246 朱桜散華
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この村にも恐るべき“人狼”の噂が流れてきた。ひそかに人間と入れ替わり、夜になると人間を襲うという魔物。不安に駆られた村人たちは、集会所へと集まるのだった……。
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嗚呼、聞こえる。やつの足音が聞こえる……。
(0) 2016/04/18(Mon) 00時半頃
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山間に開けた小さなその里は。
外界との関わりも少なく、慎ましく日々を暮らしていた。
村外れの丘の上には、見事な枝振りの桜の巨木。
それは、決して咲かない桜の樹。
とおいとおい昔、禁忌を侵した『巫女』が己の命を絶ったその場所で。
年に一度、行われるのは『御霊鎮め』の祭り。
(#0) 2016/04/18(Mon) 00時半頃
祭りの準備が進む中。
あの桜は、何故咲かぬのか、と誰かが問う。
問いを受け、里の長であり、宮司を務める雷門は静かに語る。
遠い過去。
昔、むかしのものがたり。
(#1) 2016/04/18(Mon) 00時半頃
かつて、桜を護る巫女がいた。
かつて、桜を見るため立ち寄った旅人がいた。
仮初めの出逢い。
巫女は旅人に惹かれ、彼が去った後、想い焦がれ。
その想い故に、禁忌を犯す。
触れてはならぬ、封を解き、その力を持って、旅人の元へ向かわんと。
(#2) 2016/04/18(Mon) 00時半頃
されど理歪めし力はただ。
巫女に狂気を、里に血を。
ただ、それだけをもたらして。
望月の夜。
天より下りし、緋色の龍に封じらる。
禁忌の力を無くせし巫女は、悔いかそれとも絶望故にか。
桜の下で生命断つ。
後に残るは満開の。
季節外れし、薄紅桜――。
(#3) 2016/04/18(Mon) 00時半頃
その花散りて後。
桜は時を刻むを忘れたが如く、花を開く事はせず。
ただ一度だけ、桜の下で人の血が流れた時のみ、鮮やかな花を咲かせたと言う。
鮮やか過ぎる桜は血を、生命を求めるコエを上げ。
再び下りし緋色の龍に、諌められ、散り果てた。
それ以降、里の者は。
巫女が生命を断ちし若葉の季節に、その魂を慰め、鎮める祭りを執り行うよになっていった。
咲いてはならぬ、起きてはならぬ。
緑の内にてゆるり眠れと……。
(#4) 2016/04/18(Mon) 00時半頃
嘘か真か、真実は知れず。
けれど、伝えられし祭りはその年も変わりなく行われ。
そうして、祈りを重ね行くのだと。
その時は誰もがそう、思っていた──はずだった。
(#5) 2016/04/18(Mon) 00時半頃
朱桜散華
─開 幕─
(#6) 2016/04/18(Mon) 00時半頃
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[────── ぽろん]
[────── ぽろん]
[────── ぽろん]
(1) 2016/04/18(Mon) 01時半頃
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[他に人気の無い家の中。 その一室から零れる弦の音]
────………
[一心不乱と言うには穏やかに、されど周りの音など気にならぬといった風で音は綴られる]
(2) 2016/04/18(Mon) 01時半頃
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───…… あっ ……
[琴の音だけが辺りを包んでいた中で、唐突に、ぱちん、と弾ける音が響いた。 小さな音を零しながら、志乃は琴に触れていた手を胸元に引き寄せる]
……やだ、験の悪い……
[見れば琴の弦が一本切れ、左右にくるりと丸まってしまっていた]
…張り直さないといけないじゃない。
[嘆息を一つ零し、志乃は立ち上がり外の明かりを取り入れるために縁側に面した障子を開ける。 光と共に、緩やかな風が部屋の中へと流れ込んで来た]
(3) 2016/04/18(Mon) 01時半頃
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……どうして私が……
[不満げに零すのは後日催される祭りに対して。 『御霊鎮め』の楽を頼まれて欲しい、と里長に言われてしまったのだ。 一人静かに弾くのを好む志乃は、大勢を前に、更には誰かと合わせて弾くのが苦手で。 嫌だとは言ったのだが、半ば強引に決められてしまい、憂鬱な日々を過ごしていた]
──── はぁ……
[外へと目を向ければ、祭りの準備は着々と進んでいるよう。 大袈裟にも思える溜息を吐いた後、志乃は弦を張り直すべく道具を手に取った**]
(4) 2016/04/18(Mon) 01時半頃
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琴弾き 志乃は、メモを貼った。
2016/04/18(Mon) 02時頃
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……へーえ。 そんな逸話があったんかぁ。
[誰かの問いを切欠に始まった祭りの経緯に、上がるのはこんな声。 お前知らんかったんか、という突っ込みに、青年はひょ、と肩を竦める]
んー、ガキの頃に聞いたような覚えはあっけどさ。 あんま興味ないし、忘れてた。
[それにさらりと返した後、一時的に下ろしていた材木を再び肩に担ぎ上げ]
これ、桜の下に積んどきゃいいんだよな?
