231 獣ノ國 - under the ground -
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[名前を呼ばれて>>203なんと返事をしたものか迷った。 もうおはようという時間ではなくて、でも私は他に目覚めの挨拶を知らない]
そんなところで眠るなんて。 体が痛いのではない?
[結局口から出たのは、そんな現実的な、可愛げの欠片もない言葉で。けれど、フィリップの顔はまだぼんやりとしていて、私の声がきちんと意味のある言葉として届いたかはわからない]
……?
[フィリップの腕がこちらに伸ばされて>>208、私は首を傾げる。人差し指で涙を拭われる、その時まで、うっかり私は自分が泣いていることを忘れていた]
な、
[私の涙を拭った人差し指を舐める様子に、心臓が跳ねる。 もっと恥ずかしいことをしたはずなのに、私の羞恥心のメカニズムはどうなっているのか、自分にもよくわからない]
(213) 2015/07/13(Mon) 22時半頃
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[羞恥心は、私の涙を止める作用をもたらした。 うろたえている間に膝の上へと引き寄せられて>>208、まるで小さな子どもみたい。 いいえ、やっぱり、それは違う。 だって小さな子どもなら、膝の上でもらうものは]
違うの。昔のこと……思い出せたのよ。 あなたの、お陰だわ。
[思い出した、昔の記憶の中。小さな私は“とうさま”の膝の上で、頭を撫でてもらっていた。 でも、私は子どもではないから。 好きな人の膝の上で、もらうものは目元への口づけで]
おはよう。
[気の抜けた笑みと共に贈られた挨拶。結局同じ挨拶を返して]
ありがとう。 でも、こっちにも欲しいわ。
[そう言うと、フィリップの唇に、唇を寄せた]
(215) 2015/07/13(Mon) 23時頃
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[ああ、どうしよう。 極力誰にも関わらずに、私は孤独を愛していたはずなのに。 もうこの温もりを手放すことなんて、到底できそうにない。 唇を緩く食まれれば>>222、胸の中を甘いものが満たした]
あ……。
[彼の視線を追いかけて、目を落とした胸元。そこに昨夜の名残を見つければ、かあっと顔が熱くなる。 うろたえる私を追い込むように、音を立ててキスをして、笑って誤魔化すなんて、本当にずるい人。 きっと自分の笑顔の威力をわかってやっているに決まってると思うのに、誤魔化されてしまう私は、本当に弱いと思う]
(228) 2015/07/13(Mon) 23時半頃
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ええ。……やっと。
[会えたのかという質問>>222に、目を伏せて私は頷いた。 10年だ。10年もかかってしまった。でも、こんなことにならなければ、きっと今も思い出せてはいなかった]
ありがとう。
[口元に笑みを浮かべて、私はもう一度お礼を言って。 どうしようか、という言葉>>223に考える。 離れ難いのは私も同じで、こうしているのも幸せ、という言葉に胸の奥が温かくなるけれど]
そうね。 私も、幸せだけれど。 でも、お腹がすいたわ。
[このままだと、あなたのことを食べてしまうかも、なんて。 言い慣れない冗談を口にしてみた]
(235) 2015/07/14(Tue) 00時頃
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[引っ張られたシャツの隙間から、小さな爪痕が見えた>>244ことには、気づかない振りを決め込んだ。 晒された肩口。いっそ、かぷりとしてみようかしらなんて考えが頭を過ぎったけれど、やめておく。 これ以上戯れにでも触れ合えば、止まれなくなりそうで]
そんなこと、ないと思うわ? 美味しいんじゃないかしら。
[美味しくないという主張>>245には、そんな言葉を返す]
でも、やめておくわ。 私のお腹の中のあなたは、きっと歌ってはくれないもの。
[それは困るわ、と首を傾げてみせれば、私のものではない羽音がして。 ああ、そうだ。二人きりではなかったのだった。 言っては駄目と私が釘を刺してから>>19、ずっとおとなしくしていたフィリップの兄に]
喋ってもいいけれど。 昨日の夜のことは、秘密にしておいてほしいわ。
[そんなお願いをしたけれど、フィリップの頭に着地することに忙しい彼の兄に、そのお願いは聞き届けられたか、どうか]
(252) 2015/07/14(Tue) 01時頃
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―第一棟・食堂―
[そこにたどり着いたのは、夕食時。いつもの私なら避ける時間帯だったけれど、私は迷わず足を踏み入れる。 カウンターでいつものように、動物性たんぱく質の多目の、人間と同じ食事を受け取った。 今日のメニューはビーフシチューに、ライスにサラダ]
いただきます。
[小さな声で呟いて、私はサラダを口に運ぶ。 誰かと居合わせることはあっても、意図して誰かと一緒に食事をするのは、ここに来てからきっと初めてのことで。 ただ食事をしているだけなのに、なんだかそわそわ、落ち着かない。 やっぱりあまり顔に出ないタイプでよかった、と思う]
(255) 2015/07/14(Tue) 01時頃
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それは、難しいわ。 私は、うわばみではないもの。
[丸呑みで、なんてリクエスト>>266にはそう返した。 象を丸呑みしてしまううわばみの話は、第二図書室で読んだのだったか。 このあと行こうかしらなんて考える私は、第二図書室の惨状>>44>>45も、その犯人がここを去ったこともまだ知らない。 それに、お腹の中のあなたは、私を抱きしめてはくれないでしょう? なんてそんな言葉は、胸のうちに留めて]
そう? それなら、良かったわ。
[何にも知らないと主張する彼の兄は、私が思っていた以上に賢いようで。 声の大きさに閉口していたけれど、認識を改めなければならないかもしれない]
(269) 2015/07/14(Tue) 02時頃
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―食堂―
[しげしげと興味深げに覗きこまれ>>267、落ち着かない気持ちは加速する。 私の視線に気づいたフィリップは、慌てて自分の食事に戻るけれど、気にしている>>268ことは一目瞭然で]
私の両親は、人間なの。
[突然変異か、先祖返りなのか。ごく普通の人間の両親の間に、梟の私は生まれた]
だから、ずっと人間と同じ食べ物を食べて生きてきたから。 私にとっては、美味しいわ。
[向けられた怪訝な顔にシチューを口に運びながらそう言って。 開かれた口に、瞬きを一つした。 食べてみたい、ということなのだろう、これは。 しかし同じ鳥類とはいっても、梟と鸚哥では食べるものが随分違うはず。 しばらく迷って、これなら大丈夫か、とシチューの中のにんじんをフォークに刺して、フィリップの口元へと運んだ]
(270) 2015/07/14(Tue) 02時頃
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[さて、にんじんなら体に害はないと思うのだけれど、シチューの具として煮込まれたにんじんは、調理された食べ物を食べることのないフィリップの口に合ったか、どうか]
私はこのあと第二図書室に行くつもりだけれど。 フィリップは、どうするかしら。
[私はこれから活動時間だけれど、フィリップは違う。 無理はしないで、と伝えたけれど、彼はどうしただろう。 ともあれ、食事の後、第二図書室へと足を向けた私は、室内の惨状に驚愕することになる**]
(272) 2015/07/14(Tue) 02時頃
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