88 吸血鬼の城 殲滅篇
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― 2F:客室(14) ―
か弱いだろ?
[太い首を小さく傾げ、牙を剥いて嗤ってみせる。 棍を、今度は右手に持ち替え、 吹き飛んだ男へ無造作に近づいて、腹めがけて突き込んだ。
男が握っている刀子のことなど、気にも留めない。]
(119) 2012/04/30(Mon) 18時半頃
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[鏡の中の景色が変わる。
一階から二階へ。
宴会場を抜けて客室の光景が映し出された。
聞こえくる声は懐かしくも恋しい音色]
――…ッ、 ヘクターさま!
[会いたいと願った主の姿に声を上げるも
どのような状況かがみえてくれば
何処か複雑そうな表情が過ぎった]
[真っ暗な客室で何が起きるか分かるのは
鏡の魔法ゆえか――。
叩きつけられ衝撃を受けるドナルドの姿に
思わず悲鳴を漏らし両の手で口を覆う]
――…っ
[このような状況を望んだわけではなかった。
けれど主が戻ればこうなるかもしれぬ、と
何処かで感じていたのだから――]
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― 2F:宴会場(12) ―
[炎を吐き終え、口を閉ざした犬を、 今度は逆に魔術師の放つ炎が包み込む。
激しく燃えあがった炎が弱まり消えた後、 なおも立っていた犬は、首を震わせて火の粉の残りを振り払う。 魔術の炎は犬の体毛を焦がしはしたが、 深刻な打撃を与えていないように見える。
腹から血の代わりに火の粉と闇を滴らせながら 犬は手負いの獲物に留めを刺すべく、じわりと近づいた**]
(126) 2012/04/30(Mon) 19時頃
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― 2F:客室(14) ―
片手間じゃねぇよ。 あっちはオレの可愛いペットだ。
[腹を突いた棍に、ひねるようにじわりと力を加えながら 笑って答える。 正確には闇を以て形作った、偽りの命だった。 だが、そこまで教える義理もない。]
なんだ? 口付けでも欲しいか?
[腕を掴む男の手首を左手で捕らえ、 吊り上げるように引きはがした。
滴り落ちる血に、目を細める。]
(128) 2012/04/30(Mon) 19時頃
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[男の身体を引き上げるとともに 懐に収まっていた赤が目について、 視線は剣呑の色を増した。]
……あれの、か。
["娘"が人であったころから身につけていた紅玉の髪飾り。 吸血鬼と噂される(そしてそれが事実である)領主の元へ 娘を送る親が持たせた、せめてもの守りかとも思っていたが、 取り上げることはしなかった。
それが今、この男の手にある。]
(129) 2012/04/30(Mon) 19時頃
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ああ……ますますもって―――
[残忍な衝動に目を輝かせ、ゆっくりと牙を剥いた**]
(130) 2012/04/30(Mon) 19時頃
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ドナルド
貴方には来て欲しくなかった
[会いたくなかったわけではない。
会えて嬉しくなかったわけ、ない。
あの時の男の子がこうして傷つくのを見たくはなかった]
仮令会えずとも
何処かで平和に、しあわせに
いきていてほしかった
[女は目を瞑る。
ヘクターとドナルドが対峙する様を
みているのがつらい、とでもいう風に]
――…私は
ヘクターさまにお逢いしたかっただけ、なのに
[鏡を通じて見る事は叶ったが
それは望んだカタチとはまた違って]
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― 2F:宴会場(12) ―
[瀕死の獲物と侮った犬は、無造作に走りより、 魔術師に食らいつこうと牙を剥く。
風魔法が先か、銀の細剣が犬の首筋を貫くのが先か、 或いは、より脅威となる剣の使い手に 犬が反応するのが先か。
緊迫した瞬間を、階下よりの激しい音と炎の赤(>>150)が 引き裂いた。]
(153) 2012/04/30(Mon) 22時半頃
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― 2F:客室(14) ―
[隻眼の男を捻り上げている間にも、 扉の向こうから別の人間の声が聞こえ(>>142) 視界の隅で、修道士が床に這い蹲って なにか掻き集めているのが見える。
大したことでは無いだろうと捨て置いていたら、 耳障りな音のする何かが、天井に投げ上げられた。]
―――…ッちっ。
[聖別されたガラスの細片は、 仄かな光で闇を裂きながら、部屋に降り注ぐ。 それだけでは致命傷にはなり得なかったが、 沸騰する湯を浴びせられた程度の痛手はあった。]
(154) 2012/04/30(Mon) 23時頃
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……鬱陶しい。
[掴んだ男を頭上にまで差し上げて 即席の傘とする。
僅かに灯りの戻った室内で、 真っ直ぐに修道士を睨みつけ、 にやりと唇の片端を吊り上げた。]
(155) 2012/04/30(Mon) 23時頃
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おまえは、あとで泣くほど可愛がってから じっくり殺してやる。
―――楽しみにしておけよ。
[言い終えると同時に、身体は粘性の闇へと変じ、 隻眼の男を飲み込んで、ずるりと窓から外へと出て行った。
闇の主がいなくなれば、次第に闇は晴れ、 扉の鍵も解放されるだろう。]
(156) 2012/04/30(Mon) 23時頃
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ヘクターは、ドナルドを飲み込んだまま、物見塔(27)へと流れ行く。
2012/04/30(Mon) 23時頃
[女が目を閉じると同時
鏡もまた城の景色を映す事を止めた。
何の変哲も無い鏡であるかのように
クラリッサの相貌を静かに映すのみ]
[シン、と静まりかえる地下聖堂。
深紅の薔薇が彩る其処で
女は座り込んだまま鏡を抱きしめた]
――…何も出来ない
[自分の無力さは嫌というほど知っていたが
此処に来てより一層その思いは強くなる]
――――……
[城の地下で女の魂が
さみしい
と、くちびるのみで綴る]
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― 2F:宴会場(12) ―
[階下から響く音に、闇の犬もまた気を逸らされていた。 無数の風の刃に切り裂かれ、よろめいたところを 銀の刃に貫かれる。
腹と首、そして全身から炎と闇をまき散らしながら、 地獄の犬は数歩離れるように歩き、音を立てて床に倒れた。
だらりと四肢を投げ出して動かなくなるが、 腹だけが僅かに上下している。]
(165) 2012/04/30(Mon) 23時頃
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[塔へと流れゆく闇が、いっとき、止まる。 それは、地獄の犬が倒れたあと。 二度目の竜牙兵が現れたとき。]
―――…… ……。
[声として聞こえぬ声が、発せられ、 再び、闇は塔の壁をずるりと登っていく。]
(175) 2012/04/30(Mon) 23時半頃
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― 2F:宴会場(12) ―
[横倒しに動かなくなっていた犬が、 ひくりと耳を立てる。 数度、もがくような動きを見せた後、 覚束ない足取りで立ち上がり、 身体を引きずるように動き始めた。
背を向け、無防備に歩いている魔術師を一瞥した後、 ずるずると半ば滑り落ちながら階段を下っていく。]
(179) 2012/05/01(Tue) 00時頃
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[やがて、階下が見える位置まで来ると へたりと身体を伏せて、その場に蹲った。
僅かに残り火を燃やす瞳が、階下の戦いをじっと見つめている。]
(180) 2012/05/01(Tue) 00時頃
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