158 雪の夜に
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[問いかけに、女は覆う手の隙間から旅人を見上げる。]
―――…、
[答えてはいけない。 素性を町の誰かに知られてしまえば、 船に乗っていられなくなるかもしれない。]
…名前も知らない…人殺しの女だ。
[罪を赦されずに、全てを奪われ処刑された石の姿。]
……あたしの…母親さ。
(77) 2013/12/29(Sun) 02時半頃
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…そりゃそうさ。 でも―――…
[きっと女は、証明をしたかったのだ。 死んだ母親が生きて赦される未来もあったのだと。 少女を助けることで、自分に納得させようとした。
旅人の言葉は謎掛けのようだ。 段々女の頭の中は混乱していく。
"もしも"の話だった筈なのに、 目の前の男が、本物の人狼に見える。]
―――…なんだい? 何かを明かしちまいたいって顔してるよ、
(83) 2013/12/29(Sun) 03時頃
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…もう、今更隠すことでも…ないんじゃないかい? なあ、ヤニク…。
[覆っていた手を外して。 暖炉の灯で艶の乗った旅人の瞳を見つめた。]
(84) 2013/12/29(Sun) 03時頃
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[謎掛けのようだった旅人の言葉が解かれていく。 ああ、やっぱり。 謎が解けて靄の晴れていく頭の中でそう思う。 悲鳴は零れない。 首に手を伸ばされても、不思議とこわくはなかった。 ただ、動くことができなかっただけかもしれない。
目の前の男は同じ姿のように見えるのに、 人間ではない―――…人狼だった。]
(89) 2013/12/29(Sun) 03時半頃
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―――…そうか。
[これが―――…辿りついた、答え。 そのまま爪で裂かれるのだろうか、 女は、ヤニクを見上げて、眉を下げて笑った。**]
……なあ、
(90) 2013/12/29(Sun) 03時半頃
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……これを最後に、もう船乗りは襲わないでくれ。
(91) 2013/12/29(Sun) 03時半頃
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[ヒューの瞼が、ひくひくと動いた。]
……?
[薄目をあけた。一瞬の混乱。
周囲で人間が、慌しく働いているのが分かった。
――船のなか。
嵐だろうか。
起きなければ――
それが、慣れた暮らしを思い出しただけの短い夢に過ぎないと、ただの錯覚であると、あっけなく知る。
ここは、水面に浮かんで揺れることはない、陸に建てられた診療所の一室。
働いているのは、医者達だった。]
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