254 東京村U
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ええ、次回作の準備中でして。 東京村、という本の続編を書くことになりました。
[リュックの中から一冊の本を取り出す。 『東京村』と書かれた表紙を見せた]
それでは、お言葉に甘えまして……お邪魔します。 そうですね、アンケートの目的についてお聞かせ願えますか?
[招きに応じて、部屋の中へと踏み入れた。 中の様子を窺いながら]
(159) 2016/10/06(Thu) 20時半頃
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―新宿衛生病院―
[同僚は結構律儀な奴だった。どうせ暇だからと、図書館から言われた通りの本を10冊ほど借りてきたのだ。あと赤ブドウも持ってきた]
え……デラウエアってこの時期にはもうスーパーにねーのか……
嘘だろお前、だって今だぞ?……マジで?
まあ、いいか。ありがとよ。無事に五体満足で再会できたら、一杯奢るぜ。
……就職決まってからになるかもしれねーけどな。
どこがいい?店決めといてくれ。
[いくら言ってもないものは仕方がない。ひとまずなんだかんだで人のいい同僚に感謝した。気にするなと笑う同僚は、しかし”五体満足で”という部分には少し引っかかったようだったが、気を付けろよ、と言っただけで戻っていった]
さて……どこから手を付けっかな。
[赤ブドウ(種なしだった、気の利く奴だ)をつまみながら、山と積まれた本に手を付ける。まずは流し見る程度に、それからじっくりと]
……ん?
[ふと見かけた一節に目を止める。何度も見返す。そこにはこう書かれていた]
『トリンギット(Tlingit ['tlɪŋkɪt])はインディアン部族の一つで、アラスカ、カナダの先住民族。正しい発音はクリンキット['klɪŋkɪt], もしくはクリンギット['klɪŋgɪt]。もともとはフリンキット(Lingít)[ɬɪŋkɪt]と呼ばれていた。彼らの自称「リンギット」とは「人間」という意味である。
トリンギット族はアラスカ・カナダ西部、ブリティッシュ・コロンビア、ユーコン川流域に住み、発達した母系の狩猟採集社会を構築していた。
鮭やクジラを獲って暮らし、ポトラッチやトーテムポールの風習で知られていたが、19世紀末から20世紀初頭にかけて白刃が持ち込んだ伝染病によって壊滅状態となり、全滅した村も多かったとされる。
トリンギット族及びトリンギット亜族に伝わる創世神話はいくつかあるが、最も有名なものは次のくだりであろう。
「その時、人々は暗闇の中で過ごしていた。昼に太陽はなく、夜に月はなく、天にいかなる星もなかった。人々が暗闇の中で生きているのをあるワタリガラスが不憫に思った。ワタリガラスは神の住む天の家に変装して忍び込み、天の家から太陽と、月と、星を盗み出した。そしてそれを人々に開放した。その時から、空には太陽と月と星があるのである。」
カラスと太陽の関連性は世界中の神話や伝承で語られているが、とリンギットの各部族に伝わる神話は、特に太陽とワタリガラスの結びつき強く語られている。』
………これだ。
[山岸五郎が食い入るように見つめているページには、ワタリガラスの姿があった。日本のハシブトガラスより大きな……ちょうどあの大カラスほどの大きさだ。
そして、その近辺のページにはトリンギット族の文化資料として、彼らの村に遺されていた羽の生えたトーテム像の写真が映っていた]
あの部屋の最初の死亡者……桜井安吾の専攻は北米先住民族に関するフィールドワーク………
ひょっとしたら。いや……
多分これが、当たりだ。
[山岸五郎の呟きは、誰にも聞かれる事はなかっただろう**]
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迷子、ですか。 ははは、そう言えば僕も新宿駅で迷子になったっばかりでして。
[笑いながら、心の奥で考える。 見慣れたはずの街で迷ってしまった男の話を、最近読みはしなかったかと]
ええ、奇妙なきっかけで知り合いまして。 変わった話を聞かせてもらいましたよ。
[部屋の中を見渡す。 視線が一度、コピー機で止まる。 あのコピー機が動けば、あのアンケートが吐き出されるのだろうか。 そんな事を考えながら、敷かれた座布団の上へと座った]
