人狼議事


7 百合心中

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[『私』がイリスを抱いている。
 冷たく、動かなくなったイリスへ語りかけながら。
 イリス。イリス。イリス―――。
 私の大事な、大好きな、イリス。]

 …

[眸を細め、光景を見守る。
 触れる事の叶わない、指先を握って。]


[『私』は只、壁に凭れ。
 一回り小さなイリスを撫ぜ、幸せそうに笑う。
 本当に、幸せそうに――。]


[やがて『私』がイリスへ口接けた。
 深く、甘い、永遠の接点。
 離れない、離れたくない、証。


 どれほどそうしていたのか。
 暫くの時を経て、『私』はイリスからそっと身体を離す。
 何事かをイリスの耳元で囁いて


 刀を手に、喫茶店を出て行ってしまった――。]


[泡は『私』の背を追った。
 荒れた街を進み、やがてコンビニエンスストアへ。

 刀を強く握り、鋭い視線が店内を探る。
 飲料の棚の前に若い男女が一組。

 『私』に気付き、手の中の煌きを見ると
 男性は女性を護るようにして、一歩前へ。

 『私』は無表情のまま何か、言葉を発しながら――。
 二人を、斬殺した。]


[男女の表情は、酷いものだった。
 男性は恨みをありありと浮かべ、
 女性は怯えをありありと。

 『私』は最後まで無表情だった。
 音は聴こえない。
 
 悲鳴も、罵声も、何もかも。
 只、終わったのだという事を、流れ出る紅で知る。]


[『私』は棚から二本の飲料を手に取った。
 そのまま紅の上を歩き、スナック菓子を二つ。
 そしてまた少し歩き、パスタを二つ。

 矢張り、レジには見向きもせず、店を出る。
 崩れた白華の合間を縫うように、
 足はやや、速く。

 再び戻るは、喫茶店、眠りの森。]


[変わらぬ姿でイリスは眠る。
 『私』はふんわりと笑んだ。

 右手に刀を。
 左手に食料の袋を持ちながら。

 数歩イリスへ近づく姿には、紅がそこかしこ。
 イリスは、驚きも、心配も、しない。

 只、眠るだけ。
 『私』は只、笑うだけ。]


時間の概念を無視した泡の先に、魅入っている。


[袋からパスタを取り出し、ラップを外す。
 喫茶店の奥からフォークを持ち出し、
 パスタを絡ませるとイリスへ差し出した。]

 『あーん』

[そんな声が聴こえてきそうな程に
 『私』は無垢に、笑って居た。
 イリスは当然、口を開かない。]


[小首を傾ぐ、『私』。]


[絡ませたパスタを、口に含んだ。
 一度軽く、ほぐして口移しで与える心算だろうか。
 思った通り、『私』はそんな行動に出た。]

 …

[イリスへ深く、口接けて。
 崩れた糸を、舌伝いに絡ませる。
 深く、深く、深く。

 されど、一方的な押し付けは
 ぼちゃり、イリスの唇から零れ落ち、衣服を汚した。]


[唇を離し、見下ろす『私』。
 何事かを呟きながら、ぼとぼと、ぼとぼと、と。
 零したのは残りのパスタでは無く、
 眸から溢れる雫だった。]

 ぅ……

[拒絶するように首を左右に振るも
 泡の向こうの光景は止まらない。

 『私』はイリスの衣服に落ちた汚れを
 一心不乱に拭き取っていく。]


[泡の向こうは虹色に包まれて、
 二人を遮ったかと思えば、
 次の瞬間には違う光景を映し出していた。]

 ?

