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……、だから迷うんだろう?
もっとも仮面を被るのもまた人狼、か。
……、加護はローズマリーにも与えられているはず。
だから…、いや。
[男は首を振ると、宿の様子に目を*細めた*]
[かなわない]
[とどかない]
[なにひとつ――――――手を伸ばさなかった]
[魂を喰われ、形さえ保てずただ青い炎の欠片となって。
もはや抜け殻のような娘は現世をみない。
とざされて
とざされて
くらい仄い水底から、手を伸ばせずに沈んでゆく―――]
おば ぁ……さま、
[力を持たず、かすれた声。
喰われた命を元通りにする術など――――。]
[―――――それは、ほんとうに気まぐれなのか。
"貸してあげるよ"
声が聞こえた。
青い炎は大きさを増す。
燃え盛る――――その中から象る手足。
燃えた時と同じように、娘の体を炎が包む。
燃えるのではなく、"つくる"ために。]
[炎が消える――――
自らが切り盛りしてきた店の床に、ぺたりと座り瞬いて]
……―――なん、で
[問いは、誰から誰へのものなのか。
今しばらくは、*彼岸の幻*]
メモを貼った。
気付いてなかったのかィ…
[自分の死を今認識した様子の幼馴染に溜息を一つ。
フィルらしいといえばそうなのだが。]
…寝てる間にやられたんだと思うよォ。
君が殺されるなんて、思わなかった。
生きて、欲しかったのにさァ…
[命を落としたことは幼馴染のせいではないけれど――
握った拳で幼馴染の胸を小突いた。]
うん、ごめん、
[項垂れたまま。
小突かれた胸が痛い。]
ごめん、オレ――……お前を護れなかっただけじゃなくて、自分すら護れなかった。
[チラと見上げる瞳は捨て犬の風情で。
生を願ってくれた人がいるのに、こんなにあっさり死んだ自分。
本来なら合わせる顔がない。
けれど。]
……………も一つごめん。
オレ、またお前に会えてすげぇ嬉しいんだ。
絶交とか言わないでくれな…………?
[生きようと思っていた。
叶わなかった。
それは覆らない。
それならば。
――離れたくない。]
まさか死んでまで追いかけてこられるとは思わなかったよォ。
[絶交なんて、出来るわけが無い。
住まう世界を隔てても忘れないで欲しいと思った。]
君は、僕が居ないとダメだからねェ。
しょうがないなァ。
[止まってた涙がまた出てきそうだったから。
自分の死にすら気付かない間抜けな幼馴染に背を向けた。]
やっ…… たあああ!!
[幼馴染が背を向けた理由など分からない。
ただ嬉しくて、両肩に腕を伸ばして背中にのし掛かる。]
うん、オレ、お前がいなきゃダメだ。
[存在を確かめるように、腕の力を強くした。]
う、わ…ッ
[不意に伸し掛かられて膝から崩れそうになったのを堪える。
幽霊になっても重さを感じるなんて、不思議なものだ。]
フィル重いよォ…
[苦しいくらいぴったりくっついてくるフィルの腕に触れる。
フィルの方が少しだけ体格が勝るようになったのは何時からだろう。
幽霊になったらもう変わることはないのかな。]
お前がいなきゃダメだなんて。
愛の告白みたいだよねェ。
[もしくは女にフラれた男みたいだと。
ぺちりとフィルの腕を叩いた。]
――…あぁ告白といえば死ぬ前にクラリスに好きっていえてよかったねェ。
[にやにや。いつ聞いていたのやら。]
……もっと、はっきり……
乗っ取られていた、ら……
判断も、たやすい、のかしら……
[従兄弟が人狼だと見たクラリッサも、
自ら人狼だというローズマリーも。
娘の目には、違いがわからない]
[幼馴染と、その恋人のやり取りに、菫色の眸をそらす。
――その視線の先。
ぼんやり、とした青い炎から出でる娘の姿に一つ瞬き]
――クラリッサ。
[呼びかける声は、生前と代わらぬ、音]
![]() | 【人】 採集人 ブローリン
(65) 2012/06/19(Tue) 20時半頃 |
てッ
[皮膚を弾く音が響く。
渋々離れた。]
……んな軽いモンと一緒にすんなよ。
[鼻を鳴らす。
恋や愛などの括りに入れられるような――そんな簡単な想いじゃないから。]
[真顔で告げた後、シメオンのニヤニヤ笑いにぶつかる。]
……お前、アレ、見てたのか……。
[今更ながら恥ずかしい。
あの時はとにかく、彼女へ向かう気持ちが否定的なものだけだという誤解を解きたかった。
淡い暖かな気持ちをくれた彼女を救いたくて。
――結果的に告白の形になって、「ごめんね」
クラリスは……クラリスに、戻れたかな……。
[彼女が少し向こうにいる気配に、鈍いフィリップはまるで気づかない。
ただ、彼女の救済を心から願った。]
……………………………………………って、
[クラリスを思い出して、自動的に思い出す。
ひどい心残りを。]
……告れたんはいいけど、両想いもキスも経験しねぇまま死んだんだなオレ……。
