270 食人村忌譚
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この群れは滅びる。
そうですね、ミナカタさん。
[ふ、と嗤う声ひとつ置く。
彼の名は、ミナカタである。
どちらだ、と問う子供のような大人を
冷たい視線で一度見やり*]
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[>>22>>23 返す言葉に顔をあげて出ていく彼を見送っていく。 罪をそそぐための下手人探し。 それを望んでいる巫女殺しも目の前にいるというのに……]
………どうせいつか食べられるなら、 今この場で私から食べればいいじゃない…‥
[源蔵が出ていけば残された二人、寂しさに傍へと寄りたいとも思ったが、騒がしい外の様子に気付けばでそんなことも言ってられないか。]
源蔵さん……相手はミナカタさん? [外から聞こえる声を確認するようにリツ兄に伝えて 志乃は奥へと刃物を探しに向かう。 リツ兄はどうしただろう*]
(36) 2017/12/03(Sun) 23時半頃
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[丞を床に縫い留めた鍬が、湿った音と共に倒れていく。
片目に刀が刺さったまま、飛び掛かるように覆いかぶさってきたその男の顔は、人というよりも獣らしかった。
やがてぽっかりと開きこちらを見つめるその空洞の、さらにその奥に、ミナカタとしてこの村で生きた男の本当があるような気がして、]
ぐ、 ぅあっ、は
[見えなくなるまで、その闇を睨みつけていた。
声をあげている意識もない。
がむしゃらに動かした手指が何かに触れれば、爪をたてる。蹴とばそうとした足は、鍬をわずかに動かしただけで終わる]
[己も何度も振るった農具によって自由を奪われ、
己の研いだ刃で殺されるは、業の報いか。
人を喰らわずとも生きられる術を持ちながら、
人の肉ありきの冬の過ごし方を良しとした。
忘れられた鬼の一字を自ら名乗り、命を奪う刃を研ぐを悦びとした]
………、 へ、
[最期に残したのは、笑いにも似た音。
ただ喉奥から込み上げる血が震わせた吐息は、命を繋ぐために取り込まれることなく、流れすぎた血に溶け、神社を穢す役に加わる]
[両目は潰され、鼻と口の境目はなく、捲れ裂かれた唇から歯ばかりが覗くその面立ちは、まさしく鬼。
その鬼から血を啜るは、
――――地獄はやはり、地上に在り*]
[どこからか、声が、
生者と異なる何かが聞こえて気がして、周囲を見渡した
視線は何かを捕らえただろうか]
そうかもしれませんね
いつかは、滅びる運命にあるのかもしれません
[声、いや、その何かは、
聞こえるはずのないものだったのかもしれない]
滅びの様を、ご覧になりたいのですか
だとしたら、それはどうしてなのでしょう
[ふと、気になって、問い返す
もし聞こえるはずのないものならば、これも空耳に対する、
受けてのいない独り言だったのかもしれないけれど*]
源蔵の心中、応対がし辛いのではないかと、視線を落とす*
いつか、滅びるようないびつな村なら
家畜しかいない、出来損ないの村なら
今滅べばいい。
嗚呼、僕は
……失敗してしまったんですね
[誰に返したでもない独り言のようにススムは囁き
そして嘆く]
人として生きられぬ家畜など
喰うて宿すしか能のない家畜など
生かす意味など、ないでしょう
殺さなくては。
あれは、不要な生き物だから
殺さなくては。
あれは、狂った群れの家畜共だから
ころさなくても
ぼくは、あのなかにはまじれない
僕だけが、僕だけだ
違うのは
[呪いを吐くよう
殺せ、と
生者の動きを煽るよう*]
そうですね
[生者の、死者の耳にも届かぬやもしれぬ意思
うん うんと頷くのは、
誰かの声に被さるからか
聞こえてくる呪いはやがて、
死した少女の面影を想起させる]
生かす意味などないかもしれません
混じれないなら、殺すのも一手かもしれません
[ですが――――と心に宿るのは、
鶏や牛の声に混じって、
生者たちの言葉が聞こえるからか]
知らなくていいと閉じてしまわれたら、
家畜の方からも、人を知ることは難しいです
門を閉ざして下界を遠ざけた先にあるものは、
村も、人も同じなのではないでしょうか
[語るうちに、志を感じた若者の姿、
仮に偽りであったとしても、
前へと進もうとしているように感じた眼差しを思い出し]
胸襟を開いて知ろうと踏み出されていたならば、
違いを乗り越えて分かりあう姿も、
描けていたかもしれません
知らぬままでは成し遂げられぬのは、
家畜の捌き方と、さほど変わりはしないのかもしれませんね
[お手伝いをさせてあげられず、ごめんなさいね
最後のこの言葉は、声にできていたのだろうか
口をつぐみ、生者達の生きざまを見届ける*]
[集会場の騒動とは無縁の、焼け跡の中で。
兄の耳垂に噛みつき、力を籠めれば、口腔にゆるく血の味が広がったような気がした。
何度も執拗に、吸い付き、しゃぶり、高い水音を響かせる。
合間合間に、甘えるように兄を呼びながら**]
琴弾き 志乃は、メモを貼った。
2017/12/04(Mon) 01時半頃
[源蔵の短刀が指を切り落とす
短刀に力を加えた者は誰だったのか
ただ、分かる生末は、その刃がきっと、
生者の一人から命を奪う]
ミナカタさん…………
[分け入るつもりは微塵もなかった
ただ、寒いと訴える声>>*3を耳にして、
自然と足が向かっていく
無駄だと分かってはいても、傾ぐ体を抱きとめようと]
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