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……いいから、お前が寝ろと。自己管理くらい出来てるって、主張してたのはお前だろう。
[仕事に差し支えるから、と。
撫でられる髪に、もう何も感じない筈の感覚がこそばゆく。
無意味に、同じところを弄りながら]
オルガンの―…… 何の傍で、死ぬ気も無かったよ。
お嬢様のところのピアノは弾き損ねたし、最後にもう一回くらい、鍵盤には触りたかったけど。
……だから、もう。……本当に、お前は…… ばか だな。
[愛してる、とごめんね、を繰り返す彼女を、愛おしく思わないわけが無い。
ただそれは、彼女が望むかたちと、似ているようで、交わることが無いだけで。無いからこそ。
ばかだ と。
ありったけの愛しさを籠めて、伝わることのない言葉を紡ぎ]
……奏者以外の仕事着で死ぬ事になるとは、思わなかったな……。
[ちいさなオルガンを手に、白いシーツに包まれて眠る自分に、くすくす笑い。
あれが、アレヴィ氏の遺言だったのだろうか、手にした彫刻を手にミッシェルが語るのには、首をかしげたが。
いってらっしゃい、と見えぬ手をひらひら振って彼女を見送り。
ふと]
……?
[ぽっかり生まれた、何もない時間。
することがあるうちは。考えることがあるうちは。
忘れていた、衝動。
ぽろぽろ、ぽろぽろと。
転がる飴玉のように、水滴が零れていく]
……ああ… ……、
[消えていく、営みの声。
先にいってしまった弟。
後に残してしまった、彼女。
終わってしまうそれらが、悲しかったのだと。
今更になって気づくのすら、悲しかったのだと。
差し出したてのひらに落ちる水を、歪む視界でただ見つめ。
音無くしずくを滴らせながら、物言わずふわふわ、歩き出した*]
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― 墓地 ―
[墓地に着くと、丁度ギリアンが新しい墓をたておわったところで。
声をかけようとして、逆にギリアンからどうした、と声をかけられた。]
ギリさん、あのね。
セシ兄が、死んじゃった、から。 お願い、して良い?
セシ兄。私の家で、待ってるの。
[そう言うと、わかった、と了承してくれて。 彼の零した言葉に、一瞬息が詰まったものの、すぐに弱く微笑んで、うん、と頷いた。]
私も。もっとセシ兄に、弾かせてあげたかった。
(59) 2010/07/09(Fri) 20時頃
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─ →自宅 ─
─…うん。そう、だね。
[ギリアンの言葉に頷いて。 家に着けば、うん、お願い。とギリアンに頼んだ。 セシルの元に案内すれば、勘違いされているとも気付かないだろう]
ごめんね、私が運べるならわざわざギリさんに頼まなくても済んだんだけど。 着替えさせてあげることも出来なかったし。
(61) 2010/07/09(Fri) 20時頃
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どうだろうね? オルガンの傍で死ねたら良いって言ってたし。
私にとってセシ兄は男の人だったけど、セシ兄にとって私は、手のかかる妹だったから。
私が最後まで傍に居て欲しいって言ったから、仕方なくだったのかもしれないし。
[ギリアンの勘違いには気付かず、そのまま淡々と返して。 ほんとに過保護だよね、と苦笑した。]
(63) 2010/07/09(Fri) 20時半頃
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…どうせなら、洗濯終わるまで待っててくれても良いのにさ。
お義父さんの服じゃ不満そうだったから、こうでもしないと後で文句言われそうだし。
[シーツをめくって見た、サイズの合わない作業着はやっぱりアンバランスで。 セシ兄ほんと似合わないなぁ、とか呟いたり。]
(65) 2010/07/09(Fri) 20時半頃
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? まぁそりゃ、セシ兄はたしかにモテてただろうけど。
[ギリアンが驚いているのにびっくりして、きょとんとしながらも続いた言葉に瞬きをして。 柔らかく、嬉しそうな切なそうな笑みを浮かべた。]
…そう、かな。 そうだと、良いな。
(66) 2010/07/09(Fri) 20時半頃
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うん。 私が汚しちゃったから。
あ、そういえば服桶に入れっぱなしだった。 時間経つと血って落ちないんだよなぁ…
[なんだか様子のおかしいギリアンにきょとんとしてはいるものの、棺にセシルが寝かされるのを見ると、涙が零れそうになって、堪えるように目を伏せた。]
(68) 2010/07/09(Fri) 20時半頃
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あぁ、ごめ…
─…ギリさん、どしたの?