[がくり。]
[名を呼ばれた―――その声は。
最後にみたのは、赤い海の、中。]
…………、 ラディ ス ラヴァ、さん。
[――じくり。
死して尚、痛む記憶と、心に。]
あの―…、わたし、
わたし、
[言葉がもつれてうまく出ない――
なにを言えばいいのか、まとまらずに。]
ごめ、なさ――……
[音にした、謝罪――]
[死が訪れたときの記憶はない。
それは、きっととても幸福なことなのだと。
クラリッサの様子を見て、思う]
――いいの。
貴女のせいじゃ、ないもの……
[ゆるり、とクラリッサの傍らにしゃがみこむ]
私が、こうなったのは、人狼のせい。
貴女が、ここにいるのも、人狼のせい。
ね、おなじ、でしょう。
[首をかしげて、小さく笑む。
ここにいるのは、昔から知っている彼女で。
――成り代わっていた人狼ではない、と思ったから]
[真顔でそんなこと言われると逆に恥ずかしいと思いつつ。]
クラリスは…魂を喰われてるって話だからねェ。
どうなってるのか僕には見ることは出来なかったけど。
運が良ければ残滓くらいは残ってる……かなァ。
[気休めにしかならない返事だなと思いつつ。
他にもこうやって彷徨う人の魂が居るだろうから
あるいは、クラリスも居るかもしれない。]
だからキスは僕がしてあげようかっていったのにさァ。
[にやにや。]
まぁ、ほら、時間は無限大にあるし……
こっちの世界にも可愛い子、居るんじゃないのォ?
[それが実のあることかどうかは別だけれど。]
運が良ければ、か……。
人狼に乗っ取られた時点で最大級に運悪ぃんだし、その分回ってりゃいいな……。
ああ、或いは、すぐに生まれ変わって幸せになってくれれば、それが一番かな。
[フ、と表情が緩んだ所でまた揶揄う声。
むぅ、と尖らせた唇のまま強引に再びシメオンを引き寄せた。]
[同じだ、という――彼女の声は、優しい。
同じだ、と――。]
……、 そう、人狼の、せい。
[でも、被害者と想うことはできない。
加害者にはなりたくなかったけれど――…うまく表せず。]
しったとき、
しにたくないって――――、想った。
[人狼と知ったとき、死を選べるほどの勇気はなく。]
意志があろうとなかろうと、死ねなかったけど――
私、皆のために、死ねなかった……
かぷ。
[いつか
利子とばかりに離れ際に小鼻をぺろりと舐めた。]
先手必勝!
[ししし、と笑う。]
この世界で可愛い子探すよりさっさと生まれ変わってお前を嫁にするよ。それで全部解決な気ぃする。
……誰だって、死にたくなんて、ないもの……
[成り代わった後、どこまでがクラリッサで、
どこまでが人狼かなんて、わからない。
ただ、彼女のそういった意識があったのだとは、理解して。
それでも尚]
――人狼は、居なくなって欲しいけれど。
クラリッサに死んで欲しいなんて思わないわ。
ほかに、退治する術があれば、よかったのにね……
[死ねなかった、と呟く彼女の頭を、
軽く撫でようと手を伸ばした]
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!
[自分がやられるとは思ってもおらず。
うっかり目を閉じた矢先の不意打ちに鼻の頭を抑えた。]
フィルゥ…っ!!
っていうか何で僕が嫁なのさァ。
君が嫁じゃないのォ?
[僕こんな不甲斐ない旦那嫌だよと、鼻を摩る。]
――…、生まれ変わり、かァ。
[したくないような、気もした。]
えー。だってオレお前嫁に欲しいもん。
[嫌だと言われても、名案を思い付いた嬉しさににこにこしたまま。]
嫁さんしっかりしてる方が家庭は円満だって。
で、 ……トリを飼うんだ。
[置いてきてしまった。
怪我をした鳥は、ここにはいないから、きっと人狼の爪からは逃れているのだろうと思う。]
なんだよー。
生まれ変わりたくねぇの?
…………………………………センセーを、待つ?
[傍らに座る彼女。
撫でられる頭に、ぽろり、涙がこぼれて]
……、 ありがとう ございます
死んでも、出るんですね―― 涙。
[苦く、笑って。
傍らに座る彼女にそっと手を伸ばす。]
もし、 赦されるなら
――しばらく、このままで。
[赦されるなら―― ためらいがちに、でも抱きついて。
このあたたかいひとに、 甘えた。]
ローズマリーの豹変に、目を見開く。
[ぽろり、ぽろり。
零れる雫が伝うのを眸に映しながら、
ゆっくりと頭を撫でる]
――そう、ね。
死んでも苦しかったり哀しかったり心配だったり。
生きているときと、かわらないわ、ね。
[ふふ、と小さく笑う。
伸ばされる手を抵むことなく。
抱きついてくる細い躰を受け止めて]
――ええ……
[そっと囁いて、
落ち着くまでゆるりと背を撫でる]
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