22 共犯者
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[上手と言われればはにかむような笑みが浮かぶ]
ピッパの教え方が上手だから。
[此処に来たから二人で歌う事が出来た。
けれど二人とも生きていたらいつかあの村で
同じようにしてピッパに歌を教えて貰えただろうか。
もしも、――そう考えて切なくなる。
嗚呼、こんなにも、彼女に生きていて欲しかったのだ]
……ありがとう、ピッパ。
[ぎゅ、と一度きつく抱き寄せて伝える感謝。
彼女の眸を見詰めて、それから腕を緩め彼女を解放する。
聞き覚えのある声が娘の名を呼んだ。
視線を向ければ其処にはホリーが居て]
ホリーも此処にいたのね。
[懐かしげに目を細め声を返した]
[傍らの彼女の笑みが、涙を孕むから
私が彼女の深い所に、感情を注ごうと想ったのに
傍らの彼女の手が、私の背を撫でるから
注ごうと想った葡萄酒は、私の心の奥に満ちる
彼女が許すなら、彼女の首筋に顔を寄せ
暫く、心の器に満ちる酒を嗜み]
私が一番、大事だったのは
私が一番、欲しかった物は
私が私になれる場所
私を私にしてくれる人
どちらも、手に入らなかったけれど
[こっそり漏らした呟きは、深い森が喰らい尽くすのかな]
―歌声の森―
え…。
[彼女たちの声は真冬の空気のように透き通っているように感じられた。
予想と違った反応にホリーは戸惑う。
しかし、手を差し出されたなら恐る恐る近づいて、そっとその手をつかんだ]
…どうも…。
[その手を取って、ホリーは驚いたように目を大きくした。
…暖かい。
彼女の温もりが、手から伝わってくる。
生きているオスカーに触れようとしたときは、温もりどころか感触も感じ取れなかった掌から、確かな彼女の体温を感じた]
っ。
[もう感じることもないだろうと思っていた温もりに、不覚にも涙がこみ上げてきて…ソレをごまかすように、少しうつむいた]
[双子の少女が、私の手を取り
彼女の温もりを、感じる事が出来たなら
俯く様子を、不思議に想いながら
顔を覗きこむ事も、無粋な感じがしたし
黒い羽を開いた、堕天使のように
歌と温もりで少女を誘い、懐に呼び込むんだ
勿論、自覚はないんだけどさ]
どうした…―――― ?
悲しかったか? 辛かったのか? 痛かったのか?
[耳元に囁く言葉は、確かに本物なのに
その存在は、呪詛と呼ぶに相応しい物]
―現在 夜の森―
オスカー…!!
[ヘクターの反撃にオスカーが更に負傷したのなら、ホリーは悲鳴を上げる]
…がんばってオスカー…!
もう少し…もう少しだから…!
[そういって片割れを励ます。
しかし、ヘクターが己のことを口にすれば、ぴくりと反応して]
私…?
[彼は私のことを何か知っているのだろうか…?
やはり私は、彼に襲われたのだろうか…?]
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