(165) 2016/10/06(Thu) 22時頃
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[『みょんこ』の様子に若干気圧されそうになる。 それでも、笑顔を見せて言葉を続けた]
え、ええ、まだ企画段階ですが。 ほんとうの、おはなし……。
[そう目の前の女は言った。 まるで、その本の中身が本当に起きたことだと確信しているかのように]
ほんとうのお話ですか。 そう、ですね……確かに、これを執筆すると決めてから奇妙な出来事が続いていますね。 当事者としてではなく、その出来事が本という形の物語として僕らの前に現れてくれたなら、素直な気持ちで楽しめてきっと夜を徹して読んだでんしょうけどね。
[『ねっ、出目さん』と、照子へと話を振った]
(166) 2016/10/06(Thu) 22時頃
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[ハナコちゃんのことを、お兄さんの声が少し小さく響いた。ハナコちゃんは気にせず右手を引っ張って進んでいて、聞かれたことには一度だけ振り向いたけれども、笑っただけ]
……私も、よくは知らないんです。
時々、家の冷蔵庫が開くようになって、私ママかパパが閉め忘れたのかなって思ったけどちがくて。
でも、怖いって言うより不思議なだけだったんですけど。
昨日帰ったら、ママとパパがもう帰ってきてて、誰かと話してるんです。
「私」がそこにいて、会話をしてるみたいに。
そしたら、出てきた「私」はただの影だった。
あそぼうって、私の部屋に逃げ込んだから、後を追って、それから、――テラスに。
[そこから先を良く覚えてない。
誰かに、引っ張られて、それから]
「ヒナちゃんとね、アソビタカッタ」
[思い出そうと左手で頭を押さえる。前を行くハナコちゃんがぽつりと口にした言葉に、その左手はまた下に落ちた。ハナコちゃんの表情はわからないけど]
「デモ、だぁれもきづいてくれないの」
「ヒナちゃん、小さいコロから、知ってるんだよ」
「あのイエは、コワいけど、ヒナちゃんに気づいてモラエたの」
小さい頃から? あの家に来る前から?
[小さく頷いて、ハナコちゃんは前方にある階段を指さした]
「ダイジョウブ、だよ。シンパイしないで」
[ハナコちゃんを怖くないのは、その存在をどこかで知っていたからなのかな、なんて]
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[目的について尋ねた質問。 それに対して、答えになっていないような答えが返ってきた。 一拍、考えた後]
その、アンケートに答える事で目指したい物を自覚させるということでしょうか? それとも、その願いを叶えてみせることで……いや、なんでもないです。
(176) 2016/10/06(Thu) 23時半頃
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ありがとうございます。 ただ、そうだとしても……きっとそれは、僕の功績ではないと思いますね。
[暫し、間を開けて思いついたように口を開く]
ああ、そうだ。 アンケート用紙を見せて貰っても良いでしょうか?
(177) 2016/10/06(Thu) 23時半頃
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ありがとうございます。
[受け取ったアンケート用紙を見つめる。 空欄に手早く文字を書き込んだ]
これがもし、噂通り希望を叶えてくれるのならこんな願いも叶えてくれるんでしょうかね?
[『何者の干渉もない、本来あるべき未来を』 そう書かれたアンケートを軽く振って見せながら、『みょんこ』へと笑いかけた]
もう一つお聞きしてもよろしいでしょうか。 貴女は望んでいた未来に満足してますか?
[そんな問いかけをした後は、二人の会話に口を挟むこと無く観察していた]
(186) 2016/10/07(Fri) 00時半頃
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