[こちらを見ているギリさんに気付いて慌てて目を擦るも、なんだか慌てている様子に首を傾げ。
続いた言葉には、数回瞬きをして、困ったような顔で微笑んだ。]
うん、でももう。 いっぱい泣いたから、大丈夫。
それに。 泣いても、もう。 セシ兄は私のこと、撫でられないから。
[きっと、困った顔をして。泣くなと言ってるだろうと、そう思うから。もう泣かないと、決めたのだ。]
(71) 2010/07/09(Fri) 21時頃
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うん。
[墓地に移動して、ギリアンから別れを促されれば頷いて跪き、そっとセシルの顔を覗いて小さく話しかけた。]
…ねぇ、セシ兄。 セシ兄はよく、私に早く結婚しろとか、安心させろとか言ってたけど。 私は、セシ兄以外の人なんて、イヤだったんだよ。
もしも私が幼馴染じゃなくて、妹じゃなくて。 普通の女の子らしく育って、セシ兄と出会ってたら。 私に、恋、してくれてた?
…ごめん、嘘。 そんなの、私じゃないや。
おやすみなさい、セシ兄。 ヴェスと、仲良くするんだよ?
[そう囁くと、両の瞼にそれぞれキスをして立ち上がり。 ギリアンに、お願いします、と頭を下げた。]
(74) 2010/07/09(Fri) 21時頃
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[棺が閉じられ、土に隠れていく様も。 墓が建てられていく様も。
目を逸らさずに、涙も零さずに、最後まで見届けて。 ギリアンに礼を言おうとした時に言われた言葉に、一瞬声が出せなくなったものの、すぐにうん、と泣きそうな声で微笑んだ。]
そう、だね。
たくさん、弾いてると良いな。
─…ギリさん、ありがとう。
ギリさんも、気をつけて、ね?
[ギリアンを頼ってきたけれど、此処にいる以上彼も決して病から逃れられはしないだろうから。 礼を言った後心配そうに見上げてそういうと、もう一度ありがとう、と言って*彼と別れた。*]
(75) 2010/07/09(Fri) 21時半頃
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……メアリー。
君は僕を、恨んでる?
[空を見上げて、問いかけた。手のひらを、閉じる]
死ぬのは怖い。
ひとりで死ぬのはもっと怖い。
……僕もそうだった。
やっぱり君もそうだったんだろう。
最期まで傍にいてやれなかった僕を、君は怨んでいるのかな?
[あの日、ミッシェルに叱咤されたことを思い出す。手のひらの包帯。身体を失ってもまだそこにある]
……今でも、……いや。……すまなかった。
[跪いて話しかけるミッシェルを、覗き込むようなかたちで。
触れられぬ手は、ぺちりと小突き]
女らしいお前なんて想像出来ない、なんて言ったら、怒りそうだけど。
どんな、他のかたちのおれたちも、想像出来ないよ。
お前が……お前だから。おれは、愛してるんだし。
……お前は違ったか?
[目蓋を閉じて、おやすみの言葉を聞く。
そのまま、自分が埋められる様を見ているのは、何だか妙な感じだったから。
周囲に増えた墓に祈りを捧げれば、また、ふわふわと歩いていく]
そうなのかも知れない。
だから僕は君を失ってしまったのかも知れない。
けれど――
それが神に依るでなく 君の選択ならば
僕はそれを祝福したいとすら思うんだ。
ああ――そうか。
[胸元のロザリオ。変わらずにそこに在る。いつの頃からか 分からないほどの昔から ずっと]
だとするのならば、君が離れていくのも当然か
――すまない。
すまない、メアリー。
僕も君もずっと 一歩を踏み出せなかった。
踏み出すことが赦されなかった。
すべてを拒む、線があった。
それは職であり
――それは村であり
――それは家族であり
――それは互いであり
――それは神であり
――それは信仰であり
――それは世界であり
――それは、己だった。
肉の身体から解放され
生死の楔から解放されて
されど僕にはまだ、臆病な心がある。
そう、ですね。……過ぎるほどに。
[恵まれてる、と自分の墓標へ呟くペラジーに、柔く笑う。
と、ぺしぺし叩かれるのに]
ちょっ、いた、痛くないですが痛いです。
ペラジー君は…… そんな風に過ごす何方かを、見送らざるを得ないのですか……?
[この手は届かない。
羨ましいという彼女を、撫でてやることは出来ない。
だから、ただ労しげな眼差しを、向けるのみだった]
[包帯で縛られた手のひら、さらさらとロザリオが溶けていく。柔らかな風が男を包み、あたたかい何かが薫る]
僕にはもう、必要ない。
赦しの上に 在るわけじゃないんだ。
ただ――君だけを。
君と伴に在りたい。
その想いこそが――
[光が満ちる。
眩いまでの光ではなく
柔らかく
ありふれた
仄かな光。
あの灯りはどこから生まれたのだろう――?
手のひらの温度が、優しく、男を包んで――――**]
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