[軽い口調で問い、答えを得ると、神楽舞台の準備が進む方へと歩き出す。**]
(5) 2016/04/18(Mon) 10時半頃
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喧嘩屋 辰次は、メモを貼った。
2016/04/18(Mon) 10時半頃
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─ 桜の木の下 ─
よっ、と。 これ、ここでいいんだよなぁ?
[担いで来た材木を桜の近くの資材置き場に下ろして問いかける。 舞台を組んでいる大工から肯定を得ると、腕を上に上げて身体を伸ばした]
っかし、毎年毎年よく作るよなぁ。 作りっぱにしといちゃダメなんか?
[軽く問えば、毎年築く事にも意味がある、との返事]
なんで?
[首を傾いで問いを重ねたら、呆れたようにため息を吐かれた]
(6) 2016/04/18(Mon) 22時半頃
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えー? いや、確かにそーだけど……長の話、聞いてっと眠くなんだよ。
[仮にも縁戚なんだから、ちゃんと長から聞いておけとかなんとか、小言づかれてきゅ、と眉を寄せる。 それに返した言葉には、呆れたため息を重ねられ。 儀式に関わるものだから、という最低限の説明をしてもらった]
……へーえ。 あー、はいはい、わかったわかった。
[後は長に聞け、という言葉に気のない声を上げた後、青年が見やるは蒼天に枝のみを広げる桜の梢]
(7) 2016/04/18(Mon) 22時半頃
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喧嘩屋 辰次は、メモを貼った。
2016/04/18(Mon) 22時半頃
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─ 自宅 ─
[弦が一本切れたことで全ての弦が緩んでいないか確かめる必要があり、弦を張り直しながら志乃は調律も行い始める。 力の要る作業だが、その技術は里の外にいる間に叩き込まれた。 時間がかかりはしたが、琴は再び演奏可能な状態へと戻り行く]
……疲れた……
[弦の張り直し作業のお陰で今日はもう琴を弾く気分にはなれない。 琴を琴袋へと仕舞い、部屋の奥に片付けると縁側から草履を履いて外へと出た]
…少し歩こうかな。
[ぽつりと呟いて、縁側に面した障子を閉めた後、志乃は里の中へと足を向けた]
(8) 2016/04/19(Tue) 00時頃
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─ →村外れの丘 ─
[平らな道の更に向こう。 村外れの丘には咲かぬ桜が聳え立つ。 今は神楽舞台を作っている時分。 力仕事故に手伝えることは無いだろうが、少しだけ様子を見ようと足が向いた]
…枯れてるだけじゃないのかしら…
[目は蒼穹へと伸びる枝に向く。 枯れるにしては力強く、今にも折れそうな見目はしていない。 幹も近くで見れば枯れているとは言い難い様相ではあった。 それでも、あの桜が咲いたのは見たことが無い]
(9) 2016/04/19(Tue) 00時頃
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─── 気味が悪い、 って
かかさまは言っていたっけ。
[4年前に志乃を連れて里を出た母。 父が里の外から連れてきた人で、どうしても里の風習に馴染めなかったらしい。 父が病で亡くなった後、1年もせずに里を出て行ったことは里の者達にはどう思われたか。 少なくとも父の縁戚の評判は良くない、と噂では聞いている]
咲かないのは不思議、だけど……
[気味が悪い、とまでは志乃は思っていなかった]
(10) 2016/04/19(Tue) 00時頃
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琴弾き 志乃は、メモを貼った。
2016/04/19(Tue) 00時頃
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─ 村外れの丘 ─
[しばし梢を見上げた後、さて次の仕事を、と。 歩き出そうとした矢先、目に入った姿>>10に、瞬きひとつ]
よーお、お志乃。 表に出てくるとか珍しいんじゃね?
