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[ 蜘蛛の糸一本垂らされているよーな
琵琶の糸一本垂らされているよーな
ほっそい希望だけ残されて。
僕はひとり このテーブルに
「アリス」が2人着くことがないのを願うばかりの
愚鈍な兎。 ]
笑っちまうよなーぁ。
手前じゃなーんにもしてねーのに
[ 自嘲めいた笑みに口角が上がる。
棚ぼたのような未来を願うのも
「劇」を見に行く踏ん切りがつかねーのも
格好悪い。とんでもなく、格好悪い。
片手に持ったままの湯呑みの中は、
まだ暫く 乾せそうになかった。 ]
[ テーブルのほど近く、樹の根元に腰を下ろす兎は
耳をぺったりと垂れ下げて
まだ中身が入ってる湯呑みを握ったまんま
腕の中に顔を埋めて押し黙る。
気狂い兎はどこへやら。もう泣いちゃあないものの
藁を握ったまま離すことができない惨めな自分を
どこか遠いところから「僕」は見ていて。
あのひとがこんな僕を見たんなら、きっと
何も言わずに頭をくしゃっとしてくれるんだろうけれど]
ばっかじゃねーの、僕……。
[ このまま還れなかったら、”置いてった”のは僕の方。
”置いていきゃあしねえよ”
あのひとの”答え”は今ですら、耳鳴りのように響くのに。
そんな所に訪れた、からりころり鳴る少女の声。
あんた……………いつから、
っつーか、だれ。
[ はじめて見る”少女”のキャストに、
僕は座ったまま、首を捻って林檎色の目を見上げる。
僕のながーい耳はまだ、垂れたまんまだ。]
…………あんたが淹れてくれたのか、これ。
[ 片手に収めた湯呑みを彼女へ差し出して
くるり、さいごのひとくちを回す。
乾してしまったら、
水面に見える”背中”が見えなくなってしまうのではと
そんな理由で飲めなかった さいごのひとくち。]
代わりは、………いいや。
……それか、俺が淹れる事はできる?
[ 葉と、湯と、急須と。幻のように映る日常が、痛い。*]
![]() | 【人】 機巧忍軍 ミツボシ― 幕間◆小さな森にて ― (208) 2015/06/26(Fri) 00時頃 |
![]() | 【人】 機巧忍軍 ミツボシ
(209) 2015/06/26(Fri) 00時頃 |
![]() | 【人】 機巧忍軍 ミツボシ
(210) 2015/06/26(Fri) 00時頃 |
![]() | 【人】 機巧忍軍 ミツボシ
(211) 2015/06/26(Fri) 00時頃 |
…………ヤギ?
[ 疑問符。 頭のなかじゃあ仔ヤギがメーメー鳴き始めるが
まさかヤギが茶を淹れるわきゃあねーと考えること暫し。
それでもまだ カードを配った礼服の山羊頭とは繋がらず
僕はぼんやりとした頭のまんま、少女を見ていた。
その口調が、突然 変わるまでは。
…………!?
[ そばかすの上にある目はおおきく見開いて
舌の上がカラリとざらつく。 こんな、 まるで…
いや、そんなはずは、 ねーし。]
[ 見上げる赤い眼に吸い込まれる。
手を引かれて 腕を飲み込まれて 息まで詰まりそうだ。
手のひらで包んだ湯呑みを握る力が 増して ]
ちーせえのが俺の口調を真似るもんじゃーねえ。
レディはレディらしく、淑女を装いな。
[ 頭に過る”背中”をかき消すように
ん、と一声上げて立ち上がり、
随分と下になった少女の頭へ 傷だらけの左手を伸ばす。
もし届いたのなら ひとつ 頭を撫でて。
はたかれりゃ、ひとつ 苦笑を漏らして。
”鈍い音”
がテーブルに転がって はじめて
俺は 「こいつ」 が誰だかに 思い至った。]
”わが主ナイトメア” あのクソ山羊はそー言った。
………あんたか。
あんたが、この悪夢のオーガナイザーか。
[ 声は低く、半ば伏せた瞼は黒妖を半分隠す。
己を見つめながら
一客のコーヒーを置く少女へ
( しゃらり )
何の躊躇もなく 真白の喉元へ
背から抜いた脇差しをあてがおう。
テーブルの上には、俺のいつもの”仕事場”に転がってる
注ぎ口が欠けてる急須と古びた電機ポッド、
あてつけのような自宅の(僕の)茶筒。
それと真黒のコーヒーが静かに、誰かを 待つ。*]
メモを貼った。
![]() | 【人】 機巧忍軍 ミツボシ[黒曜の瞳に浮かぶ疑問符と、仔ヤギ。 (224) 2015/06/26(Fri) 01時半頃 |
![]() | 【人】 機巧忍軍 ミツボシ
(225) 2015/06/26(Fri) 01時半頃 |
![]() | 【人】 機巧忍軍 ミツボシ
(226) 2015/06/26(Fri) 01時半頃 |
![]() | 【人】 機巧忍軍 ミツボシ (しゃらり、) (227) 2015/06/26(Fri) 01時半頃 |
[ ここちよい猫のような顔をして、
すり抜ける指を受け入れた彼女が
目の前に”それら”を出した瞬間は、等しく悪夢そのもので
”恋しいだろう”と ”悔しいだろう”と
からりころり 嘲笑う声すら聞こえて来る。
与えられた「YES」
………………。
[ せめて いま 「これ」からだけは眼を逸らさぬと
真紅の瞳を真正面で受け止める。
森に流れる風が冷え、
コーヒーの水面に旋のような螺旋を描いて
くるり くるうり 廻るもの 踊るもの、
嗚呼いつだかの 僕のような。]
[ ”僕”を真似ているんだろうと、
無理矢理に自分で納得したのが阿呆らしい。
首元に刃を添えられながら、少女は”あのひと”の口を真似
物怖じもせず か細い指で 僕の刃を制止する。
悪魔の声と口調に 全身が
総出で”いけ好かねえ”と叫ぶ声が 聞こえた。]
黙れ、糞餓鬼。
[ 何処から出たのか 僕自身見当もつかない
冷気を伴った ”おと”
問う事など何もない。憂う事もなにもない。
喉元から引いた刀は収める為ではなく
ただ一迅で、首を飛ばすための 距離。]
[ 無知な兎は思い及ばぬ
そこに在るのが影だとは。
愚鈍な兎は何も知らぬ
落ちる首など無いことを。
兎は次々と湧く怒りのままに ご自慢の足を踊らせて
森を裂くような風切り音を立てながら
目の前のか細い首を 横薙ぎに払う。
湯呑みに残ったさいごのひとくちは
地面の三つ葉のクローバーたちが 受け取っていた。**]
![]() | 【人】 機巧忍軍 ミツボシ
(233) 2015/06/26(Fri) 03時頃 |
![]() | 【人】 機巧忍軍 ミツボシ (234) 2015/06/26(Fri) 03時頃 |
![]() | 【人】 機巧忍軍 ミツボシ[歩み寄り、男の背を見上げると、 (235) 2015/06/26(Fri) 03時頃 |
![]() | 【人】 機巧忍軍 ミツボシ[現れた”マヨネーズ”を更に机上に置いて、 (236) 2015/06/26(Fri) 03時頃 |
![]() | 【人】 機巧忍軍 ミツボシ……。 (237) 2015/06/26(Fri) 03時頃 |
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