[其れは時間的に、暫く後の事だろうか。
 向こうの景色は喫茶店では無くなっていた。
 ゲームセンターの、あの場所。

 立ち入り禁止の階段で、イリスを抱き
 座り込む『私』の姿。

 表情からは笑みが消えていた。
 虚ろな眸が、イリスの髪を撫ぜ続けている。]


[二人を初めて結んだ場所。
 二人が初めて素直になった場所。
 二人が初めて心を共有した場所。

 其れが今は只、無機質に
 冷たく二人の傍に佇んでいる。

 やがて『私』はイリスの胸に手を寄せた。
 優しく、探るような愛撫をし
 耳元で何かを囁きながら微笑する。

 イリスは、ぴくりともしない。]


[髪を一房、手に取って『私』の唇に絡ませる。
 同じ様に、イリスへ『私』の髪を絡ませて。

 二人が纏うのは互いの、ベール。
 熱を帯びる筈の行為は
 冷たい唇によって『私』を微かに震わせる。

 けれど止める事無く、
 互いの髪を食んだまま深く甘い口接けを。]


[『私』の唇が、指先が、眸が。
 イリスの芯を求めて彷徨うも、
 イリスの唇は、指先は、眸は。
 『私』の芯を求めて彷徨う事は無かった。]









[やがて行為はあっけない幕切れ。
 『私』の涙で、静かに閉じられた。]


[再びの虹色。
 次の光景は、街中だった。
 何処かへ向かい、イリスをおぶって歩く『私』。
 右手には刀。

 ふらふらと危ない足取りは
 やがて向こう側に海を臨む
 レストラン、ロンドへと―――。

 そう。
 二人、ささやかにでも食事をする心算だった場所。]


[ロンドまて後、数十メートル。
 ふらふら、ふらふら。

 『私』とイリスは、共に進む。
 只、食事がしたいだけ。

 海を見ながら他愛も無い話をして。

 「美味しいね」
 「あんまりかも?」
 「ううん、どうだろう。」
 「少し頂戴?」
 「少しずつ、少しずつ」

 そんな食事を、したいだけ。]




 『綺麗だね』
 「うん、少し遊んでいく?」


[海を見ながらそう、誘いたかった。

 そんな小さな、願い事。
 『私』とイリスはロンドへは辿り着けなかった。

 血だらけの『私』を見つけ、何事かを叫び、
 発砲する誰かの銃口によって―――。]


[地へ崩れ落ちる『私』とイリス。
 衝撃で、身体が離れてしまう。

 震える手を伸ばしても
 イリスへは届かない。

 あと数センチ。
 たった其れだけの距離なのに。

 届かない永遠は、
 やがて虹色に飲まれ、
 泡の奥へと消えゆく、if―――*]


泡が魅せる光景に顔を伏せて、肩を小さく*震わせている*


メモを貼った。


メモを貼った。


―中央広間―

[幾重にも連なる螺旋階段を下まで降りてしまえば、
ざわざわと踊る胸の内も、幾らかは落ち着いただろうか。

絡ませ合い、繋いだ手にきゅっと力を入れて。
ヨーラを見つめる。]

 大丈夫……?

[唇の動きでそう問い尋ねて。
彼女が頷くならば、良かった…と、ほっとしたように笑顔を浮かべるだろう。]


[天井の見えない空からは、やはり、
はらはらと白い花弁が雪のように舞い降りて、
二人を包んでいる。

上に居る時よりも幾分ましになったとはいえ、
中央の巨木が発する濃厚な死の香りが、
心をざわつかせるだろうか。]

 あっち、行こう?
 ここは……心を狂わせる。

[繋いだ手を軽く引っ張る様に、引いて。
元来た道を戻ろうと――]


[回廊を戻り、辿り着いたのは、最初に訪れたゲストルームらしき部屋。

扉を閉めれば、外よりも香りは薄れて。
胸の中に残る香りを吐きだすように、大きく深呼吸を繰り返す。]

 ――…。

 此処まで来れば、うん。
 大分香りも落ちついたね。

[ほっとしたように笑んで、
ようやく平静を取り戻した心で、彼女を見つめる。]