[呼びかける、口調はごく軽い。 一度里を出て、また戻って来た彼女に対してあれこれ言う者は少なくないが。 細かい事は気にせぬ青年の態度は、昔とほとんど変わってはいない]
(11) 2016/04/19(Tue) 00時頃
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─ 村外れの丘 ─
[咲かぬ桜の木の下では男達が作業を続けていた。 それを少し離れたところで眺めていると、見慣れた顔>>11が志乃へと向いた]
たつにぃ……
四六時中籠もってるみたいに言わないでよ。
[軽い口調に志乃は軽く眉を寄せる。 表に出ることが少ないのは事実だが、それを指摘されるのは志乃にとっては面白くない。 変えようとしても変えられずに居るが故のことからだった]
(12) 2016/04/19(Tue) 00時半頃
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[昔と変わらない態度はありがたいものの、それを素直に受け取れないのは元からの性格故]
……準備、順調なの?
[問いかけながら、視線は己も控えることになるだろう、神楽舞台へと向く]
(13) 2016/04/19(Tue) 00時半頃
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─ 村外れの丘 ─
おっとわりぃわりぃ。
[寄せられる眉>>12に、けらりと笑って軽く返す]
お前、あんまり顔みせねぇからさあ。
[ついな、と。 悪気なく言うのは、良くも悪くも素の気質。 一応、心配はしているのだが、物言いのせいで伝わり難いのも昔から。 飾らぬが故のものであるそれへの好悪の評はわかれているが、気にしているかと言えば……ではあるが]
(14) 2016/04/19(Tue) 01時頃
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ああ、今んとこ、問題もねぇしな。 こっちは、祭りにゃ間に合うぜ。
[問い>>13に返しながら、こちらも見やるのは組み上げられていく神楽舞台]
飾り紐の準備がちぃと遅れてるらしいが、ま、なんとかなんだろ。
[祭りの際に村を飾る、緋色の飾り紐。 伝承の龍を象っているとかなんとか言われるそれは、里の女たちの手に寄って編まれている最中のはずだった]
(15) 2016/04/19(Tue) 01時頃
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─ 村外れの丘 ─
…たつにぃが居るところに行く必要がないもの。
[畑仕事や力仕事はしないから、なのではあるが、言葉足らずのままに紡いで、ふい、と辰次>>14から視線を背ける。 背けた視線は神楽舞台へと向いて>>13、組み上がっていく様子をしばし眺めた]
……そう。
飾り紐……
[準備が遅れている>>15と聞いて、手伝うべきかと思考が頭を過ぎる。 けれどそれは言葉にも実行にも移されず、視線が広げた両の掌へと落ちた。 頭の中で琴の演奏との天秤をかける]
(16) 2016/04/19(Tue) 01時頃
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[やがて掌を下ろし顔を僅かに上げ、その場から動かず神楽舞台へと視線を向ける]
……しばらく見てて良い?
[顔は向けぬまま、辰次にそう問いを投げた**]
(17) 2016/04/19(Tue) 01時頃
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琴弾き 志乃は、メモを貼った。
2016/04/19(Tue) 01時頃
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─ 村外れの丘 ─
……いや、そりゃそーかも知れんけど。
[足りない部分に気付く事なく、言葉>>16を素で受け取った青年は、ほんの少し顔を顰める。 とはいえ、逸らされた志乃の視線がそれを捉えたかはわからぬが。 飾り紐、と呟いた後の様子にはん? と首を傾げるものの。 どうかしたのか、と問うより先に、志乃から問いが投げられて。>>17]
(18) 2016/04/19(Tue) 01時半頃
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おう、別に構わんぜー。 おっちゃんたちの邪魔になんなきゃ、問題ねぇだろ。
[作業の妨げにならなければ大丈夫だろう、とあっさり請け負って]
んじゃ、俺は手伝い戻るわ。
[軽い口調で言いながら、自分は作業へと戻っていく。**]
(19) 2016/04/19(Tue) 01時半頃
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