ごと!?
……ご冗談も、大概になさいませ。
[軽口
いい子と言われれば、どこか悔しげで]
離して下さい……己の足で歩けます。
[ドナルドやアシモフを包んだ繭を追って行こうと。
19階に向かうだろうと言うのは、想像に易い]
メモを貼った。
あそこか!?
[一つしかない扉、確認すれば、リンダの忠告もはんばに駆けていく。]
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