 此処を暫くはベースとして、使わせてもらおう?
 休めるところもあるし、それに……。

[此処だったら、きっと…貴女を自分の欲求のままに、
襲ったりはしないだろうから――]


 そう言えば……。

[何かを謂いかけて、女は口を閉ざす。]

 ………。

[白い花弁が舞い散るあの光景を、どこかで見た事がある。
そんな気がして。

眸を閉じる。]


メモを貼った。


メモを貼った。


――中央広間へ――

[暫く休んでいた部屋を出て、螺旋階段を下へと降りる。
グロリアと繋いだ手がぎゅっと握られ、彼女が見詰め問う言葉には]

 ええ、大丈夫――…
 上に比べれば花の馨も酔うほど濃くは無くて。

[彼女はきっと、この白い花の齎す欲望と戦いながら、此処まで来たと想う。
そんな彼女の芯の強さは女には好ましいもの。

ほっとした笑顔が彼女の顔に浮かんだのを見れば、柔らかく微笑む]


[未だに天井の見えぬ巨大な木のあるこの広間にははらはらと白い花弁が舞い降りている。
百合の爛れるような濃密な馨に包まれるこの場は、あまり好ましいモノではない。]

 ええ――…。
 此処へ来た道を戻りましょう。

[彼女が女の手を引っ張るようにして、元の道を戻るのに従う。
こんな風に決断をしてくれる、彼女は、前に格好悪い処ばかり見せると謂っていたけど、とても格好が良く女の目には映り。

やがて、最初に休息をとった部屋の付近へと]

 そうね、此処をベースにして。
 この白亜の城を探索した方がいい、かしら。

[大分馨が落ち着いてきたのか、平静を取り戻したように微笑む愛しいグロリアに、嬉しそうにそっとその頬にキスをして。
それでも、休めるところがあるしに続くように消えた言葉には、白い頬をばら色に染めて応える]


[何かを言い掛け、口を閉ざす彼女を不思議そうに見つめる]

 どうか、したの?

[眸を閉じる彼女と握られた手。
大丈夫?と告げるようにその手に絡む、細やかな指を動かして。]


[頬に触れる温もりに、くすぐったそうに笑う。
その柔らかな身体を腕の中に包んで、こつんとおでこを重ね]

 ……だめだよ、もう。
 せっかくずっと我慢してたのに。

 そんな可愛い顔で、キスなんて……誘ってるの?

[吐息が掛かりそうなくらい、間近で。囁いて。]


 あんな風に白い何かが舞う風景を、少し前に見たような気がして。

[指先にヨーラの愛しい温もりを感じながら、記憶をたどる。

歩道橋の上で。
破り捨てた恋文。

はらはらと灰色の街い降る紙片の雪。]

 ああ、そうか。
 此の既視感はあの時の……。


[擽ったそうに笑う彼女。
こつんとおでこが重なると嬉しそうに眸を閉じて、甘えるように]

 ずっと我慢していたの、わかっていたけど……
 
 わたし、どうしてもキスがしたくなっちゃって――…。

[吐息がかかりそうなくらい間近で囁く彼女に、照れるように囁く]


 ヨーラ、可愛い……。

[ぎゅうっと抱きしめると、照れたその頬にキスを贈って]

 私も、キス…したかった。
 もう一回、キスしよ?

 今度は頬じゃなく…ね?


[彼女が記憶を辿るようにすれば、眸の色は優しくなり、彼女と握り合う手と逆の手で彼女の背を優しく撫でるように動かし。

何を想っているのか、女には定かではないものの。
白い何かが舞い散る既視感の言葉には、女も以前にイリスと共に見た――…。

白い雪のように舞い散った白い紙片を思い出す。]

 そう、私も――…
 いま、季節外れの白い雪のようなものが舞っていたのを、イリスと見た記憶が少し蘇った、わ。

[イリスはリンダと無事に再会したのだろうか、終末までの時間をどのように過ごしているのか……。
それとも、既に――… 最後の想像はかき消した。]


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